ネオマギウスとプロミストブラッドは
私達との戦力差を理解して
大人しくルールを決めることを了承してくれた。
「では、ルールを話し合いで決めよう。
とは言え、まずは最重要なルール。
魔法少女の殺害は禁忌だ」
「話の内容から、それ位は理解できるわぁ
で? その殺害を察知する方法はあるわけぇ?」
「あぁ、灯花、ねむ」
「はいはーい、私達が説明するね~?」
私の声に反応して、
灯花が嬉々として説明を始めた。
私達に見せてくれた資料を取りだし
それぞれの代表に手渡す。
「これが、今回私達が用意したウワサ」
「ウワサ?」
「まぁ、便利な能力だよ?」
「ウワサは僕が魔法を用いて展開する
事象に干渉する存在だよ。
ウワサはうわさを守る為に出現する
魔女とは違う、魔女に近い存在。
世界にルールを強要する魔法だよ」
「何を馬鹿な……」
とは言え、あっさりとは納得してはくれない。
ネオマギウスは当然理解してるだろうが
プロミストブラッドはいまいち把握し切れてない。
だが、神浜に来て既に何度かは遭遇してるだろう。
それが、ウワサだと理解できてないのかもな。
「平和アナウンサーのウワサ…」
「そ、誰かが殺意を抱いたら発動するウワサ」
だが、プロミストブラッドを少し放置して
灯花とねむが平和アナウンサーのウワサの概要を話す。
ネオマギウスはその説明で理解できたようだ。
「あー、つまり……この、ウワサって奴?
これは殺意を抱いたら周囲に教えるって?
えっと、神浜の内部限定で? うーん」
「分かりやすく言うと、殺意を抱けば
周囲の魔法少女にその情報が知れ渡り
即座に対処しに行動する事が出来る。
周囲に魔法少女が居ない場合は
強制的に殺意を抱いた魔法少女を隔離する。
ソウルジェムを破壊しようとした場合も
即座にこの効果が発動し、
殺意を抱いた魔法少女を隔離するシステムだ」
「良くわかんないけど…」
「まぁ、このウワサがあれば殺意を隠すことは出来ない。
正し魔女に殺意を向けた場合はこの限りでは無い」
多少納得し切れてないようではあるが
プロミストブラッドは少しだけ頷いた。
十七夜さんも一応は彼女達が
この内容を理解したと伝えるために
小さく頷いてくれた。
「まずはアリナ達がこのウワサを神浜に用意すからネ
これはアリナ達が強制的に行動するから
ルールの最も重要な部分は確実に施行されるってワケ」
「あなた達は最低限、殺意を抱いたらペナルティーがあると
そう理解すれば良いよ~」
「憎い神浜の魔法少女に対して殺意を抱くなって?」
「そうだ」
「それは、私達にとって不利になると思うんだよね。
あんたらは殺意なんて抱かないかも知れないけど
私達は確実に殺意を抱く。そうやって生きてきたんだ」
「あぁ、だがこのルールが無ければ
お前達は躊躇いなく、相手を殺そうとするだろう。
だが、私達は相手を殺す事を躊躇うから不利になる。
どう転んでもどちらかが不利になるしか無い。
なら、犠牲が出ない方が良いだろう?」
「冗談じゃねぇ! 樹里さま達が一方的に不利になるって!?」
「んぁ……」
樹里が叫ぶと同時に、周囲の魔法少女達が
何かに反応する。
私も反応した、殺意を察知しましたという言葉。
それは、平和アナウンサーのウワサによる物だ。
細かい場所まで教えてくれてるし
誰が殺意を発したのかさえも分かる。
「まさか、これが……」
「そ、平和アナウンサーのウワサによる効果」
「く……さ、殺意を抑えろって…なんだよこれ!」
「え? 姉ちゃんにはそう聞えたの?
私は姉ちゃんの名前と場所が…」
「はぁ!? じゅ、樹里サマは
殺意を抑えてくださいって聞えたぞ……
殺意を抑えない場合、隔離しますって…」
「これが、平和アナウンサーのウワサだよ」
「ひ、卑怯だぞ! 勝手にするなんて!
