榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

8 / 183
第22話から第24話

第22話

 

 結衣ちゃんと2人、コタツに入って寛いでいる。日本茶とコーヒーゼリーと言う、不思議なコラボレーションは結衣ちゃんのお薦めだ。

 コーヒーゼリーを食べ終わり、コタツでまったりとテレビのニュースを見ている……プロ野球の結果や天気予報をぼんやりと見る。

 週末は天気みたいだ……今日は金曜日の夜。明日、明後日はお休みだ!

 結衣ちゃんと鎌倉に遊びに行く約束を果たすのと、桜岡さんに頼んだコーディネートの件を話す。

 しかし、結衣ちゃんは持ち前の謙虚さと遠慮深さから、この申し出には難色を示した……僕はお洒落をした結衣ちゃんを見たいのだが。

 CMに入った所で、再度その話題を振る。

 

「正明さん、そんな迷惑は……今でも全て正明さんのお世話になってるのに」

 

 俯き加減で話す彼女だが、それでも初めて会った時よりは大分会話も繋がっている。昔は一言二言で下を向いて黙ってしまったからな。

 

「いや遠慮は要らないよ。桜岡さんも乗り気なんだ。断るのは、かえって悪いと思うし……

それに家事全般やってくれる結衣ちゃんに、お礼がしたいんだ」

 

 ねっ!と強めに頼むと、引っ込み思案な彼女は頷いた。

 ヨシ!これでお洒落な結衣ちゃんも見れるぞ。

 桜岡さんのファッションセンスは、流行に無頓着な僕でも格好良い・可愛いと思ったんだ。

 素材が良ければ、更に素晴らしいだろう。楽しみだなー!

 明日は鎌倉に行くので、大体の予定を決めてからお開きになった。

 

「僕は……まだ仕事が有るから!」

 

 そう言って、先に彼女にお風呂を勧めた。

 

「大変なんですね……では先にお風呂に入りますから」

 

 そう快諾してくれたが、何時も結衣ちゃんに先に入って貰う。何故なら、結衣ちゃんエキスが浴槽内に……ゲヘゲへ!

 美少女の残り湯なんて最高だぜ!僕の邪な気持ちには気が付いてないのだろう。

 何時も申し訳無さそうに、先にお風呂に入る結衣ちゃん……コッチからお願いしてるんだから、気にしないでね!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 変態的行動を取るが、覗きはしない。それは合意の上でのプレイだ!

 自室に戻ると携帯が着信有り、の点滅をしている。見れば桜岡さんからだ。

 着信時間は21時58分か……今は既に22時17分、女性に電話をするには遅い時間だ。

 明日でも大丈夫かな?それとも緊急か?取り敢えず、折り返しで電話をかける。3回目のコール前に繋がった。

 

 はやっ!これは待っていたか?

 

「こんばんは、榎本です。夜分にすいません。着信に気が付かなくて……」

 

 一応、夜に女性に電話する訳だから一言謝っておく。

 

「榎本さん?夜遅くご免なさい。ちょっと気になってしまって……」

 

 気になる?何だろう……除霊の件かな?

 

「何だい?改まって……」

 

 暫し無言だけど……

 

「結衣ちゃんの事ですけど……」

 

「ああ、有難う御座います。先ほど彼女に話しましたが、喜んでました」

 

「……そうですか。でも早い方が良いと思うんです。ええ、本当に切実に!例えば、明日とか……」

 

 何だろう?鬼気迫る迫力を感じるんだけど……

 

「明日は予定が有りまして……明後日以降なら結衣ちゃんと相談しますが」

 

「今、話せますか?結衣ちゃんと……」

 

 何で、こんなに急ぐんだろうか?アレかな……テレビ収録で忙しくなるのかな?

 

「今はお風呂に入ってます。もう遅いですし……迷惑でなければ明日、此方からかけ直しますが」

 

 流石に一面識も無い桜岡さんと、いきなり電話で話すのは結衣ちゃんには大変だ……人見知りなんだし。

 

「風呂ですって!」

 

「はい、僕の帰りを待っていてくれたので。お土産のコーヒーゼリーを一緒に食べて、今から寝るところです」

 

「寝るですって!」

 

 桜岡さんは、何を興奮してるんだ?一々怒鳴るけど……

 

「もう夜も遅いですし、中学生に夜更かしは……それに桜岡さんにも少し話しましたが、彼女は虐待を受けていたせいで極度の人見知りです。

いきなり電話で話すのは無理ですよ。ちゃんと僕が同伴で、紹介しないと……」

 

 根っこが優しくてお嬢様な桜岡さんなら、結衣ちゃんも懐く筈だけどね。

 

「そうでしたわね……でも、彼女の為にも早めに確認した方が、傷は少ない筈ですわ」

 

 傷?トラウマ?心の傷かな?桜岡さんって、其処まで結衣ちゃんの事を考えてくれていたのか!

