榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

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第30話から第32話

第30話

 

 東京都港区高輪に有るテレビ局本社。

 

 例の企画書と契約書の件で打ち合わせのアポを取り、現在は榎本さんと待ち合わせ中。

 京急品川駅を降りるとJR品川駅と改札が隣接していて、その構内に有るユニオンの前で待ち合わせ。

 今日の私は仕事の打ち合わせと言う事も有りビシネススーツを着込んでいる。黒のタイトなスカートにジャケットをチョイス。

 首に巻いたスカーフがアクセントよ。コートはバーバリーの新作にした。

 確認の為、左右を見ても可笑しくはないわ。暫く待っていると京急の改札を見慣れた筋肉の塊が?

 

 あれ?あれれ?

 

 見慣れてない法衣を着込んだ榎本さんと、小柄ながら着物を着たご老人が近付いて……あの着物の柄は江戸小紋染めかしら?

 慣れた感じで着物を着こなした眼光鋭いご老人だわ。誰かしら?

 

「こんにちは、桜岡さん。此方は僕がお世話になってる弁護士の松尾先生だよ。先生とは子供の頃からの付き合いだから、安心して信用して欲しい」

 

 いきなり弁護士のお爺様を連れてくるなんて!聞いてませんわよ。

 

「あっ、えっと……初めまして、桜岡霞と申します」

 

 取り敢えず、お辞儀をする。榎本さんの子供の頃からの知り合いって?家族的な付き合いが有るって事なのかしら?

 お爺様は失礼に感じない程度の視線で私を見ると、突然榎本さんの脇腹に肘鉄を喰らわせた!

 流石の筋肉バカな榎本さんも顔をしかめたわ。でも、あれで顔をしかめるだけなの?ガスっとか、結構良い音がしたわよ。

 

「なんだ正明君。こんな綺麗なお嬢さんを紹介するとは、コレか?

都会に出てから体ばかり鍛えて筋肉ばかり付いたが、ちゃんと彼女を捕まえたのか」

 

 カッカッカ、と高笑いをするお爺様。コレ?彼女?私って榎本さんの中では、そういう位置付けなの?

 

「いえ、お爺様。私達はそんな関係では……」

 

「爺さん、彼女が困ってるだろ。ごめんね、桜岡さん。テレビ局との交渉だけど難航しそうだからね。

本職の弁護士を呼んだんだ。

あと企画書の廃墟だけど色々調べたら、かなりヤバいんだ。だから僕も僧侶として、いち霊能力者として助言をするよ」

 

 私と彼のやり取りを楽しそうに見ているお爺様。周りの通行人も私達を注目し始めたわ。

 

「えっと、テレビ局にはタクシーで行きます。此方ですから……」

 

 品川駅のバスロータリーの一角に有るタクシー乗り場に案内する。私も「お茶の間の霊能力者」として有名だし、彼は法衣を纏っている。

 ムキムキの短髪筋肉和尚様状態だわ。しかも、ただ者でない感じのお爺様も居る。目立つ事は確実だわ。

 助手席に私が乗り込み、後部座席に彼らを押し込む。運転手さんに行き先を告げると、タクシーはゆっくりと走り出した。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 関東近郊の八王子市の山中に有る廃墟。

 

 地元では有名だ。日本中の経済が麻痺したバブル末期に完成し、バブル崩壊と共に破綻し廃墟となったホテル。

 これを管理する会社が倒産し、競売にかけられた物件だ。しかも立地も悪く近くに観光スポットも無い。

 序でに温泉も出ない。これでは観光客も寄り付かないだろう。

 このホテルの売りは何だったんだろうか?

 競売後も買い手が付かず、管理会社も交通の便の悪いこのホテルを半ば放置している。

 買い手もままならない建物に金を掛けて警備はしない。入口を閉鎖した程度で、絶賛放置中……だから、この建物及び周辺での事故・事件は多い。

 先ずは何時もの様にパソコンで検索する。

 

 キーワードは「八王子 山中 廃墟 ホテル」を入力。

 

 これだけで出るわ出るわ。ヒット件数は3万をこえる……この中で代表的な物を幾つかピックアップする。

 真偽は別としても、ホテルで自殺が2件。これは営業中と廃墟化してから1件づつだ。

 近くで遭難・行方不明者が3件。誘拐殺人の現場の山荘や、死体遺棄の場所も近い。

 

 んー、曰く付きだけなら曰く付き捲りだ……次はグーグルマップを開き、周辺の神社仏閣や史蹟・古戦場の有無を調べる。

 近くには神社のマークが有るが、名前は分からないな。

 こんな山中の神社だし、実際に行かないと無理かもしれない。神主さんも常駐してるかも不明だ。

 関係は無さそうだが、面白いのは運行を中止したロープウェイの廃墟が有る。

 これだけでも横須賀のマンションよりも調べる事は多いな……

 

