「七美…待って…ろ」
「あ、梨里奈さん!」
腹部に痛みが…それに、久実?
「な、久実…?」
「はい、久実です…」
何だ…夢を見てたのか、私は…うぅ、腹が少し痛む。
傷は殆ど癒えてるが、流石に痛みは完全には引いてないか…
「どうして…弥栄は…?」
「…弥栄お姉ちゃんからは逃げました、
ここなら気付かれません」
「……そ、そう言えば、ここは?」
「みかづき荘です」
みかづき荘…ど、どうして久実がみかづき荘に…
「何で…みかづき荘に?」
「梨里奈さんがここに来てるの、知ってましたから」
「い、いつ?」
「夏です…確か8月の20日…だったような…?」
8月20日? いや待て、その時は確か海水浴に…
そう言えば、8月22日に小さな声が聞えたのを覚えてる。
もしや、声の主は…
「その時の私は…手に何か持ってたか?」
「あ、はい、ケーキの入れ物みたいな物を…」
「そうか…なら8月22日だな、小さな声が聞えた」
「あ…そ、そうだった…うぅ、日付覚えてなかった…」
少し記憶違いをしていたのか。
「所でだ、どうしてみかづき荘の中に…?」
「あ、合鍵が置いてあって…」
「中に人は?」
「い、居ませんでした…」
やちよさん、合鍵の場所を変えた方が良いのでは?
それにしてもやちよさん達……
もしかして、やちよさんといろはも…
「そうか……」
「だ、大丈夫…ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「お、お腹の怪我…少しだけ治したんですけど…」
「……やっぱり、久実も魔法少女に…なったんだな」
「……はい、
お姉ちゃんの体を元に戻して欲しいってお願いして…」
「体を?」
「はい、そして弥栄お姉ちゃんが
お姉ちゃんを蘇らせて欲しいって」
「……そうか」
私があの時、
大人しく七美を蘇らせて欲しいと願っていれば…
2人は魔法少女なんかにならなくても…
なんて…私は愚かなんだ…
「そして…七美お姉ちゃんは…蘇ったんです…けど」
「……大体想像は出来る…七美と会話をして…分かった」
「……ごめんなさい、梨里奈さんは…こうなるって…
分かってたんですよね…? 七美お姉ちゃんが…」
「大事な姉に生き返って欲しいって思う事は当然の事だ。
気にすることは無い…
誰だって、大事な人を失いたくは無いだろう」
彼女達はまだ小さい。
大事な家族と一緒に居たいって思うのは当然だ。
大事な人の死を受入れたくないのも当然なんだ…
ただ気付かなかった。
私が気付かなかったんだ…2人が辛い思いをすることに…
「でも! そのせいで…七美お姉ちゃんが辛い思いをして…
ずっと独りぼっちになって…それで」
「七美は独りぼっちじゃ無かった…お前達が居たんだ」
「だけど、七美お姉ちゃんは寂しそうで…
それに弥栄お姉ちゃんも…
七美お姉ちゃんが辛い思いをしてるのは…その…
梨里奈さんのせいだって…
そんな訳無いって…言っても聞いてくれなくて…
梨里奈さんが神浜に行ったって話を聞いて、
私達も…行ったんです…
そしたら、魔女と3人で戦ったのに、手
も足も出なくて…」
「3人…七美も」
「はい、七美お姉ちゃんのお願いは…居場所をください…
そしたら、お姉ちゃんが死んだって事を忘れてくれて
ずっと居場所って…だけど、梨里奈さんが居なくて…
お願いで手に入れた居場所も、
七美お姉ちゃんは嫌だって」
七美の願いは、居場所が欲しいという願い…だったか。
「でも、死んじゃいそうになった時に
お姉ちゃんからドッペルが出て来て…
魔女を縛って…友達にして…
その瞬間をマギウスに見付かって…」
「……魔女を友達に?」
「はい、お姉ちゃんのドッペルで魔女が止まったんです