 

「買い物は明日以降になりますが、明日時間が有るなら結衣ちゃんを交えてお茶でもしませんか?鎌倉まで散策に行きますから、良ければ一緒に……」

 

 早い段階で桜岡さんと引き合わせた方が、結衣ちゃんにプラスになるかな。

 

「鎌倉ですか……そうですわね。いきなり買い物に行きましょうじゃ無理ですね。

分かりました。明日、一緒に鎌倉に行きますわ」

 

 鎌倉には女性の喜びそうな喫茶店やレストランが多いし、お礼を兼ねてご招待しますか……

 

「ではJR鎌倉駅の改札付近で11時で良いですか?」

 

「分かりましたわ。では明日……キリキリ白状して貰いますからね」

 

 そう言って電話を切った。キリキリ?白状?何の事だろう?でも明日は賑やかになるだろうな……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 古都鎌倉……

 1192年源頼朝が征夷大将軍に任命され、武家政権の鎌倉幕府を作った。実際はもう少し前の1185年には幕府としての機能を持っていたそうだ……

 「良い国(1192)作ろう鎌倉幕府」 って語呂で覚えたんだけど、今は違うらしい。

 武家政権発祥の地も、今では世界的に有名な観光地で有りデートスポットだ!そう、今日は結衣ちゃんとデート。

 おまけで桜岡さんも来るけどね……自宅から京急電鉄で汐入駅まで行き、JR横須賀線に乗り換える。

 ローカル色豊かな横須賀線のボックスシートに結衣ちゃんと向かい合って座る。

 この車両には8人しか乗っていない……ガタゴトとのんびり走る電車は、如何にも旅行に行きます的な感じだ。

 

「結衣ちゃん、急に桜岡さんと一緒でゴメンね。一度一緒の時に顔合わせしないと駄目だと思って……」

 

 昨夜、桜岡さんとの電話の後、結衣ちゃんに鎌倉で合流すると話した。急な展開で、少しびっくりしていたが……

 元々素直な優しい娘だから、反対はされなかった。

 僕的には「正明さんと2人きりのデートなのに嫌です!」とか言って欲しかったのは秘密だ……

 

「急でびっくりしましたが……テレビで活躍してる人と会うって、不思議な気持ちです」

 

 そう微笑む彼女は、前に自分がプレゼントしたワンピースを着ている。勿論、女性のファッションセンスなど皆無だから適当に高そうな店に入り店員さんに写真を見せて見立てて貰った。

 パステル調のフェミニン風?なワンピースだが、彼女は気に入ってくれたらしい。実際似合ってると思う。

 

「見た目はお嬢様だけど、話すと気さくな感じだよ……」

 

 性格はオッサンだけどね。

 

「そうなんですか?話し易い人なんですね」

 

 等と話していると、JR鎌倉駅に到着した……流石に観光地だから、ホームはごった返している。

 はぐれない様に手を繋ぎならが改札へ向かいたいが……引っ込み思案な彼女は、そんな事はしない。

 自分の真後ろを付いて歩いている。

 僕は防波堤だね……改札を抜けると、駅前はパスターミナルになっていて、数台のパスとタクシーが並んでいた。

 左側が小町通り、右側が江ノ島電、鉄通称江ノ電だ。

 周りを見渡すと……居た!桜岡さんだ。今日は遠目でも気合いが入っている服装だ。

 結衣ちゃんの性格は話してある為か派手さはないが、これぞお嬢様な服装だ……

 しかもナンパかな?若い男2人連れと話しているけど、にこやかに手を振って断ってるな。

 

 あっコッチに気が付いたぞ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 全く気合いを入れてお洒落したのは、結衣ちゃんの為でお前らを楽しませる訳じゃないんですのよ。

 断っても諦めず食い下がってくるチャラ男め、ウザいわ。似合わない髭に冬なのに胸元全開のシャツ。

 妙に日焼けした肌に、下品な香りの香水。チャラチャラしたアクセサリー。

 これが両脇から絡んでくるなんて。

 地を出しても良いのだけれど、もし結衣ちゃんに見られたら……彼女が怖がると思って我慢しているのよ!

 

「いえ、ですから待ち合わせをしてますので……」

 

「ナニナニ友達?俺らも2人だし丁度良くね?」

 

「そうだよ。俺ら車有るから、ドライブしよーぜ!そうだ、それが良いぜ」

 

 行きませんわよ!お前達とドライブなんて、何処に連れ込まれるか分かりませんわ!

 

「いえ、待ち合わせは男性ですから……」

 

 それと同伴の引っ込み思案な少女なのよ。早く追い払わないと……

 

「いやいや、女性を待たす男なんて碌な奴じゃないって!」

 

「そうだよ!俺らと行こうぜ、な!」

 

 遂に手を握って引っ張り出したわ……

 

「嫌です!」

 

 振り払おうにも2人掛かりで両手を握られては……ちょ、本当に嫌なんですって!

