鬼喰の血刃   作:九咲

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肆【敗北は苦渋の血の味?】

結果を言おう。

 

結論から言おう。

 

私は敗北した。

 

強くなったと自負していた。きっとそれは傲慢であったんだろう。

 

驕っていた。私は強いと勘違いしていた。

 

最初の【黒死牟】以来私は圧倒的強者と戦っていない。

 

雑魚を狩り家族を増やし家族に【血鬼術】を与え強くなった気でいた。

 

そんな事であの【領域(黒死牟)】に至れるのかよ。

 

 

私と同じ【領域展開】型の血鬼術を持った【新月の純白】に一方的にやられた。

 

 

「麟様!!麟様!!腕の色が!!色が!!!」

 

お雪め。泣くなよ。思った以上に痛くはないよ?

 

 

「…姫。利き腕だが申し訳ない。徐々に色が奪われてる。切り落とすぞ」

 

【鴉天狗】が私の日輪刀【神血】を私の右腕を切り落とさんと構える。

 

「いいよ、……死ぬよりマシさね。優しくね」

 

「ごめん!!」

 

激痛は一瞬。切り離された右腕は色を失い意味を失う。

 

切り離された事により【色彩奪い】の侵略は収まる。

 

 

「………ありがとう。【鴉天狗】」

 

鬼の再生力を使い傷口をふさぐ。腕は復元出来ない。まるで元の形を忘れたかような錯覚に陥る。右上腕から先がない。元々あったかどうか認識すら揺らぐ。

 

欠損少女りんちゃん爆誕。可愛い…よね?(困惑)

 

「……痛いとこつくよ。あの鬼は」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「……………『鬼』が『人間好き』は無理がありません?」

 

白い女は嘲るような雰囲気もなくただただ疑問に思った風に聞いてくる。

 

「あ?」

 

「いや、私には理解できませんもの。所詮彼ら(人間)にとって私達()は捕食者に過ぎません。」

 

 

「……」

 

彼女は言葉は刃となり我が心を引き裂こうとする。

 

「それは絶対的摂理で『鬼喰らい』の私達は異端ですわ。食物連鎖ってご存じ?捕食者と被捕食者は共存できません。そこの処はどうお考えで?」

 

煩い。知るか。黙れ。

 

 

いきなり現れて弁舌垂れるな小娘。

 

『領域展開【血怪百鬼夜行】』

 

私の周りに血溜まりが展開する。それから【お雪】【鴉天狗】【犬神】【鵺】【玉藻の前】【火車】【土蜘蛛】をメインにまだ仮初めの命を与えていない血の形だけを形取るあやかし達を創り出す。

 

 

「………私は私のやり方で生きてくンだよ。小娘。」

 

抜刀する。おぞましいまでの【赤】の日輪刀・神血を構える。

 

「気付いているんでしょう?無駄だと。いずれ破綻すると。目をそらしているだけですわお姉様は。さきの涙柱のお嬢さんが人間の本心ですわ。」

 

「黙れ。」

 

「黙りませんわ。ふふ。そんな事してないで私と参りましょう。【鬼舞辻無惨】を殺して私たちで鬼による鬼の為の鬼の楽園を創り出すのです!!!」

 

「【鬼舞辻】は自身が戻る方法しか考えていませんもの。生み出した鬼の事など駒程度にしか考えていませんわ。」

 

「ですからお姉様。【見えざる月】たる我等と共に…」

 

「断る。」

 

「……はい?」

 

「真逆だよ。やっぱり。…私は人間の為に鬼を喰らい人間の為に鬼を斬る。」

 

「……私は畜生には堕ちない。」

 

「無様。下劣。理解不能の極みですわ。お姉様。いえ【血霞童子】……せっかく【新月の深紅】の座差し上げようと思いましたのに。」

 

 

【領域展開・色彩神話再現(カラーズミソロジー・リクリエイト)

 

奪ったであろうあらゆる【色彩】が彼女の周りに浮遊する。24の基本色からの様々な色彩。

 

幾百を超える仔細まで分岐する色彩はそれを再現する。

 

この時代にそれを表現するすべは持たない。

 

陳腐な言い方なれば巨大な翼を持つ蜥蜴。

 

 

「私、異国の物語好きでして。ふふ、こういったものが好きなのですよ?」

 

「…趣味が悪いんじゃなくて?」

 

 

「貴女の百鬼夜行など有象無象に過ぎませんことよ?」

 

 

「姫、あれ単純な破壊力なら…100体の鬼相当じゃないですかね」

【玉藻】は顔を顰めながらそう言った。うそん…まぁ玉藻の見立てなら差異は無いのだろうが。

 

 

異国の白い洋装を纏う少女は嘲笑する。強大な色彩の怪物は此方の動きは見て狙いをすましてくる。

 

