やちよさんの様子が明らかにおかしい状態になってる。
不安は多いが、それでも行くしか無いだろう。
「梨里奈さんも…来てくれるんですね」
「あぁ、気になることも多いしな」
「はっはっはー! 姉ちゃんまで来たら敵無しだぜ!
俺に鶴乃、そして姉ちゃん! 何が来ても余裕だぜ!」
「だね! 梨里奈ちゃんが居れば百人力だよ!」
「期待に答える努力はするがな」
それにしてもボロボロだ。それに魔力の反応もある。
さて、人の気配もある訳だが…
「本当にお昼頃までに来るなんてビックリ。
ふふ、これは抗議のし甲斐がありそうだねー」
女の子の声…中学生か小学生くらいか。
「うそ、まさか…」
声の主の姿を見た途端、いろはの表情が大きく変わった。
まるで知り合いに出会ったかのような反応…
「本当に私の事知ってるんだね。
初めまして、環いろは
わたくしは里見灯火、マギウスの1人だよ」
「灯火ちゃん…ほ、本当に私の事…覚えて…無いの?」
「言ったよね、初めましてって」
いろはの方は彼女の事を覚えているというのに
向こうはいろはの事を覚えていないと…
どう言うことだ? 可能性として最も考えられるのは
あちらのマギウス、灯火の記憶が無いと言う事だ。
いろはが嘘を言うとは思えないし、知らない顔を覚えるとも思えない。
「さ、その話は今は後にして、お茶でも飲みながら
ゆっくりと講義を始めよう」
「……全く何が狙いだ? 茶に毒でも仕込んだか?」
「警戒心が強いね」
「私はマギウスには嫌われてると思ってるからな」
「安心して? 絶対に何もしないから」
彼女の笑顔からは…確かに敵意のような物は感じない。
全く動揺をしていないな。私達の人数を前にして。
もし私達がその気になれば、彼女はどうしようも無いだろう。
それとも私達全員と敵対したとしても勝てる。そんな自信があるのか?
だとすれば、かなり自信過剰なタイプだな。
その自信に伴った実力があるから、マギウスを組織してるのだろうが。
「今回の講義内容はね、魔法少女の真実!
嘘でも冗談でも無いあるがままのお話しだよ」
あるところに3人の魔法少女がいました
AさんBさんCさんはとっても仲良し いつも3人で魔女を狩っていました。
そんなある日、苦戦して魔女を逃がしてしまった3人は日を改めて同じ魔女に挑戦しました
ところが、その結果は大ピンチ!
魔女の圧倒的な力を前に、3人とも負けてしまいそうになりました。
その時Cさんは立ち上がると、ひとりで魔女に突撃していきました。
おかげで魔女は致命傷を負い、最後はAさんによって仕留める事ができました。
でも、Cさんは死んでしまいました。 体は無傷でどこにもケガはないのに
「さて、それはどうしてでしょう」
……体が無傷で死んでしまう…そんな事があるのか?
毒でも喰らったか? それとも魔女の能力か何かか?
もしくは…そうだ、何故かやちよさんが止めたソウルジェム!
もし、ソウルジェムが魔法少女の急所だったとすれば
やちよさんがあの時、私を止めたのも頷ける!
「ソウルジェム?」
「あ、正解! 流石最強さんだねー」
体にケガがないCさんの側には砕けたソウルジェムが落ちていました。
そのときAさんとBさんは気づいたのです
ソウルジェムは名前の通り自分達の命そのものなのだと
「そのAさんとBさんが…やちよさんとみふゆか?」
「鋭いね、流石梨里奈。それより驚いたのが
全然動揺してないね、気付いてたの?」
「まさか、気付いていればお前の仲間を殺そうとはしてない」
「ありゃ、それは運が良かったね」
「そ、ソウルジェムが命って…それってあの、私達が人間じゃ無いって…」
さな達はこの事実で動揺してしまっているようだ。
実際、そうかも知れないな。
「人なら死んでる戦いを魔女としてきたんでしょ?
その地点で人じゃ無いよ?」
「それはどうだろうな、私はそうは思わない。
心臓が止まってるのか? 何も考える事が出来ないのか?
呼吸が止まってるのか? いや、私は全て行なってる。
それは私が生きているからだ。悲観的に考えても良くはないだろ」
「梨里奈さん…そ、そうですよね、私、ちゃんと生きてますもんね!」
「楽観的だね-、でも、この続きを聞いても同じ事が言えるかな?」
AさんとBさんはソウルジェムが自分の魂だと受け入れた後
他の仲間とチームを組んでいました。
このときはDさんEさんFさんが増えて合わせて5人
みんなで互いを支えながら魔女と戦っていました
そんなある日、他のテリトリーから魔女が流れてきました
Dさんは都合が悪くて合計4人。
この日も協力して倒そうとしましたが
今まで倒されなかった魔女は強くて4人でも大変な戦いになりました 。
そしてAさんがピンチになったとき、Fさんは身を呈してAさんを守ると倒れてしまいました。
戦いは魔女側が逃げて終わりましたがFさんの体はボロボロ。
おまけにグリーフシードもありません。
ソウルジェムは黒く染まりきりFさんの体はもう動きませんでした。
「さ、この後Fさんはどうなったでしょうか?
