いつも通りの日常だった、やちよさんをかなえが珍しく気遣ってる。
少しだけ特殊な光景に見えた。
そんな当たり前の時間が過ぎる。何とも平和だ。
私達が魔法少女として魔女と戦ってるとは思えない程に。
だが、思えないだけで、現実は変らない。
今夜もまた私達は4人で魔女退治へ赴いた。
今日は昨日取り逃がした魔女に対処するために動く。
もう少し踏み込んでいれば、魔女くらいは倒せただろうに。
「来たわね、迎撃しましょう」
「はい」
だが、昨日と比べてこの魔女は段違いに強くなっていた。
強力すぎる…何だか力も上手く入らない。
私の攻撃が通っているのか疑問に思うほどだった。
「く、強い!」
「梨里奈! 何よ、昨日とは桁違いに強いじゃない!」
「私達だけじゃ、対処出来ないかも知れません」
「ここは一旦撤退した方が良いかも知れない
グリーフシードを調達してからじゃ無いと」
「そうですね、何とか」
だが、使い魔達は私達を帰してくれるつもりは無いらしい。
正面突破を計るか? 私なら出来るが…クソ、駄目だ、今日は力が入らない。
何でだ? 普段なら、もっと…このままだと全滅だ!
「…私、前に。後は任せる」
「かなえさん! 前にって! それがどう言う意味か分かってるんですか!?」
「ん」
「なら馬鹿な考えはよしなさい!」
「拾って貰った命…私…空っぽだったのに楽器を弾いて…未来を見た…
それだけで十分…良い人生だった…」
「何を馬鹿な!」
だが、彼女は私達の制止を聞かず、そのまま魔女に向って突撃した。
かなえのお陰で魔女は致命傷を負い、何とかやちよさんの手でトドメを刺された。
だが…体の何処にも傷が無いのに、かなえは一切動かない。
「あなた! 折角自分で夢を見付けたんでしょ!?
見付けただけで十分だなんて、勝手に投げ捨てないでよ!」
「やっちゃん…これ」
みふゆさんの手には砕けたかなえのソウルジェムがあった。
きっと魔女に突撃したときに…砕かれたんだ…
急いでグリーフシードを使ったが、割れたソウルジェムが治ることは無かった…
「……受入れがたいけど…このソウルジェムが…私達の命…と言う事か…」
そんな受入れがたい事実を目の当たりにした…だが、それでも
かなえが命を捨ててまで教えてくれた、この真実。
この真実は絶対に私達を救ってくれる…必ず生かす。
死んでしまった者は、もう救えない…それこそ奇跡が起きなければ。
そして奇跡が起きたところで、死者は救えないんだ。
奇跡が起きて、また再び別の奇跡が起きない限り…
「……」
哀愁漂う時間はドンドン過ぎる。だが、私達は立ち止まらなかった。
私達は進むしか無いんだ。かなえは私達が立ち止まることを望んでない。
彼女は夢を見て、進もうとした…なら、私達も進まないといけない。
彼女に負けないように、私達も前を向き、進まなければならない。
ずっと進んでいる内に、私達には新しい仲間が出来た。
ももこ、鶴乃、そしてメル。何とも賑やかだ。
特に鶴乃。彼女はいつも明るいし、いつも楽しそうだ。
逆に不安になってしまうな。元気すぎると自分を見失うかも知れない。
そしてメグは…中々彼女も癖が強い。占いが好きなんだが
彼女の占いは結果へと導いてしまうし、癖が強いというか。
「やちよさん、家計簿の処理、これで良いですか?」
「ん、ありがとう梨里奈。相変わらず仕事が早いわね。
あなたが居ると居ないとじゃ、家計簿の進みが全然違うわ」
「一応、家計をやりくりするのは得意なんですよ、私は」
私は貧乏だからな、ちゃんとやりくりしないと破産してしまう。
ちゃんとやりくりしても破産してしまいそうだけどな…はは。
「さて、今日は大東から流れてきた魔女を狩るわよ」
そんな日だが、今日は中々に大物を狩る事になりそうだ。
色々な魔法少女達が迎撃しても突っ切ってくるくらいだからな。
油断でもすれば、あっさりとくたばってしまうだろう。
「あ、今日はお店に出る日だった!」
そんな相手を狩る事になったが、鶴乃はお店の方らしい。
私もそろそろバイトをしないとな。万々歳で雇って貰おうか。
「全く、あなたは細かい所抜けてるわね」
「こっちは私達だけで対処するので、お店の方を優先してください」
「ごめんね、みふゆ…じゃあ、また今度ね!」
そう言うと、鶴乃は相変わらずの足の速さで私達の前から消えた。
「鶴乃が欠けてしまったか、かなりの大敵だが…大丈夫か?」
「安心してください仙波先輩! この僕の占いではラッキーデイですからね!」
「確かにお前の占いが当るのは分かってるが、幸運では覆せない
そんな事態だってあるんだし、油断だけはしないでくれよ?」
「やっぱり仙波先輩は僕の占い、信じてくれてないんですね…」
「占いは予想であって、結果では無いからな。
今日1日良かったというのは、今日1日終わってからだ」
そんな会話をしていると、例の魔女が私達の元へやって来た。
だが、やはり他の魔法少女達と戦って生き残ってただけはある。
かなり強いぞ、この魔女は。
「ち…あ、不味い! やちよさん!」
「しま!」
「七海先輩!」
やちよさんに魔女の攻撃が当りそうになった瞬間にメルが身を挺してやちよを庇った。
そのせいで、メルの体はボロボロ…ソウルジェムも真っ黒になっている。
何とか魔女を追い払うことは出来たが…どうすれば…グリーフシードは無い…
「こんな事に…あの時、倒し切れていれば…」
「グリーフシードは!?」
「手持ちは…」
このままではメルが…何か、なにか手を考えないと!
