雨が止まぬ帝都。前代未聞の異常気象が見舞われた帝都。
あと数週間前やまぬなら水害に至るが天の気紛れとして祈るしかない現状。幸い勢いは現状弱く災害には見舞われておらず市民は不安な日々を過ごしていた。
それとこの止まぬ雨と共に不可解な事件をも市民をさらに不安を煽っていた。
人ならざる人。人でないもの。それがこの雨の中跋扈する。死傷者は零ではない。故に夜に外出する者はおらず人ならざるそれは日中行動しないと知らない市民は日中も行動はせず最低限必要なことのみになっていた。
最も厚い雨雲は日光をも遮っていた。
故に【幽都】と化していた東京都に鬼殺隊は足を踏み入れていた。
大規模任務先遣隊として血霞麟、胡蝶カナエ、竈門炭治郎が派遣された。
村ではなく町。町ではなく都。人の数は比べ物にはならず鬼は姿を隠すのも難しく鬼自身も自身を生き長らえるため避けているはずだった。
こういった状況は鬼からしたら美味しかった。少なからず漏れ出してくる人間達はいるのだから。
「……」
血の呼吸・壱ノ型【血纏斬り】
朱線が鬼の頸を薙ぐ。直ぐさま瓦解。鬼にしては塵芥程度の魑魅魍魎。
「麟さん、気をつけて」
「わかってるよカナエさん」
華のような女性は血のような女性に声をかける。
「…………大丈夫君。癸の剣士を派遣って鬼殺隊も人手不足だぁね」
「俺も癸なんですけど麟さん」
「炭治郎は階級上がってるでしょ。庚でしょ今」
「え?」階級を示せ、はい復唱と言われ復唱すると手の平に庚の文字が浮き上がる。
「印知らないの?炭治郎くん」
「知りませんでした……」
「…………まぁいいや。ここからは【柱】引率の部隊構成されるから。」
癸の少年剣士に説明する。柱二名による部隊構成の大規模任務。全員の柱は派遣出来ないため交代の派遣になる。一回目の先遣隊は【血】【花】の構成。
胡蝶カナエと血霞麟は本人らたっての交代なしの派遣。鬼の血霞麟はある程度強靱な体力。そして胡蝶カナエは妹の探索のための嘆願だった。
「……カナヲ」
「はい、師範」
「お姉ちゃんでしょ。……この一帯に鬼いるか見てきてくれる?」
「はい」
カナヲは即座に行動し駆ける。
「俺も行ってきます!!」
「気をつけてね、十分ね」
カナヲの後に駆ける炭治郎を見送る。
▽▽▽▽▽▽
雨が止まない帝都。これは非公式の組織である鬼殺隊がとあるお偉い様から依頼された任務であった。
非公式、といってもこの世界少なからずそういった縁というものは存在する。産屋敷家も一枚岩では一組織を何代も存続させるには無理なものである。産屋敷家歴代は先見の明に長け彼等のその見通しに頼る人はやはり少なからずいる。綺麗なだけでは生きてはいけないが線引きはしてらっしゃるだろう。
今回の依頼主は縁は深い方で現状を憂れてらっしゃると。人ならざる者の滅殺をお望みという事らしい。
「頼みますよ麟さん」
現お館様。産屋敷耀哉は迷いのない言葉を私に投げかけた。杏寿郎の死で混乱があり針の筵のわたしにだ。変わらず生存の許可は続く。
「皆混乱してるだけだよ、それだけ彼の存在は大きかった」
「自身の疎まれさも理解してるよ。多分皆私が怖いんだ。人の心は揺らぐもの。私がいつ牙を剥くか畏れてるのよ」
「悲しいね貴女は。貴女は信用されることを諦めてるのかい?」
「…………かもしれないね。鬼殺隊になって百年。そこは変わらなかったから。」
自嘲気味に笑う。
「それでも私は人間が好きだから。分かってくれてる子もいる。今はそれで十分かな」
「…杏寿郎のため折れるわけにはいかないしね」
認めてくれたあの子のためにもね。
「そうか、なら何も言わないよ」
▽▽▽▽▽▽