正確に言うとFさんは何に変ってしまったでしょうか?」
「変った? そんなの分かる訳ねぇだろ」
「……」
そう…だな、流れを考えてもこの後どうなったかは…分かる。
魔女…そう、きっと魔女になったんだ。
「倒れてしまったFさんの手には黒く染まったソウルジェムがありました。
そしてFさんが苦しみ始めると
それは突然グリーフシードに変化して魔女を生み出したのです」
「んなの嘘だ…だって…それなら…あれが魔法少女だって言うなら…
オレ、一杯殺しちまった」
「うんうん、いっぱい殺しちゃったねー」
「フェリシア、お前は本当に優しい奴だな…」
辛そうな表情をしているフェリシアの頭を私は撫でた。
普段なら嫌がるだろうが、今の彼女はそれどころでは無さそうだ。
「だが、フェリシア…もし、魔女が魔法少女だとすれば
きっとその魔女は…倒してくれて喜んでるはずだ」
「どうしてだよ! 殺されたんだぞ!?」
「あんな姿で生きて、体が勝手に動いて色んな人を集めて
その人達を殺し続ける…私なら、そんなの我慢できない」
「……」
「意思があるかは…分からないが、それでもそんな状態で生き続けるより
いっその事、殺された方がマシだって…私なら思う」
「姉ちゃん…」
勿論、受入れがたい事実であると言う事に変わりは無い。
そうだろう? 自分達が最終的にあんな化け物二なるだなんてな。
だが、奇跡を願った代償がただ戦うだけなんて甘すぎる。
「あなたは本当に前向きだねー、馬鹿なの?」
「どうしようも無い現実に直面したとき心を救える方法は
その行動が最善である事を理解する事だ。
それに私ならそう思う。あんな姿で生きながらえたくは無い」
「ふふ、それ以外の最善の方法があるとすればどうかなー?」
「どう言うことだ?」
魔女化を目撃してからというもの半年経ってもBさんはずっとショックを受けたままでした。
考え方を変えようと思ってもできず、ただ魔法少女になった自分を呪っていました
それから、さらに半年が経ち、神浜に魔女が集まりキュゥべえを見かけなくなったころには
その負の感情は次第にソウルジェムを蝕み
そしてついに、Bさんのソウルジェムは真っ黒に穢れてしまいました
Bさんは思いました。ついに自分もFさんと同じように魔女になってしまうのだと…
ですが、そうはなりませんでした。
「答えはもう簡単だよねー」
Bさんは魔女にならずドッペルを出していました。
このときには既に神浜では魔法少女を解放するための動きが始まっていたのです 。
そして、ひとりの少女が現れるとこう言いました「一緒に魔法少女を解放しよう」と
「この1人の少女って灯火ちゃん?」
「そう、マギウスであるこのわたくし!
どう? わたくしって凄いでしょ?
マギウスの翼って凄いでしょ?
皆もマギウスの翼に入りたくなったでしょ?」
……何とも腹が立つな…目的がどれだけ立派でも手段がなってない。
無関係な人を襲い、醜い姿となった魔女さえも使役する。
それが魔法少女であり、自分達と同じ存在だというのに
それを何の罪悪感も無く道具のように扱う…手段が駄目だ。
「本当だとしたら、目的は立派なのかも知れない」
「さなちゃんは信じるの!?」
「だ、大丈夫です、私は信じてませんから」
「でも、でもさ…上手く行けば魔女って居なくなるんだろ?」
「駄目だよ、フェリシア」
「例えどんな大義名分があろうとも、手段が賛同できない。
戦争を無くす為に自国以外の全ての国を滅ぼす。
そんな事をして、許されるはずが無いだろう?」
「では、次の講義へ進みましょうか? 体験学習の講義です」
「みふゆさん…」
体験学習…記憶ミュージアムという場所で行なうわけだし
やはりそう言う部類の厄介ごとを用意するのか。
「じゃあ、始めよーか」
灯火が手にあるベルを鳴らす。
同時に、周囲の景色が一瞬で変化した。
「こ、ここって」
「やっぱり最初から私達を罠に掛けるために!」
「罠じゃありません、体験学習への案内です」
そう言うと、みふゆは何処からか本を取り出す。
「これは私の記憶。講義で語られた物語の記憶です。
さぁ、真実を見てきてくださいお話しはそれからにしましょう」
意識が…参ったな、流石にうわさの範囲内は…