鬼喰の血刃   作:九咲

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雨獄ノ弐【胡蝶の私は】

幸せの形とはなんだろう。私、胡蝶カナエはぼんやりと考える。

 

幸せは人によって形を変える。

 

強くなること?人を救えること?ううん違う。

 

心から笑える事だと思う。その笑顔の形こそが幸せの形だと思う。

 

私は笑えてるだろうか。継ぎ接ぎだらけの張りぼての笑顔こそが限界だと訴えている。

 

私は、復讐に徹することが出来るのか?意義を問う。

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

悲鳴嶼さんの元を離れ以来剣士となり蝶屋敷を建て私は柱になっていた。

 

しのぶも上級の剣士となり鬼狩りとして慣れたものであった。いつ死ぬかは分からない稼業ではあると理解はしている。

 

私は鬼の被害者の少女達の身元引受人紛いなこと始めていた。悲鳴嶼さんもかつて親のいない子供達を引き取り育てていたらしい。詳しい話は聞けていない。けれど鬼殺の道を選んだ理由は彼の性格を考えれば想像はかたくない。そんな彼の真似事を始めたのだろうか。私自身しのぶと二人では寂しかったのかもしれない。

 

そんな中、しのぶが黒髪の少年を拾ってきた。闇のような綺麗な黒髪に瞳。長身痩躯。年の頃はしのぶとそう変わらない。

 

柔和で穏やかな少年ではあったけれどうちに秘める憎悪は分かった。

 

けどしのぶへの恋心も、同時に分かった。

 

やたらとしのぶに構うし積極的だった。しのぶも思春期で悪態もつくが満更ではなさそうだった。微笑ましく私は嬉しかった。しのぶはいつも張り詰めた顔をしていたから。

 

 

両親を失い悲鳴嶼さんのところで最終選別へ力を付け鬼殺の剣士となり張り詰めた生活をしていた。

 

私は皆に囲まれあの頃とは違う幸せを感じていた。

 

ほんとに両親は復讐なんて望んでいるのだろうか?

 

私は彼女らの幸せを願う。誰もが手を取り鬼になった彼等も幸せを掴める世界を切に願う。

 

 

しのぶも刀をとることなく彼と仲睦まじく生活をする世界を夢想する。

 

 

▽▽

 

しのぶの血のついた髪飾りを拾ったと蝶屋敷出身の剣士の子が蝶屋敷へと戻ってきていた。

 

見間違えるわけがない。

 

私としのぶそして蝶屋敷の女の子は大小違えど蝶の髪飾りを付けている。繋がりのように。しのぶのは私のと同じ色をしている。

 

「カナエお姉ちゃん……?」

 

「……しのぶは任務、いつもと変わらないって……」

 

「カナエさん」

 

顔は蒼白。手が震える。

 

「カナエさん、しのぶお姉ちゃんの部屋に手紙が」

 

「え?」 

 

手紙を受け取り広げ読み上げる。

 

 

【仇を討ってくる】

 

 

ただ一言そう書いてあるだけ。

 

その後、彼女の鎹烏が戻ってきた。より強く彼女の死亡が確定としてしまった。

 

最愛の妹を失う。恋人になっていた宵鷺逢魔はまた最愛を失う。

 

 

▽▽▽▽▽▽▽

 

 

憎悪とは、こんなにも人から笑顔を奪うものではあろうか。

 

しのぶを失い憎悪の塵が自分の中で沈殿しているのは自覚していた。

 

それ以上に憎悪している人がいるから多少は冷静になれていたと思う。

 

むしろ彼の心境のが心配だ。蝶屋敷の皆のお姉ちゃんの私がしっかりしなきゃ。うん、そうだ。

 

 

▽▽▽▽

 

「おう、まくん…………?」

 

彼の姿も消える。多分しのぶの死を認められないのだろう。もしくは仇を探しに。そうだ。彼に蝶屋敷に留まる理由はない。私に彼は救えないし止めれない。

 

