七美の誕生日と言う事もあり
今日は色々と用意をすることにした。
「今日は七美ちゃんの誕生会ね」
「はい、今日はバイトも休みを貰いました」
「じゃあ、梨里奈お姉ちゃん!」
「りょ、料理、教えて……」
「あぁ、そのつもりだ」
今日は弥栄と久実に料理を教える。
正確にはケーキの作り方だ。
久美は私に対して堂々と教えてと請うが
弥栄はちょっと申し訳なさそうにしてる。
やはり、マギウスの翼として敵対したり
私を瀕死にしたり、罵詈雑言を言ったりと
その時のことを気にしてるらしい。
これは七美から聞いた話だ。
本人は言えないだろうしな。
だが、七美には言えるという感じか。
「では、ケーキを作る方法を教えよう」
私は2人を台所へ連れて行き
ケーキを作るための材料を取り出した。
今回は私は極力手は貸さないで置こう。
2人のためにも大事な事だ。
「では、軽い手順を教えよう」
「はい!」
2人が同時に返事をして、私は小さく頷く。
その後、細かい手順などを2人に伝えた。
私の話を聞いた2人は難しそうな表情をするが
それでも私が伝えたとおりに料理を始める。
「えっと……こ、これ位ですか?」
「目測だが恐らく少ないな、細かい重さとかは
この道具を使って測ってくれ。
目測だと確実では無いだろうからな」
「は、はい」
「必要な重さは教えたよな?
その通りにしてみるんだ」
「分かりました!」
「えっと、た、卵はこれ位?」
「もう少し混ぜた方が良い、牛乳はもうちょっと」
「うぅ、わ、分かった」
2人に同時に教えながらケーキが出来ていき。
2人は伝えたとおりの手順を達成していく。
少しだけしんどそうな表情ではあるが笑顔だ。
「え、えっと……次は……」
「つ、次は確かこっちだよ」
「そ、そうだったっけ……」
たまに間違った手順をしそうになるが
私は極力口は挟まないようにしてる。
どうしてもその失敗に気付けない場合であれば対処するが
考えてる間に即座に伝えるのは良くないだろう。
「……」
「ど、どう? あ、合ってる?」
「そうだな、手順が違うかな」
「え!? ど、何処が!?」
「ふふ、少し考えて分からなかったら
私にもう一度声を掛けてくれ」
「わ、分かったよ、少しは自力で考えないと…」
2人で少し迷って、ようやく気付いたようだ。
「こ、こっちか!」
「そうだな」
「い、急いで続きをしなきゃ!」
そのまま2人はちょっとだけぐだぐだしながらも
私のアドバイスを聞きながらケーキを完成させた。
形は少しだけ歪になってしまっては居るが
これもまた、手作りの醍醐味という物だろう。
七美もこのケーキを見て文句は言わないだろう。
妹達が必死になって頑張って作ったケーキだ。
そんな素晴らしいケーキに対して
文句を言う筈も無い。
「ちょ、ちょっと形が……
七美お姉ちゃん、お、怒るかな…」
「だ、大丈夫……多分」
「そう自信を無くすな、怒るわけが無い。
お前達の知っての通り、七美は優しいからな。
ちょっと形が歪になった程度で怒るはずが無い」
「そ、そうよね……でも、少し申し訳無い気持ちが」
「大丈夫だ、私が保証しよう。
さ、プレゼントの準備は大丈夫か?」
「勿論だよ!」
「お姉ちゃん、喜んでくれるかな…」
「大丈夫だ、自信を持て」
さて、私の方もプレゼントを用意してる。
今回は七美が大好きなゲームを買ったからな。
しかし、ゲームは本当に高かったな…
私はあまりゲームには詳しくないから
七美が持ってた様なタイプのゲームを買った。
複数人で出来るようなゲームだから
多分、七美も喜んでくれるはずだ。
弥栄達のプレゼントは2人で用意してたな。
2人は服を縫って渡すことにしたようで
かなり前から私が教えながら作ってた。
2人に色々と教えてた影響で
今年は手作りの何かは用意できなかったが
きっと七美も怒ったりはしないだろう。
「それじゃあ、七美が帰ってくるまでに。
パーティーが出来るように準備しよう」
「うん!」
「2人はやちよさん達と合流して準備を手伝ってくれ。
私は料理を用意するからな」
「お願いね、美味しい料理」
「あぁ、任せて欲しい」
