魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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偶然の再会

次の日、私は神浜市立大附属学校へ向う事にした。

好成績を出し続ければ学費は免除してくれるという話がある。

それは水名女学園でも似たような制度があるが

そっちは寮も無かったし、こっちの方が通いやすいからな。

 

それに好成績のままであれば、大学の方も免除と言う。

ここでしばらく過ごせば、教育費を出す必要も無く

高校から大学まで通うことも出来て便利が良い。

 

しかし、この神浜市…教育機関がかなり多い気がする。

都会だからなのか? どうも田舎で過ごしてた私には想像出来ないな。

 

「はい、今日は転入生を紹介します。梨里奈さん」

「はい」

 

教員に呼ばれ、私は生徒達の前に立つ。

本来は高校へは行けなかった私が少しの時間を空けての転入。

最初の自己紹介を1人だけ行なわないといけないというのは少し恥ずかしい。

 

「初めまして、仙波梨里奈と言います。本来はこの神浜の人間では無く

 街に関して分からない事も多々ありますので、色々と紹介してくれればと思います。

 その会話を通し、仲良くなることが出来ればと思っていますので、よろしくお願いします」

「はい、ありがとうございました」

「ははぁ、これはすごい偶然だね」

「あ」

 

私の自己紹介の後、クラスを見渡すと何処かで見た顔があった。

そうか、ももこもこの学校の生徒だったのか。

それも同じ学年とは、何と言う奇遇だろうか。

 

「ん? もしかして知り合いなの?」

「あ、はい。休みの日に偶然出会いました」

「なら、丁度席も空いてるし、ももこさんの隣に座ってください」

「はい」

 

意外と席って開いてるんだな。

もしかしたら転入生が複数人来ること前提なのかも知れない。

それはそうか、勧誘をするくらいだからな。転入前提なのかも知れない。

 

「はは、まさか同じ高校に来るとは驚いたね」

「全くだな」

 

教員に言われたとおり、彼女の隣に私は座った。

 

「一応、ここの高校は勉強が難しいから注意してね」

「ん、大丈夫だ」

 

そのまま授業が始まったが、私には何の問題は無かった。

これでもそれなりに勉強はしてきているからな。

学費を免除して貰う為に頭が良いのは当然…と言うのは戯れ言。

 

私は完璧であり続けないといけない。どんな問題でも失敗は許されない。

ケアレスミスもあってはならないから常に気は抜けない。

しかし、今日はいきなり抜き打ちテストというのは驚いたよ。

 

「うぅ、難しい」

「……」

 

簡単な問題ばかりだな、これ位なら事前に勉強をする必要も無い。

最もこれは抜き打ちテスト。事前に勉強をする事は出来ないがな。

こう言うのは普段勉強をしているかどうかを計る物なのだろうしな。

それなら、普段勉強が出来ていれば造作ない問題しか無いだろう。

 

「はぁ、終わった…自信ないなぁ」

「この位大した事は無いと思うが」

「あはは、あんな事を言ったあたしがこれじゃ示しが付かないね」

「いや、忠告してくれてありがとう」

 

こう言う場合なんて言えば良いのか私には分からない。

七美に対してこういう風に言われたときは、大体勉強を後で教えてあげると

そう言って終わってた記憶があるからな。

 

「しかしなぁ、これあたし何点ぐらいだろ…60点取れれば良い方かな」

「大丈夫だと思うぞ」

「ちょっと不安だけど、そう言って貰えるなら期待してみようかな」

 

それからしばらくして、抜き打ちテストの点数が出て来た。

私の点数は100点。ももこは62点だった。

 

「ふぅ、セーフ! 何とかなった様で安心したよ」

 

私もこの点数を見たとき、凄く安心した…100点を取れて良かった。

テストの度にこの採点を見る瞬間がどうしようも無く不安になる。

これで100点じゃ無ければどうしようと、そう思ってばかりだからな。

 

「そっちも安心した感じだし、良い感じの点数だったんだろ?」

「ん、まぁ何とか」

「ちょっと見せてよ。どれどれ…うげ! 満点!?」

「うん、何とか満点だった」

「いやいや! その表現はおかしいでしょ! 何とかって60点台とかで使うんじゃ…」

「ん…あ、あぁ、そうかも…じゃあえっと。当然の100点だ」

「……ねぇ、もしかして満点じゃないと駄目な理由とかあるの?」

「え?」

 

