俺が戦の世界で得た光   作:ショウキン

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第二十二話「ボス出撃」

「さてと、これが最後の扉だな」

 

「気合入れていかないとね」

 

 長い階段を上がり続けた俺とソウジは、ついに最上階までやってきていた。

 

 ここで敵の親玉を討ち取れば、すべては終わる。

 

 だが、扉を開けた俺たちを待っていたのは、希望をそぐような光景だった。

 

 待ち構えていたのは、金髪の上級ワルデットと色黒でサングラスをつけた上級ワルデットに加え、部下のワルデットが百体ほど。

 

 上級ワルデットが何人かの取り巻きを連れているだけかと思っていたが、甘かったようだ。

 

 さすがにこれは身が持たないかもしれない。

 

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 しかし、そう思っているスキに金髪の方がにやけながら近づいてきた。

 

「いししし。ようこそ、エイキュウカンパニーの諸君。私の名はザンパ。ずいぶんお疲れのようだね」

 

「俺はビーゴ。なかなかの腕のようだが、終わりだで。そんな消耗しきった体では、俺たちに勝てはしない」

 

 ビーゴは右手をかまえると、黒い玉を飛ばしてきた。

 

 とっさに回避した俺たちだったが、玉は爆発し、爆風で吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐぐ。なるほど、爆発物を操る上級ワルデットか」

 

「あの爆弾シールを作ったのもこの野郎ってわけか」

 

「フン」

 

 休む間もなく、ビーゴは二発目、三発目の爆撃を俺たちにとばしまくる。

 

 それと同時に雑魚ワルデットたちも数を生かして、襲い掛かる。

 

 そんな乱戦の様子をザンパはイスに腰掛け、頬杖をつきながら見ていた。

 

「オイ、お前! 何のつもりだ」

 

「いししし、ビーゴ一人で大丈夫そうだからリンチショーの見学だよ。何秒持ちこたえられるか見ものだね」

 

「あの野郎。オイ、ソウジ、ザコの相手をまかせていいか?」

 

「何する気?」

 

「決まってんだろ、あのスカした野郎をぶん殴るんだよ」

 

「たしかにこの状況、どちらかに集中しないと、やりにくいよね」

 

 話を終えると、ソウジは雑魚ワルデットたち、俺はザンパの方へ向かって、別々に走り出した。

 

 ソウジは、雑魚ワルデットたちを自分の方へ引きつけ、一箇所に集まったところを高速移動からの飛び蹴りで、蹴散らした。

 

 一方の俺はザンパに向かって殴りかかるが、その前にビーゴが立ちはだかった。

 

「俺が相手だで、無視するな」

 

「ちっ、後回しってわけには、いかなそうだな」

 

「当然だで」

 

 ビーゴは拳をふりおろすと、床をたたきつけた。

 

 その瞬間、床は爆発し、その衝撃で俺は吹き飛ばされた。

 

「ぐう」

 

「よけたか。なかなかいい動きだで」

 

「くそっ、攻撃のたびに爆発が起こるんじゃ、さすがにやりづれーな。一発でもくらえばシャレになんねぇぞ」

 

「まだだで」

 

 ビーゴは、傷だらけの俺にさらに爆撃をとばしまくる。

 

 必死によけても体力は削られていき、爆風でも火傷を負う。

 

 接近戦に持ち込んでも、あの爆発するパンチにやられてしまう。

 

 そんな俺が苦しむ様子を、ザンパは薄ら笑いをうかべながら見ている。

 

「いしし」

 

「ちくしょう、あの野郎が。こうなったら」

 

 俺は次々と飛んでくる爆撃をよけつつ、ザンパの方へ走り、同士討ちを狙う作戦に出た。

 

 奴は途中で感づいたのか、立ち上がろうとするも、間に合わずに爆撃をモロにくらった。

 

「ざ、ザンパ!」

 

「やるね、ショウちゃん」

 

「へへ、余裕こいてるからそうなるんだ」

 

