中央区、中立地帯だったこの場所だが…しかし失敗したな。
まさかもうこんな時間になるなんて。
「うーん」
中央区を探している間に日が暮れてしまった。
そろそろ帰ろう。やはり1日に詰め込みすぎたようだ。
ひとまず私は改札を通り、電車を待つことにした。
「ん?」
そんな時、私の携帯電話が鳴る。
「はい」
こんな時間に誰かと疑問を抱きながらも私は電話を取った。
電話の先で聞えた声は、やちよさんだった。
「仙波さん、ウワサの調査で協力して欲しい事があるの」
「はい、分かりました。どんなウワサですか?」
「名無し人工知能のウワサ。詳しい話は後でするから
中央区に来てくれる? 少し時間がかかるかも知れないけど」
「…いえ、そんなにかかりませんよ」
「え?」
「丁度良いタイミングです。私も今中央区に居るんです」
「本当? 凄い偶然ね。でもどうして?」
「マギウスの翼が本拠地を立てるとして
1番バレにくい場所は何処かって考えたところ
丁度中立地帯になってたという中央区が怪しいかと思って探してたんです。
外れでしたけど、無駄足にはならなかったようで安心しました」
「そう、お金が無駄にならなくて済んだわね」
「えぇ」
やちよさんの話を聞いた私は、すぐに電車の改札からでた。
無駄なお金がかかったな。
しかし、どうして私はこの行動に躊躇いを持たなかったんだろう。
考えてみれば、お金はあまり無いはずなのに…電車で動き回るなんてな。
……まぁ良い、この件は人命もかかってるんだ。
金のことは後で良いだろう。
「それじゃあ、電波塔に来て欲しいの。どれ位で付きそう?」
「そうですね、ここから電波塔なら10分も掛りません」
「分かったわ、待ってる」
私は急いで電波塔の場所へ移動した。
そこにはいろは、やちよさん、フィリシア、鶴乃の4人。
……しかし、誰だ? あの2人は…初めて見る顔だな。
「あ、来たわね」
「この人が頼りになる魔法少女さんですか?」
「うん、私たちの中で1番強いかも」
「褒めすぎだ。とりあえず自己紹介をさせて貰おう。
私は仙波梨里奈、最近この神浜に来た魔法少女だ」
「あ、えっと。私は鹿目まどかって言います」
「わ、私は曉美ほむらです…」
「2人ともよろしく頼む…でも、なんで2人はウワサを?」
「彼女達はウワサに巻き込まれたかも知れない先輩を探してるの。
覚えているでしょう? 巴マミ」
巴マミ…確か口寄せ神社の時に戦った、見滝原の魔法少女か。
「なる程、あの魔法少女か…で、その後輩。
あの魔法少女は私達に対して随分と敵対的でしたが」
「えぇ、でも彼女は彼女なりの考えがあって行動したんでしょうし
それに、危険な目に遭っているというなら放置は出来ないでしょ?」
「……それもそうですね」
確かに危ない目に遭っているなら助けてやらないと駄目だろう。
しかし、あれほどの実力者が負けるとは思えないんだがな…
だが、ウワサなら話は別か…口寄せ神社の件がある。
それとミザリーウォーター、私はその場に居なかったが
かなり苦戦したという話を聞いた。油断ならない。
「それじゃあ、ウワサは?」
「この電波塔の上よ」
私はそのまま全員と合流し、電波塔の最上階へ移動した。
高いな。しかし綺麗な夜景だ。
「わっは…立って見ると凄く高いね」
「ぬわぅ! したから風が!」
「……ごく」
ウワサの場所に行き着くには、ここから飛び降りないと駄目らしい。
ここから飛び降りるというのは中々に度胸がいるな。
「やっぱり、いざ立って見ると怖じ気づいちゃうでしょ?」
「かなり勇気がいりますね」
「何かあっても、多少なら何とかなりそうだけど」
「それはまぁ、梨里奈さんなら大丈夫そうな気がしますけど」
流石に空中で動き回る事は出来ないんだが
魔法少女の状態だとすれば、上手く魔力を使えば何とかなりそうだ。
「でも、覚悟を決めないといけませんよね。
まどかちゃんとほむらちゃんは大丈夫?」
「少し、恐いです…見滝原で魔女と戦ったときも足が竦んじゃって」
「そう言えばそうだったね、大丈夫?」