それで、お姉ちゃんの言う事を
何でも聞くようになったんです…ドッペルって、
あ、私も弥栄お姉ちゃんも出せるんですけど…
わ、私の場合は鎖で相手を捕まえるドッペルで…
弥栄お姉ちゃんのドッペルは
沢山手が出てくるドッペルで…」
ドッペルは確か本来、魔法少女が魔女になるとき
代わりにソウルジェムから出てくる
魔女の様な何かだったかな。
ドッペルが出てくる瞬間は
あの記憶ミュージアムでは見なかったが…
確か私がハッキリと意識を取り戻した瞬間に景色が変った…
「えっと、あの…そ、その場面をマギウスに見付かって…
な、七美お姉ちゃんは、
わ、私達と一緒にマギウスの翼になって…
その間に梨里奈さんを探そうって
…わ、私は個別で探そうって…」
「どうしてだ? 一緒には」
「その、弥栄お姉ちゃんは…
梨里奈さんを殺そうとしてるから…
わ、私は七美お姉ちゃんを助けられるのは、
梨里奈さんだけって…
そう思って…でも、弥栄お姉ちゃんは聞いてくれないし…
七美お姉ちゃんも…何だか…雰囲気が変っちゃって…
だから、わ、私だけで探そうって…み、見付けたとき
す、すぐに声を掛けようとしたんですけど…
勇気が…出なくて」
久実は臆病な性格だからな、
行動するのに時間が掛ったんだろう。
でも、私が危ない時、
彼女は勇気を振り絞って助けてくれた。
彼女は本心で私を助けてくれようとしてる。
そして、七美と弥栄も助けようとしている。
臆病だが、芯は凄く強い…流石は七美の妹だよ。
「でも、私を助けてくれた…ありがとう、久実」
「あ、あわ、あわわ…あ、ありがとうなんて、
そ、そんな…え、えへへ」
恥ずかしそうだが、嬉しそうに笑っている。
可愛い子だな、私にお礼を言われたことが
そんなに嬉しかったのか…
「あ、そうだ、喜んでる場合じゃ無くて…そ、その!
梨里奈さん!
お姉ちゃんを…弥栄お姉ちゃんと七美お姉ちゃんを、
た、助けてください!
わ、私1人じゃ…な、何も出来ないけど、
り、梨里奈さんなら2人を…」
「あぁ、任せてくれ…当然助けてみせるさ、
七美も弥栄も…必ず私が」
七美は私の心を救ってくれた。
ならば今度は、私が七美の心を救う。
そして弥栄も救う。
弥栄だって、あの時の七美が大好きなはずだ。
七美が死んでしまって、
辛い思いをしたからあんな風になった。
あいつの思いを全て受け止めて、弥栄も救う。
「ありがとございます! ありがとう…ございます…」
私にお礼を言いながら、久実は涙を流し始めた。
涙を堪えようとしているが、彼女の涙は止まらない。
「ありがとう…ございます…」
久実は私に抱きつき、私の胸の中で泣き始めた。
「久実…辛かったな…大事な姉妹達が変ってしまって…
必死に頑張っても、2人を元に戻せなくて。
でも、もう大丈夫だ…私が2人を救ってみせるから」
「う、うぅ…う、うぅ…」
「後は…私に任せてくれ、久実」
「……い、いや…わ、私も、私も…が、頑張ります…から!」
……そうか、あぁ私はやっぱり馬鹿だな…
久実だって成長するんだ。
臆病な彼女だったが
こうやって自分の意思をしっかりと持ってる。
私に全部任せて、自分は何もしないなんて、
そんな子じゃ無いよな。
ちょっと前まで、臆病だったのに…ふふ、何て力強い瞳だ。
「そうだな、じゃあ、一緒に頑張ろう。2人で助けだそう」
「は、はい!」
久実は私が差し出した右手を掴んでくれた。
目に力強い思いを感じる…大丈夫だな、これなら。
「あれ? 電気付いてると思ったけど、誰も居ないのか?」
「だ、誰か来ました!」
「そんなに怯えなくて良い、私の知り合いだろう」
絶妙なタイミングで入ってくるな、ももこ。
しかし、やちよさんといろはの2人は…大丈夫か?