ルールを決めるんじゃねぇのかよ!」
「言っただろう? 最重要のルールを決めると。
僕達が用意した最重要のルールは
魔法少女の殺害は禁忌だというルールだ。
このルールは強制的に施行させて貰う」
「その気になれば、殺意を抱いた瞬間に
強制的に隔離することだって出来るんだよ?
でも、それをしないで警告だけですませてる。
大分、温情あると思うんだけどにゃ~?」
もうすでに施行されてるというのは
プロミストブラッドには怒りになるかもしれない。
だが、平和アナウンサーのウワサがどう言う物か。
それを明確に知って貰う為にも必要な事でもある。
こう言う形で周囲に知らせますよと教える必要性。
そして、ここで一歩だけ、相手に譲歩する。
「だが、殺意を抱くというのがお前達に取って
不利な要素であるのはある意味では当然だ。
感情の赴くままに動けないのは辛いだろう。
だから、ここでそちらが考えるルール
それを聞かせて貰おうと思う」
「それは、私達にルールの一部を決めさせると?」
「そっちが考えてるルールを聞いて
全組織が納得出来るように話し合うんだ」
「なら、これはどう? 参加する魔法少女を縛る」
「と言うと?」
「七美と梨里奈が争奪戦に参加出来ないようにする」
「ふむ、それは私達が恐いからか?」
「まぁ、そりゃ恐いよね、分かる分かる。
梨里奈ちゃんと戦いたいわけ無いし
私も戦いたくない。で、私も?
まぁ、それも分かると言えば分かるけど。
私の魔法はかなり魔法少女に強いしね」
「んだと!? お前らなんか恐くねぇ!」
「姉ちゃん、そんなに感情的にならないで」
「……ぼく達もそれが…」
当然、ネオマギウスもそれが良いと言うだろう。
当然だ、私達と戦うというのはリスクが凄い。
だが、残念ながらそれは出来ない。
七美が参加しないことは可能かも知れないがな。
「残念だが、それは出来ないだろう」
「どうして?」
「私の腕にはもうすでに、キモチの宝石があるからだ。
お前達の目的は神浜の自動浄化システムを奪う事。
その自動浄化システムを奪うためには
キモチの宝石を集める必要がある。
だが、キモチの宝石は既に私の腕にあり
この宝石を誰かに渡す方法は確立されてない」
「腕を落とせば良いだけの話でしょ?」
「あのだな、腕というのはそう簡単に落とす物じゃ無いぞ?
漫画の読み過ぎだろう、それ。
実際に腕を落とすだなんて冗談じゃ無い」
躊躇いなく相手に腕を落とせというとは思わなかった。
だが、彼女達は多分やるだろうな、必要なら。
「それに、その場合はルールと言うよりは
相手の戦力を削ってるだけだ。ルールじゃ無く、
手加減して欲しいと言ってるような物だ」
「てめぇ! 好き勝手言ってんじゃ!」
「でも、結構近いと思うんだよね、それ。
だけど、数を縛るのは必要な事だと私も思う。
そこで、どうかな?
キモチ争奪戦で戦う魔法少女を縛るとして
それぞれの魔法少女にコストを用意する」
「コスト?」
「ゲームとかでよくあるでしょ?
