魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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口寄せ神社

18時30分…私は約束の時間までに駅に移動した。

どうも周囲は騒がしい…まぁ、この時間帯だしな。

帰宅するために来ている学生が多くても不思議はないだろう。

 

「来たわね、これで後は鶴乃だけね」

「あれ? 鶴乃ちゃんの事、話しましたっけ…」

「え? まぁ自称最強の魔法使いと言えば」

「あーーーー!! やっちよしっしょぉー! だーーー!」

「あぐ!」

 

私達が少し話をしていると、凄まじい勢いで鶴乃が飛んで来きて

やちよさんに抱きついた…かなり力が強いのだろう。

やちよさんは鶴乃の抱き付きで少し顔をしかめた。

 

「し、知り合いだったんだな」

「もしかして、いろはちゃんが約束してたのってやちよ!?

 まさか2人が知り合いだなんて思わなかったよ!

 あ、もしかして梨里奈ちゃんもやちよと知り合いだったりするの!?」

「ん、まぁ色々と助けて貰ったりしてたからな」

「そうなんだ! やったね、嬉しいね! また一緒に戦えるなんてねっ!

 ふんふん!」

「私はそうでも無いわ…」

「うえぇぇ!? なーんでー!?」

 

一体何があったんだ? なんで一旦別れたんだ?

まぁ、会話の雰囲気から考えてどうやらやちよさんが

鶴乃と別れたという感じだな…あの子は、離れるつもりはないみたいだし。

 

……深く追及してみたいが止めておいた方が良いか。

何か大事な理由があるのだろう。出来れば人に話したくない理由が。

それを追及しない方が良いだろうからな。

 

「えっと、知り合いだったんですね」

「知り合いじゃないよ!? 私達は同じチームだからね!」

「そうなんですね」

「同じチーム…やちよさんの反応から考えてもそんな風には…」

「過去の話だからね、まぁ良いわ。鶴乃も連れて行きましょう」

「行こう行こう!」

「この、引っ付き虫はね、1度引っ付くと離れないし。

 それに今回は人数が居る方が良いから…

 猪突猛進な所を除けば鶴乃の実力も確かだしね」

 

一緒に魔女と戦ったときに鶴乃の実力は良く分かったからな。

猪突猛進な所を除いたら、確かにかなり強いだろう。

と言うか、その部分がなければやちよさんと互角レベルだと思うし…

 

「流石、自称最強ですね」

「えっへん!」

「…自称込みで褒められて嬉しいのか…」

「それで、環さん、仙波さん」

「はい」

「なんでしょう?」

「鶴乃を剥がしてもらっていい? さっきから重くて…」

「あ、あはは…ほら、鶴乃、そろそろ離れた方が良い言われてるし」

「はーい」

 

意外とあっさりと離したな。ここで時間を取られるよりはマシだが

もう少し粘るかと思ったぞ…予想外だな。

その後、私達は4人で水名神社へ向った。

夜の神社か…まぁ、昼とは違って結構雰囲気違うな。

 

「夜の神社って…雰囲気が違いますね…何だか恐いです」

「夜になると照明も落ちるからね。

 でも、こう言う神社も中々おつだと思わない?

 まぁ、ああいうのが居ると台無しになるけど」

「夜の神社って初めて来たよ! こんな風に森に囲まれてると

 都会じゃないみたいだね! あ、幽霊とか出てくるかも!

 あの話に出て来た男の人の幽霊とか!」

「いや鶴乃、出てくるとしたらその男性の幽霊と

 女性の方の幽霊もセットで出てくるだろう。単体は無いと思うぞ」

「ちょ、ちょっと2人して恐い事言わないでよ!」

「恐がりだな、いろは。そもそも恋を叶えた幽霊が出て来たとすれば

 それは恐怖というか奇跡の象徴みたいな感じでむしろ良いじゃないか」

「それでも、幽霊は恐いですよぉ!」

 

こ、恐いのだろうか。やっぱり…私は幽霊をイメージしてもまるで恐くないんだが…

うーん、そう言う所が女の子っぽく無いと言われる理由なのかも知れない。

七美にも言われてたしな……

 

「ほら、2人とも、のんびり話してる暇があるの? ほら、早く行くわよ。

 それに、動き回ってたら危ないしね」

「大丈夫だよ、ただの砂利道で、あ!」

 

私の近くで鶴乃がつまずき転けそうになった。

私はその姿を見て、無意識のうちに彼女が転けるのを止めていた。

 

「あ、あっぶなぁ、えへへ、ありがとね」

「……」

「ん? どうしたの?」

「あ、いや、何でも無い……足下、気を付けろよ。

 何でも無いちょっとした怪我でも酷い事になるかも知れないんだから」

「あ、うん」

 