 次は廃墟としての検索だ。

 

 キーワードは「八王子 廃墟 ホテル 探検 画像」を入力。

 

 廃墟探訪や廃墟探検、または廃墟マニアのブログに写真付きで探検記録が載っている。

 何件かのサイトには、かなり詳細に探検した様子が書かれていた。エントランスから客室、大広間に厨房。

 それに大浴場に機械室や屋上までを探索している。

 パンフレットや顧客名簿、それに備品類まで残されていた。

 夜逃げに近い状況だな……流石に立地の関係で浮浪者等は居ないし、悪戯に来る連中も少ないのだろう。

 さほど中は荒らされていない。

 もっとも公開は5年も前だから、現在は不明だ。

 気になるのは2006年の冬を最後に、何処のサイトにも写真や探検記録が無いんだ。

 この手の廃墟は年数が余り経ってなくて、マニアの間では評価が低い。

 しかし掲載された写真を見る限りでは、落書きや破壊活動は少なく保存状態は良好そうだ。

 中には客室の家具や厨房の機器類も残されたままだし、機械室等も手付かずで残っている。こういう物件を好んで探検する連中も居るのに……

 これは判断が難しい。

 

 訳有り曰く付きで廃墟マニアが寄り付かないのか、単純に廃墟として魅力が足りないのか。

 

 最後は本命の心霊スポットとしての検索だ。

 

 キーワードは「八王子 ホテル名 心霊 スポット」を入力。

 

 此方もヒット件数は8000件をこえた……中でも古参の心霊スポットサイトに、興味深い記述が有った。

 

「深夜このホテルの客室から呻き声が聞こえる」「地下の機械室で自殺した男の霊がホテルを徘徊している」「ここの大広間で写真を撮ると必ず霊が写る」

「深夜2階の廊下を赤ん坊がハイハイしていた」「実はホテルの敷地内に有るお稲荷様がヤバい」

「ホテルの物を持ち帰ると携帯に電話が有る。曰わく持ち帰った物を返してくれ、と」

 

 最後のは良く有る作り話だな。携帯電話が使えなくなったり、妙なノイズや画面の乱れは有る。

 しかし通話は聞いた事が無い。それを除いても多彩な心霊現象だ!

 

 男と赤ん坊の霊。

 

 呻き声は上記のどちらかと関係が有りそうだ。大広間の心霊写真は、それ以外の霊も引き寄せられているのか?

 

 最後のお稲荷は危険だ。

 

 伏見稲荷大社を総本社とする稲荷神を祀るお稲荷様は日本古来の神様だ。赤い鳥居に白い狐のお稲荷様は、誰でも一度は見た事が有る筈だ。

 全国に6万を越えるお稲荷様は、企業やホテルが屋敷神として祀る事が多い。これを倒産後に放置していたら大変だ!

 稲荷神は真言密教ではインドの女神ダーキニーと習合させて広めた。

 つまり羅刹や刹那の如く災いの神・祟り神の一面も持つ。しかも勧請の方法が簡易な申請書だけで出来るんだ。

 逆に言えば強力な稲荷神が住まう事は殆ど無い。厄介なのは信仰あつく祀られると神格が上がる。

 その後で無碍に扱えば、途端に祟り神だ!

 これを真っ向勝負は負けるだけだろう。仮に神格の低い動物霊とか他の良くない霊が社に入り込んだとしても強力だ。

 出来れば現地で先に調べたいが時間が無い。

 明日の午後に桜岡さんと待ち合わせをして、テレビ局で打ち合わせだ。

 

 嫌な予感がする……霊感か第六感か知らないが、この件に関わるのが凄く嫌な予感がするんだ。

 

 何故だろう?仕事的な意味でなくプライベート的な意味で、嫌な予感がするんだ。

 しかし乗り掛かった船だし、桜岡さんを放っておく訳にもいかないからな。頑張るしかないか……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 初めてくるテレビ局!芸能人に会えるかと見回すが、特に知った顔は居ない……

 

「ちょっと、榎本さん。落ち着いて下さいな」そう窘(たしな)められてしまった……

 

 まぁ隣にお茶の間の霊能力者、桜岡霞が居るけど見慣れてしまったし。

 アポを取っていた為か、桜岡さんも認知度が高いのか受付で彼女が記帳しただけで中に入れた。

 受付から連絡を受けた私服姿の若者が案内をしてくれて、第8会議室と書かれた部屋に案内された。

 6畳程度の広さで、小会議室といった所か?8人掛けの会議テーブルが用意されていた。

 暫く待っていると、先程の若者がペットボトルのお茶を配りに来て、また待たされる……

 

「なぁ、桜岡さん。何時も待たされるのかい?」

 

 パイプ椅子に座り、お茶を飲むのも飽きたので彼女に話題を振ってみた。

 

「すみません。わざわざ同行して貰いましたのに……普段は此処まで待たされた事は無いのですが」

 

 既に15分以上は待たされているが、此方も5分前には来ているからな。

 

「正明君。落ち着きが無いぞ。慌てる乞食は貰いが少ない。果報は寝て待て、だ。なに直ぐに来るだろうよ」

 

 いや爺さん、ペットボトルをベコベコ鳴らせて言う台詞じゃないぜ。結構苛ついてるだろ?

