ひとまずももこと合流するとしよう。
もしやちよさんといろはに何かがあった場合
ももこと合流して、全員を救い出さないと。
「フィリシアちゃん! さなちゃん!」
「えっと、ごめん…ももこでした…」
「そんな…」
「えぇ!? いろはちゃん!?
そんな崩れるようなこと!?
そりゃ、あたしはバットタイミングのももこだけど」
「ももこ…」
「あ、やちよさん…」
「どうしたの? 勝手に上がり込んでくるなんて」
どうやら、丁度タイミング良くいろはとやちよさんが帰ってきたようだ。
はぁ、最悪の事態だけは避けられたと言ったところか…
とは言え、今は出にくい雰囲気だな。ここで出るのは止めておこう。
「出ないんですか?」
「あの中に私が入るのは場違いだろ?」
私はしばらくの間、部屋に隠れて3人の会話を聞くことにした。
やちよさんの過去の事を。解散か…他人を犠牲にして生き残る魔法。
自分自身が仲間の死の原因かも知れない…
そんな思いを抱いていたんだな…
今までのやちよさんの立ち振る舞いからは気付かなかった。
私もまだまだだな…やちよさんの思いに気付けないなんて。
そして、いろはが体を張ってやちよさんを説得した。
大した物だな、いろは。最初に出会った時は…
魔女にやられて、情け無い印象を抱いていたが…変る物だ。
それにしても、ますます出にくくなったな…
ももことやちよさんが素直になれた、そんな瞬間。
そんな感動的な場面で私が出るのは無粋と言える。
「梨里奈…さん…? う、嬉しそうですね…」
「ん? あぁ、ここで出来た知り合いがようやく素直になれたんだ。
私だって喜ぶさ…一歩踏み出す勇気……本当に大事だよな」
「……はい」
2人がしばらくの間、静かになる。そして会話が始まった。
鶴乃達の話をしているようだな…そろそろでても大丈夫か
「はい…皆それで、マギウスの翼に行きました…」
「マジか…って、待って!? 皆!? じゃあ、もしかして…
も、もしかして、り、梨里奈も?」
「詳細は分からないけど、アリナはそう言ってたわ…」
「嘘…だろ…あの人が敵になるとか、洒落にならないだろ!?」
「えぇ、最大の問題がそこね…梨里奈をどう攻略するか。
あの子は味方なら本当に頼りになるけど…敵ってなると…」
「あたしら3人…そして、やちよさんといろはちゃんの2人。
5人で挑んだところで…勝てる気がしないよ」
「今後のことを考える上で、最も考えないと行けないのがそこね。
梨里奈をどう攻略するか…可能なら不意を突いて無力化したいけど
正面からじゃまず勝ち目が無いわ…」
「不意打ちすら効果があるか分かりませんしね…
ちょっとしたダメージならすぐに回復しちゃいますし」
「ちょっとした? 致命傷でも起き上がってたわよ?」
「そ、そうでしたね…考えてみれば、抵抗できない状態で
アリナに一方的に攻撃されて動けなくなってたのに…
それなのに魔女を倒して、あそこまで戦ってましたし…」
「化け物かよ…」
「……必死に考えないと勝てないわね」
「だね、もっと知恵を絞ろう…安易な手じゃ勝てないし」
す、凄い過大評価をしてくれるな…流石に驚くよ。
「…ふぅ、全力で対策を考えてくれているところ悪いが
残念な事に私はマギウス側じゃ無いんだ、期待に添えず申し訳無いな」
「え!? 梨里奈…さん!?」
「嘘、い、いつの間に…そ、それに…あなたはマギウスの翼に!」
「安心してくれ、マギウスが持ってる切り札は私には効果が無かったんだ」
私の登場に3人ともかなり驚いている様子だった。
どのタイミングで登場するか悩んだが、一番無難だったか。
「り、梨里奈さん…良かった…もし梨里奈さんがマギウスの翼に入ってたら…」
「本当よね…八方塞がりだったわ。あの見滝浜の魔法少女。
そして梨里奈が相手だなんて、ゾッとするわ…」
「はぁ、一安心だね…最悪の事態は免れたみたいだ」
「大丈夫さ、辛うじて踏みとどまった…私の方でもマギウスと敵対する理由が
ハッキリと出来てしまったというのはあるがな」
「どう言うことですか?」
「私の死んだはずの親友がマギウスの翼に入ってしまってる」
「え!? し、死んだはずの人が!?」
「あぁ、そしてそいつも心が囚われてる。だから助ける。
ハッキリとマギウスと敵対する理由が出来たよ」
今までは結局、そこまで興味は無かったのかも知れない。
いろは達に引っ張られるような形で回ってただけだ。
うわさにもそんなに興味は無かった…だが、それも終りだ。
これからはマギウスを潰すために…七美を救うために動く。
いろは達に付いていくだけじゃ無い。私自身の意思で動く。
「それと、今後についてだが、私の対策を練る必要も無くなったんだ
もっと素早く踏み出せるようになったんじゃ無いか?」
