七美の誕生会を終えて
少し時間が経って夏休みだ。
話し合いはあの後から時間が経つが
まだ開始できてないというのが実状。
理由は全員がまだ悩んでたからだった。
「あちらもかなり慎重に準備してるわね」
神浜マギアユニオンの定例会議。
私はこの場には来ない事になってる筈だが
結局、私もこの場所に来ることになった。
「梨里奈、ウワサの調整はどうなった?」
「えぇ、今は平均を出す形で
コストを割り出すように調整出来たそうです」
「だが、マギウスの3人が来てないって事は
まだ完成してないって事でいいんだな?」
「えぇ、ある程度の形は出来てるとは言え
実用性にはまだ……正確には私の数値ですね」
「ふむ、今の仙波君だとコストが50になるか。
そして、君のコストを大きく上げる様に調整すると
今度は君以外のコストが低くなりすぎると」
「そう言う事です」
やはり心を読めるというのは便利だな。
会話をする事も無く把握して貰えるとは。
「やはりあなたがあのウワサの障害なのね」
「えぇ、そうなりますね。
私が問題でウワサを完成させる事が出来ない。
とは言え、私を放置というのはお互いに納得出来ない」
「そうだな、お前の存在はアタシ達からしても
重要な切り札だからな」
どうしても私はルールの枠に入れないと駄目だからな。
そうしないと、バランスが崩壊してしまうだろう。
「本当、何故あなたの魔法がコストが1なのか。
それだけがさっぱり分からないわ」
「私もサッパリですね」
私が感じた限界突破の魔法は
汎用性の塊のような固有魔法だ。
その汎用性が高い固有魔法が
まさかコスト1で、使い物にならない。
そう評価されるほどに弱い魔法だった。
私には何故かさっぱり分からない。
「良かった、会議終わってなかったね」
「あなた達」
私達が会話をしてると、マギウスの3人が来る。
この場に来たと言うことは、調整が終わったか?
「ここに来たと言うことは、調整が終わったの?」
「そうだね、だけど同時に
梨里奈の魔法の事も調べたんだ。
その結果が出たからやって来たという形だね」
「ほぅ、私の魔法が?」
「うん、ウワサを改良して情報を増やしてみたんだ。
その結果……まぁ、梨里奈の固有魔法が
何故評価が1だったのかが分かった」
「そんな事まで出来るのか…」
「魔法を識別してコストを割り出してるわけだから
ちょっと改良すればそれ位出来るのさ」
「その結果、コスト1は当然だったってワケ」
「と言うと?」
「はい」
そう言って、3人が私達に紙を渡してくれた。
恐らく、魔法測定器のウワサから出てくる奴だ。
「限界突破の魔法、
使い物にならない固有魔法。
一度使えば、突破した能力が限界を越え過ぎて
強化した対象がボロボロに崩壊してしまう。
身体能力を強化すれば、それだけで危険であり
腕力を強化すれば、激痛が走り動けなくなるし
無理矢理行使し続ければ腕が粉々になるだろう
更に魔力消費も激しく多用できず
もはや呪いに近い固有魔法である」
「……」
「こ、この魔法を扱う事が出来るなら
固有魔法はそもそも必要無いだろう」
い、1回だけで肉体がボロボロになる?
そんな馬鹿な……私、滅茶苦茶使ってるんだが。
更に魔力消費も激しいだと?
馬鹿な、私はこの魔法
消費が少ないと感じてたんだが?
「……間違いだろ、私は何度も使ってるぞ
それに消費も軽いと感じてたし……」
「そ、だからあんたが異常だったってワケ
本来使えもしない魔法を使えてる。
あんた以外なら、とっくにブレイクしてるってワケ」
「つまり、もし梨里奈以外が限界突破の魔法を
用いてしまった場合、その相手は」
「このウワサが正確なのを見抜いてるとすれば
多分、体がボロボロになっちゃうんじゃ無いかな?
更にすぐに魔力がカラカラになる」
「だが、第六感も限界突破出来るし
治癒能力も限界を越えてきたぞ? 私は。
身体能力なんて何十回も越えてきたし
環境適応能力も限界を越えてきたし
最近は魔力も限界突破を用いて強化した。
ここまで強化しても、私は何も問題が無い。
魔力も大して消耗してなかったし……
確かに痛い事は多いし、魔力が枯渇したりしたが
流石に魔力が無くなったり、腕が粉々には……
いや、腕が吹っ飛んだ経験はあるし
両足の骨は粉々になった経験はあるけど」
「ふ、普通は死んでるんじゃ無いかな、それ…」
「確かに弥栄も死者を蘇らせてるみたいとか言ってたが…
まぁ、あの2人のお陰だが、腕も両足も両方あるのは」
「おい! 腕が吹っ飛ぶとか経験出来ないだろ!
てか、当たり前の様に言いすぎじゃ無いか!?