雨の帝都を駆ける。飢えた餓鬼が這いずり出てくる。いる人口に比例して、鬼もまた増える。
血肉に飢えた魑魅魍魎の鬼。劣悪な質の鬼達は燻っている。
【十二鬼月】に加わらんと企む鬼がいた。
喰らった人間は百から先は数えるのは辞めた。
「おい、今日のノルマはどうした!!?」
「す、すいません人間達は建物から出ず……!」
「なら襲っていぶり出せよ!!」
「…は、はい。しかし……これ以上は……」
涙の呼吸・伍ノ型【狂い泣き涙雨】
鳥頭の鬼は首を残し吹き飛ぶ。
「て、敵襲!!日輪刀!!?鬼狩りか!!?」
縄張りの主たる獅子のような鬼の周りの鬼の群れは騒ぎ立てる。
「……まるで烏合の衆ね。まぁ群れない鬼がまぁこんなにも集まって情けないわね」
黒髪ストレートの長身の西洋の所謂スーツと呼ばれた洋装に雨の柄の羽織を羽織ったに涙の印を頬に付けた鋭い目つきの女は水晶のような刀を構える。
「……鬼……狩り……!!」
「違うわ。……私は鬼よ。けしてお前らみたいな有象無象とは流石に違うけど」
血鬼術【雨獄ノ槍楔】
「………………!!?」
叩きつけるような雨が鬼達に降り注ぐ。肉塊に成り果てる。再生能力も劣悪で楔になった雨の槍に地面に縫われた鬼達。
「有象無象共はこの様。……お前はただのいばり散らすだけの縄張りの王なのかしら。上弦になるため下弦にはならなかった鬼。鬼舞辻無惨に見逃されてるみたいだけど」
「てめぇ…………」
獅子のような人型の鬼はぐるると威嚇する。
「名は?」
「あ?なんでてめぇごとき名乗らなきゃならん!!」
血鬼呪【灰廻・崩染華】
灰色を纏う手刀が獅子のような鬼の心臓を貫く。灰色の鬼から与えられた権能を行使する。呪いを塗りつぶす。
「…………名は大事よ?お前らが鬼舞辻の名を名乗れないように」
手刀を引き抜くと【呪い】の核となる肉種が瑠偉の手の中でうごめていた。
「……平伏しろ。獅子。どうせ鬼舞辻には忠誠心なんかないでしょう?ねぇ。」
「私の名は【新月の無色】鎖天川瑠偉。名前を答えなさい。」
「【見えざる月】……だと、」
「ええ、答えろ。生きるか死ぬか。選ばせてあげるわ」
「……お、俺は……
「良いわね。【無色】の力を試すには良い面構えだわ」
「見てなさい。真白。お前の思い通りなんてやらないわ。」
殺意を怒りを。
「私の怒りは私のだ。」
雨はより一層強くなる。白い鬼がほくそ笑むのもしらず。
▽▽▽▽▽
雨が降る【幽都】町並みを影の蝶が飛んでいく。
気配もないそれに誰も気付かない。路地裏に少年少女に蝶が形作る。
「……これ、【領域展開】だね」
「忌々しい【見えざる月】の血鬼術でしたっけ」
「うん、まぁ似たような事は出来るけど。……雨の【血鬼術】か」
「………………」
「どうした、しのぶさん」
「…………鬼殺隊来てますよ。」
「流石に此程異変…………来るよな。カナエさん来なければ良いけど」
「カナエ……?知り合いですか?」
「……!」
愕然とする。個々まで瓦解していることは彼女と同化している己でも把握してなかった。
鬼化した彼女は俺の肉体に依存しなければ存在出来ないほど歪だ。
「…………知り合いだよ。鬼殺隊時代のね。だから極力戦いたくはない」
「……そう、ですか。けど私達の邪魔するなら殺さないと」
「…………とりあえず俺らの目的はこの雨の血鬼術の担い手。鎖天川瑠偉という鬼だ。それ以外は些事だ」
「はい」
最愛の姉を忘れてしまっている。ならば俺は忘れない。
全て食い殺す。守るため。
鬼殺隊先遣隊。【新月の無色】。【上弦の陸】。
雨の帝都にて三つ巴の戦いが始まる。
来年も細々と更新したいなと思いますのでよろしくお願いします