「まぁ、そうね。あなたの対策ほど考えるのに苦労することは無いからね」
「正面からじゃ、絶対に勝てませんからね…全員で挑んでも勝てる気がしません」
「不意打ちぐらいしか考え付かないからな、不意打ちも効果あるかも分からないし」
流石に過大評価しすぎだと思う…何だか恥ずかしい。
「あまり私の事を過多に言わないでくれ…」
「それだけ言われても良いくらい、あなたは強いのよ。
私の予想だと単体であなたに勝てる魔法少女はいないわ。
私もあなたに勝てる気がしない。敵にならなくて本当に安心よ」
「逆を言えば、マギウスにとって梨里奈が仲間にならなかったのは致命的だね。
あたしらの最大の牙を奪えなかったんだ、これは応えるよ」
「どうかな、この状況もあっさり崩壊しかねないぞ?」
「どう言うことですか?」
「私は大丈夫だが、お前達が全員、洗脳されると言う事だよ」
「……どう言うこと? 話して」
私は3人に七美のことを全て話した。
最も3人にとって最も必要な情報は七美のドッペルだろうが。
七美の容姿も説明した。青い生地に白のラインが入った
セーラー服。このセーラー服は水兵の物だったな。
髪は黒く綺麗な長髪で…いつもの髪飾りがあった。
可愛らしい四ツ葉のクローバー…。
弥栄の容姿も似ていたな、弥栄は黒だったが
髪飾りは姉と同じだった。
「友愛の…ドッペル…」
「糸で繋いだ相手を強制的に友人にする能力って…無茶苦茶だね」
「アリナが言ってた最終兵器は七美のことだ。私は問題は無いが
私以外には恐らく効果的だろう。魔女にさえ効果があるくらいだ」
「何で梨里奈さんには効果が無かったんでしょう?」
「簡単な事さ、私があいつの親友だからだ。
既に親友である私を友に出来る筈が無いだろう?
もうすでに掛け替えのない友なのだから」
「なる程ね、既に仲が良い場合は効果が無いと…
確かにそれなら、私達が喰らった場合洗脳されちゃうわね」
「あぁ、だから七美と戦えるのは私だけだろう。
七美の特徴はさっき言ったとおりだ。出会ったら逃げてくれ。
友愛のドッペルを受ければ、簡単に洗脳される」
「分かったわ」
まさしくマギウスの最終兵器に相応しいドッペルだ。
「でも、梨里奈が居れば何とかなると…はぁ、その話を聞いて
ますます梨里奈がこっち側に付いててくれて良かったと思うよ…」
「あそこで私が選択を誤っていたら、全滅だったかもな」
「全く否定できませんね…と言うか確定って気がするんですけど…」
「梨里奈とその友愛のドッペルを持つ梨里奈の親友…
見滝浜の魔法少女にさな、鶴乃、フェリシア…完全に終わってるわね」
意外と私の存在は大きかったのかも知れない。
少なくとも私以外で七美の友愛のドッペルに対抗できる魔法少女はいないだろう。
この神浜で七美と親しい魔法少女が居るなら話は別だが
七美のあの口振りから、七美は神浜に来てすぐにマギウスの翼になってる。
七美と交友関係がある魔法少女は恐らくマギウスの翼内部にしかいないだろう。
「まだ私が居て良かったかも知れないな…とは言え、まだ辛そうだ。
戦力があまりにも少なすぎる…あと何人か欲しいな」
「それなら、まどかちゃん達にもお願いしてみます!
まどかちゃんからメールも来てますし、また神浜に来るって!」
「あの子か…」
「当然、あたし達も協力させて貰うよ。レナもかえでも助けるって言うだろうしな。
かえではまだ動けないかも知れないけど」
「本当に良いの?」
「あぁ、大切な人を助けるのに理由は要らないさ、な、先輩」
「やめて、ももこにそう言われると何だかむずがゆいわ」
いろはがまどか達を、やちよさんはももこ達を。
何だか私だけ協力してくれる仲間が居ないという感じがするな。
「なら、私からも1人、仲間を紹介するよ。久実!」
「ひゃ、ひゃい!」
私が久実の名前を呼ぶと、少し震えながら久実が部屋から出て来た。
臆病だからな、知らない人の前に出るのは恐かったんだろう。
だが、私が呼んだら出て来て欲しいというお願いは聞いてくれたな。
「この子は…服装から黒羽根っぽいけど…知り合い?」
「あぁ、さっき言った私の親友…七美の妹だ」
「え? 協力してくれるの?」
「お、お姉ちゃん達を助ける為に…
そ、それに梨里奈さんの助けになるなら…が、頑張ります!
そ、そんなに…頼りにならないかも…知れませんけど…」
「いいや、マギウスの翼に所属してた子が協力してくれるなら心強いわ」
「が、頑張ります…」
「…やちよさん、私達、2人だけじゃありませんね」
「えぇ、最悪の事態は避けられた、まだ先は真っ暗じゃ無いわ」
「はい、まだ希望は十分あります!」
そうだな、まだ状況は最悪じゃ無い。
まずは鶴乃達を助け出して、そして七美達を救ってみせる!