彼女の魔女による攻撃、何とも広範囲に及ぶ攻撃だ。
巨大化し、上空から絵の具のような物を多数垂らしてくる…
当れば不味そうだが、どうも垂れてきた絵の具はその場に残る。
このままだとゆっくりと追い込まれていくぞ…
「あはは! さぁ、アリナの作品に溶けて!」
「まぁ、展開が遅いんだが」
だが、私は限界突破の力により、一気に後方に飛び退き範囲の外に逃げた。
「チッ! 逃げないで欲しいんですケド!?」
「お前は死ねと言われれば死ぬのか?」
「はぁ!? アリナに命令するとかあり得ないんですケド!?」
「そうだろう。勿論私もお前の命令に従う義理は無い」
この広範囲攻撃は流石に分が悪いからな。
攻撃を食らえば不味そうだ。逃げるのを最優先にしたい。
「それ、ドンドン仕掛けちゃってよね!」
「く、また魔女が」
しかし、魔女が結界から出て行動してくるなんて…
どう言うことだ? あいつの力か? クソ、分からない。
「くぅ!」
流石に多い…このままだと物量で押しつぶされる。
単体だけならさほど脅威ではないが、単体じゃ無い。
複数体が協力して私に攻撃を仕掛けてきている。
魔女同士が手を組むなんて馬鹿げたことが…今まで無かった。
ただでさえ異常だったこの神浜でもあり得なかった事態…どう言うことだ!
「ふふ、あの子のドッペル、やっぱり便利が良いヨ。
あの子とアリナの固有魔法が揃えばどんな奴でもデリートできちゃう」
「く!」
駄目だ、魔女の相手で時間を取られていると、
あいつのドッペルとやらに追い込まれる。
確実に周囲を侵食していく…あの異様な力。
その大元を叩こうとしても、本体事態も気色が悪い。
近付けばダメージを食らうのは避けられない。
「そこ」
「んな、うぐ!」
黒羽根…ち、何処までも分が悪いな。
大量の魔女…ドッペルという意味の分からない力。
更には黒羽根…いくら何でも、この状況は不味すぎる。
「ほら、もう逃げ場は無いんだから、大人しくデリートされちゃいナ!」
「それは嫌だと言ってるだろう?」
「んな! ビルの上に!」
こうなれば逃げ場は上しか無い。私は急いで近場にあったビルに登る。
こんな真似をしている所を見られたら…困るな。
だが、あのままだと命が危うい。多少不格好でもここは逃げさせて貰う。
「待てって言ってるんですけど!?」
「何度も言わせるな。そうだ、おまけだ取っておけ」
私は自身の力で作った大量の短刀をビルの上から落とす。
当たり前だが相当な凶器になるぞ? 食らえば死ぬだろう。
「んな!」
「うわぁああ!」
「魔女!」
彼女の指示で魔女が動き、魔女はアリナという少女だけを庇った。
他のマギウスの事はどうでも良いんだな…だが構わない。
最初から、私の攻撃はマギウスの翼には届かない。
「う…え?」
「んな…」
「は、無駄な消耗をしたなアリナ。
私の攻撃はそもそもお前達には届かないのさ。
射程の調整くらいは出来る。だから、お前を庇った魔女は無駄死にだ」
実際に被害が出たのはアリナを守っていた魔女だけだった。
マギウスの翼達に私の刃物は届いてない。
届く前に消えているからな。
つまりあの攻撃はただの見かけ倒しだ。
「こ、このクソガキがぁ!」
「私を詳しく調べなかったのが失敗だ。
人を殺すような真似を私がするわけが無いだろう? じゃあな、マギウス」
「待て! 待てって言ってるでしょうが!」
そのまま私は急いで家に移動した。
はぁ、マギウスの翼か……明日、やちよさん達に報告した方が良さそうだ。
「しかし……っ」
さ、流石にあの戦闘は辛すぎたな…はぁ、結構食らってしまっている。
大量の魔女にアリナのドッペル、更には黒羽根による襲撃。
あの組織とやり合うようになった場合、あれを同時に相手にしないと駄目か。
「……ふぅ」
ひとまず家で多少の手当をして、私は休む事にした。
……そして、後日。私はやちよさん達にマギウスの話を告げる。
「マギウスね、私達も会ったわ」
「そうなんですか?」
「うん、ミザリーウォーターのウワサを探してるときに」
「そう言えば、よく分からない黒いのもそんな事を言ってたな…」
ひとまず、昨日の事をやちよさん達は私に話してくれた。
なる程、向こうもかなり大変だったようだな。
「…なぁ、姉ちゃん」
「ん? あぁフェリシアだったか。どうした?」
「昨日…いろは達にも助けられたんだけど…姉ちゃんにも助けられたから」
「ん? 私は何かしたか? 結局何もしないでノコノコと出ていっただけだが」
「いや、俺にもっと辛い思いをする必要は無いって言ってくれて、ありがとな。
あの言葉のお陰で…俺も少しだけ楽になった気がしたし」
「そうか…なんて事無い言葉でも、お前を救えたのならよかった」
「それと…昨日の事もあって、俺少し思ったんだけど…
姉ちゃんも一緒に、俺達と戦って欲しいんだ」
「……何でだ?」
「だって、姉ちゃんもウワサを探してるんだろ? なら協力関係で良いと思うんだ」
「……ウワサか」
「悪い話では無いと思うわ。あなたの話から察するに
あなたもマギウスに目を付けられてるみたいだしね。
単独行動は不味いんじゃ無いの? 流石のあなたでも」
確かに前回のことで身に染みて分かった気がする。
ドッペルという不思議な力。結界の外に出ている魔女。
黒羽根…そしてやちよさん達の話から白羽根という少々強いのも居るみたいだ。
確かに1人では荷が重い…狙われているようだし協力してくれる仲間は多い方が良いか。
「…分かった、一緒にウワサを探すとしよう」
「本当!?」
「あぁ、このままだと不味いのは間違いないからな。
マギウスが居るこの街で1人過ごすのは危険そうだし」
「よかった…梨里奈さんが居てくれれば心強いです!」
「足を引っ張らないように頑張らせて貰うよ」
「いえ、私の方が足を引っ張っちゃいそうです」
「ふふ、そうね。じゃあこれから大変になりそうだし
調整屋にでも行きましょうか」
「…調整屋というのはなんだ?」
「……え!? 知らないんですか!?」
「うん」
「い、今までどうやって魔力を強化してたのよ…」
「魔力って強化できるのか…」
「て、天然物でこの強さだったのね…これは末恐ろしいわ」
なんだろうか、調整屋を知らないというのはそこまで異常なことなのか…
でも、どうやら話の感じからして、調整屋に行けばより強くなれるみたいだな。
なら、私にとってかなりプラスになりそうだ。