魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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海へ!

当日、あまり表には出さなかったが内心は少々楽しみだった。

海に誰かと一緒に行くことは早々無かったからな。

そもそも海自体、殆ど来たことが無い。

私としても、あまり目立ちたいとは思わないからな。

 

「海だー!」

 

いろはが何だか楽しそうに叫んでいる。

私はちょっと無理だな…恥ずかしいし。

 

「これが宿か…」

 

やはや、私は旅行なんてした記憶が無いからな。

宿というのは中々に刺激的という感じがする。

 

「うん、これが宿ね! 楽しそうじゃないの」

 

それにしても…み、見知った顔が居る様な気がする。

いやうん、確かにここは神浜からそんなに離れてはいないし

勿論、知り合いなどがいたとしても違和感は無いのだが。

 

「って、えぇー! れ、レナちゃん!?

 それにかえでちゃんとももこさんまで!?」

「あ、あら、あ、あなた達も来てたのね! 凄い偶然ね!」

 

ぐ、偶然…? レナ、嘘を突くにしても少しくらいは表情をだな…

どう考えても偶然じゃ無いだろ…表情から丸分かりだ…

レナもかえでもももこもこれじゃ隠せてないが?

 

「ど、どうして3人とも!?」

「ま、まぁ3人で旅行というか…」

「へぇ、3人だけって凄いね、普通は家族と行きそうだけど」

「わ、私達3人はチームだから!」

「まぁ、私達だって同じ様な物だろ? 仲間内で来てるわけだからな」

 

何度か死線を共にしてくれば、深い感情を抱くからな。

とは言え、今回のレナの場合は…きっとそれだけじゃ無いんだろう。

勿論、大事な仲間と過ごしたいという思いはあるだろうが

素直じゃ無いあいつの事だ、いろは達とも一緒に居たいのかもな。

だが、素直になれない…か。

 

「ん?」

 

私達が目を離した隙に、どうもいろはに

かえでが何かを伝えているのが見えた。

僅かに聞えた会話内容から察するに、事のいきさつは

私の予想通りだったと言う事が分かるな。

 

その後、やちよさんにいろはが耳打ちをする。

やちよさんにも伝えるのか。あ、こっち向いたな。

私は小さく頷いて、理解していると言う事をいろはに伝えた。

 

「いやぁ、しかし凄い確率よねー! 日程が丸被りなんて!

 偶然って恐いわねー!」

 

あくまで偶然を装うのか。それで通りそうなのは正直なところ

フェリシア位じゃないか? あいつは純粋だからな。

 

「あ、あぁ、いやぁ偶然偶然!」

「へー、偶然なのか! そりゃスゲーな!」

 

案の定、フェリシアだけは察してないようだな。

若干鶴乃も気付かないと思ったが、冷静に考えてみれば

鶴乃はかなり察しが良いからな。元気だが馬鹿じゃ無い。

 

「うふふ…」

 

さな…何も喋ってないが嬉しそうだな。

……さなの話は少しくらいは聞いてる。話したくないし

知られたくも無い過去かも知れないが…きっと全部では無いだろう。

まだ出会って1ヶ月程度だからな、全て話せる筈も無い。

 

それに、陰湿な過去話など、今のさなには酷だろう。

しかし不安はあるな。酷い過去を持つ者というのは基本的に

希望が見えた後、その希望だけしか見えなくなってしまう可能性がある。

私も経験がある。私の居場所を見出して、それで…

 

問題はさなだ…彼女はその…今の幸せ以外の幸せを見ることが出来るのか?