 

「爺さんもな。その原型を留めてないペットボトルを良く見ろよ」

 

 意外に短気なんだよな。本人は認めないが、一般的な基準では短気だよ。

 

「ん、ああ。儂を待たせた奴を思ってな。ほら、こうじゃ」

 

 勢い良くペットボトルを潰す。

 

「榎本さんの筋肉なら、もっと潰れないかしら?」

 

 桜岡さんも悪乗りしてきたか?仕方無く渾身の力を込めてペットボトルをねじ切る……結構簡単に潰れたな。

 哀れペットボトルよ、昇天しておくれ……こんな漫才を繰り返していると、漸く担当ディレクターが現れた。

 かれこれ20分程待たされた計算だ!

 

「霞ちゃーん、お待たせー。前の打ち合わせ延びちゃってさー。あら、此方の2人は?」

 

 多分40代前半だろうか?細身で170センチ程度の身長。赤いポロシャツに白のチノパン。

 首から社員証をぶら下げた七三分けの男だ。微妙に茶髪だし、全体的に軽い感じがする。

 語尾を伸ばす変な話し方のディレクターが、此方を値踏みする様に見詰める。パイプ椅子から立ち上がり、見下ろす様にして自己紹介をする。

 

「僕は桜岡さんの知人で、真言宗の僧侶をしています。此方は松尾先生です。個人で法律事務所をやっています」

 

 ディレクターも流石に驚いた様だ。

 

「ほぅ!霞ちゃーん、凄いね。格闘家みたいな坊さんに、ヤクザの親分みたいな弁護士さんですか?

で、彼らが同行した目的はなんだい?」

 

 中々大した物だ。威嚇を含めた自己紹介をかわし、的確な表現で僕らを表す。

 これがテレビ局のディレクターか……

 

「えっ、と……その、企画書の内容と契約書の件で」

 

 途中で彼女の言葉を遮る。

 

「ああ、桜岡さんから相談を受けまして。八王子市山中の廃墟を撮影するとか?あの廃墟を何故、舞台に選んだか聞かせて頂きたい」

 

 チンピラにガンをくれる様にディレクターの目を見詰めながら質問する。彼は、テレビ局は何処まで知ってるのだろうか?

 

 ディレクターは「ああ、自己紹介が遅れまして。西川と申します。お坊様は、あの廃墟をご存知で?」少しだけ動揺したようだ……でも落ち着いているな。

 

「ええ、ある程度は。なので何故、あの廃墟を撮影したいのかお聞きしたい」

 

 重ねて質問する。

 

「えー、我々は毎年の様に心霊スポットを紹介する番組をしてまして……その中で、視聴者からのリクエストみたいな葉書や手紙が来るんですよ。

中でも、あの廃墟が凄いとか怖いとかが多くて。ならば、今売り出し中のアイドルとお茶の間の梓巫女桜岡霞をコラボすれば売れるんじゃね?

と思ったんですよ」

 

 なんと、原因は視聴者からのリクエスト?そんな偶然が有り得るのか……

 

 

第31話

 

 桜岡さんにテレビ局から仕事のオファーが来た。ネットで調べただけでも、ヤバい感じだ。

 僕の霊感も第六感も危険だと訴えている。そもそも仕事の契約自体が不利な内容だ……

 これを何とかする為に、松尾の爺さん迄引っ張り出したのだが。ディレクターは視聴者からの葉書か手紙で安易に決めたと言う。

 これは本当の話なのか?兎に角、情報が少ないんだ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 テレビ局の会議室で、桜岡さん・僕・松尾の爺さんと向かい合わせに座るディレクター。

 名前は西川と言ったか……

 

「なる程、視聴者からの手紙で廃墟の存在を知ったのですか……しかし少々不用心ではないですか?企画書には、準備・調査の無いスケジュールですよ」

 

 予算が無いから適当に!では済まされないのだが……

 

「えっ?事前に調査ですか?何も無い様にするのが、其方さんの仕事では?」

 

 惚けているのか?それとも本気なのか?

