煉獄ノ炎【心の炎】
竈門少年。猪頭の少年がこの列車を乗っといていた鬼の頸を切ったようだ。
濃厚で醜悪な列車と融合していた肉が瓦解した。
気配も霧散していく。
「ふむ!!若手が育っている事はいいことだ!継子にしたいものだ!!」
列車は脱線し横転してしまっているが怪我人は居るだろうが幸い死者はいない。黄色い少年。竈門妹の尽力よるものだ。
竈門妹の力も血霞殿に近しいものを感じる。彼女からも人をまもる意思を感じる。認めなければなるまい。
さて、後処理もあるし【隠】部隊に連絡しなければ。随分列車も走った。付き添いの【隠】とははぐれてしまったしな。
「少年達の様子も見なければ!」
▽▽▽
ボロボロで横たわる竈門少年を発見する。
「全集中・常中が出来ているようだな!!感心感心!!」
「煉獄さん……」
「常中は柱へと第1歩だからな!!柱まで10000歩あるかもしれないがな!!」
「頑張ります……」
「腹部から出血している。もっと集中して呼吸の精度を上げるんだ。からだの隅々まで神経を行き渡らせろ」
竈門少年は言われた通り呼吸をする。
「血管がある。破れた血管がある。もっと集中しろ」
ドクン。
「そこだ止血。出血を止めろ」
苦痛に歪める少年の額に指を当てさらに。
「集中」
「ぶはっ、はぁはぁっ!……?」
「うむ、止血できたな。」
「呼吸を極めれば様々なことができるようになる。なんでも出来るわけではないが昨日の自分より確実に強い自分になれる」
「はい」
素直な少年に笑いかける。気持ちの良い気性の少年だ。
「皆無事だ!!怪我人は大勢だが命に別状はない君はもう無理はせず……」
そう、声を掛ける途中後方より爆音。振り向くと天より何かが飛び降りてきた。
全身入れ墨の桃色の髪をした青年。両眼には上弦の参と刻まれていた。
突如の出現もすぐに大地を蹴り此方に……いや竈門少年か!!
炎の呼吸・弐ノ型【昇り炎天】
下段から突き上げる斬檄で少年へ振りかざした奴の拳を両断する。
奴は後退。両断した奴の腕は直ぐさま再生。なめ取る。
「いい刀だ」
「なぜ、手負いのものから攻撃をした?理解出来ない」
「話の邪魔になりそうだった。俺とお前の」
「何の邪魔になる?君とは初対面だが既に君のことが嫌いだ」
本能とその鬼に直感めいた嫌悪感が顔を出した。
「そうか、俺も弱者は嫌いだ。弱者をみると虫唾が走る」
「君と俺とでは価値観の基準が違うようだ」
「そうか、では素晴らしい提案をしよう…………鬼にならないか?」
「ならない」
巫山戯た提案だ。ならない。即断で突っぱねる。
血霞殿は例外でやはり鬼は鬼だ。その鬼になるとはあり得ない。天と地がひっくり返ろうとも煉獄家としての矜恃をもってあり得ない。
「見れば分かる。お前の強さ柱だな?」
「その闘気練り上げられている至高の領域にちかい」
「俺は炎柱・煉獄杏寿郎」
「俺は猗窩座。何故お前が至高の領域に踏み入れないか教えてやろう」
「人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ。」
凶相で此方を指差して断言してくる猗窩座。
「鬼になろう。杏寿郎。鬼ならば百年でも二百年でも鍛錬し続けれる。鬼殺隊はいかれた【血霞】もいるだろう?抵抗もあるまい」
「老いることも死ぬこともそれが人間という儚い生き物の美しさだ」
「老いるからこそ死ぬからこそ堪らなく愛おしく尊いのだ」
「強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」
「この少年は弱くないし血霞殿は鬼で有りながら此を理解して慈しんでいる」
「侮辱をするな。何度でも言おう。君と俺では価値基準が違う。」
「俺は如何なる理由をもっても鬼にはならない」
術式展開【破壊殺・羅針】
拳鬼は構える。雪結晶の羅針盤のような術式が展開する。
「鬼にならないならば殺す」
炎の呼吸・壱ノ型【不知火】!!