「うん、鹿目さんと一緒なら平気」
随分と仲が良いんだな…友情以上の何かを感じる気がする。
「ふふっ、この街は噂が現実になるんだから、きっとこの飛び降りた先に
本当に電波の世界がある。そう信じよう」
「うん!」
「これで皆、覚悟が決ったわね」
「待って下さい、アイさんからメッセージが」
アイ、確か名無しの人工知能か。
「マギウスの翼が現われました、気付かれないように対処するためには
人の数は少ない方が良いと思います」
「マギウスの翼…」
「彼女達に取っても守るべきうわさって事ね」
「でも、いける人数が限られてるなら」
いろはと一緒に行動している、小さなキューべーが喋る。
どうやらこのキューべーはいろはに色々とアドバイスをしている様だ。
いつ見ても私の前に出て来たあのキューべーとは風貌が違うよな。
雰囲気もかなり違う……なんなんだろうな、この小さいの。
「うん、私は佐奈ちゃんの事を自分の手で助けてあげたい。
やちよさん、私に行かせてくれませんか? さなちゃんを助けたいし
マギウスの翼が居るなら、ういの話しも聞けるかも知れません」
「……そうね」
いける人数が限られている理由は出来ればマギウスにバレないようにする為に。
妹の話を聞くとしたら、かなり危険な状態に陥っていると言う事になるが…
「…私も一緒に行って良いか? マギウスの翼が居るなら危険だからな」
「…そうね、この中で1番実力があるのは仙波さん。
最悪の事態が起ったときの保険は欲しいわね。
でも、環さんは?」
「はい、構いません」
「じゃあ、行くのは環さん、仙波さん、鹿目さん、曉美さんの4人ね。
4人とも気を付けて」
「良いんですか? 私達が行っちゃって…」
「こちらの目的は環さんと仙波さんに任せたから
2人は巴さんを見付けてあげたら良いわ」
「それなら、はい…行ってきます!」
「フィリシア、行かずに済んで安心したか?」
「はぁ!? そんな訳ねーじゃん!」
「ふ、冗談だ」
冗談なんて久しぶりに言った気がする。
「ふふ、梨里奈さんも冗談なんか言ったりするんですね」
「そ、それはまぁ…」
「なんか意外だよ! そう言う事は言わないタイプなのかと思った!
こう、必要な事だけ話して他は話さない感じだと思ってた!」
「き、基本的には言わないんだ…冗談も得意ではないし。
だから、これは気の迷いであってだな…」
「必死に取り繕わなくても良いじゃ無い、冗談くらい誰でも言うわよ。
それに、少しだけ近付けたような気分になって、私は嬉しいわ」
「……」
恥ずかしい…失敗した、変な事を言わなければ良かった。
何だか緊張してる風だからほぐそうと思ったが、失敗した…うぅ。
「うぅ、こんな筈じゃ…」
「楽しそうですね、その様なお話しを聞けて、私も少し嬉しいです。
でも、お話しの腰を折ることになりますが残りの方への指示を。
残りの方は神浜セントラルタワーのヘリポートに移動して下さい
私が消えた後の転送先をそこに設定しておきます」
「うわさにも聞かれていた…!」
「落ち込むなよ姉ちゃん! 見てて面白いけど!
スゲー強いって聞いたんだけど、案外面白い所あるんだな!」
「意外だよね-! 完璧超人だと思ったのに」
「うぅ…済まない、不甲斐ない姿を見せて…大丈夫だ、もうヘマはしない」
「何言ってるの? ヘマなんかじゃ無いよ! 私は梨里奈ちゃんの
普通な所が見れて、凄く嬉しかったよ!
思ってたより近い存在なんだって分かったからね!
これでもっと近付けそう! ふんふん!」
「私もです。私と同じ様に落ち込んだりするんだなって分かって嬉しいです」
うぅ…ドンドン恥ずかしくなってくる。
じょ、冗談なんて言う物じゃ無いな…
「こ、この話はここまでにしよう。じ、時間が無いし…」
「あ、逃げるつもりだね!」
「ま、マギウスの翼もいるみたいだし助けを待ってる人も居るんだ!
こ、これ以上の無駄話は無意味だ! 行くぞ!」
「あ! 逃げるように飛んだ! 待って下さいよ!」
うぅ! 失敗した失敗した失敗した! は、恥ずかしい!