2人は私の言う事を聞いてくれて厨房から出た。
私はそれを確認した後、料理を始める。
私の作れる料理の中でも最高の料理。
それを振る舞うために今日も気合いを入れよう。
「よし、やるか」
気合いを入れるためにエプロンを改めて締めて
本気の料理を開始した。
ふふ、何かに全力を出せる……それは本当に楽しい。
「よし、出来た」
しばらく時間が経ち、料理が完成した。
今日のために七美が大好きな食材を集めたからな。
いつもの料理では無く、最高の料理。
味見もしたが、完璧だと言えるだろう。
急いで出来た料理を皿に盛った。
七美が帰ってくるまでは勘だが多分残り10分程度。
弥栄と久美が作ったケーキも完成してるな。
七美が帰ってきたときに1番美味しいタイミングで
料理を出しておく必要があるだろう。
よし、準備が出来たな。
「やっふー! 良い匂いがするー!」
「お帰り、七美。どうだった? バイトは」
「皆からお祝いされちゃったよー! 大変だったけど」
「やっぱり梨里奈ちゃんが居ないと大変だしね。
でも、七美ちゃんも大活躍だったよ!」
「あはは! ありがとー、鶴乃ちゃん!」
「あはは! どういたしまして!」
「大変だったけど、ご褒美があるって思うと
やっぱり頑張れるね」
ももこ達も一緒に来たな。
「じゃあ、準備もある程度は出来てる。
まずは服を着替えて来た方が良いんじゃ無いか?」
「そうだね、着替えてきまーす!」
「あたしらはどうする?」
「レナは着替え持ってきてないし……」
「誕生日の話があったんだし、予想出来ると思うけど」
「な! じゃ、じゃあ、かえでは準備してるわけ!?」
「当然だよ」
「あはは、実はあたしも…」
「な! だったらレナにも着替え持ってきた方が良いとか!」
「言ったのに聞かなかったのレナちゃんだし」
「は、はぁ!? レナ何も聞いてないんだけど!?」
「まぁまぁ、そう喧嘩するな。
その服も十分可愛いんだからな。
お気に入りの服で汚れるのが嫌だと言うなら
私の上着を貸すから、その上着を着れば良い」
「い、いや良いし、そんな……
て、てか、可愛いって言わないで欲しいんだけど!?」
「そう怒るな、もう少し自分に自信を持て。
お前は十分可愛いんだ、少しは誇った方が良い」
「う、うぐ、な、何よ!」
レナは自分にあまり自信が無いようだからな。
しっかりと支えて、自分に自信を取り戻す様に
私達がフォローしてやらないと駄目だろう。
「梨里奈ちゃーん、本当正直思うんだよね
この七美さんは」
「どうした? 下着姿で、早く着替えた方が良いぞ」
「そう、着替えるよ? 着替えるんだけどその前に1つ。
梨里奈ちゃん、朴念仁って言葉知ってるよね」
「当然だ、無口で無愛想な人や、
頑固で物わかりの悪い人のことだな。
本来は違うが、今の国語ではこの意味が主流だ」
「違うよ! 今の主流は
恋愛事に関して疎過ぎる人の事!」
「そうだな、確かに私は恋愛はしてないし」
「あのだね、そう言うわけじゃ無くてだね。
いや、そうなんだけど、そうじゃ無くて
女の子に対してしれっと恥ずかしい事言うし!」
「何処がだ?」
「……まぁ、梨里奈ちゃんだしね。
あ、レナちゃん、梨里奈ちゃんに惚れちゃ駄目だよ」
「誰が惚れるか!」
そもそも同性だろうに、たまに七美はそう言うことを言う。
まぁ、七美が好きな漫画とかの影響かも知れない。
「あの子、アニメとか好きなのかしら」
「七美お姉ちゃん、アニメ大好きだし。
漫画もゲームも大好きだからね。
小説も好きでよく読んでるんだって。
確かライトノベルって言うのが好きらしくて」
「ぐぬぬ、何よもう!」
「そう顔を赤くしなくても良いじゃ無いか。
ただの冗談だって」
「それ位分かってるけど!」
本当に七美は良く冗談を言うからなぁ。
「よーし、お待たせー」
「じゃあ、料理食べようか」
「うぐぐ……」
「それじゃ、いただきまーす!」
全員で私が作った料理を食べ始めてくれた。
全員、とても美味しい美味しいと言ってくれて
全力で作るとやはり楽しいと感じる。
「ふぅ、ごちそうさま! やっぱり最高だね!
