弐の壱【幸せが壊れた時の血の匂い・壱】
「………錆兎」
「どうした真菰」
時は大正。
錆兎は幼いときから一緒にいた少女の言葉に振り返る。
「…ううん、なんでもないよ」
「変な奴だな」
2人は隊服をきて羽織をしていた。花柄の羽織を着ている少女は薄く笑う。
「柱合会議でしょう錆兎。ついてってあげようか?」
「いらん。……甘露寺さんに会いたいだけだろう?」
「蜜璃ちゃんに会いたいのもあるけど……麟さんに宜しくね。」
「ああ、珍しく出るみたいだからな。……だから夜分にやるんだろう。多分……あの件だと思う。」
真菰の言葉に首肯する。
「あらあら、錆兎くんに真菰ちゃんお久しぶりだね~」
産屋敷邸までの道中話しかけられる。
「胡蝶さん」
「あ、カナエさんだ」
「はい、カナエさんだよー」
蝶の髪飾りをしたのほほんとした女性が話しかけてくる。
隊服に羽織を着ている。
【花柱】胡蝶カナエだった。朗らかな雰囲気を持つ彼女は蝶屋敷と呼ばれる彼女の邸宅で鬼殺隊の医療機関を担う役割を持つ女傑であった。所謂鬼による孤児。主に女児や少女を引き取っている聖人でもあった。
彼女が『妹』をつれず行動しているのは違和感があり慣れないものであった。
「真菰ちゃんも柱合会議出るの?」
「出ないよー。錆兎の見送り。」
「あらあら仲良しなのね。ふふふ。羨ましいわぁ」
「カナヲちゃんは元気?」
「元気よ~。そろそろ最終選別に出るって頑張ってるわ。」
「そろそろそんな時期ですか」
「…………錆兎?義勇のこと思い出す?」
「少し…な。」
「さてさて、柱合会議に遅れちゃうわ!」
行きましょうと言ってくるカナエに頷く。
「じゃ私はここで。お館様んちにいくのは特別な行き方があるだろうし。【水柱】は錆兎だし。」
「お前もなる実力あるだろうに。」
「上に立つのは錆兎のが向いてるよ。私には責任とか面倒…………向いてないし」
「…お前らしいわ。」
苦笑し先に進む胡蝶カナエについて行く。
「………………幸せが壊れた時はいつだって血の匂いがするけど…あの人の匂いは好きだし錆兎頼むね。」
見送り踵を返し帰路につく真菰。
狐面をつけて歩く。
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産屋敷邸。柱合会議につき各【柱】が集まっていた。
【炎柱】煉獄杏寿郎は炎のような髪を揺らして各柱の到着を待つ。
最初に付いたのは彼だ。
「よもや。よもやだ。まさか日が落ちるまえについてしまうとは!!」
「遅刻するより良いだろうが。煉獄さん」
「時透少年久しいな!!息災のようで何よりだ!!」
「あっつくるしいようで何より」
若干嫌そうに席に着くのは【霞柱】時透有一郎。
「ははっ!!暗いぞ!!」
軽く舌打ちする有一郎を特に気にする様子なく笑う杏寿郎。
「3番目~。相変わらず煉獄さんと時透くんは早いですね!!」
ほわほわした雰囲気をした桜色の毛先が緑がかった三つ編みをした胸元が見えるよう隊服を着崩した女性【恋柱】甘露寺蜜璃も入ってきた。
「生真面目な男だしな。時透は口が悪いが」
あとに続くは蛇を連れた男。【蛇柱】伊黒小芭内。
「派手さが足りないな派手さが!」
【音柱】宇髄天元は騒ぎながら入ってくる。
「皆息災で何より誰も欠ける事なく集まれたこと嬉しく思う」
涙を流しながら読経する巨漢の坊さん風の男。【岩柱】悲鳴嶼 行冥。
「あらあら皆さんお久しぶりです!」
錆兎の前を進み部屋に入る胡蝶カナエは朗らかな挨拶をする。
「……相変わらず濃いメンツだなぁ」
錆兎も続き会釈し席に着く。
「錆兎、久しいな!!真菰は元気か!!」
「元気だよ宇髄。お前は相変わらず騒がしいな。」
早速絡んでくる天元に軽く嘆息する。
「錆兎くーん。また真菰ちゃんに美味しいもの食べに行きましょうって伝えといてー」
ぶんぶんと過剰な手振りをしながら言ってくる蜜璃に分かったと返事する。
「……あと不死川か?」
「…【血柱】殿が来るからなぁ……もしかしたら欠席やもしれぬ。」
「あれはあれで根は真面目な奴だ。サボるって発想はねぇだろ。」
煉獄の言葉にそう返答する悲鳴嶼と天元。
「だから構うなってつってんだろ!!血女ぁ!!」
「そんなこと言うなよさねみちゃん~」
「さねみちゃん言うな!!」
怒号。あぁ不死川に構うのは彼女くらいだ。
「彼女は不死川の何を気に入ってるのだろうか。よもや恋慕か!!?恋慕なのか!!?」
「まぁ!!キュンキュンします!!ねぇカナエさん!!」
カナエの手を握りながらキュンキュンする蜜璃。
「…………まぁ不死川が単純に鬼嫌いだからだろうけどなぁ」錆兎は小声で呟く。
「てめぇら!!勝手に盛り上がってんじゃねぇ!!」
「やっほー、お集まり頂き皆ありがとうね。」
赤い髪を横に長く縛り馬の尻尾のように垂らし隊服に赤い羽織。背中には【喰】の文字を背負う年齢不詳の女性。夜の【柱合会議】には決まって参加する謎の柱。
「さねみちゃん~私のラブコール答えてよー」
「殺すぞ。血女。」
「わーい辛辣ぅ」
片腕の左だけで手を上げやれやれとする。
隻腕。それを不便としている様子はない。錆兎は前々から疑問に思っていた。
何故再生しないのか。
「……麟さん。良いかな。」
「いいよ。」
柔和な声の主に皆姿勢を正す。
「皆夜分にありがとう。皆元気そうで嬉しいよ。」
産屋敷耀哉とその妻・あまねが付き添い部屋に入ってくる。
「……それで早速で悪いけど麟さん。」
「…………貴女がとある子を鬼にしたって本当かな?場合によっては多恩ある貴女を処罰しなければならない」
その言葉の理解を即座に出来た【柱】はこの場にはいない。
先程のおふざけしていた彼女の顔に表情はない。
場には緊張が走る。困惑の色で染まる。