 その時、視界の隅に最近見慣れた筋肉が居たの……

 

「オラオラ!優しく言ってる内に行こうぜ。裏通りに車停めてんだよ」

 

「ぎゃはは!江ノ島行こうぜ、江ノ島にさ……ちょ、おい痛た、痛いよ」

 

 榎本さんは、チャラ男の髪の毛を掴み捻り上げたわ!毛髪って体を浮かせる程、強いのね……

 

「おい、止めろコラ!」

 

「禿げる、禿げるじゃねーか!」

 

 チャラ男が騒いでいるが、ビクともしないわ!あっ抜け落ちた……ゴッソリと両手にチャラ男の髪の毛を掴みながら、初めて見る怖い顔をしている。

 

「なぁ誘拐犯。知ってるか?現行犯なら、警察官じゃなくても逮捕出来るんだぜ?」

 

「何だとテメェ!」

 

「ああ、コッチは2人だぞ!おっ?後ろに可愛い娘が居るじゃ……」

 

 問答無用で急所を蹴ったわ!崩れ落ちる様にしゃがみ込んで……

 

「おまっ?人としてヒデェよ。って、あぐっ……」

 

 危険を察してか、残ったチャラ男が股関をガードしたけど……ガード越しに蹴り上げたわ!しかも爪先で……アレは指と急所が、大変な事に。

 でも榎本さんは、怖い顔のまま……ちょっとヤバいかしら?

 

「なぁ誘拐犯?2人も攫う気か……これは他に危害を加えない内にモギルか」

 

 白目を向いて悶絶するチャラ男達には、聞こえてないですわよ!

 

 彼の腕にしがみついて「もう許してあげなさいな。反省はしないでしょうが、罰は受けたわ。ほら、人が騒ぎ出す前に離れましょう」私がナンパされてる時は遠巻きで見ていた連中が騒ぎ出したわ。

 警察とか呼ばれたら面倒よ……

 

「さぁさぁ、こちらへ」

 

 腕を掴んだまま、路地の方へ誘導する。

 

「貴女が結衣ちゃん?さぁ榎本さんをコッチに……」

 

「はっはい」

 

 あまりの出来事に固まっていた?彼女に声を掛けて2人掛かりで榎本さんを路地に引っ張る……私達の力では動かない筈だけど、素直に移動してくれた。

 野次馬から引き離したら、タクシーで移動しましょう。全く番犬には丁度良いと思ったけど、結構気の荒い性格なのね。

 助けてくれたのは嬉しいのだけど……幾つかの路地を曲がり大通りに出てから、タクシーに乗り込んだ。

 後部座席に3人は狭いけど、私も結衣ちゃんも小柄だから何とか座れた。この乱暴者の手を離すと暴れそうだから……

 ずっと腕を組んでいたのに気が付いたのは、タクシーに乗り込む時だったわ。

 

 

第23話

 

 JR鎌倉駅前で酷いナンパに有っていた時に助けてくれた。でも、あんなに怖い顔は初めてだったわ。

 確か坂崎さんと言う警備員が、彼は武闘派で肉体言語が得意だから1〜2人なら負けないって言ってたわね……

 でも容赦の無い急所攻撃は、荒事に慣れている感じがしたの。命の遣り取りをする仕事なんですもの。

 私が甘過ぎるのね……タクシーの後部座席で、私と結衣ちゃんとで左右の腕を抱き締めているのを理解したのか、真っ赤だわ。

 

「すまない……つい、カッとなった。後悔はしていないが、反省もしていない。腐れナンパ野郎は悉く滅べ!

幸い頭髪は確保した。呪おう……」

 

 ちょ、髪の毛を掴んだのって、そんな思惑が?表情は未だに真っ赤だけど、目は真剣よ!

 

「榎本さん。程々にしないと、私も怒るわよ。でも助けてくれたのは……嬉しかったわ」

 

 あのまま後5分も遅ければ、あの連中に拉致られたかも知れない……そう思うと、急に怖くなりギュッと彼の腕をかき抱いた。

 やはり、この番犬は良いかもしれないわ。頼りになるし、基本的に私を何時も守ってくれているもの……

 もっ勿論、仕事のパートナーとしてだけどね?