互いに大地を蹴り殺意を持ってぶつかる。
「今までは殺してきた柱たちに炎はいなかったな。そして俺の誘いに頷く者もいなかった」
奴は空中を飛び跳躍する。
「何故だろうな。同じく武の道を極める者として理解しかねる。選ばれた者しか鬼にはなれないというのに」
「素晴らしき才能を持つものが醜く衰えてゆく。俺は辛い。耐えられない死んでくれ杏寿郎!若く強いまま」
破壊殺・空式!!
肆ノ型【盛炎のうねり】!!
空中からの連打を火焔の波濤で阻む。
虚空を拳を打つとこちらまで攻撃がくる。一瞬にも満たない速度。このまま距離を取って戦われると頸を斬るのは厄介だ。ならば近づくまで!!
間合いをつめる!!
「素晴らしい反応速度」
打ち合う。打ち合う。打ち合う。
「この素晴らしい剣技も失われるのだ悲しくならないのか!!」
「誰もがそうだ!!人間なら当然のことだ」
動こうとする竈門少年が視界に入る。
「動くな!!傷が開いたら致命傷になるぞ!!待機命令!!」
「弱者に構うな!!全力を出せ!!俺に集中しろ!!」
炎の呼吸・伍ノ型【炎虎】!!
破壊殺・乱式!
虎を模した火焔とド級の乱打がぶつかり合う!!
殺意と殺意がぶつかり合い鬩ぎ合う。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「死ぬな。杏寿郎。」
奴の言葉に顔をしかめる。左眼は潰れ内臓をいくつか潰れている。視界は半分になろうともまだ戦える。
「生身を削る思いで戦ったとして無駄なんだよ。杏寿郎。お前の素晴らしい斬撃で喰らわした傷も既に完治してしまった」
「対してお前はどうだ?潰れた左眼。砕けた肋骨。傷付いた内臓。取り返しがつかない。鬼は致命傷たり得ない。人間では鬼には勝てない。どう足掻いても」
関係ない。だからどうした。
「俺は俺の責務を全うする!ここにいる誰も死なせはしない!!」
1度に多くの面積を削り取り滅する。
炎の呼吸・奥義!!!!
「素晴らしい闘気だ、それほどの傷を負いながらその気迫、その精神力!!一分の隙のない構え!!」
歓喜に震える拳鬼は迎撃する為に構える。
「やはり鬼になれ杏寿郎!!!」
「俺と永遠に戦い続けよう!!」
闘気は互いに練り上げられ膨れ上がる。放たれる応酬する闘気は今奥義となり爆ぜる。
玖ノ型【煉獄】!!
術式展開【破壊殺・滅式】!!
破壊力絶大の奥義がぶつかり合う。爆ぜる。
互いの否定の威力は互いを討ち取るため容赦ないものとなりぶつかり合う。
▽▽▽▽
幼き日の回想が蘇る。かつての母の顔。凜とした美しい母だった。
「杏寿郎」
「はい!!母上!!」
「よく考えるのです。母が今から聞くことを」
「何故、自分が人より強く生まれたか分かりますか」
「…………ぅっ……」「……」「わかりません!」
「弱き人を助けるためです」
「生まれついて人より才に恵まれた人間はその力を世のため人のために使わなければなりません」
「天より賜りし力で人を傷付けること私腹を肥やすことは許されません」
「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任をもって果たさなければならない使命です」
「決してそれを忘れること無きよう」
「はい!」
「母はもう長くはありません。強く優しい子の母で幸せでした。後は頼みます。」
「血霞麟さん、彼女の助けになるよう。それも煉獄家の使命です。」
母の抱擁。母の言葉。それが俺の原点だ。
母上、俺の方こそ貴女に生んでもらえて光栄だった。
▽▽▽▽▽▽▽▽
俺の腹部を貫く拳鬼の拳。致命的な傷だ。吐血する。
それでも心の炎は燃え続ける。
「……死ぬぞ!杏寿郎!鬼になれ!!!鬼になるといえ!!」
拳鬼の言葉はもう一度否定する。ならない。
振るわれるもう一方の拳を掴む。
この鬼の頸を切り落とすまでけしてはなさん!!