い、いきなりそんな事を聞かれるとは…こんな風に言ってきたのは

七美くらいだったんだが…他はただ褒めるだけというか

私の態度に対し、一切の関心を示しては居なかった。

 

「いや、そんな物は無いけど…えっと、意地を張りたいから」

「そんな風には見えないけど、色々と大変なんだね」

 

ここは違うな、七美は更にグイグイと聞いてきた。

絶対嘘でしょとか、何か大きな理由があるんじゃ無いの? とか

しつこすぎるくらいに徹底的に聞いてきていたような記憶がある。

 

「でもさ、常に満点取らないといけないって大変でしょ」

「……そうかも知れない。でも、仕方ない事だ」

「仕方ない事? うーん、家庭の事情とか?」

「まぁ、そんな所かな」

 

どうやらももこはかなり優しい少女みたいだな。

それもそうか、仲間を指揮するリーダーみたいな立場の様だったし

相手を気遣うことは大事なのかも知れない。

 

「うーん、あたしには分からないけど苦労してるんだね」

「苦労は誰でもして居る事さ、私だけじゃ無い」

「それはそうだけど、大変そうだね」

「大丈夫だ、魔女を狩るよりは簡単な事さ」

「はは、案外そうかも知れないね」

 

同じ魔法少女だからこんな風に言って逃げられるな。

正直言えば、魔女を狩る方が簡単なんだがな。

その後もこの学校での授業は続いた。

 

とは言え、どれもこれも簡単な問題ばかりだった。

参考書で読んだ問題とか、容易に理解出来る問題ばかり。

難しいと感じる事はまるで無かった。

 

そもそも高校の授業で難しいと感じる余裕は無い。

完璧にこなさなくてはならないのだから。

授業も部活も、全て完璧にこなし続ける。それが私だから。

 

「ふぃ、今日の授業も大変だったね」

「そうだな」

「ねぇ、微分ってあれ何なの? いまいち分からないんだけど」

「微分か、あれは中学の頃に習ったy=2x の傾きを元に考えてみると

 概念的な部分は多少分かりやすいかも知れない」

「うわ、覚えてないかも…」

 

ある程度勝手が分かれば、大した問題では無いのだが

勝手が分かるまでは確かに難易度が高いからな。

どうすれば分かるかとなれば、何度も勉強して動きを理解すれば分かるが

彼女は魔法少女も兼用しているんだ、勉強の時間もあまり取れまい。

 

学問や部活動でも思うが、魔法少女も兼用しているというのはかなり不利だな。

魔女退治に要する時間は魔法少女次第だが、長ければ3時間は奪われる。

かなりのロストといえる。1日のロストならまだしも

毎日この3時間のロスがあるとすれば、相当遅れるだろう。

10日で30時間。1日以上の時間を失うと言う事だからな。

 

ならばと早く魔女を退治しようとしても魔女退治には命の危険がある。

最悪の場合、自分の一生を全て棒に振るうかも知れない。

早い解決よりも、安全な解決の方が大事になってくるからな。

 

「あの子、梨里奈ちゃんだっけ…」

「ももこと一緒って…」

「何か雰囲気近寄りがたいよね…」

 

一緒に下校していると、どうも同じクラスの女子生徒の声が聞えた。

 

「うぅ、ごめんね、あたしは女の子らしくないってよく言われてて…

 ほら、あたしと一緒に居ると、梨里奈の評判も悪くなりそうだし」

「ん? 何処へ行くんだ? 一緒に帰るんだろう?」

「い、いやでも…あたしと一緒に居たら、梨里奈も男っぽいって思われるよ?」

「そこは気にしないから私は大丈夫だ。

 でも、私は確かに近寄りがたい雰囲気だし、ももこが嫌だというなら」

「あ、いや…嫌とは思って無いけどさ」

「じゃあ一緒に帰ろう。これから一緒に過ごすことも多くなるだろう?

 多少はお互いの事を知ることも大事だと思うんだが?」

「……わ、分かったよ」

 

ももこは少し恥ずかしそうにしながら私の方に戻ってきてくれた。

私は1人が好きだ。だが、辛そうにしている奴を放置は出来ない。

彼女はさっき、辛そうにしていた。突き放せる物か。

 

他人の評価は確かに気になる。でも、男っぽくみられる分は問題無いからな。

そのまま私達は家に着くまで一緒に下校した。

ももこの表情は、少しだけ柔らかくなってるように見えた。

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