魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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最速の救出劇

久実の気配を急いで追わないと! 身体強化も最大に使うしか無い!

時間が無い、神浜の魔女じゃ、久実は勝てない!

七美、弥栄、久実の3人でも勝てなかった相手…

久実の近くに魔女以外の気配なんて無い! どうしてこんな時間に!

 

「あ、あぁ…」

 

私が急いで久実の元に走り込むと、もう久実は追い込まれていた。

使い魔に完全に包囲されて、魔女本体の攻撃範囲内に入ってしまってる。

魔女だって、もうすでに久実を殺すつもりらしい…

 

こんな距離じゃ、もう走っても間に合わない…

それに結界を作らない魔女…そんな魔女、七美の力で操ってるに違いない!

よりにもよって、七美の力で久実を! ふざけた真似を!

 

「久実に触れるな!」

 

私に取れる手は正直これしかなかっただろう。

短刀を呼び出し、身体能力を最大に強化しての投擲。

私が投げた短刀は瞬く間に魔女に直撃し、貫通した。

だが、大きな隙が出来た、これだけで十分だ!

 

これだけ時間があれば、私の速度なら間に合う!

もう2度と、あの時みたいな思いはごめんだ!

私の力が及ばずに、大事な何かを守れない、そんなの嫌だ!

私はもう2度と、あんな思いを…したくないから!

 

「そこから消えろ!」

 

移動の過程で久実を包囲していた使い魔を撃破する。

すれ違い様に短刀でまとめて引き裂くなんて造作ない事だ。

問題は魔女、そいつさえ仕留めれば、それで終りだ!

使い魔を引き裂くとほぼ同時に魔女に向けていくつかの短刀を投げる。

2回もあの投擲をするのは肩が持ちそうに無いからな、別の方法で仕留める!

 

「これで終りだ!」

 

魔女の周囲に飛び散ったいくつもの短刀を強く蹴り飛ばす。

何本も何本も魔女の体に短刀が突き刺さり

私は突き刺さった短刀の内の1本を魔女を踏み付けると同時に深くに差し込む。

 

「@、おn!」

 

久実を助けるために全力で走っていた勢いもあり

魔女は私の踏みつけの勢いで地面を滑る。

魔女の体の上に乗っていた私も同じく滑った。

スケートボードに乗るとすれば、こんな感覚なのかもな。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…もう休め」

 

最後に短刀をいくつも召喚し、魔女を串刺しにしてトドメを刺した。

魔女は小さな断末魔を上げ、黒い煙をまき散らし姿を消した。

 

「り、梨里奈…さん…梨里奈さん…うわぁぁあ! 恐かったよぉ!」

「おっと…もう大丈夫だ…ごめんな、恐い思いをさせて。

 私がもっと速く合流出来てたら、こんな思いをさせないですんだのに」

「うぅ、ひっく…うぅ…わ、私…し、死んじゃうかもって…」

 

緊張が解けて、涙が出て来てしまったんだな。

まだ久実は小学生だ、死ぬかも知れない場面に直面すれば

涙が溢れてしまうのも仕方ない…私に抱きつくのだって仕方ない事だ。

まだ小学生…まだ誰かに甘えたい時期なんだ…それなのに姉2が…

 

辛いだろう…家族に嫌われるのも恐かっただろう。

でも、2人を助けようとする、優しい子だ…

私が守らないと…七美を元に戻すまで、

私がこの子の姉になってあげないと。

 

「う…」

 

ふぅ、全身が痛むな…流石に無理をしすぎた…

限界突破はやり過ぎるとこうなる。

全開で飛ばしたし、最後の瞬間は肉体の限界も完全に越えてただろう。

限界突破の魔法とは言え、肉体への負荷が多大なのが辛いところだな。

それに魔力の消費も中々辛い…自身の全開さえ越えると厳しいな…

 

「うぅ…恐かった…ごめんなさい…」

 

しばらくの間、久実は私の胸に顔を埋めて泣いていたが

落ち着いてくれてよかった…

 

「謝らなくて良い…さぁ、みかづき荘へ戻ろう」

「う、うん…」

「ほら、グリーフシードだ…随分濁ってる、使え」

「で、でも、梨里奈さんも…」

「私は大丈夫だ、さぁ」

「…ごめんなさい」

 

私はさっきの魔女から奪ったグリーフシードを久実に渡した。

精神的に負荷を追いすぎたんだろうな、ソウルジェムが真っ黒だった。

さて、このグリーフシードは調整屋に持っていくとしようか…

 

「さ、帰ろう」

 

……あぁ、とは言え…そうだよな。

 

「帰れる思うの? このチャンスを私達が逃すと?」

「あ…マギウス…の…そんな…」

「全く卑怯な事をしてくれるな…まだこれだけ居たのか。

 さっきよりも増えてるんじゃないか?」

 

体は既にボロボロだし、魔力も大分消耗した。

グリーフシードの予備を持ってきていればよかったな…

明日辺り、部屋に戻ってグリーフシードの補充をしよう。

やちよさん達も必要だろうし、結構持ってるからな。

 

「それにしても安心したわ、あなたも失敗することがあるのね?