と言うか、なんで生きてるんだよ!」
「その、実際の経験ですし…
生きてるのは、親友の妹達のお陰としか」
ワルプルギスの夜と戦った時は本当に危うかった。
腕が吹っ飛ぶとは正直思わなかったしなぁ。
「本当、聞けば聴くほど、ワルプルギスの夜は
とんでもない魔女だったって分かるよねー」
「原因はあなた達じゃ無いの」
「今は本当に失敗したと思ってるよ。
実際、梨里奈が言ってた通り
最悪、イブでも食べられなかったかも知れないね」
「アリナ的には計画通りでも良かったケド
あれで梨里奈と会えたし、むしろ良かったかもネ」
しかしそうか……3人が用意した魔法測定器のウワサ
そのウワサが私の魔法をそう評してたから
私のコストが最低値だったという訳か。
「因みに戦闘能力の評価もでてるよ
あなたの評価は化け物だけど」
「酷いな、それ」
「大体の人が思ってると思うよ?
梨里奈の能力は化け物染みてるって」
「うーん、確かに色々と滅茶苦茶だしな」
「で、その両方を合わせて
梨里奈のコストは500だね
ほぼ自力でこの数値だ、魔法はほぼ考慮されてない
むしろ、魔法が足を引っ張ってもこのコストだね。
因みにアリナは500、灯花は700、僕は1000だ」
「やはりお前達のコストも凄いな」
「私達は魔法と戦闘力の両方の評価が高水準だからね。
魔法が異常に評価が低いのにアリナと同じコストである
梨里奈の方が明らかに異常なんだよねー」
「実際、アリナもあんたに負けるのは
もう仕方ないって思うワケ」
「しかし、コスト500か……重いな、自分達はどうだ?」
「試すね-」
今度は全員の写真を撮ってコストを見せてくれた。
やちよさんは300、十七夜さんは200、ひなのさんは150だ。
「全体的にコストが高くなってるわね」
「そ、でも全体的に高いと言うなら
コストの上限も決めやすいでしょ?」
「だが、仙波のコストが平均よりちょっと上程度なのは
向こうからしてみればいやなことでは無いか?」
「そこはこっちが譲歩するしか無いよね。
梨里奈のコストは500にプラスいくつか乗せる。
状況として、300か400だね」
「そうなれば、私のコストは800か900
かなり圧迫することになるな」
「それが目的だからね、向こうからしても
梨里奈が参戦したら勝ち目が薄い戦いになるから
少しでも制約をつける為のルールだし」
実際、私達が提案したルールだからな、これは。
だから私達が不利になるのは多少仕方ないだろ。
それに所詮は私を押さえるためのルールでしか無い。
私以外のユニオンが参加する場合であれば
大した縛りにはならないだろう。
「本当にお前達はこいつの事、かなり評価してるな。
アタシはこいつの動きを見たことが無いから
なんであんたらが評価してるのか
さっぱり分からないんだが」
「仙波と戦闘した敵の代表者達が
全員、梨里奈とは戦ってはならないと
そう判断するくらいには仙波は強いからな」
「実際、今回ルールを取り付けるまで持って来たのも
梨里奈の強さありきだったしね。
でも、梨里奈も1人だけだし無茶をしてる。
可能なら、梨里奈を含めないで勝ちたいよね。
あくまでこちら側の切り札として動かしたいし」
「必要とあれば、私はいくらでも無茶をしますよ」
「止めなさい、本当に体が壊れかねないわ」
やはり心配してくれてる様子だな。
やちよさんは私の戦いを見てるし
戦う度に無茶をしてるのも知ってるだろう。
更に、私の固有魔法が私以外が扱えば
体が壊れる様な魔法だというのも発覚し
より一層、私の事を心配してくれてるんだろう。
「だね、出来れば梨里奈はどうしても勝つ必要がある。
そんな勝負以外では参加しない方が良いだろうね」
「そうか……でも、1つだけわがままを言わせて欲しい」
「と言うと?」
「ネオマギウス代表の2人のどちらかが出て来た場合は
私が参加しても良いか?」
「何故?」
「その2人に自信を付けてもらう為ですよ」
「……そう、必要な事なのね」
「はい、重要な事です」
「確かに自分もあの2人には自信を与えるべきだと思う。
心を読んだが、あの2人は今のままだと
組織をまとめ上げることが出来るようには思えない」
「えぇ、だから自信を付けさせる必要があります。
そして、私にも勝てる見込みがあると思って貰う
その必要だってありますからね」
「あなたに勝てる見込みがあると思って貰う?