夜明けが近い。拳鬼もそれを察したのか腕を抜こうと激しく抵抗する。
にがさん!!
「伊ノ助!!煉獄さんのために動け!!」
「お、おう!!」
少年達は俺の援護をしようと動こうとする。
獣の呼吸・壱ノ牙【穿ち抜き】……!!
拳鬼は自身の腕をも犠牲にして跳躍する。
拳鬼は夜明けが近いことを感じ屈辱ながら駆けていく。
その拳鬼の後ろ姿に竈門少年は振りかぶり日輪刀を投擲する。拳鬼を貫く。
「逃げるな!!卑怯者!!逃げるな!!!」
その言葉に猗窩座は憤怒の形相を浮かべる。
「いつだって鬼殺隊はお前らの有利な夜に戦ってるんだ!!生身の人間がだ!!傷だって簡単には塞がらない!失った手足が戻ることはない!!」
竈門少年は叫ぶ。
「逃げるな!!卑怯者!!馬鹿野郎!!」「お前なんかより」
「煉獄さんのほうがずっと凄いんだ!!強いんだ!!煉獄さんは負けていない!!誰も死なせなかった!!」
「戦い抜いた!!守り抜いた!」「お前の負けだ」
「煉獄さんの勝ちだ!!」
「うぁぁぁあ!!」
少年は叫び続けていた。
もう、あの鬼の姿、気配はない。
「…………ごめん、炭治郎。杏寿郎。遅くなった。間に合わなかったね」
悲嘆で泣きそうな表情を無表情に精一杯している彼女が背後にいた。
▽▽▽▽▽▽▽▽
「麟……さん」
「ごめんね。いつも私は間に合わない。」
傷だらけの炭治郎の頬を撫でる。
「致し方あるまい。貴女も難敵と戦っていたのだ」
「君……致命傷なん……だよ杏寿郎。私は君とわかり合いたかったんだよ」
「なら、問題はあるまい。血霞殿。俺は貴女を鬼殺隊の仲間として認める。元々煉獄家は貴女に助けられた。それを認めていなかった俺の我が儘だ。貴女は鬼でも人より人らしい。」
「……杏寿郎。君は」
「君はまだ死ぬべき人間じゃない。そうだ血怪に生まれ変わらないか。多少不都合があるかもしれないが生きてるなら……!!」
「夜明けが近いぞ血霞殿。……少年達に話したいことがある。手短に言わせて頂く。俺を人間のまま人間として死なせてくれ。これは煉獄杏寿郎個人としての矜恃だ。ああ、もちろんやり残した事など沢山あるさ。だが俺の意思を彼等がきっと継いでくれるし貴女も汲んでくれるはずだ」
「だから俺は一片の悔いも残さず次代に托せる」
晴れやかな青年の微笑みが過去に見送ることになった剣士達を思い出させる。
次代には必ず……鬼を殲滅できる剣士達が生まれると信じている。
「…………鬼を殲滅し人間達笑って暮らせる世界を作るよ」
「…血霞殿。最後に貴女にも言っておこう。」
夜明けになる日が出る一歩手前。
「なに、かな」
「貴女は自分の幸せを考えてほしい」
…………!!
