魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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夏に向けて

……水着を見て回る日が来るとは思わなかったな。

うーん、大体手持ちにあったのはスクール水着だけだしな。

まぁ、そんな物は引っ越しで持ってきてはいないが。

そもそも水泳の授業とかは殆ど無いからな。

 

しかし…うーん、水着をいざ見に来たは良いが

なんだこれは…布切れ1枚だけとは。

 

「こっちが似合うかな! いや、こっちかな」

「李里奈にはこっちが似合うと思うわ。スラッとしたモデル体型だしね。

 可愛い路線よりも、クールな感じの方が似合うと思うわ」

「でも、可愛い路線の李里奈さんも見てみたいと思いませんか?」

「確かに若干興味はあるけど…やっぱり個性を活かせる方が良いと思うの」

 

何故だろう、私の水着を買いに来ているはずなのに

当事者である私よりも、一緒に来たやちよさんといろはの方が盛り上がっている。

私はこの布切れを見て、若干の拒絶反応を起しているというのに。

 

なんだこれは、胸と恥部しか隠せないじゃないか。

これは果たして服と言っても良いのか? ただの下着では…

それにどれもこれも大体同じだし…ちょっと模様が違うだけ。

ついでに物によってはフリルが付いてる…程度だな。

 

材質とか違うのだろうか? いや、ここまで布が少なければ

材質が違おうと、何の意味も無いのでは?

しかし…この程度なら1から作った方が安上がりな気がする。

 

一応、服程度は縫えるけど…これを作るとなると勉強が必要だし

材料や道具も必要になってくるから、やっぱり買った安いかな。

 

「李里奈さんはどれが良いと思いますか! …え? 李里奈さん何してるんです?」

「…いや、ちょっと材質が気になって…」

「そんなの気にしても、あまり意味ない気がするんだけど」

「いやその、こんな布切れ1枚にどうしてこれだけの値段が付くか気になりまして」

 

そもそもこんな布切れに5000円もの値段があるのが異常だ。

おかしいな、私が持って居る服の中でもここまでの物は無いぞ…

大体が適当に買ってきた古着だからな、安い奴だし…

その服よりもこの布切れが高いと言うのは異常だと思う。

 

「まだ安い方だと思うのだけど?」

「え!? 安いんですかこれ!?」

「ま、まぁ…高い物は1万超えるからね」

「なぁ! これに1万の価値があるのか疑問というか

 そもそも服如きに1万以上の値段とかおかしイのでは!?」

「ふ、服如き…李里奈さん、お洒落とか…興味無いんですか?」

「興味無い、大事なのは内面であって、外見ではないし…

 そもそも服程度で人の何が変るのか私自身よく分かってない。

 着飾るよりも内側から輝きを放つ事が大事だと聞いたからな」

 

ふふ、七美の言葉だ…あいつはいつもそんな事を言ってくれていた。

あいつの言葉には、私の支えになっている物がいくつもある。

もうこの世には居ないが、七美の事を忘れることは私には出来ないだろう。

 

「確かにその通りね、でも外見も大事なのよ?

 殆どの人間はまず第一歩目で内面を見ることは無いの。

 まずは外見から入る物よ。そこから内面の価値が出てくるの。

 外見は言わば入り口。くすんだ看板のお店よりも

 綺麗に整った看板があるお店の方が入りやすいとは思わない?」

「まぁ、確かに…」

「でしょ? それは人にも同じ事が言えると思わない?

 綺麗に着飾ってる人の方が近付きやすい。だから、服装は大事なの」

「うーん、そう考えてみると確かに…」

 

だが、私は人に近付いてきて欲しいとは思わないタイプだ。

私に近づく人が増えれば増えるほど、私は本来の私から遠のいていく。

より厚い仮面を被り、自分を見失ってしまいそうだからな。

それは恐らく七美が願った私の姿では無いだろうからな。

 

「服装は入り口を大きくするために重要なの。

 勿論、内面の方が大事なんだけどね。

 お店で例えれば、綺麗なお店でも料理が不味いお店には人が来ないって感じね。

 逆にくすんでいるお店でも、入ってみれば美味しかったら人は来るけどね。

 そこから口コミで広がって商売繁盛というルートもあるのかしら」

「人で言えば、仲良くなった友達が別の友達を紹介してって感じで

 ドンドン増えて行く感じですかね!」

「その通りよ、環さん」

 

もし、誰にも来て欲しくないと感じた場合はそう言う服そうが良いのか?

いやしかし、それはそれで…父さんや母さんが…うーん。

やはり着飾った方が良いのか? でも…うーん。

 

「……分かり…ました」

「……そ、そう?」

 

個人的には少し難しい判断だった…私はこのままで居られる方が良い。

でも、やちよさんやいろは達に期待される以上はこなさないと駄目だろう。

とにかく可愛らしい水着だろうと何だろうと着てやることにしよう。

 

「じゃあ、この水着で…」

「クールな方を選んだのね」

「可愛い方にはまだ抵抗が…」

 

うぅ、決定したとは言え、この布切れに7千円か…

うぐぐ、これだけあれば色々と食べられるのに…

ま、まぁ、皆と騒ぐために必要な出費だという事にしよう。

 

「それじゃあ、李里奈さんの水着も買えたことですし!」

「ふふ、当日が楽しみね」

「そうですね」

 

まぁ、7千円の出費は痛いけど、仕方ないか。

バイトで貰ったお金もあるし、少しくらいは新しい事に挑戦も良いだろう。

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