鬼喰の血刃   作:九咲

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新章突入。


【雨ノ帝都デ影蝶舞ウ】編
雨獄ノ壱【ずれ始めた世界で雨は涙ぐ】


純白。汚れなき空間。全て純白で彩られた大広間。

 

長いテーブルの先に純白の椅子に座るのは白い純白鬼嬢。【新月ノ純白】神代真白。

 

「それでおめおめ逃げてきたのね。まぁ【夢ノ色彩】が敗北したのは予定調和だけど。試作品の此を試したいだけだったし。お姉様の色を奪えるとは思ってなかったわ」

 

いつもの亀裂のような笑みもなくただつまらなげに無色の女を睨めつける。

 

鎖天川瑠偉もこの白を睨めつける。元々忠誠心の欠片もないが無能扱いは甚だ不愉快だった。

 

「瑠偉ちゃんってば昔から威勢だけだよねー」

 

「あ?」

 

「ほら、そういうとこ。アタシより弱いんだからつよがんなよ。【柱】時代も勝てたことある?」

 

「ち……」

 

「相性的にも夜深ちゃんにも勝てないんじゃなーい?」

 

「私に振らないでよ。鎖天川なんかに興味ないし」

 

「ぷっ!!ギャハハハ!!興味ないってよ!!瑠偉ちゃん!!」

やたら絡んでくる【新月の空色】上臥原天とこの場に興味なさげに前髪をいじり枝毛でも探している【新月の闇色】宵鷺夜深。

 

「天?……言いたい放題も強者の特権だけど品がありませんわよ」

 

「すいませーん。みゃは♪」

 

「…………それで嫌味言うためだけの茶会じゃないでしょうが」

 

「自覚はあるようね。瑠偉。……灰羅さん?」

 

「はいはい。」

 

真白に次ぐ上座でのほほんと洋菓子に舌鼓を打っていた灰色の妙齢の女性は私?と顔をしながら返事をする。

 

「……本当マイペースですわね?……あの試薬いけます?」

 

「いけるわ。うんうんいける。瑠偉さんの無色の特性悪くないしね」

 

「無色は何色にもなれる?塗りつぶす白と塗り変える灰色に匹敵しそうではありますわね」

 

「まぁ、瑠偉さんはこの体たらくだもの。全然生かし切れていないわ。何ものにも侵されなく侵す【真紅】絶対破壊の【漆黒】それに匹敵する無色ですもの。色にはそれぞれ特性があるわ。【色彩ノ鬼】が持つ【領域展開】を生かすためのね。【色彩ノ座】を持つ我々にはね」

 

「今の貴女はただの【色彩ノ鬼】と同義。せっかくの【色彩ノ座】ですもの。活用してくれなきゃ困りますわ……【領域展開】は在り方の拡張。それに【色彩】という欲望を織り交ぜないと。……意味はありませんわ」

 

怒り。怒りという無色の欲望。私の【雨獄】はいつになっても晴れはしない。

 

「そして本題。…………貴女の何色にでもなれる特性。試させてくれませんか?もちろん拒否権はありません。拒否すれば死体に戻すだけです。まぁ無色の特性は勿体ないですけど。言うこと聞けない御人形に存在価値はないでしょう?私、整理整頓する質でして。ほら、散らかったアトリエなんていやでしょう?」

 

薄く笑う。こいつの笑顔は薄気味悪い。過去遭遇したどの鬼よりも得体の知れない。そもそも鬼舞辻無惨以外の鬼とは何か分からない。悍ましい。

 

だが今更後には引けない。私の怒りはどうしようも無い。

 

「いいわ。やってやるわよ……どうせ捨てるものなんてないもの」

 

私は凡才だ。【柱】になったのだって何かの間違いだった。

 

ちっぽけなプライドとあいつとあの子に対する見栄だけが私の存在価値だった。

 

 

《瑠偉姉さんって凄いんだね。》

 

 

 

 

 

小さな嘘が始まりだった。

 

 

▽▽▽▽▽▽

【血霞邸】昼間。

 

【列車】事件から幾許か。煉獄杏寿郎の訃報から鬼殺隊内部での混乱は著しかった。

それ程彼の人格、影響力は大きかったと思う。

 

私へのバッシングは少なからずあった。面とはいわれはしないが少なくとも実弥ちゃんや伊黒君からの無言の圧はこたえた。

 

暗にお前が死ねば良かったと。

 

 

「いや、きついっすわ」

 

未だ慣れない。私自身鬼殺隊に入ってから何度も経験していることだ。命をとして戦う彼等(人間)を。道半ば死んでしまう彼等(人間)に。

 

生き汚く生き残る()に。目覚めた頃の無知に私様など言っていた自分すら懐かしい。陰鬱な思考の沼に沈みかける所に背部に衝撃。

 

 

「麟さん!!」

 

