2人が気になるし、少し周囲を探索したら戻るか。
それにしても、随分と入り組んでいるな…
「…ん? あぁ、フェリシア、さな、鶴乃…」
「あら、マギウスの翼に入るつもりになった? 仙波梨里奈」
「…灯火、それにアリナまで」
「アリナ的にはあんたの事大っ嫌いだけど
協力してくれるって言うなら心強いよね。
それで? どうすんの?」
「私の記憶…見てくださったのですよね?
あの現実を見れば、あなただってこれが救いだと」
「私はな、幸せに生きないと駄目なんだ。幸せに生きろと頼まれた。
だから、お前らの元にはいけない。お前らと同じになって
何でもかんでも好き放題にしたら、幸せにはなれないからな。
私は私のままで幸せにならないと駄目なんだ」
「幸せ? 魔女になってしまう未来が幸せなの?」
「幸せは一瞬でも十分な価値があるんだ。
それに他の方法を模索するのもありだろう。
赤の他人を巻き込んで不幸にするクソみたいな手段以外でな」
さて、マギウス2人…みふゆと結構な顔ぶれだ。
ここで本気を出せば、多少はダメージを稼げるか。
ひとまず、あちらも臨戦態勢。こちらも戦う準備をしよう。
「やっぱりあんたはこの3人ほど簡単にはいかないよネ」
「3人…どう言う事だ!」
「鶴乃さん、フェリシアさん、さなさんは私達マギウスの翼に来てくれるそうです」
「な!」
3人の目付きが…そんな馬鹿な…
「皆を守るならマギウスの翼。偉業を成すのが、わたしの目的
何だか啓示をうけた気分だよ。梨里奈ちゃんもおいでよ」
「鶴乃…」
「ここで私は、自分の願いで苦しんでいる人を助けます
そう、それから私も世界が明るく見えてるんです」
「さな…」
「オレも…自分の罪を消すならマギウスの翼だって思ったんだ
オレ、神様から翼になれって言われた気がするんだぞ」
「フェリシア…」
「ふふ、さぁあなたはどうするの? 残り2人もどうなるか分からないよー?」
「……全く、舐めた真似をしてくれる。神様? 罪を消す?
フェリシア! お前は何の罪も犯しちゃ居ない!
お前は魔女になってしまった魔法少女達を助けてたんだ!
サナ! お前、今まで一緒に居た時間は明るく見えなかったのか!?
楽しくなかったのか!? 楽しそうに笑ってたじゃ無いか!
鶴乃! お前、それは本当に心の底からの笑顔なのか!?
作られた笑顔だ! 作らされた笑顔だ! そんなの、笑顔じゃ無い!」
「無駄無駄、完全に洗脳してるからね」
「この…」
「ふふ、戦う? この状況で? 無駄だと思うけどネ」
「私を舐めるなよ……全力全開で挑めば6人程度相手じゃ無い」
このまま一気に3人を奪い返せば、まだ助けられるかも知れない。
私の限界突破の魔法であれば、瞬間的に比類無い力が得られる。
肉体が持たないかも知れないが、それでもすぐに6人を制圧することは可能だ。
「そうそう、アリナ的にはあんたが洗脳されるはず無いって思ってたワケ」
「それが?」
「でも、アリナ的にあんたはどうしても欲しいんだよネ。
ウザいけど、実力は確かだし、どんな手を使ってでも手に入れたいからネ」
「そう、だからわたくしも少し手を打たせて貰ったの。
あなたと戦うのは流石のわたくし達も骨が折れるからね-
でもー、あなたを仲間に引き込めれば、わたくし達の邪魔を出来る魔法少女は
一切居なくなると言えるからねー、だから、どうしてもあなたを洗脳したいの」
「何だ? 応援でも用意したのか?」
「そう、応援だよ-、さ、出て来て」
アリナと灯火が怪しく笑う。すると何処からか足音が聞えてくる。
「最終手段って奴だよ、あなたもそしてあの2人も。
もし万が一、洗脳できなかった場合の最終手段。
そして必ず、あなたを手に入れる。利用価値の塊だからねー」
「この場で戦って倒すと? そう簡単にはやられ…な、嘘…だろ…」
私は困惑するしか無かった…目の前に広がる光景を前に
私はただただ困惑するしか無かった…どうして…
「……そんな、嘘だ…あり得ない…どうして…どうなってる…
な、何がどうなって…」
「ありゃ? 随分と動揺するねー、まるで
幽霊に出会ったみたいに」
こんな筈…何故…何だあの姿は…ど、どう言うことだ!?