夜明けが近くなるため日陰へ逃げていく。
▽▽▽▽▽
完全に日が昇る。
「竈門少年、こっちにおいで」
「最後に話のしよう」「思い出したことがあるんだ」
「昔の夢を見た時に」
「俺の生家、煉獄家にいってみるといい」
「歴代の炎柱が残した手記があるはずだ、父はよくそれを読んでいたが俺は読まなかったから内容は分からない」
「君が言っていたヒノカミ神楽についてなにか記されているかもしれない」
「れ、煉獄さんもう良いですから呼吸で止血してください傷を塞ぐ方法はないんですか」
泣き慌てふためく少年を嗜めるように言う。
「ない、俺はもうすぐ死ぬ。しゃべれるうちに喋ってしまうから聞いてくれ」
「弟千寿郎には自分の心のまま正しいと思う道進むよう伝えて欲しい」
「父には体を大事にして欲しいと」
「それから」
「竈門少年。俺は君の妹を信じる。鬼殺隊の一員として認める」
「汽車の中であの少女が血を流しながら人を守るのを見た」
「命をかけて鬼と戦い人を守る者は誰が言おうと鬼殺隊の一員だ」
「胸を張って生きろ」
「己の弱さや不甲斐なさにどんだけ打ちのめされようとも心を燃やせ歯を食いしばって前を向け」
「君が足を止めて蹲っても時間の流れは止まらないし寄り添い悲しんではくれない」
「俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。」
「柱ならば誰であっても同じ事をする若い芽はつませはしない」
竈門少年、猪頭少年、黄色い少年。
「もっともっと成長しろ。そして今度君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ」
「俺は信じる」「君たちを、信じる。」
母上
俺はちゃんと出来ただろうか?
やること果たすべき事全うできましたか?
《立派に出来ましたよ》
そう、真に後悔などなく笑顔で逝こう。
願わくば彼女も満面に笑みで笑えるような世界を。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
拳鬼は駆ける。日光をも遮る洞窟へ。1度ここで態勢を。
「…………お前、なのか狛治」
「狛治さん……」
先程の雪のような少女と天狗の面をした胴着を着た男。
「追っ手か……!!」
「違うの、聞いて!!狛治さん!!」
「俺は狛治などではない!!俺は【上弦の参】猗窩座だ!!」
「いや、お前は忘れてるだけだ。そうだろう俺達がお前を見間違うことなんかないさ」
面を外す天狗の男。柔和は表情をした壮年の男。見覚えが……!
「…………もう、これ以上自分を痛めつけるな。」
「う、うるせぇ……俺は至高の領域に至るんだ!」
「何故?」
「何故……だとぉ……!」
「お前は守る為だけに戦う奴だよ狛治」
「うるせぇ!!うるせぇ!!!うるせぇ!!」
破壊殺・羅針!!
破戒刹・雪羅針!!
「………………取り込み中失礼。【上弦の参】だな?鬼」
銀髪の鬼殺の剣士が間に入ってくる。
「誰だ!!」
「ただの剣士だがお嬢様より君ら上弦の誰かしらの色が欲しいと承ってったんだがな。」
銀髪の鬼狩りは悍ましく嗤い。
色を頂戴する。そう言い放った先の激闘はまた別の話。
この戦いの結果は知らずまたどうなったかは知らない。
親子は彼を逃してしまったと苦渋に歪む。
▽▽▽▽▽▽
それから、煉獄杏寿郎の訃報は直ちに産屋敷・各柱に伝達される。
「……そうですか。煉獄さんが」
「……上弦の鬼には煉獄でさえ負けるのか」
「俺は信じない」
「波阿弥陀仏……」
「醜い鬼共は俺が殲滅する」
「そうか」
「二百人の乗客を一人として死ななかったか。杏寿郎は頑張ったね凄い子だ」
「寂しくはないよ、私はもう長くはないだろう」
「近いうちに杏寿郎やみんなのいる黄泉の国へ行くんだろうから」
彼の死で鬼殺隊一層の結束にはなるだろう。彼女を除いて。それは今は知らない。
当初は安易に煉獄さん救済しよう!!なんて考えてましたが安易だったなぁと思いそこは原作通りになっちゃいました。