 

「結衣ちゃんも落ち着いたかしら?いきなり怖い思いをさせてごめんなさいね。

でも、私だけだったら対処出来なかったわ。有難う御座いました、榎本さん」

 

 そう言って頭を下げる。腕を抱いていたので、その固い胸板に頭をコツンと当てる感じだったけど……

 ただ「無事で良かったよ」とだけ言ってくれたわ。暫くは沈黙が続いた。

 ただ空気を読んでくれたタクシーの運転手さんは、気まずそうに咳払いをしていたわね。

 確かに真ん中に座るオッサンが、両脇に美女と美少女を侍らせれば、ね……取り敢えず目的地は横浜ランドマークにしたわ。

 お洒落なお店も多いし、何より私の行き着けの店が有るわ。

 横浜ジャックモール・赤レンガ倉庫・クイーンズイースト・ワールドポーターズとか、お洒落なお店が多いし美味しいレストランも何件か知ってるし……

 何故かしら、デートコースよね。

 

 ふふふ……でも、私が着れなくなった服をあげても良いわね。妹が出来るって、こんな感じかしら?

 でも榎本さんと結婚すると、娘に?イヤイヤイヤ、それは飛躍し過ぎだわ……

 

 そう言えば、ちゃんとした自己紹介が未だだった事を思い出し改めて結衣ちゃんと名乗りあった。

 あんな事が有った後だからだろうか……人見知りと聞いていた彼女だが、それなりに会話が弾んだ。

 榎本さん越しにって、変な位置取りだったけどね!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 女性の買い物に同行するのは、精神的にキツい。歴代のエロい人は言った……

 

「諦めろ……そして何でも似合ってると言え。後は財布が被害を引き継いでくれる、と……」

 

 良く分からないが、桜岡さんと結衣ちゃんは意気投合している。何故だろう?

 僕は既に両手一杯の衣装を持っている。しかし彼女等は、まだ衣装選びをしている。

 つまり、この手に持つ衣装は全て買うのか?それとも候補なのかは、怖くて聞けない。

 

「結衣ちゃん、これも着てみましょうか?デザインだけでなく機能的なのも選ばないと」

 

「はい。でも少しスカートが短くないですか?」

 

「これ位は普通よ。それにこれより長いと動き回る時に不便よ。さぁさぁ試着室に行きましょう」

 

 長くなりそうだ……彼女等を見詰めながら、財布の中身とカードの限度額を思い浮かべる。

 財布には20万円、カードは今月使ってないな……限度額上限40万円だな。

 結衣ちゃんのコーディネートを頼んだ以上、桜岡さんにもお礼をしなければ駄目だろう。

 今月は節約しなければ……にこやかに此方を見詰める店員の笑顔が「良いカモがキター!」と、喜んでいる様に見えた……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 問題のマンション……昼間の警備で長瀬綜合警備保障の警備員は撤退した。

 建物の外周しか点検してないので、入り口には警察が張った立入禁止の黄色いテープがそのままだ。

 此処に2人の男が建物を見上げている。時刻は既に日付が変更された辺り……

 今夜は久々に月が顔を出し、建物と敷地をほんのりと照らしている。

 しかし窓ガラスや玄関扉の無い建設途中の建物は、暗い口がポッカリと開いている……禍々しい口に見える。

 

「さて、やりますかね」

 

「そうだな。現れて脅かすだけの相手なら、楽勝だぜ」

 

 1人はスーツを着崩した感じの20代後半、痩せ型で神経質そうな男。もう1人はジャンパーにGパン、小太りな中年男。

 此方は体型故か、人当たりの良さそうな感じだ。しかし口調はどちらも悪い……

 無言で頷き合い、建物の中に入っていく。

 

「確か初期調査だと3階の角部屋にしか現れないのが、除霊後は2階に現れたんだよな」

 

「そうだ……失敗したのか、初めから建物全体に憑いてるか?まぁどっちでも構わないけどよ」

 

 懐中電灯で確認しながら、1階を探索する……今夜は雲は多いが月が出ている。

 窓部分の開口からも、仄かな月明かりが差し込み暗くは無い……

 

「さて2階に上がるか……」

 

「特に何も感じないな。ああ、2階に行こう」

 

 痩せ型が前、小太りが後の順で2階に上がって行く……階段を登りきると、8箇所の入り口を見通せる廊下に出た。

 慎重に辺りを見回し、己の霊能力を集中させるが気配一つ無い……

 

「やれやれ……奴め、今夜は様子を見る気かよ?」

 

「初日から出るのは少ないからな。面倒臭いが、何日か張らないと駄目かもしれん」

 

 軽口を叩き合うが、警戒は怠らすに各部屋を回る。しかし8部屋全て回ったが、何も異変は無い……

 角部屋の中を見回り、何もないのに安心したのか。窓際の壁に寄りかかり煙草を吸いだす……

 

「おっ、一本くれよ!」

 

 小太りが差し出す煙草は、SevenStars。痩せ型がくわえると火のついたライターを差し出す……暫し喫煙タイム。

 

「なぁ、何でこの仕事請けだんだ?」

 

「ん?ああ、金の為だな……他に理由は無いだろ?」

 

 痩せ型の問いに、何言ってんだ?と聞き返す。

 

「まぁ確かにな。俺もそうだけどよ……短期で終わらせろとか、無茶言われたからな」

 