 あの場面で何故その使えない子にグリーフシードを使わせたの?」

「久実はソウルジェムがかなり濁ってたからな。

 私としても、大事な親友の妹が辛い思いをしてるのを放置は出来ない」

「でもあなたの事だし、どうせこうなることは分かってたんでしょ?

 一時の感情に流されて判断を誤るなんてね」

「一時の感情ほど厄介な物は無いからな。とは言えだ

 その通り、こうなる事は想定していた…出来れば外れて欲しかったが

 意外と私は勘が鋭いようだ…当然、どうするかも考えたが

 生憎時間が無くてな…私の中でも嫌な選択肢しか浮かばなかった」

「へぇ、その選択肢って?」

「強行突破だ。問題はお前達の身の安全を保証できないと言う事だ。

 ご覧の通り、私も余裕が無い。余裕が無い状態で敵の身を案ずる事は出来ない。

 怪我をしたくない奴は下がってろ、傷が一生残りかねないぞ?」

 

自身の周囲に短刀を召喚し、威嚇する。

私が本気を出せば…そうだな、最悪相手を殺しかねない。

だが、この場面だと流石に加減をする余裕が無い。

魔力の消耗もあるし、久実も居る。肉体もあの全力移動でかなりギリギリだ。

この場面で相手の怪我を心配する余裕なんて何処にも無いだろう。

 

「例え魔法少女が解放されたとしても、その傷は一生残るだろう。

 最悪の場合は誰か死ぬかも知れない…それだけ今の私は余裕が無い。

 後が無いと言うことはそう言う事だ、手負いが最も危険なんだ

 人だろうと、獣だろうとな」

「……」

 

私の威嚇を受けた黒羽根や白羽根達からは明らかな動揺が見える。

露骨だな、顔色が分からなくても動きで分かってしまう。

 

「どうする? 逃げる奴は追わないぞ」

「あら、逃げるというの?」

「そ、それは…」

 

そうか、流石にマミの脅しの方が効果的らしい。

最初出会った時よりも随分と容赦の無い性格になったな…

やはり何か変だ…マギウスの連中に何をされた?

最初も話があまり通用するタイプでは無かったが

狂気のような物は無かった…

 

あの時は正義感か、そんな雰囲気だった。

思い込みが激しいだけで、実際は正義感ある魔法少女、そんな感じだ。

だが今は…狂気を孕んでる。異常なまでの目的意識と言う感じだ…

 

「…仕方ない、後悔するなよ…

 久実、少し離れていてくれ」

「う、うん…」

 

足が痛む、体も上手く動かせない…こうなったら

不甲斐ないかも知れないが…久実に怪我をさせる訳にもいかない。

 

「行くぞ」

 

少し私から距離を取ってくれた久実に近付き彼女を抱き上げる。

 

「ふえ!?」

「人殺しは嫌だからな、私は逃げる!」

「嘘!?」

 

不甲斐ないが、一気にその場から飛び上がり、屋根伝いに離脱する。

虚を突かれたからか、マミの攻撃はワンテンポ遅れていた。

あぁ情け無い…前までなら絶対にやらなかったな、こんな方法。

 

「すまないな、情け無いがあの場面でお前を護りながら

 あの数を怪我させずに殲滅するのは無理だったんだ。

 殺したくはないし、出来れば怪我も負わせたくなかったからな」

「い、いや、わ、私が魔女に襲われなかったら…」

「いいや、大丈夫だ…それにしても、どうしてあの場所に?」

「帰ってくるのが遅いから…り、梨里奈さんを探して…心配だったから…

 でも、黒羽根に襲われたりして逃げてたら、魔女に襲われて…」

「そうか…すまないな、帰ってくるのが遅くなって…」

 

そうか、黒羽根に誘導されてたのか…通りで黒羽根の数が多かったわけだ。

最初から久実の行動を制限してたのか…

 

「遅いわね…」

「久実ちゃんも姿が…い、急いで探さないと!」

「そうよね、梨里奈と久美ちゃんに何かあったら一大事ね」

「すまない、遅くなっ…っとと」

「梨里奈…上空から降ってくるなんて変った登場ね…

 いや、それよりも大丈夫? 明らかに体調が悪そうだけど」

「だ、だいじょう…うぅ…」

「っと、大丈夫じゃないわね」

 

さ、流石に無理だったか…みかづき荘に到着すると同時に力が…

はぁ、情け無い…途中で立てなくなってやちよさんにもたれ掛るなんて…

うぅ…も、もっと鍛えないとな…体が付いてきてない…

 

「あ、あの! 梨里奈さん、わ、私のせいで!」

「何があったの?」

「詳しく…話しますよ」

 

私はやちよさんに肩を貸して貰いってみかづき荘に入る。

無茶をすることには慣れてるが、やっぱり限界突破は反動がデカいな…

便利なんだが、もう少し反動が少なければ…はぁ。

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