 俺はすぐにソウジの援護に向かおうとするが、いきなり爆煙の中から飛び出してきたザンパに阻まれた。

 

 奴の服は爆撃でボロボロになっていたが、体にはわずかな傷しかついていなかった。

 

「気をつけなよ、ビーゴ。せっかく新調した服がボロボロだよ。あんな単純な手に引っかかっちゃって」

 

「すまん」

 

「てめぇ、どういう事だ? 爆撃はたしかに当ったはずなのに」

 

「フフフ、そんなに不思議かい? 爆撃が効かないのが」

 

 考えてみればザンパも上級ワルデットの一人。

 

 何か特殊な能力を持っているという事は明確だった。

 

「くそ、何の能力だ」

 

「今度はこっちから行くよ」

 

 ザンパは戦闘態勢をとり、襲いかかってきた。

 

 俺は息切れしながらも攻撃を回避し、奴の腹部にパンチを入れるが、ある違和感に気づいた。

 

「いってぇぇぇぇ!」

 

 拳をおさえつけ、ひるむ俺にザンパのキックが炸裂。

 

 ガードする間すらもなく、吹き飛ばされた。

 

「く、くそ。何だ、その体。鉄か?」

 

「ご名答。私は鉄のように固い体と、鉄を体から作り出す能力をもっている」

 

「鉄? そうか。やっと謎が解けた」

 

 おそらくは、この鉄の塔もザンパの能力を用いて作られたものだろう。

 

 さっきからビーゴがあれだけ爆撃をうちまくっているのに、床や壁にはほとんど傷がついておらず、その頑丈さを見事にアピールしていた。

 

「ちっ、道理で爆撃が効かないはずだぜ」

 

「そうだ、わかっただろう。爆撃でも壊せない私の体にキミのパンチなんて効くわけもない」

 

 俺は言い返せなかった。

 

 すでにさっき、ザンパを一発殴っただけで、拳の骨に少しひびが入る始末。

 

 前の俺だったら、ここでやけくそになって攻撃を続けていただろうが、今回はちがう。

 

 この状況でザンパにパンチを浴びせても、拳をダメにしてしまうのは、あきらかな事だったからだ。

 

「ちくしょう、どうすればいいんだ」

 

「そのまま動かないでくれよ、そしたら楽に死なせてあげるから」

 

 ザンパは体から鉄をしぼりだし、巨大な金棒を作り、殴りかかってきた。

 

 俺はよけきれず、とっさに腕でガードするが、当然防ぎきれるわけもなく、打ち負けてしまう。

 

「ぐおぉぉぉぉ!」

 

 俺の拳のひびはさらに広がった。

 

 たえきれず、腕をおさえがら床をのたうちまわっていたところをザンパはふざけたように蹴り転がした。

 

「これを腕でガードするなんてバカだねー、武器の一つくらい持ってないのかい?」

 

「ちっ、嫌なところをついてきやがって。マジでムカつく野郎だ」

 

「いしし。お、キミの相方もそうとうやばいみたいだね」

 

「何! あ!」」

 

 ソウジは雑魚ワルデットたちは一掃したようだったが、ビーゴ相手にかなり苦戦を強いられていた。

 

 ビーゴもザンパ同様、手負いの状態で倒せるレベルの相手ではない。

 

 絶体絶命かと思われたそのとき、塔の天井が大きな音を出してくずれた。

 

「な、なんだぁ! あ、あんたは......」

 

 破壊された塔の穴から降りてきたのは、ボスだった。

 

 おそらく、外壁をよじ登った後、そのまま電撃を帯びた拳で塔の上部を破壊し、侵入してきたのだと思われる。

 

 せっかちというか、常識外れというか、本当に型破りな男だ。

 

「ボス、あんた無茶苦茶だ」

 

「フン。大当たりだったな、一番上の階に強い奴がいるとにらんでいたが」

 