わ、私の動揺を誘うために…だが、どうやって!?
そ、そう言ううわさか!? ふ、2つ仕込んでたのか!?
「あなたは……ふふ、やっと会えた…久しぶりだね……梨里奈ちゃん」
「わ、私を騙すつもりだな! な、七美は死んだんだ!
そこに居るはずがない! だから…だからお前は偽物だ!」
私の目の前に姿を見せたのは…そう、私の唯一の居場所である
七美…だった…だ、だが、七美は死んだ筈なんだ…
死んだ、私は七美の最後を見た…そう、見たんだ…生きてるはずが無い!
「酷いなぁ…梨里奈ちゃん…私は本物だよ…もう私は偽りたくない」
「ど、どう言うことだよ…七美…」
「梨里奈ちゃん、私は今、やっとあなたの苦労が分かったの。
居場所が無いのは辛いね…とても辛い…誰にも受入れられない
自分を偽り続けないといけないのって、本当に辛い」
「七美……あぁ、そうだろうな。分かってたさ。
お前に辛い思いはさせたくなかった…」
「でもね、マギウスの翼なら…私の居場所はあるの。
偽らなくて良い場所が…だから、梨里奈ちゃん、こっちに来てよ。
ずっと人に期待され続けて、自分のありのままを見せられなくて
本当に辛かったよね…でも、そんな思いをする必要はもう無いの。
私と一緒に、マギウスの翼に入って…居場所を広げようよ」
「……お前、本当に七美…なのか?」
「そう、私は七美だよ、千花七美…私はここに居る。
私は蘇ったんだ、弥栄と久実のお陰で…私はここに居る」
…弥栄が言ってた…私は死んでも七美には出会えないと。
そうか…そうだな…出会えるはずが無い…だって、七美は蘇ったのだから。
弥栄の言葉の真意を…今、理解できた。
「蘇っても、私には居場所なんて無くなってたけどね。
誰にも信じて貰えなかった…私が生きていると。
目を覚ましたとき、私には何処にも居場所が無くなってた。
だから、自分を隠して生きた…数ヶ月、ほんの数ヶ月だけね。
それなのにあんなに辛かった…生き返らなかった方が良かったと
そう思えるくらいに辛かった…
でも、梨里奈ちゃん、あなたはもっと辛かったんだよね?
期待に答え続けないといけない、そんな思いをずっと抱いて
必死に自分自身を隠し続けた。自分自身の居場所を作れず、
家にも、学校にも、何処にも本当の居場所が無い。
あるのは偽りの自分しか見てくれない人達だけ。
そんな毎日を過ごしてた…ごめんね、頑張れなんて無責任なことを言って…
もう、頑張らなくて良いよ…辛い思いをしなくて良い。
だから、一緒にマギウスの翼に入ろう? そこにはあなたの居場所がある」
七美にそんな風に言われて、体から力が抜けるような気がした…
ずっと抱いてた、孤独感…それを共有できるなんて…
七美が居るなら……七美も居てくれるなら、マギウスの翼も…
「ふふ、予想通り、かなり効果的だったって感じだネ」
「うふふ、さぁいらっしゃい、仙波梨里奈、マギウスの翼へ
あなたの友人もこう言ってるんだから。
大丈夫、受入れるよー」
「……」
あぁ、そうかも知れない…そうだ、七美がそう言ったんだ。
七美の期待に答えないと…また失ってしまうかも知れない。
でも、今なら…答えられるかも知れない…七美の思いに…
あんな後悔は…もうしたくない。今なら簡単に答えられる…
「さぁ、梨里奈ちゃん…一緒に行こう」
「七美…」
差し出された七美の手を握るために、私は私の手を伸ばす。
もう後悔をする事も無い……私は私のままで良い。
大事な親友の思いに……答えられるなら…
だけど、私の手は途中で止まる…何かが突っ掛かる。
手を伸ばせば良いだけなのに、私の手は動かない。
「……どうしたの? 梨里奈ちゃん」
「……」
「大人しく手を掴んだら? あなたの居場所はマギウスの翼にしか無いよ-?」
「そうだよ、誰も本当のあなたを見ない…でも、マギウスの翼なら私も居る。
私と一緒にもう一度、あの毎日を過せるんだから…迷う理由はないでしょ?」
迷う…理由…そうだ、無い筈だ。あんな楽しい毎日を…過せるなら…
(ほらほら姉ちゃん! 早く来いって!)
