仙波 梨里奈が成長していく物語となっております。
基本的にはマギアレコードのメインストーリーに沿って話が進んでいきます。
序盤はメインストーリーに梨里奈が存在して居るだけではありますが
中盤から着実にストーリーに影響を与えていきます!
何でも出来る天才…私はきっと道化師だ。
私に居場所なんて無い。私にとってはどんな場所でもステージなのだ。
「梨里奈(りりな)、今度のテストも期待してるぞ」
「うん、任せて」
家でもテストや部活動の試合の度に期待される。
「勉強、頑張ってるな」
「うん」
テスト等も無い日も、私は両親に勉強をして居ることを期待され続けてきた。
「やっぱり梨里奈って凄く頭良いよね、分からない問題とかあるの?」
「ある訳無いじゃ無い、だって梨里奈は天才だよ? 文武両道の完璧な子だし」
「…あぁ、大体の事は出来る」
学校でも同級生からはいつもこんな風に言われる。
褒めて居ると思っているのかも知れないが…私にはこの言葉が痛い。
「く、梨里奈…対策はしてきたけど…」
「まぁ負けても当然だ、胸を借りるつもりでぶつかれ!」
「よし、勝負!」
部活動の試合の度に相手の選手とコーチの会話が聞えてきた。
向こうは負けて当然と考えていて、私は勝って当然なんだ。
私は勝たないと駄目だ、期待外れとガッカリさせたくない。
「凄いよね、何をしても表情1つ変えないし」
「勉強も凄いし、運動神経も抜群だし! 何でも出来るもんね!
剣道の達人、柔道も出来る! 足は飛び抜けて速いしスタミナも凄い!
ここまで運動神経が凄いのって、梨里奈くらいでしょ!」
「あ、これ解ける?」
「もう、梨里奈がそんなくだらない問題分からないわけ無いじゃん」
「そうだよね、何をしても表情1つ変えないからね、何でも出来る人って凄いよ!」
「弱音も吐かないし、どうすればそんな風に強くなれるのか知りたい!」
私の周りは、いつもこんな声ばかりだった…ただ1人を除いて。
「梨里奈ちゃん、今日も大変だったんだね。
ちょっとしんどそうだけど無理しないでね?」
帰り道、不意に私は親友に声を掛けられた。
「七美(ななみ)、不意に声を掛けないでくれ」
「良いじゃん、それじゃ今日も私の家に遊びに来てね!」
「あぁ、約束は守るよ」
彼女は本当にありのままの姿をいつも見せてくれている。
髪の毛を整えることはあまり無いのか、彼女は髪の毛が跳ねてることが多い。
髪の毛を染めている子が多い中で、彼女は黒髪。まぁ、私もだけどな。
服装はいつも質素だが、一貫して暖かい服装で行動している。
彼女は身体が弱いからな、身体を温めていないと体調を崩す。
そして化粧もしていない。それなのに彼女の笑顔はいつも明るかった。
服装だって、決して明るい服装では無いがいつも誰よりも明るく見える。
そして七美は…彼女だけは私に対してあんな事は言わなかった。
私が辛いと感じている時もそれを見抜いて労いの言葉を掛けてくれる。
そんな親友の隣に居る間だけは、私は私で居られる。
彼女の部屋に居る間は…何だか、のびのびと遊べる。
まぁ、あいつの家は私の家とは比べものにならないほどに大きいし
物理的にものびのびと遊べるんだけどな。
お嬢様学校に通えるほどの金持ちだからな。
私の場合は学費免除で通ってるが。
「梨里奈ちゃん、どうしたの? そんなに難しそうな表情しちゃって」
「え? あぁ、何でも無い」
「…もう、また自分の思ってること言えなかったの?」
「……言えない、私がありのままの姿を見せるのはお前の前だけだ」
「駄目だよ! もう、何度も言ってるけど私以外にもありのままでぶつかれる
そんな友達を作らないと! 大丈夫、梨里奈ちゃんなら出来るよ、頑張って!」
「そんな無責任に頑張れ頑張れ言わないでくれ…私だって頑張ってるんだから」
どれだけ頑張っても、私はその1歩を踏み出す勇気が無かった。
「大丈夫だって、皆、梨里奈ちゃんの事を分かってくれるって!」
「そんなの分からないじゃ無いか…」
「私と最初に話をしたとき、こうなるって分かってた?」
彼女に初めて声を掛けたとき…あぁ、私はまさかあの時
あの会話で七美と親友になれるとは思わなかったからな…
「大丈夫だって、何とかなるよ」
「……それでも、私…ん? なんだこれ…」
「あ、ここの謎解き難しかったら聞いてね、このゲームは得意だからさ」
「いや! 私は自力で解くぞ!」
「ふっふっふ~、さて梨里奈ちゃんに解けるかな~?」
「解く!」
こうやって、自分の好きなように遊べるこの時間。
この間だけは、私は私のままでいられる気がする。
くだらない事で意地を張ってみて、駄目な所を見せることが出来るのは彼女だけだ。
「ふぃ~、楽しかったね」
「あぁ…しかしクリア出来なかった…」
「あれは何周もしないと分からない問題だし、最初から分かる筈が無かったのだ!」
「な! それを先に!
