魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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力試し

「力試しと言う事ですが、本当にやるんですか?」

「えぇ、その為にあなたにはここまで来て貰ったんだから」

 

路地裏か…ここならあまり人は来ないし戦えるのか。

しかし、彼女の装備的に考えても路地裏は不利だろう。

彼女は槍のような物を装備している。

 

とは言え、槍というのは突く事に特化している装備。

しかし、突く事の他に割る事も出来そうな斧の機能もありそうだ。

槍とポールアックスを合わせた感じだな。

薙刀に突く機能を強化した感じなのだろうか。

 

「この路地裏の狭い空間で、その装備は多少不利だと思うんですけど?

 リーチの長い武器は、狭い空間ではその機能を発揮しづらいと思いますか?」

「短いリーチしか無いあなたに武器の心配はされたくないわね」

 

私の装備は短刀だからな、まぁ見た目は短いリーチしか無い。

とは言え、私にはこの方が速く動ける分使いやすいからな。

この様なリーチの短い装備というのは懐に入りさえすれば勝ちだ。

 

動きを速くすることも出来る私にとって、この短刀は適性装備と言える。

しかし、槍等のリーチの長い装備は接近されてしまえばお終いだ。

つまり接近されないように、常に冷静な判断が求められる。

動きが速い相手の時に冷静な判断を失えば敗北する。

 

私の様に動きが速すぎる相手と対峙したとき。その相手がどれ程の腕かは分かる。

経験が豊富であれば冷静に対処は出来るだろうが、経験が浅ければ恐怖し冷静な判断を失う。

リーチの長い武器にとっては懐に潜り込まれるのは死を意味するのだから。

さぁ、彼女はどっちだろう。戦えば分かる事だが興味はある。

 

「では、始めましょうか…しかし本当に不思議ですよ。

 私にとって、かなり有利になるこの空間を選ぶとは」

「あなたにとってだけ有利になると思うの?」

「えぇ、今の所はね」

 

まずは正面から彼女に接近する事にした。

彼女は私の動きに反応し、槍部分での突きを仕掛ける。

私はその攻撃をギリギリで回避、そのまま彼女へ短刀での攻撃を仕掛けた。

 

「っ!」

「む」

 

だが、彼女は咄嗟に武器を上に振り上げ、私の短刀を弾いた。

そして、彼女はすぐに後方に跳び下がりバランスを崩していた私に斬りかかる。

しかしバランスを崩していたのは演技。すぐに態勢を戻し回避、槍を踏み付けた。

 

「ふん!」

「中々やるじゃない」

 

槍を踏み付け身動きを取れないようにしたところに短刀を投げたが

彼女は私の投げた短刀を回避した。

それなりの速さで投げたと思っていたが…なる程、かなり強いな。

接近されても冷静さを失わず的確にカウンターを仕掛けてくるとは。

 

「おっと」

 

踏み付けていた槍が大きく振り上げられる。

これならバランスを崩すかも知れないが、私は槍に乗り跳躍。

彼女の背後に跳び、一気に接近する。

 

「っと、かなり出来るわね」

「背後からの強襲をすんなり防御とは驚いた」

 

私の背後からの攻撃は、彼女にいなされる。

バランスを多少崩したが、私はあえてバランスを大きく崩し

そのまま前転により距離を取ると同時に態勢を立て直した。

 

「良い判断ね、猪突猛進に見えて失敗した後の対処も完璧に考えている。

 かなりの実力と言えるわ…しかし、武器による強襲以外に何か無いの?