「社長自らご出撃とはご苦労な事だ。しっかし、鉄でできた塔を破壊するとはね」

 

「鉄だったのか、これ。ハリボテかと思ったぜ」

 

「言ってくれるね」

 

「ボス、なんであんたがここに?」

 

「フフ、会社に戻ってみりゃ、俺抜きでずいぶん楽しそうな事やってるって聞いたからな。たまには実戦もこなさねぇと腕も鈍るしな。さて、俺はコイツらごとこの塔をぶっ壊す。ソウジを連れてさっさと消えた方が身のためだぞ」

 

「ぶっ壊すだって? 小さい穴ひとつ開けたくらいで言ってくれるね」

 

 殺気を漂わせながら対峙するボスとビーゴ、ザンパ。

 

 真っ先に動いたのはビーゴだった。

 

 両手を前に構えると、爆撃をボスめがけて連射した。

 

 避けようとしたボスだったが、真横からザンパの鉄の錠で体をロックされ、動きを封じられてしまった。

 

 そして、次の瞬間、ものすごい爆音と共にビーゴの爆撃がボスに命中した。

 

「どうやら終わったようだで」

 

「いしし。かっこつけて、一人で戦おうとするからだよ。ん?」

 

 そこには電撃を身にまとったボスが立っていた。

 

 爆撃が命中する寸前、電撃を全身にまとう事でダメージを軽減していたのだろう。

 

「フン、元人間のくせに、うまく能力を使いこなしているね」

 

「今のは効いたぜ、鉄野郎。次はこっちからいくぞ」

 

 ボスは電撃をまとったまま、ザンパに突撃し、顔面を殴りつけた。

 

 電撃をまとっていたというだけなく、ボスの腕力もそうとうなものだったので、さすがのザンパも無傷ではすまなかった。

 

「あー、いてて。ちくしょう、馬鹿力め」

 

 すかさず、ザンパは手から鉄球を放出し、とばしまくるが、ボスは拳で軽々と打ち返す。

 

 それならばとばかりに、今度は巨大鉄柱を召喚し、殴りつけるが、簡単に受け止められ、投げ飛ばされてしまう。

 

「こんなハズはない。人間がベースになったワルデットごときに私が」

 

「そりゃこっちのセリフだ。汚い鉄くずから作られたナカガワの操り人形が」

 

「減らず口はそこまでだで」

 

 突如、さっきとは比べ物にならないほどの巨大な爆撃が数発、ボスめがけて飛んできた。

 

 さすがにこれは完全に避けきれず、そのまま二発の爆撃をくらってしまった。

 

「ぐ、爆撃野郎、まさか」

 

「フン」

 

 ビーゴはすでにドーピングしていた。

 

 これでは、爆撃の威力、スピードが跳ね上がるのは当然。

 

 遠距離戦が不利と判断したのか、ボスはビーゴに向かって走り始めた。

 

「ちっ」

 

「俺は全身を自在に起爆できる。遠距離だろうが、近距離だろうが、有利な事に変わりはない。お前も似たような能力だろうが、せいぜいしびれさせる程度だろう。爆撃はそう何度も耐えられるものじゃないからな」

 

「けっ! 言ってろ、ハッタリばかりの爆撃野郎が」

 

 ボスは電撃を帯びた手で、ガードしようとしたビーゴの手の平を殴りつけた。

 

 結果、大爆発が起き、ボスは右手に大火傷、ビーゴは手の平にわずかなダメージを負った。

 

「タフな体だで。普通の人間なら原型を留めていないだろうに」

 

「フン、ドーピングしてりゃ、これくらい当たり前だろうが。バカが」

 

「デカイ口を聞くな、死にぞこないが!」

 

 ビーゴは声を荒げながら、巨大な爆撃を口から連射した。

 

 対するボスはなぜか電撃は使わず、素手でのガードと回避を繰り返し、耐え続けた。

 

「どうやら、もうエネルギー切れのようだな」

 