 あの糞ジジィが!と毒づき乱暴に煙草を壁に擦り付けた。

 

 ピン!っと窓の外へ吸い終わった煙草を指で弾きながら

 

「さて、と……じゃ3階に行くか?」

 

 一服も終わり部屋を出ようとした時、空気が変わるのを感じた……粘つく感じの生暖かい空気が体全体を包む。

 

「ヤベェ!来るか?」

 

「はっ!初日からご登場とはな」

 

 背中合わせになり、周りを警戒する……成人男子の生霊だ!近くに居れば、直ぐに分かる筈。

 しかし、体に纏わり付く粘着質な空気は密度を増すが本体は現れない。

 

「おい!撤退するか?」

 

「駄目だ……見ろ……入口を……」

 

 絞り出す様な小太りの言葉に目をやれば……天井から逆さまに降りてくる頭が見えた。

 逆立った髪の毛がだらしなく垂れている。そして徐々にオデコから目迄がハッキリてしてきた……

 既に口元まで現れている奴は、奴の目には……明らかな殺意が有る。

 顎が見え首が現れ始めたが、異様に首が長い……まるで首を吊って暫く放置した遺体の様に。

 そして30センチは有ろうかと思える首の後に、漸く剥き出しの肩が見えた。

 

「やるぞ!」

 

「ああ、ビビってんじゃねーぞ!」

 

 暫し見詰め合っていたが全身が現れると危険だ!と本能が訴えた……既に痩せこけて肋骨の浮いた体が見えている。

 

「おん ばさら うんけん まゆきら てい そばか かん」

 

「おん ぎゃーてー あーてー ゆーてー まーてー」

 

 共に力ある言葉を紡ぐ!

 

「「はっ!」」

 

 己の霊能力を乗せた言霊をぶつけられ、奴を壁までぶっ飛ばした!

 

「ヨッシャー!効いてんぜ、アレはよー」

 

「バカやろう!奴の全身が……くっ、アレは生霊じゃねえよ。怨霊だ……」

 

 確かに霊能力で吹き飛ばした!しかしヤツの体は天井から抜け出し壁に張り付いていたが、そのまま床に崩れ落ちる。

 べちゃり、そんな擬音が聞こえそうな感じだ……

 

「あ……ががっ……あがが……」

 

 ヤツが床に体をめり込ませた瞬間、彼らの足首が何かに掴まれた!

 

「ヤベェ……霊体が物質化してるぞ」

 

「バカ!塩だ、清めの塩を撒くんだ……」

 

 2人の足首にめり込む様に握り締める手に、思わず唸ってしまう。ヤバい、ヤツは実体化している!これはかなり強いヤツだ。

 しかも壁や床を抜けてくるのか……準備不足だぞ、どうする?

 掴まれた足に清めの塩を撒き散らし一旦距離をとる。ヤツは床に沈み込んだ……

 

「一旦逃げるぞ!何処から現れるか分からん。建物内は危険だ」

 

「はぁはぁ……聞いた話と違うぜ。分かった、うわっ?」

 

 べちゃりと、天井から落ちてきたヤツが、痩せ型にしがみつく!

 

「ひっひ、ひぃ……たっ助けて」

 

 のし掛かる様にして動きを止めると、だらしなく開いていた口から涎を垂らしながら「げっげげ……うげ……」と呻きながら痩せ型の顔に実体化した涎が降り注ぐ……

 

「げふっ!おい、ヤメロ……ヤメてくれ……ガハッ……」

 

 気が付けば、小太りは逃げ出していた。腐乱死体の様な怨霊は、涎を垂らしながら痩せ型の首を絞める。

 息をしたくとも首を絞められ、口には涎が大量に垂らされていく……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 お風呂に入り、缶ビール片手に自室に戻る。簡単に髪の毛を乾かして、床に座り込んでビールを飲む。

 今日は疲れた……女三人集まれば姦しいと言われるが、桜岡さん独りでも騒がしかった。

 何件も店を梯子し、結衣ちゃんの服を購入……8着目までは数えたが、後は分からない。

 しかも後半は桜岡さんのカードで支払っていたのも有るみたいだ。ちゃんと返すか、何か同額以上の物を贈らなければならないな……

 でも彼女の楽しそうな顔は久し振りに見たんだ。

 桜岡さんには感謝しなきゃ……飲み干したビールの缶をクシャリと潰して、ゴミ箱に投棄!