「……ん…」

 

幼いカナヲが裾を引っ張ってくる。感情表現に乏しいこの子にすら心配をかけるくらい私は憔悴しているのだろうか。ううんいけない。ここには私一人じゃないもの。しっかりしなきゃ。しっかりしなきゃ。

 

私がしっかりしなきゃ。呪いのように枷のような重石が私に乗り掛かる。半ば自己暗示のように呟く。

 

 

私は、…………笑えているだろうか。そんな重苦しい日々の中しのぶに似た人物を見たという情報を掴む。

 

藁にも縋るような思いだった。

 

場所は帝都【東京都】日本の栄える中心地だった。

 

▽▽

【見えざる月】と【十二鬼月】どちらも【人間】、【鬼殺隊】からしたら共に脅威に過ぎない。

 

【炎柱】の殉死。柱相当の剣士の離反。情報の漏洩は鬼殺隊の根幹から脅かす事態に陥っていることになる。

 

産屋敷邸の居場所や刀鍛冶の里の居場所の変更を余儀なく実施しなければならない。

 

前回の元【柱】の鬼二体の急襲。それは恐らく白銀川鞠衣の手引きによるもの。

 

白銀川鞠衣の存在が【見えざる月】の情報源になっていると思われる。

 

体制の立て直しが急務とされる。

 

 

緊急柱合会議の場には殉死した【炎柱】以外全員召還されていた。

 

【岩柱】筆頭に【水】【蛇】【風】【音】【花】【霞】【恋】そして【血】が一堂に会する。

 

「……白銀川鞠衣。先代の奥方白銀川灰羅の孫か。その白銀川灰羅ってのも鬼ならそいつも鬼かぁ。恥だな。」

 

「そういえば私たち誰も面識があったことある?」

 

「故人の名をだすのもあれだが煉獄の継子であったことがあったな」

 

「柱以外の剣士の死亡率は高いから生き残りそれなりに強いならば印象に残るはずだし……」

 

「白銀川鞠衣の最終選別、当時は話題になった。期待の新人。しかもお館様の血縁とな。知ってのとおりお館様の家系お身体が弱い。直接ではないが血縁に強い剣士が育ったとお喜びになられていた」

 

がしかしと悲鳴嶼と句を繋ぐ。

 

 

「此程の剣士が目立った行動のないまま【甲】までいった。……お館様は怪我した剣士は必ず見舞いをなさる。ならば一度も大きな負傷もなし。…………なれば」

 

「間者ならば鬼を倒す必要もねぇが下級の剣士じゃ入らねぇ情報もある。【甲】という階級は絶妙だな」

 

「……【柱】の手が届かぬ所に配置される」

 

「……警戒区域の境か」

 

「うむ、それ故我ら【柱】より自由が利く。」

 

「迂闊ちゃ、迂闊だな派手にな」

 

「……」

 

「どうした、胡蝶先程から上の空だが」

 

伊黒の言葉に我に返る胡蝶カナエ。

 

「……なんでもないよ、つづけて」

 

「何でも無くはないよ、顔色良くないよカナエさん」

 

心配そうに顔に覗く甘露寺蜜璃。

 

「………………、もしかして既に聞いてる?知ってるのかなカナエさん」

 

今まで沈黙していた【血柱】血霞麟が口を開く。

 

▽▽

 

「なにがだ、貴様に発言権など無いのだが」

 

「辛辣。…………知ってるのかなカナエさん」

 

「……え、えっと何がかな」

 

心臓がばくばくする。冷や汗が止まらない。むしろ麟さんが知ってるのかな……?

