転入から少しだけ時間が経過する。
私は買い物の為に出歩いていた。
もう時間は夕暮れか…まぁ晩ご飯の買い出しと
明日の弁当の分だから夕暮れになるのは当然か。
生活費もあまり無いし、節約料理になるな。
まぁいつもの事だ、この安い食材で美味しい料理を作る。
これもまた楽しいと感じる様になってきていた。
もう少し色々なバリエーションを試してみたい気もするが
お金が無いのだから仕方がないだろう。
「止まってー!!」
「ん?」
近くの公園の方から大きな叫び声が聞えた。
それと同時にちょっとした戦闘音。
ただ事じゃ無さそうだな。
「キャッ!」
「バーカ!」
……何事かと思って確認しに来てみれば。
あの青髪の少女は…あぁ、そうだそうだ。
確かももこと一緒に戦ってた子供っぽい方の子だな。
で、あそこで尻餅をついているのは…あぁ、そうか思いだした。
あの時気絶していた少女だな。
「げ! あんたは!」
「何かあったのか? 喧嘩でも」
「そこを退いて!」
私はただ話し掛けただけだというのに、いきなり攻撃をされるとは。
私は変身していないんだが…でもそうだな、動きは単純だ。
「っと、危ないじゃないか」
「うわぁ! い、いたたた!」
彼女の攻撃を避けて、ビニール袋を離し、私は彼女の関節を取った。
これで動くのは難しいだろう。
「は、離しなさいよ馬鹿!」
「そんな事を言われても、いきなり攻撃をしてきたのはそっちじゃ無いか。
身を守るためだし、多少は許して欲しい」
「う、うるさい! な、なんで変身もしてないのにレナに勝てるのよ!」
「関節を取れば人間相手なら大体は鎮圧できるからな」
「うぐぐぅう! 痛いって!」
「梨里奈、ごめん、迷惑掛けて」
「いや私は迷惑していない。私よりも向こうの少女の方が」
「あぁ、いろはちゃんにも謝罪はしたよ、迷惑掛けちゃったしね」
「あの…何があったんですか? それと、その人は…」
「あぁ、そうだね。いろはちゃんと私達を助けてくれた子でね」
「仙波梨里奈だ、よろしく頼むよ」
「あ、えっと、環いろはです。よろしくお願いします」
「れ、レナを放置して話しないで!」
「それもそうだな」
ひとまず私はレナの拘束を解き、拘束のために離したビニール袋を回収した。
卵、割れていないだろうか…あぁ、良かった割れてない。
ふぅ、もし割れていたらもう一度買い直さないといけなかった。
「で、何が原因で喧嘩したのさ」
「それは…」
「ふん」
「まただんまりか…まぁ、君達2人が喧嘩するのは日常茶飯事だし
今更、無理に言えとは言わないけどさ」
「そんなに喧嘩をしてるのか?」
「そりゃもぅ、いっつも喧嘩ばかりだからね」
「止めなさいよももこ!」
「そうだよ、恥ずかしい!」
お互いが居る場面で…ふーん、喧嘩ばかりしても仲が悪いわけでは無いのか。
何で喧嘩をしたかは不明だ。あぁ、喧嘩するほど仲が良いと言うからな。
「とにかく! レナに構わないで!」
「おいおい、何でそんなに頑なに」
「放っておいてよ!」
「っと」
「あ! また逃げた!」
「足は速いんだな」
「れ、冷静な解説は良いから追いかけよう!」
「そうだな」
包囲していたと思ったが、あんがいあっさりと逃げたな。
誰も拘束していなかったし、逃げようと思えば逃げられるか。
ひとまず追いかけるとしよう。追いつくことは出来る。
「あ、あの人、足が凄く速いんですね」
「あたしらじゃ追いつけないくらい速いね…」
「…あ、買い物袋どうしよう…まぁ良いか」
ひとまず彼女を追いかけるが、ある場所で姿を見失った。
おかしいな、曲がり角を曲がったらすぐだと思ったが。
その場に居たのは20代くらいの男性だった。
「すみません、ここに中学生くらいの少女はいませんでしたか?」
「そ、その子なら向こうに行ったわよ」
「……はぁ」
あれ、おかしいな…20代くらいの男性なのに口調が女の子みたいだ。
雰囲気がこう、女子中学生? とか、そんな感じに思えた。
それにこの人が指差した方向に本当にレナが向ったのなら
私が見失っているはずは無いのだが…
「な、何みてるのよ、行った方向は教えたんだから早く行きなさい」
「……いやすみません、男の人で女口調というのに若干違和感を感じて」
「うげ!」
「でも、ありがとうございました」
「そ、そうよ、そっち行けば良いのよ」
うーん、凄く違和感があるが…あの子みたいな口調だったような…
でも、姿はまるで違うし、急がないと追いつけないかも知れない。
いやでも、あの人が言った方向は何か不思議というか
本当に向こうに逃げたというなら、私が見失うか?