 壁に当たりゴミ箱には入らなかったが、起きて捨てに行くのも怠い。

 

 ああ、眠いな。今日は、疲れた……よ……そのまま布団に横になった。勿論、万年床じゃないぞ……

 

 

 

「……まさ……あき。おい、まさあき……起きろ……」

 

 誰だ?気持ちの良い眠りを妨げるのは……

 

「起きろ……アヤツが変化したぞ。ただ恨むだけから、誰彼構わず怨むになりおった……だから起きんか……」

 

 アヤツ?恨む?怨む?何を言ってるんだ?半分覚醒し、寝たまま周囲を確認する。

 眠くてスタンドを点けっぱなしだったのか、仄かな灯りが部屋を照らしている……テレビ・衣装棚・パソコンラックにゴミ箱。

 寝る前と寸分も変わらない部屋に奴が居た。

 

 そう!我が一族を悉く取り憑き殺している奴が。真っ黒な髪を足首まで伸ばし、ほっそりとした体には何も纏っていない。

 顔は影になっているが、真っ赤な唇と。両目だけが真っ赤に光っている幼女が、僕を見下ろしている。

 箱の中身、呪いの元凶は僕の好みを反映させて現れる。

 

「ああ起きたか?アヤツが変化したぞ。今、人を独り喰い殺したな……もう1人も……ああ、ヤラレタぞ。

あれは良い怨みを纏っているな。正明よ、アレが喰いたい。行くぞ、支度をしろ」

 

 真っ裸な幼女に上から目線で命令される。しかし、これは仮の姿……本性を知る僕が、逆らえる訳がない。

 頷くと、幼女は消えて「箱」だけが転がっている。

 この忌々しい「箱」を握り締めて、飲酒をしたが車を運転しなければならない事を思い付く。

 

「クソッ!バレずに現場まで行けるのか?」

 

 僕は着替えを始める。箱の機嫌が悪くならない内に、出掛けねばならないから……

 

 

第24話

 

 足首まで伸びた、濡れている様な艶やかな黒髪。透き通る様なきめ細やかな陶磁器を思わせる白い肌。

 蠱惑的な真っ赤な唇。それに前髪に隠れているが、紅く光る瞳……真っ裸の幼女にこき使われているのが僕だ。

 アレは人の欲望を忠実に再現する。つまり僕の理想は日本人形みたいな幼女、そして真っ裸なのか。

 

 爺さんは早くに祖母を無くしていたので、若い頃の祖母だったらしい。

 親父は……派手で露出度の高い巨乳のネーチャン。つまり飲み屋のネーチャンか、理想の浮気相手だったのか?

 榎本家の直系男子にのみ、ヤツは取り憑く……見た目に騙されて、ヤツの機嫌を損ねれば問答無用で取り込まれる。

 魂がヤツから逃げられず、未来永劫絶えず苦しむんだ!夢でしか会えないが、最初の頃は爺さんとも親父とも会話が成立した。

 

 しかし今は……既に僕を認識してるかも分からず、辛い責め苦に耐えているだけだ。そして恨み辛みを切々と訴え縋りつく……

 アレに、「箱」に魂を捕らわれると未来永劫苦しみ続けるのだろう……祭壇に祭り結界を張っても簡単に抜け出してくる。

 布団の上に転がっている「箱」を掴むとポケットにいれた。

 時計を見れば0時29分……今から行けば、朝迄には帰れるだろう。結衣ちゃんにはバレずに行わなければならないが……

 部屋で着替えてからバイク……ビーノモルフェのキーを持って一階へ降りる。

 結衣ちゃんの部屋の前を通ったが、電気も消えているし寝ているみたいだ。音を立てずに外に出て、玄関の施錠を確認。

 ビーノモルフェを50m程押して自宅から離れてエンジンを掛ける。深呼吸を数回し、酔いがそんなに強くない事を確認してから走り出す。

 

 自宅から国道134号線を南下する。久里浜港を横目に更に南下し野比海岸をひた走る。

 途中の道沿いは長閑な漁港が有る。夜に漁があるのか、灯りを灯した漁船が停泊し慌ただしく人が動いている。

 何が捕れるんだろう?金田湾を見ながら、途中で国道214号線に右折し山の方に向かう……

 海岸線から少し入れば、畑がやたらと目に付く長閑な田舎町。途中で更に枝道に入り目的のマンション前に着く。

 少し離れた路肩にスクーターを停めて、歩いて現場まで行く。この時間になれば、人通りや車の通行は皆無だ。

 民間さえも雨戸を閉めて室内の灯りが漏れない。疎らな街灯の灯りを頼りに、現場の近く迄歩いていく。

 

 後50m程だろうか?問題のマンションが見える。前に車が停まってるな……

 

 アレが「箱」が教えてくれた連中のか?慎重に周りを確認し、建物の裏手に回る。仮囲いの前まで到着。

 左右を確認し、電信柱を利用して仮囲いを登り中に侵入する。飛び降りてから、姿勢を低くしたままで周囲を警戒……

 物音も無く、人の気配も感じられない。警戒しながら建物に近付き、正面の入口から中に入る……

 幸い今夜は雲が無く月明かりが仄かに建物内を照らしている。

 ここで不用心に灯りを点けたら侵入がバレるから、暗闇からくる恐怖にじっと耐えるしかない。暫く入口で留まってみたが、反応は無い。

 

 「箱」を取り出し、話し掛ける。

 

「おい、着いたぞ!どうするんだ?」

 

 持っていた「箱」からタールの様な黒い粘性の液体が床にこぼれ出す……直接持つ手に触れるが、凍える様に冷たく不気味だ。

 小さな箱から溢れんばかりに漏れ出した液体は、床に溜まり……そしてボコボコと盛り上がると、人の形を成してゆく。

 そう、真っ裸な幼女に……

 本性を知っていながら、暗闇に浮き出す病的に青白い裸体に目が行ってしまう。

 その不躾な視線に気付いたのだろうか?