 

「失礼ながら西川さんは霊の存在について、どうお考えですか?」

 

 基本的な質問をする。肯定派か否定派か?それだけ分かれば対応は幾らでも有る。

 

「えっ私ですか?えーっと、お坊さんの前でアレですが居るんですかね?」

 

 そう言い放った表情は、否定派な感じだ。なる程、危険性を信じてないから普通のロケみたいな感覚なのか……

 僕は盛大に溜め息をついた。

 

「ふーっ……僧籍に身をおく僕が居ないなどと言えましょうか?我々は死者の魂を極楽浄土に送るのが仕事。

居ないと言うのは、仏教界全体を否定なさる訳ですな」

 

 大体、人が死んで魂を極楽か地獄に送らないと現世は魂で溢れ出してるって!

 

「いえいえ。そんなつもりは無いですよ。ただ見た事無いのに信じろってのは、乱暴じゃないですかね?」

 

 見れば信じる、か……内心は僕らを馬鹿にしているんだろう。

 でも……こんな奴が、例え見間違いでも霊を見たってなると盲信的な肯定派になるんだよな。

 何でもかんでも心霊現象に結び付けるから、余計に怪しくなるんだ。肯定派だからって、僕らの味方にはならない場合が多い。

 逆に邪魔なんだよね。

 

「話を契約内容に戻しましょう。西川さんは心霊スポットに行く事を前提に企画を練られた。

つまり霊が居るかも知れない場所にアイドル達を送り込むから、保険で桜岡さんに仕事を依頼した。で、良いですよね?」

 

 幽霊の居る・居ないは、話が荒れるだけだ。政治・野球と同じく交わる事がない平行線の不毛な言い合いだから。

 だから「居るかも」と言い換える。素直に頷いたな。

 

「そして、この契約書には桜岡さんはテレビ局のスタッフやアイドル達を守る事に全力を尽くさなければならない。

ならば彼らの危険を減らす為に、事前に調査・準備は契約内容に則った事。これを不当に止めさせるのは、契約違反ですよね?」

 

 どんな仕事でも準備は必要だ。まして安全が掛かってるんだぞ!

 

「いや、でも準備って?何をするんです?」

 

 僕は桜岡さんに視線を送る。これは彼女が言わなくては駄目な内容だ。僕と目が合うと、小さく頷いて話し出す。

 

「先ずは今回の廃墟について、出来る限り調べます。何故、ホテルを廃業しなければならなかったのか?

それから周辺を隈無く調べます。お寺や神社、庚申塚やお地蔵様。霊が出ると言う事は、何か原因が有る筈なんです。

それを調べてから、実際に廃墟に入って調査します」

 

 うん、良い手順だ。僕もネットで調べただけだが、幾つか彼女の知らない情報が有る。

 

「霊とは、悪霊と言い換えても構いませんが誰かに縋りたいのです。恨みの元凶に復讐に……

とか考えがちですが、実際は波長が合えば彼らは誰でも良いんですよ。だから、今回の心霊スポット巡りは危険なのです。

テレビ局のスタッフやアイドル達を守る為にも、桜岡さんは事前調査を要求したんですよ。

勿論、現地に居る人だけが危険じゃない。彼らに理屈は通用しませんから、貴方も危険かもしれません。

もっとも僕らは現地の人達は守りますが、他は知りませんよ」

 

 卑怯な言い方だが、責任範囲外の連中を守る必要は(契約上は)無い。

 

「いや、それは……」

 

 霊を信じていなくても、自分に被害が及ぶと聞けば弱気になる。これって霊感商法の手口だ。

 

「いや別に脅かすつもりはありません。安心して下さい。現地スタッフは必ず守ってみせましょう」

 

 そしてお前以外は守ってみせると言う。一人だけ仲間外れの心理だ。

 

「ちょ、お坊さん!私の安全は?」

 

 そして駄目押し!

 

「僕が一番心配しているのは、この廃墟が……まだ現役のホテルとして営業していた時に勧請した稲荷神社の事です。

バブル当時は賑わっていた高級ホテルだ。さぞ、稲荷神も手厚く祀られていたでしょう。

しかしホテルは倒産……廃墟と化したホテルに残された稲荷神は、最悪の場合。

良くないモノに変化してるかもしれない。霊獣白狐、扱いを間違えれば祟り神になります。

僕は……これらを事前調査しないなら、桜岡さんをどんな手を使っても必ず止めますよ。誰か他の人にやらせれば良い」

 

 本命の稲荷神の話題を振る……正直な所、僕も関わりたくないからな。

 この交渉が拗れても、最悪は構わないんだ。

 

「正明君、彼を追い詰めるな。君、実はこの仕事が危険だから先方から断らせるつもりか?

なぁ西川さん。

幾ら霊を信じていないと言っても、この会社にも屋上に稲荷神を祀っているじゃろ?

あれを不当に扱うのと同じ危険が有るんじゃよ。霊獣白狐、神として崇められた存在を敵に回すんだ。

多分、まともな霊能力者なら断るぞ。正明君も桜岡さんが危険だから同行したんだ」

 

 爺さん、ナイスフォロー!桜岡さん、僕を感激した顔で見ない!西川、僕を複雑な顔で見るな!