 後もう1つ…あなた、本気を出してないわね。隠している物が多いように見える」

 

中々の洞察力と言った所だな。確かに私はまだ色々な要素を隠している。

この短刀に関する秘密は3つ程はまだ残してるし、自身の魔法も隠している。

しかし彼女も本気では無いのだろう。魔法少女と戦う事はこれが初めてだが

魔女と戦うよりもしんどいかも知れないな。

 

「では、ちょっとだけやる気を出させて貰いましょうか」

 

このままだと長期戦になるかも知れない。短期決戦を仕掛けるとしよう。

私は再び彼女に接近する。さっきよりも若干加速して。

限界突破による強化ではないが、少し本気を出した感じだ。

 

だが、若干加速したところで彼女をどうこう出来ないことは分かっている。

私は彼女の攻撃が飛んで来る前に跳躍し、彼女の頭上を越える。

その時に手元に何本もの短刀を呼び出し、頭上から雨のように降らした。

 

「く!」

 

彼女はその攻撃を弾き、攻撃を防いでいる。

しかしながら、私の投げた短刀は頭上から全て力で落とした訳では無い。

何本かの種類に分け、落下速度を変えるように落としている。

 

その為、私が着地した後もあの短刀は少しの時間降り続けることになる。

その間、彼女は防御をするしか無いだろう。

多少広範囲に展開させて貰ったからな。

 

ここが広い地形であれば回避は出来たかも知れないがここは路地裏。

狭い範囲しか無いこの空間で回避し続けることは不可能だろう。

 

「ふん!」

 

私は着地と同時に彼女へ接近する事にした。

落下してくる自身の短刀を弾きながら一気に。

防御で手一杯になっている彼女は上空からの攻撃と地上からの攻撃

この2箇所からの同時攻撃を防ぐことは出来るのかな?

 

「ぐぁ!」

 

流石にその両方を防ぐ事は出来なかったのか彼女は私の攻撃を受けた。

とは言え、短刀で斬り付けたわけでは無く、加速の勢いを利用して蹴りを入れただけだ。

相手は人間。その相手を殺すわけにはいかないだろう。

 

ひとまず私はその後、自身が投げた短刀を消し元に戻した。

空と地上の同時攻撃。これを防げるのは武器を2つ持ってなきゃ無理だろう。

 

「く、予想以上に出来るわね…」

「これで力試しは完了で良いですか?」

「……えぇ、あなたの実力、認め」

「このぉ! よくもやちよさんを!」

「っと!」

 

あ、危ない…不意にデカい大剣が…そしてあの声は昨日の

 

「確かももこだったか、不意に攻撃は流石に危ないと思うが…」

「あなたどうしてここに?」

「昨日の事でやちよさんを問い詰めようとして探してたんだ。

 そしたら、やちよさんがこの子に蹴られてるのが見えて」

 

何か凄くいやなタイミングで姿を見せていたんだな。

そのタイミングで私達を見付けたとすれば誤解するのも仕方ない。

 

「……いやなタイミングに遭遇したわね。ただの力試しよ」

「はぁ!?」

「タイミングが悪いな…あれでもし私が避けていなければどうなってたか」

「う、嘘だろ…ごめん! 本当にごめん!」

「そのタイミングでみてしまったのなら誤解するのは仕方ない。

 大丈夫、気にはしていないから」

「うぅ…ありがとう、はぁ、あたしなんでいつもタイミングが悪いかな…」

 

どうやら、いつもタイミングが悪いらしい。とは言え、悪いタイミングに遭遇しても

最悪の事態に至ってないのだから幸運なのかも知れない。

 

「それじゃあ、私は帰るわ。その子の実力も分かったことだし」

「あ、待ってくれやちよさん! 昨日の事を問い詰めさせて貰う!」

「昨日全て話したでしょ? 今更もう一度話す必要は無いわ」

「あ、待て!」

 

彼女達が何処かに行くところを、私は止めることも事情を聞くことも無く見守った。

そのまま、私は自分の部屋に戻る。誰も居ない部屋は…何故か安心出来るから。

昨日、うわさに囚われていた少女は1人が寂しいと言っていたが。

私はむしろ、1人の方が安心出来る…家族も居ない、誰も居ない1人という空間。

私は……その空間の中でしか、私で居られないのだから。

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