 

「なんだ?妾に欲情したのか?くっくっく……相手をしてやっても構わんぞ?」

 

 振り向いて、右腕で長い髪をかき上げる仕草は見た目の幼さに反比例する淫靡さだ。

 

「いや……遠慮するよ。で、どうするんだ?」

 

 首を傾げる仕草は愛らしいのに、背筋には冷や汗が垂れ流れている。

 

「……二階に死体が有るな。それなりの霊能力者だな。先ずはソレを頂くか」

 

 天井を見上げながら、とんでもない事をサラリと言うと歩き出す。その後を三歩離れた位置で着いて行く。

 彼女自体が仄かに発光している為に、見失う事は無い。二階に上がると、廊下に小太りな中年が倒れている。

 彼がマンションオーナーから頼まれた同業者か?恐怖に顔を歪ませて絶命している。

 口の周りに黒いヘドロの様な汚れが……首を掻き毟っていて、まるで溺れた様な?

 陸で?まさかな……

 

「ほう……そこそこ力が有るな。まぁ良い、喰らうか……」

 

 呆然と立ち尽くし、考えに耽っていると彼は闇に溶け込む様に床に沈んで行った。

 

「うむ。恐怖に捕らわれて死んだ人間の魂は旨いな。さて、次は部屋の中か……行くぞ」

 

 まるで散歩に誘う様な気楽さで、先を促す。

 

「今のは……溺れている様な死に様だが?」

 

「ん?ああ、多分実体化したヤツの体内に取り込まれたかしたんだな。多分ヤツは水死してるな。

しかも汚い川か沼で……だからヘドロ塗れなのだろう。ほら、ヤツもそうだぞ」

 

 「箱」が指差した男は奇妙だった……痩せこけた男はくの字に体を折り曲げ、舌を極限に伸ばし死んでいた。

 コッチも溺死みたいに口の周りがヘドロだらけだが、首が折れて曲がっている。失禁したのか股間の辺りが濡れているし……

 

「ふふふふ。コレも旨そうだ。では頂こうか」

 

 あんなに汚れている者が旨そう?彼も体を包む様に黒い液体で取り込んだ。

 

「さて、前菜は終わりだ。主菜と行くか。ん?ヤツの気配が消えておるな……ほぅ、アレが求めた者か。

くたびれた中年女性に固執した結果か。色欲に塗れた人間の末路は哀れよの。正明、ヤツは外に出ているぞ。行くぞ」

 

 独り言を言ってスタスタと歩き出す。

 

「ちょちょっと待てって!何を言ってるんだ」

 

 慌て後を追う。建物から出てゲートに向かい律儀に潜り戸を開けて外に出る。

 風が吹いているのにアレの長い髪はなびかない。そして左右を見ると、またスタスタと歩き出す。

 コッチはバレない様に細心の注意をしてるのに、真っ裸で外を歩くな!

 潜り戸から左右を見て、人が居ない事を確認する。アレはロリな少女が手伝う雑貨屋の前に立っていた……

 

「人目を考えてくれ。真っ裸で彷徨くなんて!」

 

 深夜に真っ裸な幼女と一緒の所を見られたら、言い訳出来ないんだぞ!って、中で何か騒がしいな。

 ガタガタ騒いで……お店の正面はシャッターしかないが、右脇には木製の扉が有る。此方が玄関扱いなんだろう。

 其処から女性が飛び出して来た!

 

「たっ助けて……中に、中に娘が……残ってます」

 

 息も絶え絶えに転がり出て来た中年女性。確か昼間にレジに居た女性だ。そして玄関扉から室内を覗けば……

 

 ヤツが居た!

 

 初めて見た時よりも酷い有様だが。首が異様に伸びてダランと右側に傾き、口と胸の辺りをヘドロの様な物でベッタリと汚している。

 しかも「箱」が教えてくれた様に、怨霊化してるのか?咄嗟に愛染明王の印を組み、真言を唱える!

 

「おん まからぎゃ ばぞろ しゅにしゃ ばざら さとば じゃく うん ばん こく」

 

 真言を唱え、裂帛の気合を奴にぶつける!今回は効いた?前は揺らめくだけだが、今回はぶっ飛ばせた!