 

「榎本さん……私の為に、そこまで考えていたのですか?」

 

「全く若いもんは老人をヤキモキさせおって。幸せになれ正明君。と、言う訳じゃ。西川さんとやら……今回の件はキャンセルじゃな。

若い二人を祝福してくれたまえ」

 

 カッカッカッカ!とか高笑いして、水戸黄門裁きみたくまとめるなー!

 

「爺さん、水戸黄門じゃないんだ。話をまとめるな!桜岡さんも、まっ良いか的な顔しない。貴女の仕事でしょ?」

 

 流石は弁護士だ。危うく納得する所だったぜ!いや、仕事は断れるから良いのか?

 でも流れ的に、桜岡さんとお付き合いが始まる感じだぞ?取り敢えず咳払いをコホンとひとつ……

 

「僕達はちょっと調べただけでも危険な廃墟に、準備無く行こうとするのを止めたいのです。

テレビ的に地味な調査ですが、他のロケでも下見とかするのと同じですよ。それと現在の管理者には撮影の許可を貰ってるのですか?」

 

 複雑な顔で黙り込む西川さんに話し掛ける。

 

「ん……勿論、撮影の許可は取ってますよ。実は管理者の方から手紙を貰ったんですよ。

何でも地元でも有名なお化け廃墟だから、一度取材に来て欲しいって。普通は管理者や所有者と揉めるじゃないすか?

それが向こうから提案してきたんだ。だから渡りに船ってね」

 

 管理者?所有者じゃなくて?自分の管理する物件の資産価値が落ちる……

 いや、価値なんて無いから話題作り?でも何かが引っ掛かるな。何故、所有者じゃなくて管理者……

 

 わざわざ廃墟に呼ぶ意味。ギャラだって大した額じゃないだろう。

 

「さて、西川さん。どうします?桜岡さんに仕事を依頼するなら、事前の調査と準備の費用と日数は必要だ。

それと心霊絡み以外の保障は責任区分から外して下さい。それは一般的な部分だから、発注者側の責任だ。

あとは……現場の最終的な決定権。

例えば危険と判断して、中止に出来るのは誰か決めて頂きたい。

勿論、その人が責任者だから責任取るんですよ。それはテレビ局側から出して頂かないとね」

 

 桜岡さんに仕事をさせるなら、この条件を飲め!そう言う意味を込めた。

 

「うーん、私じゃ即決は出来ませんね。お預かりして、後日に返事をさせて下さい」

 

 うん、その通りだよね。

 

「確かに、そうですよね。松尾先生から、何か有りませんか?」

 

「いや、儂の出番は返事次第じゃな。で?どれ位で返事を貰えるかな?」

 

「一週間以内には、多分平気かと……」

 

 まぁ妥当な線だよね。

 

「桜岡さんは?他に何かないかな?」

 

「私は……私が言う事は無くなったから平気ですわ」

 

 では長居する必要も無くなったかな?

 

「では西川さん。宜しくお願いします」

 

 そう言って、今回の話し合いは終了した。色々と問題は有るが、初回だからこんな物かな?

 受付で貰ったバッヂを返却し、テレビ局を出る。

 行きと同様にエントランスに待機していたタクシーに乗り込む。

 暫くは誰も無言で、ただタクシーの運転手の振る話題に一言二言、僕が応えるだけだ……

 品川駅に近付いた辺りで爺さんが「運転手さん、駅前で喫茶店は有るかな?静かな雰囲気が良いんだが……」とか言い出した。

 

「そうですね。国道沿いに有るルノアールなら、広くて静かですよ」

 

「桜岡さんも良いじゃろ?少し話してから解散しようか」

 

「はい、お祖父様」

 

 お祖父様?これだからお嬢様は困るんだ。コレがお祖父様だって?文句を言っても鉄拳制裁だから黙っておく。

 

 ルノアールは駅から2分もしない好立地だ。店内は広くて、基本的にソファーだ……

 黒い革張りのソファーに深々と座りこむ。何故か隣には桜岡さん。

 向かいが松尾の爺さん。店員が来て、水とオシボリを配っている。

 

「えーアイスコーヒーと……爺さんと桜岡さんは?」

 

「儂はホットだな」

 

「私はカフェモカを」

 

 暫くは、水を飲んだりオシボリで顔を拭いたりしてオーダーが来るのを待つ。ひと通り品物が来てから、爺さんが話し始める。

 

「さて、正明君。どうなんだい?」

 

 また漠然とした質問だなぁ……ガムシロップと格闘している僕に質問を振る。

 

「どうって?アレは無知故に危険を考えられないタイプだな。大体、管理者からの手紙って怪しいだろ?