ソーシャルゲームとかでね。
ガチャで手に入れたキャラクターの
強さによってコストがあって
レベル次第でそのコストが増減し
パーティーに編成できるキャラを決める」
七美の案も、確かに面白いかも知れないな。
コストか、私はゲームを殆どしないからな。
ソーシャルゲームも結局殆どやってない。
久美がおすすめしてるアプリを入れたりはしたが
正直、ゲームをする余裕は無かったからな。
「まぁ、何が言いたいかは分かるけど」
「魔法少女の実力次第でコストを決めて
争奪戦に参加出来る魔法少女を決める。
例えばそれぞれが使えるコストは100で
私や梨里奈ちゃんのコストを多く決める。
梨里奈ちゃんは70、私は50とか30とかだね」
「梨里奈は100で良いんじゃ無いかしらぁ?」
「それだとあなた達が不利だから」
「はぁ? 何言ってんだよ!」
「私が本領を発揮できるのは1人の時だからな」
私が最大の力を扱えるのは1人の時だ。
誰も庇う必要も無く、ただ自力だけで戦う。
これが、私が最も輝く状態だと言える。
勿論、それは昔の私だが、七美はあえてそう言ってる。
私が孤立して無理をするのを避ける為だろう。
そして同時に、嘘は付いて無いとも言える。
事実、私が最も強くなる瞬間は1人の時だ。
私1人であれば、キモチは容易に倒せるからな。
恐らく前のキモチ戦、私1人で無ければ
周囲を庇う必要もあるだろう。
あの極太レーザーも仲間を救うために立ち回り
私はダメージを喰らってた可能性は十分ある。
だから、私は1人だった方が強いのは事実だ。
「実際、梨里奈が負傷したのは仲間を庇ってが多い…」
七美の言葉に時雨が反応し、小さな声で呟いた。
彼女は何度か私が戦ってる所を見てたのだろう。
その度に負傷は誰かを庇ってが多いと知ってる。
実際、私の負傷は大体が誰かを庇っての負傷だ。
完全に1人で戦った場合は大体無傷で相手を圧倒してる。
それが、私の強さだ。私は孤立した時が最も強い。
「つまり、梨里奈は1人にするべきじゃ無いと」
「そうだ、自分で言うのもなんだが
私は1人である時の方が強いからな」
「何故、わざわざ自分の弱点を知らせるわけ?
七美もそう、何故梨里奈が
最大のパフォーマンスが出来る状況を潰したわけ?」
「だって、私達の狙いはあなた達の殲滅じゃ無いもん」
「そう言う事だ、私達の狙いはお前達に勝つ事じゃ無い」
「何を考えてやがる…」
「切り札というのは最初から切る物じゃ無い。
相手が強すぎる場合を除き、
切り札は確実に決ると確信したときに切る物だ。
確実に勝負が決る瞬間以外じゃ手の内は見せない」
「……どう足掻いても、あんた達の掌の上という事?」
「それは分からないな、
お前達がどう動くかも想像しか出来ない。
だが、手を少しだけあかすのだとすれば
私達の目標は全魔法少女達の解放。
その全魔法少女の中には当然
プロミストブラッドもネオマギウスも居る。
私達は本来、敵対する必要は無いんだ」
「そう言う事、最初から言ってるけどね」
「……」
私達が何を考えてるのか分からないからだろう。
結菜達は私達を睨むことしか出来てない。
何も言えない状態だという訳だ。
当然、時雨とはぐむも何も分かってない状態だ。
「で、どうかな? 私が考えた案。
キモチ争奪戦はそれぞれコストを決める」
「でも、それは解釈次第でどうにでもなるわ。
組織の感覚でいくらでもコストを選べる」
「じゃあこうしよう、
僕達が固有魔法の効果を把握して
コストを測定するウワサを用意するよ」
「ウワサってのはそっちの技術だろう?
なら、お前らに有利になるように
いくらでも調整出来るだろうが」
「僕らはただ勝つために戦ってるわけじゃ無い。
君達が納得出来るように調整してるんだ。
ひとまずは僕達が用意したウワサを試してみて
気に入らない場合は声を上げてくれれば良い」
「実際、私達が本当に有利に立ち回りたいなら
今回の平和アナウンサーのウワサを用意する。
それだけで事足りるんだよね~」
「あぁ、私達としては魔法少女を殺されなければ
それで事足りるからな。
しかしねむ……ウワサを作るのは体に負担が」
「大丈夫だよ、
大した効果があるウワサじゃ無いしね」
「……なら、話し合いは一旦ここまでね。
また、ウワサとやらが出来てから」
「だね」
「おい、なんでそんなにあっさり引くんだよ!」
「私達に取って有利なルールを考える為よ」
「だな、そう言う時間も必要だろう。
では、また後日……再び集まってくれるか?」
「ふん」
ここで完全に決定とまでは行かなかったが
ひとまずはルールは了承してくれたようだ。
向こうが有利になるルールを決めるまで
私達は私達で話をどう進めるかを考えよう。