 しかし、直ぐに立ち上がってくるから……大して効果は無い、か。

 

「逃げろ!ここは食い止める」

 

 しゃがみ込んでいた女は、僕が怒鳴るとヨタヨタと遠ざかって行く……おぃおぃ娘を残してか?

 しかし「箱」である真っ裸な幼女は見ていない。近付いてくるヤツに再度、愛染明王の真言を叩き付ける為に……

 叩き付ける前に真っ裸な幼女が動く!その魅惑的な唇が、愛らしい顔が顎から後頭部までベロンと捲れ上がる。

 当然、顔の皮膚が捲れ上がれば筋肉と骸骨だ!

 

「ウケケケケェー!」

 

 雄叫びを上げてヤツに貪りついた。後は捕食するだけ……人の体をしたモノが、人の成れの果てを貪る。

 玄関先で粘着音を響かせ喰らう「箱」を外から見せない為に玄関扉を閉めて施錠する。

 既に頭部は喰われ胸の辺りを喰っているのだろう……右手を突っ込み心臓を取り出して笑っている。

 

 トラウマになりそうだ……食事を楽しむ「箱」を迂回して室内に入る。

 裕福では無いのだろう。質素で昭和の匂いが漂うインテリア。玄関を入り直ぐ左側が台所、右側が居間でその先は……

 おそらく店に繋がっているのだろう。暖簾越しに商品棚が見えた。

 多分突き当たりの左側がバス・トイレで右側が寝室かな……取り残されたロリっ娘を探そうと奥へと進む。

 

「お邪魔します……」

 

 一応断りを入れておく。大人のマナーだ。居間には居ない。台所にも居ない。トイレも風呂場も電気は点いていない。

 

「寝室かな……誰か居るかい?」

 

 声を掛けながらドアノブを捻ると、中からガチャガチャと押さえて

 

「誰!誰なの?お母さん、助けて……」

 

 ロリっ娘の悲痛な叫びが……

 

「大丈夫だよ。僕はお母さんに頼まれて助けに来たんだ。一応、お坊さんだよ。安心して開けてくれないかな?」

 

 背後をチラリと見れば、大腸だか小腸だかを引っ張り出している最中。これは見せられないよ。

 

「本当に?怖いのいないの?」

 

「ああ、お兄さんが追い払ったよ。それに僕は前にお店で買い物をしたんだ。覚えてるかい?ガムとコーラを買ったんだけど」

 

 安心させる為に、更に優しい声で話し掛ける。すると、そっと扉が少し開き中から小さな瞳が覗いている。

 

「あっ!オジサンだ、オジサン助けて!」

 

 そう言って飛び出して来たロリっ娘をガッシリと正面から抱き締める。顔を胸に埋めて、後頭部を押さえ後ろは見えない様に……

 現在の食事状況は、両足を振り回している最中だ。もう暫く掛かるだろう、完食までは。

 

「もう大丈夫だよ。お兄さんが助けに来たから平気だ」

 

 ポンポンと背中を叩いて安心させる……

 

「怖いオジチャン居ない?汚いオジチャン居ない?」

 

 どうやらヤツは汚いオジチャンと認識したらしい。お化けよりマシか?

 

「勿論追い払ったよ。もう大丈夫だよ……」

 

 背後から盛大なゲップが聞こえた。つまり完食だな。彼女を抱き締めながら振り返れば、捲れ上がった顔を下ろしている最中だ……

 何時見てもキモい。「箱」は満足したのだろう。またドロドロに溶けて僕のポケットに流れてくる。

 黒いタールみたいな液体が、足元からポケットまでせり上がってくる。

 身の毛もよだつ感触を残して「箱」は元に戻った……しかし、今はロリっ娘のケアが大事だ。

 彼女を下ろして台所の椅子に座らせる。母親が誰か助けを呼びに出て行った筈だからな。

 助けが来る前に退散したいが、怖がっている彼女を放置出来ない。

 冷蔵庫を開けると、パック牛乳を見つけた。適当に鍋を漁りガスコンロにかける。

 砂糖は……流し台の上の棚に調味料boxが有り、塩・砂糖・薄力粉かな?

 砂糖を大さじで二杯入れて甘めなホットミルクを作る。

 

「オジサン、コップこれだよ!」

 

 ロリっ娘も大分落ち着いたのか、コーヒーカップを出してくれた。

 

「はい、熱いから気を付けて飲むんだよ」

 

 鍋から直接カップにホットミルクを注ぐ……湯気をたてたホットミルクは、甘くて美味しそうだ。出来ればブランデーを数滴垂らしたい。

 

「オジサン有難う!」

 

「お兄ちゃんだよ、オニイチャン!」

 

 フウフウ息を吹きかけるロリっ娘は聞いていなかった……30代はオジサンか?ガックリとうなだれてしまう。さて、この後どうするかな?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。