それは何故かしら、あなたには勝てないと
そう感じさせる方が良いんじゃ無いの?」
「私が強すぎれば奴らは搦手を使うからです。
平和アナウンサーのウワサが魔法少女同士にしか
反応しないと勘付かれるのは時間の問題。
だから最悪の場合、一般人を狙う可能性もあります。
人質を取ったりして、ユニオンの連携を崩す。
そう言う手を使ってくる可能性も否定できない。
例えば……内部軋轢、1番危険なのは東」
「む、自分達か…」
確か大東区は差別されてた経験があったらしい。
そして、西への劣等感や魔法少女同士の争い。
そう言う問題もあり、最悪の場合内部分裂をする。
しかし……なんだ、こうやって事象を思い起こすと
神浜は妙に魔法少女同士の争いが多いな。
混沌としてるというか殺伐としてるというか。
いや、プロミストブラッドも居る訳だし
魔法少女が多いと争いが起こるのは仕方ないのか。
実際そうだな、魔女を倒さないと駄目だしな。
魔女を倒さないとグリーフシードが手に入らない。
グリーフシードが手に入らないと死んでしまう。
魔法少女が多いとグリーフシードの争奪戦になる。
魔法少女同士が争ってしまうのは必然か。
神浜が結局協力関係を築けてるのも
グリーフシードを大して必要としてないからでもある
ドッペルがあるから、それを用いれば良いだけだしな。
考えれば考えるほど、私達が解放をしなくては駄目だと
そう感じてしまう。余裕がある人間だけだからな
状況を大きく変えることが出来るのは。
「ふむ、なる程……」
「例えば洗脳の魔法があるかも知れません。
それを一般人に掛けたりして
東と西に軋轢を生み連携を崩す。
あちらにどれだけの手駒があるか分かりませんが
そんな手駒があれば、その様な手だって打てる。
戦いで勝てないなら、足下を崩すのが戦いの必定。
私達は防衛側ですから、足下を崩されるのは困る。
だから、あちらに私にも勝てると認識して貰い
まずは私を殺す事を考えて貰う」
「な!? 殺すって!?」
「私をいかに殺すか、その手を考えて貰い
ユニオンに勝つための手は後で考えて貰う。
まずは私を殺す。その事に集中して貰う為にも
私にも勝てると、私も殺せると、そう考えて貰う為に
私は必要な場面で、わざと負けます。
絶対に勝たないといけ無い場面であれば勝ちますけど」
「当たり前の様にリスクが高い手を使おうとするな!
なんだ! 最悪の場合、お前は殺されかねないぞ!」
「大丈夫です、魔法少女達の解放には私も必要です。
だから、私は死ぬつもりは決してありません。
あくまで他の組織に私にも勝てる見込みがあると
そう認識して貰い、同時にネオマギウス代表2人に
自分達は凄いと自信を持って組織を率いさせます」
「あんたに凄いリスクがあると思うケド?
ま、どうせ何を言ってもやるんだろうケド」
私の言葉で他の代表達は固まってる。
当たり前の様に私を餌にしてる訳だからな。
だが、必要な事だと私は思う。
私に勝てると、私を殺せるかも知れないと
そう認識して貰えば、奴らが考えるのは
私を戦場でいかに事故に見せかけて殺すか。
あるいは私をいかに神浜から引き離し
神浜の外で殺すかを考える様になる。
そうなれば、ユニオンの足場を崩す
そんな搦手を考えない可能性はあるだろう。
だが、私が圧倒的な強さを見せ続ければ
奴らはユニオンを瓦解させるために搦手を使う。
一般人を利用した扇動を使う可能性もあるし
洗脳魔法を使って大きく状況を崩壊させるかも知れない。
あまりにも軋轢を残しすぎれば、
魔法少女が解放されても
後に神浜は大きな問題を起してしまうだろう。
だから、私に集中して貰う必要がある。
色々と手はあるだろうしな。
一般人の殺意は探知できないと気付けば
洗脳魔法などがあるとすれば
私を殺す為に一般人を洗脳して暗殺も狙うだろう。
他にも手はあるだろうが、私は勘が鋭いから
暗殺にも気付けるだろうし、あちら側に
無駄な作戦を考える時間を消費して貰える。
時間を掛ければ掛けるほどに
いろは達の説得も進む可能性もある。
私達に必要なのはキモチを集めることじゃない。
いろは達が奴らを説得する時間が必要なのだから。
私に集中して貰い、時間を稼ぐべきだろう。
「なる程、あくまで自分達の目的は時間稼ぎ
君に集中させて、時間を稼ぐ作戦か」
「はい、そう言う事です」
「いくら何でも無茶よ! 危険な事はしないで!」
「当然、僕達だって梨里奈に危険な事はして欲しくない。
だけど、梨里奈の言う事も一理ある。
お姉さん達があいつらを説得するには時間が必要だ」
「一般人に手を伸ばされると困るもんね……
だからさ、ベテランさん……
梨里奈がする無茶な時間を少しでも減らすために
あなた達が少しでも早く
あの組織を説得するしか無いんだよ」
「当然、アタシも説得をすれば良いんだろ?」
「そう言う事、アリナ達に必要なのはそれだからネ
あいつらにアリナ達と同じビジョンを見て貰う。
その為にも説得するしか無いんだよネ」
「……そうね」
やちよさんも渋々ながら了承してくれたようだ。
よし、ならこのまま会議まで休むとしよう。
これから始まるであろう戦いに備えてな。