私は久しぶりに誰かと一緒に過ごすことになった。
今後のマギウスの行動を警戒して、私はしばらくの間
みかづき荘で世話になる事になったからな。
マギウスに取って、私というのは確実に邪魔な存在。
孤立してしまうと言うのは、あまりよろしくないからな。
だから、私もみかづき荘にしばらくの間滞在する。
当然、久実もだ。
フェリシア達が居ないから静かではあるが
それでも2人だけよりは大分賑やかだろう。
気持ちを新たにする意味も込めてみかづき荘の隅々を掃除する。
私は誰かが居る部屋を掃除するのは何だか好きだからな。
自分の部屋には無頓着だが、誰かの部屋は綺麗にしたい。
「よし、綺麗になったわね」
「はい、大分」
「ピカピカですね…新築みたい」
「気合いを入れすぎた気がする」
やり過ぎたような気はしたが、やるなら徹底的にが一番だからな。
「よし、じゃあこれからの行動を考えましょう。
マギウスの本拠地を何とか割り出さないとね」
「そうですね…一応、久実…聞いておくけどマギウスの本拠地は」
「ご、ごめんなさい、わ、私も…し、知らなくて…」
「そうだよね…」
「あぁ、慎重な連中だ。大事な部分は伝えてないだろう。
知って居るとすれば、みふゆか…もしくは七美かな」
七美の能力はマギウスに取っても大きな価値があるだろう。
みふゆやマミの様に特別な扱いをされてる可能性もある。
と言っても、七美と接触できなければ意味が無いがな。
「となると、手がかりになるのはうわさ…かしら」
「そうだと思います。と言う事でこれを」
私は何度かマギウスの捜索に利用してきたファイルを見せた。
やちよさんの神浜うわさファイルを参考にうわさの場所を記した物だ。
「これは確か、あなたが今までマギウスの捜索に利用してた地図ね」
「はい」
「凄いびっしり印が付いてますね…」
「あぁ、いくらか探索ついでにうわさも捜索してたからな。
そのうわさの場所も印を付けてる。中々多いだろう?」
いろは達は私が見せた地図を少し見た後、違和感に気付いたようだった。
「あ、あの…何でここだけうわさが綺麗に?」
「えぇ、明らかに不自然ね」
「その通り、明らかに不自然なんだ。それとこのメディカルセンターもな」
ここだけ妙に密集しているからな、明らかに怪しい。
いろはだけはその場所に見覚えがある様子だった。
「確かに…ここだけ妙に密集してるわね」
「ここ、うい達が入院してた…」
いろはの記憶の事は聞いている。妹の事を。
何故かいろは以外の記憶から消滅している妹。
何故いろはだけは覚えているのか…全く不可解な現象も多い。
「なる程、この場所と何故か台風の目の様になってる場所。
どちらを優先的に調べるべきかしら」
「……私の予想だと、両方罠だと思うんですけどね」
「どうして?」
「露骨すぎるからですよ」
台風の目の様になってる場所、こんな場所をあえて作る理由がない。
仮に本拠地の近くだからとしても、こんなにも露骨では特定される。
そしてメディカルセンター、こちらは恐らく私であれば罠として使う。
多い理由も想定だが、最初の実験としてこの場所にうわさをいくつか作り出した。
だから多い、だが私ならその後、ここを本拠地にしようとは思わない。
明らかに不自然だからな。うわさが集まれば注目されるのも必然だ。
そんな場所に本拠地を構えて居れば、誰かに見付かりかねない。
七美の妹である黒羽根にも本拠地を教えてないほどだ
それだけ慎重な連中と言える。そんな奴らがこんな目立つことはしないだろう。
「もし私がマギウスの立場であれば、こんなにも露骨な真似はしない。
私ならそこら辺の適当な場所に本拠地を構えます」
特に違和感の無いうわさの配置となってる場所に本拠地を置く。
「…確かに言えてるかも知れないわね」
「ですが、これが罠であるなら、確実に人員を投下してるはず。
白羽根やそう言うレベルの人員を…」
「あえて罠に踏み込もうと言うの?」
「虎穴に入らずんば虎児を得ずって奴ですよ。
そしてもうひとつ、あちらは私が気掛かりと感じてるはずです。
そんな私がもし仮に単独でこの罠に突っ込んだとすれば」
「まさか!」
「同時にいろは達はメディカルセンターに移動というのもありだろう。
マギウスとしても2人の事だってどうにかしたいはずだ」
もし私を過大に危険視しているのなら、外堀を埋めようと考えるだろう。
つまりは協力者の籠絡だ。いろはとやちよさんをマギウスの翼に加える。
その後はももこ達と確実に私を孤立させていき、確実に私を捕える。
だが、これにはかなりの行程が必要となるだろう。
七美は1人しか居ない、2人を引き込むには七美の力が必須だろう。