いきなり、後ろから抱きつかれる。基本的塩対応される私に無条件な好意をぶつけてくるのはすぐに思い付く。

 

 

「梅、来てたの?」

 

「久しぶり!」

 

振り向くと超弩級の美少女とそれに不釣り合いな強面の取り立てのお兄さんな痩せ細った青年がいた。

 

「こらぁ梅ぇ……麟さん困ってるだろがぁ」

 

「五月蝿ーい。久しぶりの麟さんなんだしいいでしょうー」

 

「久しぶりだね。……妓夫太郎」

 

「久しぶりだなぁ……相変わらず元気そうでよかった」

 

「律儀に帰ってこなくてもいいのに」

 

「そういうわけにもいかねぇ……俺らはあんたに助けられたしなぁ」

 

「麟さん私嫌いなの?」

 

「大好き!」

 

「えへー」

抱きしめ返すと頬を緩めるこの子を嫁に出すなんてムリムリ。私が貰う。

 

 

この子達は謝花妓夫太郎と謝花梅。私が拾った子の二人。

 

そして【血怪百鬼夜行】の一員。

 

 

二人は二人で一人。一人で二人。私から離れて単独行動が出来るため遠出をよくしている。見聞広めるため旅をさせているもの

 

正直この二人は【百鬼夜行】として戦いに使うつもりはない。

 

だって梅可愛いし。可愛いは正義。

 

 

「……私はいいんですか?確かに梅ちゃんほど可愛くはないですが」

 

「いやいや雪ちゃんも可愛いと思うよー」

 

「梅ちゃんに言われると嫌味に聞こえますねぇ。まぁ他意はないんでしょうけど」

 

お雪が嘆息する。

 

 

「………………今回は何処まで行ってきたの?」

 

「北の方!寒かった!!」

 

「骨身に染みる寒さだったなぁ……」

 

「妓夫太郎、ガリガリだもんねぇ。太れ!って言えないのがつらい」

 

「気にするなぁ」

 

「…………麟さんに一つ報告がある。今回帰ってきたのもそれがあるしなぁ」

 

「なに、改まって」

 

「…………【上弦の陸】に遭遇した」

 

「……【陸】?」

 

首を傾げる。まぁ【陸】なら……一応【肆】以上くらいなはず。

 

「いや、何だぁ……その【陸】がまずいんだぁ」

 

 

「……【胡蝶しのぶ】」

 

「え?」

 

「確か【花柱】の妹だろう?」

 

しのぶちゃんが鬼?

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「はいはい、来てくれたね二人とも」

 

 

万世極楽教と呼ばれた宗教の本拠地の屋敷の一室。

 

教主の笑顔の青年がいた。

 

 

「…………来るつもりはなかったんだがな」

 

二人と言われたが少年の一人しかし居ない。

 

闇色の瞳に闇色の髪の痩身長身の少年。瞳には上弦・陸と刻まれていたもの

 

 

「つれないこと言うなよ。上弦のメンツでなんたかんだ構ってくれるのは君たちくらいなんだから」

 

「それはお前がウザイだけだろう。童磨」

 

「辛辣ぅ…………彼女に変わってよ。女の子と話した方が楽しいし」

 

「変わったらボコボコに言われるだけだぞ。」

 

「それがいいんじゃ無いか」

 

「うぜぇ…………彼女は俺のだ。死ねよ童磨」

 

「【陸】の君が【弐】の俺に言うのかな」

 

「いずれ入れ替わりの血戦で食い殺してやるよ」

 

「そりゃ楽しみ。期待しているよ逢魔。名前似ている同士仲良くしよーよ」

 

「断る。……で呼び出した用件は?」

 

【上弦の弐】童磨と【上弦の陸】宵鷺逢魔は対峙する。

 

 

「【見えざる月】聞いているだろう?彼女らのせいで無惨様はお怒りなのさ。だから……新参者の君たちに手柄と経験をって思ってね?………一人標的を見つけてね。元【鬼殺の剣士】の鬼。シンパシーなんて感じちゃうよねぇ……?」

 

「殺せってわけか」

 

「全ては無惨様のためにね。期待しているよ。逢魔。しのぶちゃん」

 

「…………いいでしょう。やりましょう逢魔くん」

 

宵鷺逢魔の影より現れる小柄な少女。宵鷺逢魔と同じく上弦・陸と刻まれていた瞳に。鬼化する前に付けていた蝶髪飾りはなく髪も下ろし蝶柄の和装を着た【胡蝶しのぶ】が少女らしからぬ鉄面皮のままそこにいる。

 

「……」

 

「二人一緒にやりましょう?逢魔くん」

 

「ああ、そうだね」

 

退室した二人は手を繋ぐ。

 

無表情に笑わなくなったこの人を守るために。

 

 

 

 

 




遊郭編消滅。原作逸れ極まる。
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