だが、どうする!? どうすれば…グリーフシード…
「う…うぐぅぅう!」
「ソウルジェムが…」
「な、何が起きて!」
メルが唐突に苦しみ始める…ソウルジェムの濁りも一気に…
な、何だ…そ、ソウルジェムが…グリーフシードに…な…魔女…?
「う、嘘…どう言う…」
「メルから…魔女が…」
「そんな…嘘…そんな事って…」
メルのソウルジェムから魔女が生まれた…そんな受入れがたい事実を
私達は今、目の前で突き付けられた。これが本当なら…
本当なら、魔女は全て…魔法少女だと言う事になる。
なら、私達がしていたことは…人殺しだったのか…?
そんな動揺の中、私達はみかづき荘へと逃げた。
当然、全員動揺隠せていなかった…だが、受入れるしか無い。
「魔女が…魔法少女だったなんて…そんなの!
じゃあ、あたし達は願いを叶えた結果、人殺しになるって事じゃ無いか!」
「ももこ…そんな風に思わなくて良いだろ…現実は変らないが
考え方を変えることは出来る…人殺しかも知れないが
きっと…救いになってる…筈だ」
「はぁ!? 何言ってるの!?」
「お前はあんな姿で生きながらえたいか!?」
「うぅ…」
「罪のない他人を殺し続けたいか? 罪を重ね続けたいか?
私は嫌だ…私ならいっその事、殺して欲しいと願う…」
「……」
「悲観的に考えない方が良い…辛い時でもやるしか無いことはやるしかない。
だったらせめて、心だけでも」
「……」
だが、私達がいずれ魔女になる事は変らないのだろう。
魔法少女になった地点で、私達は魔女になるしか無い。
……だが、そんな事はどうでも良いんだ!
私が魔女になる事なんてどうでも!
「……考えは変りましたか?」
意識がハッキリと目覚めると同時に世界が変った。
そして目の前にはみふゆと灯火の姿があった。
「……そうだな、魔法少女はいずれ魔女になる。
それは分かった。だが、気に入らないんだよ。
最初から言ってるだろう? 気に入らないんだ!
お前達は何なんだ!
何で魔女の事実を知って居るのに魔女を利用する!
そして何故一般人を襲ってるんだ?
そんなの普通を妬んでるだけだ! ふざけた事を!
自分達が幸せになるなら他人はどうでも良いのか!?」
「でも、彼らはわたくし達の苦労をだーれも知らないよ?
わたくし達が人を止めてまで守ってあげてるのに誰も恩を感じてない。
それなのにわたくし達は辛い思いばかりする。
これって不平等だと思わない?
わたくし達だって、
少しくらいわがままを言っても良いと思うんだ-。
それに普通に戻りたいって思ったら駄目なの?」
……確かにそうだな、何も知らない奴らは何も分かってない。
それが当たり前と思ってるし、それが当たり前と感じてる。
その裏でどれだけ辛い思いがあるのかも考えないで
ただ表面だけを見て、全ての評価を下す。
私達が何も言わないで我慢してるのに
奴らはそんなのお構いなしだ。
「……そうだな、確かにそうだ。嫌だな、わがままを言いたい。
自分の好き勝手にして、自分達のやりたいようにやりたい」
「それなら」
「でも、そんな事をしても私は幸せにはなれないんだよ。
好き放題に暴れることが幸せなんかじゃ無い…
私はな、幸せにならないといけないんだ。
どんな鎖があろうとも、呪いに蝕まれようとも
私は幸せに生きないといけない。それが願いなんだ…
私は幸せになる為にも、この現実と戦う。
現実に屈し、自分を曲げたら負けなんだよ。
私は私のまま…幸せになってみせる。
私の意地を持って私は負けない。
自分の幸せのために他人を踏み台になんて出来る物か!
私はマギウスの翼には入らない」
う、うぅ…な、何だ…少しだけ視界が…
「う、うーん…あ…いろは…それにやちよさん? 何故ここに?
やちよさんは来なかったって聞いたが…やはり心配で来たか。
しかし鶴乃達が居ないな…少し、探してみよう」