「ん?」
やはり気になって背後をみてみると、あの男性の姿は無かった。
さっさと何処かに行ったという可能性はあるが…
「ん? な!」
「うわ! 何で戻ってきてるの!」
「お、おい待て! 何処かに隠れてたのか!?」
「追ってこないでよ!」
くぅ、また姿が…何処に行った? ここら辺に詳しくないから
逃走経路が分からないぞ…ここの路地しかないが。
「……居ない」
今度は女性が路地の裏を通っていた。
何でこんな女性が路地裏を通ってるのかは不思議に感じたが近道なのだろう。
しかし、本当に何処に逃げた…逃げ足が速すぎる。
追いついたと思ったら、そこには居ないんだか…ん?
そう言えば、あの路地はどう考えても狭いよな。
レナがここを通ったとして、なんで成人女性が普通にそこに居るんだ?
確かにここを曲がったと思ったが、その先に居たのは違う人。
この狭い通路、レナとあの人がすれ違う隙間は無い筈じゃ?
「……どうして?」
色々と考えても分からないまま、女性が路地裏から出ていくのを見届けた。
しかし、レナの姿はやはり見えなかった。
女性が入る姿も見てないのに…
「はぁ、はぁ、梨里奈、レナ見付けた!?」
「あ、いや見失って…うーん」
「どうしたの?」
「いや、おかしな事が連続で起こってな。
別人が居るのが不思議な場面で、何度も別人と遭遇してね。
男の人が女口調だったり、いやそう言う趣味があるのは知ってるんだが
服装はそのままで口調だけって、ちょっと不思議な気もする。
後、路地裏だが、狭い通路なのに女性の背後にレナが居なかったり」
「あ…そ、そうか、ごめん忘れてた! 伝えるべきだった!」
「ん?」
「レナの魔法は…変身なんだ」
そ、そうか! じゃあ、あの場で遭遇した男性も
路地裏を通っていた女性もレナだったのか!
「くぅ、やられた…」
「伝えてなかったあたしが原因だ、ごめん」
「いや、力になれなくてすまない」
「レナちゃん…」
「とにかく迷惑を掛けたお詫びをしたいんだけど」
「…いや、私は買い物の帰りだ。一緒に何処かに行きたい気持ちはあるにはあるが
その前に、買い物をした物を部屋に運ばないと行け無いからな」
「あ、そうだね。ごめん迷惑掛けて…でも、もしかしたらこの後も迷惑掛けるかも」
「あぁ、その時は存分に頼ると良い。協力はするからな」
「ありがとう、梨里奈」
「気にしないでくれ」
「あ、あの梨里奈さん」
「ん?」
「迷惑掛けちゃって…ごめんなさい。それとこれ」
「おぉ、私の買い物袋。ありがとう」
かえでが私が置いてきていた買い物袋を持ってきてくれていた。
よし、これですぐに家に戻れるぞ。
「それじゃあ、また明日になるだろうが。何かあったら言ってくれ。
協力は惜しまないからな」
「うん、ありがとね」
「それと、いろはだったかな」
「あ、はい」
「何かここに来る理由があるみたいだな。
ここで会ったのも何かの縁だ、協力が必要なら頼ってくれ。
協力は惜しまない」
「え? でも、まだちょっとしかお話ししてないのに…協力してくれるんですか?」
「あぁ、協力するつもりが無ければこんな話しはしないさ。
迷惑だと思わずに好きなだけ頼ってくれ。これでも実力には自信がある」
「梨里奈はとんでもなく強いからね、やちよさんと良い勝負してたくらいだし」
「そうなんですか!?」
「あぁ、大変そうな事態になったら頼ってくれれば良い。協力するからな」
「は、はい! 何かあったら協力をお願いしたいです」
「あぁ、それとこれだ、連絡先」
ひとまずこの場にいる3人に私の連絡先を伝えた。
「ありがとうございます」
「それじゃ何かあれば呼んでくれ」
「は、はい!」
何で彼女に協力しようと思ったんだろうな。
出来れば1人が良いと思っているはずの私が。
同じ魔法少女に会えたことが、少し嬉しかったからか?
協力して戦うと言うことが無かったから…それが嬉しかった?
…どうだろう、ただ見栄を張りたかっただけかも知れないな。
まぁ良い。どんな理由であれこれが私の行動であることに変わりは無いか。
ひとまず、今日は家に帰って料理を作ろう。今日はちょっとした贅沢デーだ。