どうして所有してる物件を曰く付きにしたいんだろう?普通は変な噂が立つのを嫌がる筈だよね」

 

 僕的には、その管理者が怪しいと思う……

 

「榎本さんが危険と思う程なの?危険なら、今回の仕事は諦めても……」

 

「おやおや、この筋肉馬鹿が心配か?全く体ばかり頑丈で困った馬鹿息子みたいな物なんだが、心配している娘がいるとはな。

桜岡さん、この筋肉馬鹿をお願いしますぞ」

 

 変な話をして頭を下げる爺さん。おぃおぃ……

 

「心配なのは桜岡さんだろ?あの契約じゃ仕事は無理だろ。でも、あの感じじゃ上手くいくとは限らないな……」

 

 腕を組んで悩む僕を見て、クスクス笑う彼女。

 

「何だよ、笑ってさ」

 

「いえ、喫茶店に法衣を纏った榎本さんは浮いてますわよ。周りの方もチラチラ見てますし……

まるで初めて会った帰りに寄ったファミレスの時と逆ね。あの時は私が巫女装束だったけど、今思えば確かに浮いてたわね」

 

 嬉しそうに笑う桜岡さん……そう言えば、前は巫女装束の彼女と深夜のファミレスでファーストバトルをしたっけ……あの時も引き分け。

 居酒屋も引き分け。ステーショングリルも引き分け。次はフルーツパーラータカノ辺りで勝負を……

 

「なんじゃお前さん達は、そんなプレイをする仲なんかいな?もう結婚しちゃえYO−!」

 

 親指立てて嬉しそうにホザきやがった!無駄に若者言葉にアンテナを張ってる爺さんの、場違いな発言にドッと疲れたんだ……

 

「本当に、もう嫌だよ……疲れたんだ……」

 

 

第32話

 

 ちくしょう、舐めやがって……

 今回のはヌレヌレのスケスケしか能がないお色気巫女と、売り出し中のイマイチな二線級の女達を集めた低予算な企画なんだぞ! 

 それを弁護士やら筋肉坊主を連れて来やがって……準備・調査だと?

 パッと行ってパッと撮影しろってんだ。全くイライラするぜ。

 

 デスクの上には吸い殻で山盛りの灰皿。そこに無理矢理くわえていた煙草を押し込む……

 飲みかけの缶コーヒーを飲み干して、また煙草に火を付けた。イライラを解消する為に、深々と煙草の煙を吸い込む……

 

「ふーっ!」

 

 少しだけ気持ちが落ち着いた時にADが駆け寄って来た。お前も少し落ち着けよな。

 

「西川さん、分かりましたよ。あの坊さんは警備会社や不動産屋のお抱えの拝み屋ですよ。坊さん+筋肉で有名です!

直ぐに分かりました。榎本心霊調査事務所を開業してます。

爺さんの方は個人で弁護士事務所を開業してます。松尾弁護士事務所。こちらの専門は企業間の契約トラブルですね」

 

 メモ書きを差し出しながら、興奮気味に説明する。渡されたメモを見ながら説明を聞いているが……

 

 ほう!

 

 それなりに有名なんだな。しかも本物の霊能力者に契約専門の弁護士か。やり難いなぁ、全くよ。

 

「で、例の廃墟も調べたのか?何かヤバいらしいぞ?全く、ちゃんと調べろよ」

 

 くそADめ!私に呪いだか祟りだかが降りかかるのは、お断りなんだよ。

 

「えっと……手紙をくれた管理者の方とは連絡が取れないっす。でも留守電は入れてありますから。

ネットで調べたんですが、霊の目撃情報は多いですね。坊さんの言うお稲荷様の情報も確かに有りました。

どうします?」

 

 あの筋肉坊主、マジで仕事を断られても構わない話運びだったな。相手も厄介と思ってるのか?

 つまり本物の心霊現象を捕らえる事が出来るのか?

 

「よし!特番のコメンテーターを何人か切って予算を浮かせるぞ。ひな壇芸人とか要らんだろ?浮いた金で事前調査をさせよう。だが、その様子も全て撮影しろ」

 

 本物の拝み屋の手順だ。何かに使えるだろう……

 後は責任区分だが、心霊関係以外なら何時もの事だからな。会社の一括労災の契約範疇で何とかなるか……

 

「ADちゃん。この企画練り直すから関係者集めて!今回は面白くなるぞ」

 

 本職坊主にエロチック巫女、売り出し中の女達ならお色気を出させても嫌とは言えないだろ。元々モデルと言っても下着メーカーとかにも所属してる連中だ。

 パンツ位は見せ慣れてるだろ?でもゴールデンだから、微エロで止めないとな。

 チラチラで終わりか?テレビ放送で視聴率が取れたら、特別編集してビデオ販売するか?