血の呼吸・扒の型【増層鉄血】

自身に巡る血流の速度を速め爆発的に運動能力を増幅し加速する。

 

「姫っ!!」

 

「我らが狼狽えてどうする」

【火車】が気を引き締める。

 

「姫をお守りするのだっ!!我らは姫より与えられた命!姫のために死なねばならない!!」

【鴉天狗】がいう。

 

「せやね」

 

「そうだな、…仮にも主人だしな」

 

【鵺】と【犬神】が続く。

 

 

「…私は……あの人に会うまで死ねません。……その機会をくれた麟様に……報わなきゃ」

お雪もさらに続く。

続々と続く【百鬼夜行】

 

 

「滑稽ですわ。虫唾が走りますわ。貴女の家族ごっこ。やりなさい【色彩神話】」

 

色彩の怪物の顎は大きく開く。圧倒的死の予感。

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「無様。…私が見込んだお姉様は所詮この程度でしたのね。…あの【上弦の壱】が気にしているからと気にしてみれば」

 

「はっ、お生憎様。…………好きに鬼の楽園を作ればいい。まぁ鬼殺の彼らが許すとは思えないけど」

 

「…………今の貴女にすら勝てない鬼殺隊など眼中に御座いませんわ。」

 

「…くっ。とんだおこちゃまね。彼等の強さを知らないものね。……鬼の楽園なんざ【世界】が許さないと思うぜ?【純白】ちゃん?」

 

色彩を一部奪われて座り込む私を見下ろす純白の少女を見上げる。

 

「…そのまま返ってますよ。【血霞童子】。やっぱり破綻してますよ。貴女は。人間を心酔しながら鬼を唾棄する。貴女自身は【鬼】であるくせに。……ただただ【人間の世界】に居場所が欲しいだけの我が儘女なだけですか」

 

ピンポン大正解だよ。

 

「………ふふ。貴女の行く末オモシロそうですね。どう破綻し裏切られ壊れていくかは見ものですよ。だから殺さないであげます。」

 

性格の悪いこって。そんな嗜虐的な笑みを浮かべてまぁ。

 

「自分が誰かも分からない愚かな女の人生。私の覇道の傍ら暇つぶしに見て差し上げますわよ。お姉様。」

 

踵を返し消える白い女。

 

「麟様!!腕が!!」

 

お雪が駆けて近付いてくる。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

それからはただ無為の時間が過ぎる。 

 

【鬼舞辻無惨】の気配もなく【見えざる月】とやらの接触もない。

 

ただただ物思いに耽る事が多くなった。   

 

心配そうにお雪が側にはいてくれた。どうかしたかと【百鬼夜行】も構ってくる。

 

 

最初は【私は誰であるか】という疑問から始まった。

 

それは未だ澱のように私の下に積み重なる解決されない疑問。

 

私のこの気持ちは失った記憶に起因するものなのかどうか。

 

答えはまだ出ない。

 

 

 

「…………師匠。お久しぶりだな。」

 

突然の訪問。

 

すっかり老け込んだ現役を引退し【育手】となった鱗滝左近次が尋ねてきた。

 

「あらま。すっかりお爺ちゃんだね。左近次」

 

「…そちらは相変わらずお変わりは無いようで。」

 

いやまぁ老いてく弟子と変わらない自分というのは結構来るね。

 

「まぁ最近は【柱】業もサボりがちだけどね。今代の子達は有能な子が多いし。」

 

【血霞】邸の居間で世間話をする。お雪が出してくれたお茶を飲む。つめた。

 

 

「……………………そっちの子は?」

 

左近次の後ろに隠れている宍色の髪をした口に傷がある少年と花柄の着物を着た黒髪の少女がチラチラッと此方を見ている。

 

「儂が保護した『鬼』に襲われた生き残りだ。」

 

「ははん。なるほど。似たようなことしているのね。左近次。こんにちは名前は?」

 

「…錆兎」

 

「真菰だよ」

 

私の優しい声掛けにおずおずと答える2人。

 

鬼に殺された生き残りだというに。

 

「私は【血霞麟】まぁ訳ありで剣士してるけど」

 

 

「鬼だよ私は。怖くない?」

 

前髪をかき分け角と口を開け牙を見せる。

 

わざわざと思うだろうけれど左近次も思うところあって連れてきたのだろう。

 

「…………鬼は怖い。」

 

鬼は怖い。

それは当たり前だ。

 

大事な人を奪われたなら尚更。

 

「……でもお姉さんからは優しい感じがする」  

 

真菰ちゃんの言葉に目を丸くする。

 

「俺もそう思う……」

と錆兎君も同意する。

 

 

「子供ってやつは素直だなぁ」

 

やっぱり私は『人間』が大好きだ。 

 

 

やっぱり私は人間の為に生きたいのだ。

 

例えそれが報われないものだとしても。

 

 

 

時は大正の時代へとうつっていた。

 

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