…ま、まぁ良い。七美、そろそろ寝ないで大丈夫か? これ以上は身体に悪いぞ?」
「大丈夫だって、まだ9時じゃん」
「私の生活リズムではこの時間でいつも寝てるんだが?
それに、お前は病弱なんだから身体を労れよ」
「うー、病弱なのはどうでも良いけど。
まぁ、梨里奈ちゃんのリズムを崩すわけにはいかないね。
それじゃ寝よっか。また明日ね」
「あぁ、しかし泊めて貰って悪いな」
「私は嬉しいから良いよ」
…私も嬉しい、彼女と一緒に過せるのは。
「お姉ちゃん、起きてよ!」
「あ、弥栄(やえ)」
「また梨里奈さんと一緒に寝て!」
「もう、そろそろ中学生なんだからお姉ちゃんに甘えないでよ」
「あ、甘えてなんて無い!」
と、上の妹は言っているが、彼女の服装や見た目は姉にそっくりだった。
全て真似ているというのが分かる。
甘えてないと本人は言うが、彼女は姉に憧れているのが分かる。
「……」
「あ、久実(くみ)も来てたんだ、久実も恥ずかしがらないで出て来なさい」
「……う、うん」
そして下の妹、久実。彼女は姉とは違ってあまり元気な方ではないが
時折見せる笑顔は姉の明るい笑顔とそっくりだった。
姉よりも地味な見た目をして居るが、やはり七美の妹なのだと分かる。
「あぁ、また梨里奈の方に」
「……ふぅ」
そして、下の妹の方は何故か私に懐いていた。泊まったり遊びに来たりしたとき
たまに私の隣に座る。その度に頭を撫でてやるが、幸せそうな表情を見せる。
これがいつもずっと続く事を、私は願っていた。
「梨里奈ちゃん、今日も楽しかったよ、また今度一緒に遊ぼう」
「あぁ、そうだな」
「……それとさ、梨里奈ちゃん。
もしもの事がいつ起るか分からないからお願いしたいの」
「ん?」
「もし、私に何かあったら……私の事は忘れて、幸せに生きてね」
不意の言葉だったから少し呆気にとられてしまった。
そのお願い事に対し、私は何も答える事が出来なかった。
彼女は本当に病弱だ…今まで生きてきてるのが不思議なくらいに身体が弱い。
だから、その言葉の重みは……その事情を知ってる私にはよく分かった。
何も答える事は出来ず、私はただ彼女に何事も無いことを願うことしか出来なかった。
しかし、そのお願い事に対し何も言えなかったことを……私はすぐに後悔した。
「……七美」
私の願いは届かない。どれだけ願っても、叶わない願いは何とも呆気ない。
七美は死んだ…私のせいで、私の親友は命を落とした。
……私にもっと力があれば…彼女は死ななかったのに。
生まれて初めて…私は涙を流した。
そしてこの涙はきっと、私にとって最後の涙となるだろう。
「……もう11時……か…」
七美が死んだ病室…私はもうしばらくここに居ようと思っていた。
だが、七美の家族がやって来た…もう、私に居場所は無い。
私は涙をバレないように拭った……涙は、私に相応しくない。
「……っ!」
病室から出ようとした時、弥栄は私に何か言いたそうな表情をしたが
どうやらその言葉はかみ殺したようだった……
何も伝えることが無いのなら、私がこの場にいる理由はない。
私は病院から足下を向いたまま出た。
そして、病室から出たとき…私は視線をあげる。
私の目の前に広がったのは真っ暗な夜の光景……
この、何も映らないこの暗闇は…まるで、今の私の心情を表わしているようだ。
「僕と契約して魔法少女になってよ」
親友が死んで数ヶ月の時間が経ち、喋る動物が私の前に現われる。
「契約? 何を馬鹿な」
「契約してくれれば、君の願いを何でも1つ叶えてあげる」
「……本当か?」
「あぁ、どんな奇跡でも起してあげられるよ。
さぁ、君の願いはなんだい?」
……どんな奇跡でも叶う、そんな馬鹿みたいな話。
とは言え、そんな事を言ってきたのが
喋る小動物であったというなら、信じるには値するのかも知れない。
まさにファンタジーの世界。ならば奇跡もあるのかも知れない。
魔法少女というのはよく分からないが、奇跡の代償であるなら何でもやってやろう。
「……分かった、契約しよう」
「話が早くて助かるよ。それじゃあ、
仙波 梨里奈(せんば りりな)、君は何を願う?」
「……私が願うのは」
奇跡、私はどんな奇跡を願おう……私が願う奇跡は…願いたい奇跡は…
「……私が…願うのは…………、私が願うのは自分を越え続ける事が出来る才能だ」
私が望んだ奇跡は……自分を越え続けると言う奇跡だった。
居場所では無く、私は道化であり続ける事を願った。
それが私の生き方で、私はもう、この生き方以外を見られないのだから。
プロローグ終了後からは神浜に舞台が移ります。
そこからが本編なので、どうぞお楽しみに!