そしてドッペルはソウルジェムが濁りきらないと使えない。時間が必要だ。
可能なら私を先に何とかして、残りをゆっくりと排除すると言う感じが無難か。
「何を考えてるの?」
「罠を2つ同時に踏むんだ。私達が罠を踏むという素振りを見せてゆっくりと。
私を撃破したいなら、私の方に戦力を集中させる。
恐らくマミとみふゆが来るだろう、フェリシア、鶴乃、さな
この3人も来る、現マギウス最大戦力だろうな」
「それは危険すぎます!」
「まぁ聞け、マギウスにはいくつか選択肢があると思う。
まず1つ目がそれ、もうひとつが2人の洗脳だ。
その場合であれば、メディカルセンターにフェリシア達が来るはずだ」
「ど、どうしてですか?」
「フェリシア達が2人を足止めするのに最も効果的だからだよ。
時間を稼ぎ、七美のドッペル発動まで粘り
ドッペルにより2人を洗脳する。フェリシア達が来れば
いろは達は3人を説得するために時間を割くだろう? そう言う事だ」
「あなた…そこまで想定してるの?」
「マギウスの立場になった場合、どれが効果的かを考えただけですよ」
そしてまだ他にも選択肢はあると思う。
「他には…うわさを使っての大きな事態を起すこと。
うわさはどうも何でも出来るみたいですからね。
記憶ミュージアムのように人を洗脳できるうわさを用意したり…」
「確かに一理あるわね…でも、最後の場合であれば
今頃、下準備の最中とかかしら。
マギウスからしてみれば、私達の洗脳が失敗したのはイレギュラーだし
即座に対処は出来ない筈。私達をどうこうするなら準備からじゃないとね」
「かも知れませんね…」
と言う事は、新しいうわさが流れ始めてるかも知れないって事か。
「一応、既に何かの行動をしてるかも知れませんけどね…久実、何か知らないか?」
「え? あ、えっと…わ、私が言われたのは…うわさを、守れって…
あ、でもお姉ちゃんが言ってました! 大きなうわさが…」
「大きなうわさ?」
「その…確か、詳しく聞いてないんですけど…大きなうわさを流して…
確か何だか、一気に…うぅ、ごめんなさい…七美お姉ちゃん
その事、少ししか言って無くて…梨里奈さんを探す為に色々したって話の方が」
「私を探すために色々? どんな事をしたんだ?」
「マギウスにお願いして…梨里奈さんを捕まえて貰えるようお願いしたって…」
「マギウスに直談判できるほどに重宝されてると言う事か、やっぱりな」
七美は幹部クラスか…七美に話を聞ければ一気に事態は動きそうだが…
それより気になるのは大きなうわさの方か…
「ありがとう、久実。既にマギウスが何か手を打ってると言う事が分かった」
「そうね、それでどうする? 明日の予定。
さっき梨里奈が言ってた様に罠を2つ同時に踏む為の準備をする?」
「……危険な事は避けたいですけど…時間があまりないみたいですし…
そうですね、危ないですけど…それで何とか!」
「よし、じゃあ下準備として、私達がマギウスの罠に気付いてない風に進もう」
「はい、その準備をしてる間にマギウスが流してるって言う
大きなうわさも特定しましょう!」
「あぁ、それが良いな」
大きなうわさがどんな物か…早急に把握し対処しないとな。
「…それとさっきも言ったけど、メディカルセンターの捜索をしたときに
もし2人の前に鶴乃達が姿を見せた場合は…七美を警戒してくれ」
「えぇ、分かってるわ。友愛のドッペルは危険みたいだからね」
「でも…フェリシアちゃん達がもし私達の前に来てくれたときに…
フェリシアちゃん達をどうすれば助けられるんでしょう…
説得しても効果があるか分かりませんし…それに説得に時間を掛けたら
梨里奈さんの予想が合ってた場合、わ、私達も…」
「それよね…3人を強制的に連れ戻す方法も考えておきましょう」
「はい…」
説得に時間を掛けると七美にやられる。時間を掛けないと説得が困難。
やはり七美の存在は私達に取ってかなり脅威だろう。
「でも、梨里奈さん…も、もし梨里奈さんの前に七美お姉ちゃんが来たら…」
「どうした? 何か不安な要素でも?」
「……きっと、梨里奈さん…七美お姉ちゃんに攻撃出来ない…」
「……そうよね、親友を攻撃するのは…その…」
「大丈夫だ、覚悟は出来てる。それにまだ先の話だ。
まずはマギウスに私達の動きを予想させないと駄目だからな。
えっと、明日は私は万々歳に行きます。しばらくバイトに出られませんから」
「そう…ね、大事な事よね」
「はい」
明日の行動は決った…万々歳で事情を話した後、行動開始だな。
私達が罠に誘導されていると、勘違いさせないと駄目だからな。
マギウスは私を最大限警戒する。重要なのは私の行動になりそうだな。