 なら過度なお色気は、そっちで見せれば売れるだろ?何たってホラーにはエロチックはセット販売だ。

 大抵映画での最初の被害者は、イチャイチャしてるカップルだしな……

 

 よし!新しい企画の基本方針は決まりだ。

 

 一時はイライラしたが、次善の策としては悪くないぞ……

 

「西川さーん!関係者集まりましたよー」

 

「さて、ヌレヌレ梓巫女・桜岡霞の最新作はテレビとビデオの二本立てで行くぜ!」

 

 要らん所で要らん企画は進行し始めた……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 あれから榎本さん達とは喫茶店の前で別れて、今は一人で電車で帰宅途中。午後の3時過ぎとは言え電車内は、それなりに混んでいる。

 扉部分の手摺りに捕まり窓の外をボーっと見ながら、先程の事を考える。

 

 彼は番犬……いえ番クマとして、本当に頼りになるわ。

 

 まさか弁護士のお爺様まで連れて来てくれるとは……それに事前にホテルの事も調べていてくれた。

 契約内容を変更しなければ、私を止めるって……何故、そこまでしてくれるのかしら?

 

 私が大切だから?すっすすす、好きだから?

 

 いえいえいえ、あの見た目クマさんは妙に優しいからもしかしたら心配してくれただけ……今回の件をもし請けるならば、少し行動してみましょう。

 でもでも……こんなに心配してくれるのだから、少しは期待しても良いわよね?

 結構な美人が電車内でクネクネしながら赤面してる姿は、車内の人達の注目を集めていた。

 

「嗚呼、美人なのに残念な娘なんだなー」「妄想癖が有るのか?」「でも赤面する美人は良いものだ……」

 

 乗客の心の突っ込みは、意見がかなり割れていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 此方は桜岡さんと品川駅で別れたオッサンと爺さん。松尾弁護士事務所は東京都大田区平和島に有る。

 行きは事務所で合流し電車で品川駅に向かったが、帰りはタクシーを利用している。やはり筋肉坊主は悪目立ちをするから……

 

「正明君、桜岡さんだったか。なかなかの美人でお嬢様な感じだな。アレは育ちが良いぞ」

 

 流石は弁護士!人を観察する目が有るな。

 

「そうですね。父親は社長とか言ってましたよ。普通に金持ちのお嬢様でしょう」

 

 黙っていれば完璧なお嬢様なんだが、中身はオッサンなんだよな……

 

「ふむ……で、どうなんだ?」

 

 ああ、ニヤニヤ始めたぞ。この爺さんは他人の色恋沙汰が好きだからな……全く面倒臭い。

 

「どう、とは?僕らは仕事仲間ですから、それ以上でも以下でもないですよ」

 

 キッパリ断らないと、この爺さんは暴走するから大変なんだ。

 

「何だ、つまらんな。でも結衣ちゃんだったか?女子中学生よりは余程健全だ。彼女も悪い娘ではないが、お前には桜岡さんみたいなタイプが似合うと思うぞ……」

 

 なっ?マイエンジェルよりも中身オッサンを選ぶとは!

 

「爺さん、人を見る目が無いぞ!結衣ちゃんの方が良いだろ?」

 

「このロリコンが!お前がサッサと結婚しないと、儂がアイツに顔向け出来んだろ。早く結婚しろ、早くだ!

儂が……儂がアイツにあの世で会う前にだぞ」

 

 松尾先生は俺の爺さんと懇意にしてくれてたからな。もう年だし、焦っているのか?

 でも結衣ちゃんと結婚するなら、あと四年は待たないと……幾ら法的には16歳で結婚出来るとはいえ、せめて高校は卒業しないと。

 指折り数えていた僕をぶん殴る!何てフリーダムな爺さんだ。

 

「何を数えているんだ?桜岡さんなら直ぐだろ?」

 

「彼女じゃねーよ!結衣ちゃんとだよ!」

 

「お客さん、目的地に着きましたぜ……」

 

 運転手さんが目的地に着いて話し掛けるまで、不毛な会話は続いた。第三者の前で延々と痴態をさらす榎本と桜岡……とっても似た者同士だった。

 

 お前ら、もう付き合っちゃえYO−!

 

 その翌日、西川氏から連絡が有りほぼ此方の希望通りの責任区分での契約となった。費用の方は事前調査は出来高清算とし日数及び内容にて積算するが、それは榎本が日常で行う事なので問題は無い。

 ただ、あくまでも元請けはoffice sakuraoka であり榎本は二次下請けとして契約した。これはテレビ局と直接契約をして縛られるのを防ぐ為だ。

 発注者は二次以降の下請けに直接命令は出来ない。必ず元請けを通すしかなく、請ける仕事の内容も桜岡さんと決められるから。

 揉め事回避の為の契約形態となった。

 

 そして、いよいよ現地に乗り込む日となった……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 何処までも抜ける様な青い空……絶好のドライブ日和!