……人が転ける姿は何度か見てきたはずなのに

何故だろう…ただ転けるのを止めただけなのに…心の底から安心している私が居る。

 

「あ、外苑の門! 本当に夜は閉まってるんだね!」

 

確かに外苑の門が閉まってるな…なる程、これは気付けない。

 

「えぇ、だから私も気付けなかったのよ…」

「そう言えば、お参り出来ませんね…」

「でも、お参りするしかないでしょ?」

「へ? それってもしかして…」

「察しが良くて助かるわ、これから内苑に侵入するのよ」

「やっぱり!?」

「……ほ、本当にするんですか? 見付かったら…」

「そうですよ! 怒られちゃいますよ!」

「じゃあ、私と鶴乃で行ってみるわ。鶴乃は行くでしょ?」

「もっちろん!」

 

うぅ、まさかこんな事態になろうとは…ど、どうしよう。

 

「環さんと仙波さんはどうする? 会いたい人が居るんでしょ?

 ここで諦めちゃって良いの? 折角誘ったのに残念だわ」

 

うぅ…どうしよう、ここでもし誰かに見付かりでもすれば、私は…

私は願い事をした意味が無くなってしまう。

もし見付かれば…でも、だけど…

 

「うぅう…い、行きます!」

「仙波さんは?」

 

どうする…またここで……ここまで来て…また…

……いや、決めるしかない。どうせ私の問題でしかない。

また私自身を捨てるのはごめんだ…最後、ただ会うくらいなら。

 

……所詮うわさとしても、最後に会うために…せめて、別れの言葉を伝えられるなら。

相手が例え幽霊だったとしても…伝えたい言葉がある。

別れの言葉を伝えたい、感謝の言葉を伝えたい。

ここで退くわけには行かない!

 

「……行きます」

「決まりね」

 

……うぅ、神主さんとかに見付から無い様にしなくては。

しかし、夜の神社に神主さんとかいるんだろうか?

居るとすれば、衣食住全て神社内で行なってるのか?

……いや何を考えてるんだか。それより監視カメラとかの方が不安だろう。

周囲をしっかりと見渡して、監視カメラに見付からないようにしないとな。

 

「あは、魔法少女なら簡単だね-次はどうしようか! 何をすれば良いのかな!?」

「も、もう少し静かに…今悪い事をしてるって自覚あるのか? バレたら不味いぞ」

「はい!」

「大声を出すなよ…もう少し小声で…」

「えっと、それじゃあ、うわさの内容を伝えておくわ。

 そこに、会いたい人に会う方法も含まれているから」

「分かりました」

 

アラもう聞いた? 誰から聞いた? 口寄せ神社のそのウワサ。

家族? 恋人? 赤の他人? 心の底からアイタイのなら、こちらの神様にお任せを!

絵馬にその人の名前を書いて行儀良くちゃーんとお参りすれば

アイタイ人に合せてくれる。

だけどだけどもゴヨージン! 幸せすぎて帰れないって

水名区の人の間ではもっぱらのウワサ、キャーコワイ

 

「と言う内容よ」

「ど、独特な語りですね」

「まぁウワサなんてそんな物でしょう。

 今大事なのはそこじゃ無くて、会う方法ね。

 会いたい人に会うには神社の絵馬を使う必要があるって所よ」

「そして、ういに会えたら、連れて戻れば良いんですね…無理矢理、手を引いてでも」

 

…無理矢理連れて行く…そんな発想、私には一切なかった。

ただ一言、伝えたい言葉を伝えたい…それだけの気持ちだった。

 

「そうね、それぐらいの気持ちで挑みましょう…! あなたも…私も…」

「はっ…! 私、絵馬を持ってないです…!」

「あ、私も…」

「私が用意してあるわ、情報を知ってるのに手ぶらじゃ来ないわよ」

「あ、ありがとうございます!」

「ありがとうございます」

 

やちよさんは手に持っていた3枚の絵馬のうち、1枚を私に、1枚をいろはに渡した。

……あれ? 何か足りないような気が…いや、気のせいか。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

「え、あ、やちよー?」

「ん? どうしたの? なに、その手…」

 

……あれ? 絵馬は3枚しか無かったような…

 

「え、う、わたしの絵馬は…?」

「ないわよ」

 

な、無いって…そんなあっさり言い切るとは…

 

「元々、私達3人で入るはずだったもの、用意できるはず無いじゃない…」

「んー…んーんー!」

 