よーし、梨里奈ちゃん!」
「どうした?」
「私のお嫁さんになってくださーい!
もしくは旦那様になってくださーい!
ふふ、しっかりと養ってみせるよ!」
「ふふ、いつか聞いた言葉だな。
だが、私の答えは決ってる。
私はそっちの気が無いからな。
これからも仲の良い親友で居ような」
「またフラれたー!」
いつも通りの楽しそうな笑顔で
七美は私に抱き付いてきた。
本当に七美は反応がオーバーだな。
「本当に仲が良いわね、あなた達」
「えぇ、親友ですから」
抱き付いてきた七美を軽く撫でる。
七美は犬の様な反応をワザとしてるな。
「よーし、じゃあ次だね、私が楽しみな事」
「あぁ、弥栄、久美」
「う、うん!」
2人が台所へ行き、2人で作ったケーキを持ってきた。
作ったときと変わらず、ケーキは僅かに歪んでるが
七美はそのケーキを見ると同時に笑顔になった。
「待ってました! 美味しそうなケーキ!」
「少し歪んでるわね、梨里奈が作ったんじゃ?」
「これは弥栄と久実が協力して作ったんだ。
私も2人に指導はしたが手は殆ど貸してない」
「り、梨里奈お姉ちゃんが作ったケーキと比べると
ど、どうしても劣るけど……で、でも愛情は!」
「うん、分かってるよ2人とも、ありがとう!
ふふふ、なんと美味しそうなケーキでしょう!」
「ちょっと歪んで、少し焦げてるけど…」
「ノンノン、美味しい物はどんな物でも美味しい。
2人が頑張って作ってくれたケーキが
美味しくないわけが無いんだよね!
梨里奈ちゃんのケーキと同等の美味しさに違いない!」
七美がこう言う反応をするのは容易に想像出来た。
七美はこう言う子だからな、だから妹にも慕われてる。
「さぁ! その美味しそうなケーキを分けて欲しいのです!」
「う、うん!」
「でもその前に、まだロウソクを消す必要があるぞ」
「あ、そうだね! じゃあ、やりまーす!」
いつも通りの歌の後、七美がロウソクを吹き消す。
「よーし! じゃあ、ケーキを分けて欲しいの!」
「う、うん!」
七美の言葉を聞いて笑顔になった弥栄と久実が
あまり慣れない手つきでケーキを分けた。
私も少しだけ手伝うには手伝ったが
殆どは弥栄と久実の2人で分けた。
そして、それぞれにケーキの切れ端が行き渡る。
サイズはバラバラではあるが、1番大きいのは
言わずもがな、七美のケーキだった。
「そ、それで良いの?」
「あぁ、大丈夫だ」
私が選んだケーキは焦げてしまってる部分だ。
どうしても失敗というのはあるからな。
「むむ、梨里奈ちゃんのケーキ美味しそうだね!」
「ふふ、そうだろう? だが、七美のケーキも
美味しそうだな」
「勿論だよ! じゃあ、交換する?」
「いいや、私のケーキの方が美味しそうだからな」
「じゃあ、一部交換で!」
「……よし、じゃあそうしよう」
七美の意見をしっかりと聞きながら
お互いに交換してそれぞれのケーキを食べた。
やはり愛情は大事だな、とても美味しい。
「本当に仲が良いですね」
「俺も姉ちゃんとあんな風に仲良くしてぇ!
うぅ! 滅茶苦茶羨ましいぜ……」
「うぅ、羨ましくなんか無いし…」
ふふ、今日は何とも楽しい日になったな。