 そして八王子市という目的地故に日帰りは厳しいのだが、我が愛の巣に結衣ちゃんを独りきりにする訳にはいかず日帰りです。

 今日は初日と言う事で現地に9時に集合。渋滞を避ける為に、余裕を持って朝6時前に自宅を出る。

 結衣ちゃんには桜岡さんと仕事をする事を説明した。凄く喜んでいたが、何が嬉しいのだろうか?

 早出をするので起こさない様に静かに支度をしていたが、ちゃんと起きていて送り出してくれた……

 

 相棒のキューブは好調だ!

 

 自宅を出て一番近い高速道路、横浜横須賀高速道路。通称「ヨコヨコ」に佐原インターから乗り込み、軽快に目的地に向かう。

 山間部を縫う様に道路が有り、暫し緑を堪能しながらのドライブ。途中の自販機で購入した、午後ティーを啜りながらの安全運転。

 80キロで巡行!途中一般道の国道16号線に降りた時は渋滞に捕まったが、八王子バイパスに乗って目的地へ。

 現場は山の中の為、一旦麓のファミレスの駐車場で合流した。所要時間は1時間45分。まずまずのタイムだ!

 

 既に駐車場には、見慣れたスカイラインが停まっている。R34GTターボ、なんちゃってスポーツカーのAT車だ。

 スカイラインの横に停車すると、直ぐに桜岡さんが降りて来た。

 

「お早う、榎本さん。早いわね。まだ8時前よ」

 

 今日の服装は、薄いピンクのジャンパーにチェック柄のキュロットスカート。足元は歩き易そうなスニーカー。

 小さなリュックを背負っている。毎回思うが、お洒落度では完敗だ。

 僕はと言えば、調査が目的だし依頼人は桜岡さんだから普通の服装だ。山登りを考えて撥水加工を施したジャンパーにカーゴパンツ。

 足元はアーミーブーツで固めて、腰にポーチとリュックを背負っている。軽い登山並の装備だ。腕時計を見ながら現在時刻を確認する。

 僕もΩのSspeed masterを見るが、少し早かったか……

 

「お早う、桜岡さん。でも一時間後に出たなら、この時間には着かないよ」

 

 渋滞を避ける為に早出したんだ。7時に家を出たなら、まだ保土ヶ谷辺りを走っている筈だよ。

 

「ふふふ、私もちょっと前に着いたのよ。他の人達は、まだみたいね。でも凄い装備!相変わらず準備に手抜かりはないのね。

もしかしたら遭難しても平気な位かしら?」

 

 勿論、一泊位なら二人は楽勝な装備だ。しかし田舎故に広大な駐車場。如何にも登山します的な服装の男女。

 そして僕らを含めても5台しか停まってない駐車場。つまりお店から丸見えな訳です……

 

「先に店に入ってようか?まだ待合せ時間までは余裕有るし、それに店から丸見えだからね」

 

 彼女を伴い店内へ。待ち構えていた様に店員さんが案内してくれる……きっと待っていたんだろうな。

 店内は統一されたチェーン店の筈だが、微妙に地方色が溢れている。昔の農工具がオブジェの様に展示してあったりとか……

 それにお土産コーナーが、やたらとデカい。

 

「何かしら?億貯まる貯金箱……これじゃ100万円も無理じゃないかしら?それに、コレ蝮を乾燥させた物なの!」

 

 ああ、地方の駄洒落商品か……

 

「桜岡さん。それは億貯まるで奥多摩って駄洒落だよ。場所は全然離れてるのに不思議だね。

蝮は本物だけど、一匹で3000円は安いのか高いのか判断が微妙だ……まぁ席に座ろうよ」

 

 他にも田舎観光地ならではの定番のペナントやマグカップ、提灯にお饅頭と色々だ。暫くお土産コーナーで時間を潰せた……

 取り敢えずドリンクバーと軽食を頼む。軽食と言っても僕はトーストセット、彼女はホットケーキ。それに山盛りポテトだ!

 机に料理が並び、各々好きなドリンクを用意してから打合せを始める。

 

「さて、調査初日。テレビ局関係者も来るけど、何から始めようか?」

 

 他の連中が来る前に、簡単な打合せをしておくべきだろう。

 

「ん?ホットケーキ食べます?」

 

 僕は真面目な話をしているのだが……上品にホットケーキを切り分けてたのに、フォークに刺して一切れ口の前に寄越してきやがった。

 

「いえ、要らないです」

 

 アーンな感じですよ?嫌ですねぇ、全く相変わらずガードが緩いぞ!食べ物を前にして彼女に真面目な話は無理なんだ。

 食べ終わるのを待とう。そう思い、自分の分のトーストにジャムを塗り始めた。

 


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