…あ、そうか。そう言えばやちよさんは私もうわさを探していることを知ってたな。

いろはと一緒に回っているときに遭遇したし。

あぁ、それで私の分は用意できていたんだ。

 

「そんな顔してもない物は無いの、そもそも、本当に必要なの?」

「はぇ? ……はっっっ!」

「いらないでしょ?」

「うん、やちよと私が探してるのって同じ人だから

 別に私は行かなくていいや、だから、この由比鶴乃

 お祈りする3人の盾になるよ! 急に敵のウワサが出て来たら危ないもんね」

「全く、すぐに突っ走るんだから…頭の回転が速いのは決行だけど

 脇道に逸れないようにしなさい」

「頭の回転が早い?」

「これでも私、学年の中では最強だから!」

 

3年生で最高成績だからな、色々と伝説級の人だし。

頭の回転が速いのは分かる…雰囲気からは想像出来ないが。

 

「最強?」

「成績が1番良いって事よ」

「えぇぇ!?」

「まぁ、驚くよな」

 

私も結構驚いたし、そりゃあ驚く。

ひとまず私達はその話を後にしてうわさを試す事にした。

 

「環さん、仙波さん、会いたい人の名前は書けた?」

「はい、私は問題無く」

「環うい…里見灯花…柊ねむ…うーん、全部は駄目ですよね?」

「欲張って失敗しても知らないわよ?」

「おとぎ話でも、欲張り者は失敗するからな」

「うぅ…そうですよね」

「えぇ、絵馬の予備もなんだから欲張らない方が良いわ」

「それなら、環ういって書きます!」

 

絵馬に書く名前も書いた…千花七美…私の親友の名前だ。

 

「それじゃあ、拝みましょうか」

「はい…」

 

礼儀正しいお参りか…2礼2拍手1礼で大丈夫かな。

……しかし、まさかこんな事態になるとは思わなかった。

淡い希望でしか無い、何の気なしにウワサを調べてまさかこんなチャンスに巡り会えるなんて…

もう2度とこんな事は無いと思ってたのに…七美に別れの言葉や礼を言うチャンスなんて…

 

そして、こんなくだらない噂話を信じるなんて…思わなかった。

でも、淡い希望でも…私は賭けてみたい…あの子に…会いたい。

最後のお礼を、最後の…言葉を……どうか、伝えさせて欲しい。

神様なんて信じない私だけど、この瞬間だけは信じたい。

どうか…私の親友に…私の大事な大事な親友に…会わせてください。

 

「よっし、ウワサめ! 来るなら来い! 

 もしも、ういちゃん達を連れて帰るのを邪魔するなら!

 最強の私がコテンパンにするからね!」

「ちょっと、鶴乃! 刺激するような事言わないで!」

 

やちよさんの注意と同時に、周囲の雰囲気が変った。

 

「―っ!?」

「これは…あぁ、そう言えばウワサはうわさを守る為に現われる。

 さっき鶴乃の言葉に連れ帰るって言ってたけど

 うわさの内容は帰れなくなる……あぁ、それで」

「■▼▲■」

「余計なことを言うからウワサが出て来たじゃない!」

「連れ帰るって言っちゃったからな…」

「私のせいかな…?」

「それ以外考えられないわよ、連れ帰るなんて言っちゃったから…

 ほら、最強の鶴乃ちゃん、盾になるなら早速出番よ!」

「はい!」

 

だ、大丈夫か? ちょっと不安なんだけど…

 

「背中は私に任せて、会いに行ってきて!」

「格好付けてるけど、あの子が撒いた種なのよね」

「ちゃんと失敗の分は頑張ってくれる感じですし任せましょう」

「そうね、よし行くわよ」

 

よし、もう1度参拝しないと…早くしないとウワサも多いしな。

 

「やちよ、ウワサが多いよ! このままじゃ、そっちに行っちゃうかも!」

「ちょっと、盾になるんじゃ無いの?

 ほら、ちゃんとしないと自称最強の名に傷が付くわよ!?」

 

自称はどれだけ傷を負っても問題無いような気がするんだが…

 

「うえぇえええん、頑張る!」

「急ぐわよ、2人とも、ウワサが来る前に全て終わらせましょう!」

「は、はい!」

 

絵馬をしっかりと持って、礼儀正しく参拝を行なう。

2礼、2拍手、1礼…背後の事は考えず、礼儀正しく参拝をする…

七美に会うために、願いをしっかりと抱いて。

 

紳士に…その願いを告げる…目を瞑り、心の中で本気で考えて……

そして、ゆっくりと目を開ける。

 

「……夕方?」

 

さっきまで夜だったのに、目を開けると夕方になっていた。

……これは、成功と言う事で…良いんだろうか。

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