(一緒に楽しく過ごしましょう)
(……素直になれって言ったの、梨里奈ちゃんじゃん)
素直に…なれ…素直に…私は七美と一緒に居たい。
でも、それならどうして私はあの時…七美を生き返らせなかったんだ?
(梨里奈……無茶はしないで)
(行かないでください! 梨里奈さん!)
私が七美を生き返らせなかったのは…そうだ、自分の為じゃ無かった。
(…もう、また自分の思ってること言えなかったの?)
(……言えない、
私がありのままの姿を見せるのはお前の前だけだ)
(駄目だよ! もう、何度も言ってるけど
私以外にもありのままでぶつかれる
そんな友達を作らないと!
大丈夫、梨里奈ちゃんなら出来るよ、頑張って!)
……七美に対して、
何で私は自分の思ってることを言えないんだ!
七美には自分のありのままでぶつかる…
例え嫌われたとしても!
「さぁ、梨里奈ちゃん!」
「ッ!」
「え?」
私は差し出された七美の手を振り払った。
過去にも同じ様な事をした気がする。
だが今度はその手は消えなかった。
私の目の前に七美はまだ居る。
触れた感覚もある。本物だ。
「七美、いつかお前の幻にあったよ。
お前に会いたくて会いに行ったんだ。
その時のお前も、今のお前と似たような事を言ってた。
そして私はその時も、その手を払いのけた…
それが偽物だったからだ」
「違う! 私は本物! 本物の千花七美! 分かってよ!
あなたまで私を否定しないで! お願い、受入れてよ!
ずっと探してた…ずっと探してたんだ!
どうしても会いたかったから!
ようやく会えたのに!
なのにあなたまで私を偽物って言わないで!」
「あぁそうだ! お前は本物だ! 分かってる!
だから、その手を払ったんだ」
「え…ど、どうして私を受入れてくれないの!?
辛いんでしょ!?
分かるの、同じ思いをしたから分かる!
だから、私はあなたを…あなたと!」
「私はお前の事が大事だ、弥栄の事も、久実の事も。
だからだよ、だからこの手は取れない。
今のお前はまるで何かに操られてるようじゃないか!」
「操られてなんか無い!
私は私の意思であなたと一緒に居ようって!」
「今のお前は昔のお前とは違ってしまってる。
だから、私が救う!
お前の隣に居ては、それが出来ない!
私はお前を助ける!
昔、お前がやってくれたように!
今度は私がお前を助ける!
お前は間違ってる!
あんな場所に本当の居場所なんてある物か!」
私はやはり親友の期待に答える事だけは出来ないようだ。
親友の期待や願い。それに答える事が出来ない。
大事だと思ってる奴の思いには全く応えられない。
弥栄の時もそうで、そして七美の時もそうだ。
だって、彼女達の前に居る間は道化師じゃ無いのだから。
彼女達の前に立ち、共の過ごしてる間は…
私は決して道化なんかじゃ無い。
私は仙波梨里奈として、彼女達の前や隣に居るのだから。
「今の私はお前が言うピエロじゃ無い。
お前の前に立つ私はピエロじゃ無いんだ!
お前達の隣に居る間、私はピエロじゃない!
ありのままの仙波梨里奈だ!
だから、期待には答えられない!
お前達の前に居る間は期待に答えるんじゃ無い
お前達が本当に幸せになれる、
そんな未来を願ってるんだ! 友人として!」
「何で…何で私と一緒に居てくれないの…
あなたは私の居場所なのに…」
「あぁ、一緒に居てやるさ。
お前が心の底で笑える様な居場所として。
だから、今は一緒に居られない。
今一緒に居ればお前はお前じゃ無くなる…
お前じゃ無いままだ。
だから、私はお前を救わないといけない。
いつか言っただろう? 幸せになれと。
なら、私からも伝えよう。
幸せになれ…今のままじゃ、
お前は絶対に幸せにはなれない!」
私の言葉を聞いた七美がゆっくりと後ずさりをする。
その間にチラリと見えたソウルジェムは濁っていた。
「あ、これはヤバいね、アリナ達は離れないとネ」
「そうですね、
ではやっちゃん達を迎えに行きましょうか」
「あなたが私達の仲間になってることを祈ってるよー
じゃーねー」
「待て! フェリシア達を何処に! ッ!」
真っ黒い気配が周囲を包む…
そんな…七美、あれはドッペル…