 

「……」

 

「私の配下が【上弦の陸】と遭遇している」

 

「……なに」

 

「なぜそんな重要なこと黙ってやがったぁ!!?」

 

「……いや、言うつもりだったよ知ったの昨日だし。白銀川鞠衣の件も重要だし……まぁカナエさんにとってこっちのが重要かもね」

 

一触即発。煉獄くんが亡くなってから雰囲気は剣呑だ。麟さんに対しての。

 

今は関係ない。

 

「……私とその……【上弦の陸】がなに関係有るのかな」

 

むしろ【陸】より【弐】だ。

 

「……あちゃー……そこまでは知らないか。言うよ?言わなきゃならないかな。【上弦の陸】の外見は蝶柄の羽織を着た小柄な笑わない女の子」

 

「……複数の蝶を含む虫を操る【血鬼術】使い。」

 

「……蝶柄……の羽織。」

 

自身の羽織に視線を落とす。心臓がより脈動する。きゅっと締まる。視線は麟さんへ向けれない。

 

 

「……名前は【胡蝶しのぶ】そう名乗っていたらしい」

 

 

最愛の、妹の名前。同姓同名なんて有り得ない。……外見の特徴も合致する同姓同名なんて確率的にあり得ない。

 

「……胡蝶……しのぶだと」

 

私に視線が集まる。

 

 

「……はん、鬼に堕ちた隊士たぁ……滅殺するのがせめてもの情けだろ」

 

不死川くんの言葉に頭が沸騰しそうになる。

 

「さねみちゃん、言葉選べよ?そんなこと分からない君じゃないはずだけど」

 

麟さんは不死川くんの間合いに入っていた。反射的に抜こうとした不死川くんの腕を抑える。

 

「ちがすみぃ……!!」

 

一触即発の殺意と殺意。麟さんも珍しく怒ってる。

 

バァン!!

 

爆音がその場を征する。爆音のもとは悲鳴嶼さん。悲鳴嶼さんが両手を叩いて場を諫める。

 

「不死川。流石に失言だ。血霞殿も大人気ない。」

 

「ちぃ」

 

「ごめんねぇ。二人とも落ち着いて」

 

不死川くんの背後に立つ兄妹と思わしき二人の殺意が場をさらに冷やされる。

 

「てめぇら誰だ……!?」

 

「…………うちの子だよ。全く勝手に出てこない二人とも」

 

「だってこの人達、麟さんにひどいだもん」

 

「……麟さんより弱ぇくせになぁ」

 

「……はぁ」

 

ピリピリとした雰囲気はより険悪なものになる。

 

「やめろ。内輪揉めしている場合か。血霞殿への八つ当たりは控えろ。特に不死川。伊黒。お館様の御意思に反することになる」

 

二人はだまり肯定も否定もしない。蜜璃さんはこの剣呑な雰囲気におろおろし時透くんや宇髄くんは我関せず。

 

そして錆兎くんは黙ってはいるけど元々麟さんに言われていたのか我慢している。

 

周囲の剣呑な雰囲気が帰ってざわついていた冷静さを取り戻す。

 

「……カナエ」

 

「は、はい」

 

「私も似たような話を聞いている。私も彼女、しのぶを探していたからな」

 

悲鳴嶼さんはそう言う。私たち胡蝶姉妹は彼に救われ今に至る。多恩ある彼の言葉に救われる。私たち(・・・)は彼に報いなければならないの。

どこにいるの……?しのぶ……?

 

 

「…………みな心して聞け。お館様より【東京都】での大規模任務を承った。血霞殿を含む柱二名を先遣隊として派遣になる。柱二名は連れて行く剣士を選出せよとのことだ」

 

 

「私を……含む?」

 

「……東京都は広大だ。血霞殿の【領域展開】という力が必須になるだろうとお館様は考えておられる。血霞殿は一人で軍隊であると」

 

「もう1名、立候補はいるか」

 

「私いきます。悲鳴嶼さんいいですよね」

 

私は即座に返答をする。

 

「ああ……だがゆめゆめ立場を忘れるなよカナエ……」

 

 

「はい」

 

しのぶ……待っててね。

 

 

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