それは…困難か…彼女は透明人間だ、魔法少女以外からは視認されない。

何処にでもあるありふれた幸せを掴むにはその祈りが邪魔だ。

透明になりたいという願い。それは願いでは無く、今では彼女の鎖。

祈りでは無い、もはや呪いだろう。どうすればその呪いを解けるのか。

 

マギウスとの戦いも魔法少女の未来も…

はぁ、全く…これじゃマギウスとの戦いなんて

この先の戦いの前哨戦に過ぎないとしか思えないな。

 

「梨里奈さん? 何か悩み事ですか?」

「あぁ、いやなんでも無い。ただその…えーっと、そうだな。

 そうだ、水着を着るとして、恥ずかしいなぁと考えてただけだ」

「あはは! 大丈夫ですよ!」

「何? 水着とか着るのに抵抗あるの? スタイル良いのに?

 何かコンプレックスでもあるの?」

「ひ、人前で肌を見せることに慣れて無くてだな…はは」

「だからいつも色気の無い格好してたのね、あなた」

「あぁ、外観に多少は気を配れとやちよさんにも怒られたよ…はは」

 

そんな何気ない会話を残し、私達は海へと移動した。

……しかし、み、水着は…やっぱり抵抗があるな。

 

「海だー!」

「きたー!」

「フォー! 突入-!」

「俺もー!」

 

海に着くと同時に鶴乃とフェリシアのテンションが振り切れた。

人目も気にしない歓喜の後、彼女達は即座に海へと走っていく。

 

「楽しそうね、あの2人」

「そうですね」

「…所で梨里奈、1つ聞いても良いかしら?」

「何ですか? やちよさん」

「…何で服着てるの? 水着に着替えてたの見てたけど」

「だ、だって恥ずかしいですし…」

 

うぅ、ひ、人が多いのにこの格好は些か…と言うか、かなり破廉恥で…

さ、流石にこんな状態で平然と動けるほど、私は他人慣れしてない…

 

「駄目よ、ここは海なんだから水着は礼儀みたいな物でしょ?」

「む、無理です! 水着とか無理! あんな露出が激しい格好!」

「ちゃんと選んだんだから、見せるための物よ? 水着は」

「無理ですよ!」

「おぉ! 楽しそうなことしてるな! 俺も混ぜろー!」

「ふぇ、フェリシア!? だ、駄目だ来るなぁ!」

「そうなると、この私も行かないとね! さぁ、水着を見せるんだ!

 ここは海だし、水着で動くのは礼儀だかんね!」

「鶴乃も!? む、無理な物は無理なんだ! 水着とか!」

「年貢の納め時って奴かしら」

「うわぁあ!」

 

つ、鶴乃とフェリシアが悪のりしてる! 脱がそうとしないでくれぇ!

 

「や、やめ、やめろぉおー!!」

「ふっふっふ、いくら姉ちゃんでもこの状況は無理だぜ!」

「流石にこんなやり取りで攻撃は出来ないだろうしね!」

「や、止めてくれぇ! は、恥ず、恥ずかしいだろ!?」

「普段クールなのにスゲー顔が赤くなってる!」

「よっぽど恥ずかしいんだね! でも、礼儀だから!」

「だ、誰か助けてくれ! い、いろはぁ!」

「そ、その…あ、諦めた方が…」

「そ、そんなぁあ! う、うわぁぁあ!」

「よし、取った!」

 

うぅ…脱がされた…なんて事だ…は、恥ずかしい…

こ、こんな露出が激しい破廉恥な格好になってしまうなんて…

 

「うぅ…」

「かなりスタイル良いわね…モデル?」

「も、モデルは…やちよさんだ…」

「いやぁ、でも梨里奈って…動揺したりすると可愛いんだ。

 普段からは想像出来ないけど、やっぱり隙がある方が良いね」

「か、可愛いとか言わないでくれ…私はそう言うキャラじゃ無いんだ…」

「少しくらい肩の力を抜いた方が良いと思うけどね」

「やろうと思って簡単に変われるなら、私は今のままじゃありませんよ…

 でも、この格好は本当に恥ずかしい…やっぱり服を」

「駄目だよ!」

「うぅ…」

 

こ、こんな恥を欠いてしまうなんて…これでは嫁に行けない…

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