「違うな。爆撃野郎、お前、俺が何も考えずに電撃を使ってこないと思ってんのか?」

 

「どういう事だ?」

 

「こういう事さ」

 

 次の瞬間、ボスの全身から強力な電撃が放出された。

 

 そして、渦巻くように形状を変えていき、よろいのようにボスの体を包み込んだ。

 

「ぐっ、何てパワーだで」

 

「この数分間の間、力をためておいたのさ。このときのためにな」

 

「なるほどな、だが、その程度の技で俺は......」

 

「誰がこれだけだと言った? 忘れたのか、俺もドーピングが使える事を」

 

 ボスは首にツメを突き刺し、ドーピングした。

 

 その瞬間、彼の体をまとっていた電撃はさらに巨大化した。

 

 それは離れた場所に立っていても、肌がビリビリと痛むほどだった。

 

「ぼ、ボス、すげぇ」

 

「な、何て奴だで。これほどの力を持っていたなんて」

 

「フン。いくぜ」

 

 ボスは両腕から電流を放ち、ビーゴを攻撃した。

 

 しびれながらも爆撃を放ったビーゴだったが、ボスは身にまとっていた強力な電撃でかき消してしまった。

 

「ソウジ、新入り、最後の忠告だ。消えねぇとマジで死ぬぜ」

 

「ショウちゃん、どうやら脅しじゃないようだ。ここは間違いなく崩壊する」

 

「のようだな。しかたねぇか」

 

 俺とソウジは、ボスの体から放たれ始めた電撃が部屋を覆い尽くす前に脱出し、階段をおり始めた。

 

 その後、中間あたりまでおりたところで上部から爆音が聞こえ、塔は音を出して崩れ始めた。

 

「うう。ボクがドーピングして突っ切る。ショウちゃん、しっかりつかまってて」

 

「ああ。う、うおおおお、崩れる!」

 

 俺はソウジに手を引かれ、猛スピードで階段をおりていき、塔が倒壊する寸前に外へとたどり着いた。

 

 しかし、まだ戦いは終わっていない。

 

 すでに外に待機していた雑魚ワルデットたちと爆弾シールをつけられた人間たちがせまっていたのだ。

 

「はぁ、はぁ。やっとの思いで抜けたってのによ。ん? ああ!」

 

 何と、塔の残骸の中からボスが飛び出してきた。

 

 その手には、虫の息のビーゴが掴まれており、すでに首からリングが外れていた。

 

「う、がふ」

 

「はぁ、はぁ。あの鉄野郎は早々に逃げやがったようだ。不覚だったぜ」

 

「お......のれ」

 

 ビーゴは恨み事をつぶやきながら、鉄くずと土の塊と化した。

 

 それと同時に人間たちにつけられていた爆弾シールは自然にはがれた後、消滅した。

 

「ふぅ。さてと、俺はここまでだ。ソウジ、新入り、このまま終わったら、お前らの面子が立たんだろう」

 

「お、おう。そうだな」

 

 俺とソウジは、逃げようとしていた雑魚ワルデットたちを追いかけて全滅させ、戦いは終わった。

 

 完璧とまではいかなかったものの、上級ワルデットのビーゴという大きな戦力を削ぐ事が出来たのだから、納得のいく戦績だったといえるだろう。

 

 しかし、ビーゴを倒したのはボスだし、俺が塔から無事に脱出出来たのはソウジのおかげ。

 

 つまり、二人がいなかったら、俺は今こうして生きていないという事だ。

 

 はっきり言って今回の戦いは、俺がいなくても戦績にさして影響が出なかったようにさえ思えてきた。

 

「もし、短剣ムーブと鉄球デストンがあれば......じゃないだろ! 何考えてんだ、俺は」

 

 俺の心によからぬものが芽生え始めていた。

 

 やはり、物への未練というものはそう簡単にはなくならないものなのだろう。

 

 これからしばらくは、欲求不満に苦しむ日々が続きそうだ。

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