「鶴乃! 大丈夫か!? 鶴乃ー!」
「うわぅわぅおぅ! フィリシア、頭揺れるから!」
「おっし、起きた!」
鶴乃の過去を知り、鶴乃も目を覚ました。
「後はうわさの大元をどうにかすれば解決ですね」
「どうすれば…大元のうわさが出てくるんでしょう…」
「もうそろそろ出てくるんじゃ無いか?」
「ん、うわさをすればって奴ね。うわさのうわさってのも妙だけど」
「ォォン……ォォン」
観覧車のような形状をしたうわさが私達の前に姿を見せた。
これが大元のうわさ…このうわさを倒せばそれで万事解決だ。
「出てくるのが早過ぎね…魔力は限界よ…」
「ま、不味いね…わ、私も何だか力が出なくて…」
「グリーフシードの数は少ないが、少しだけある。
私があれを少しだけ足止めするから、その間に回復してくれ」
グリーフシードの数は本当に少なく、2つしか無い。
かなり消耗したからな、もっと持ってきていれば良かった。
「本当、鶴乃からうわさを引き剥がせたのは幸運だったな
引き剥がせてなかったら、回復の余裕が無いからな」
「でも、姉ちゃんが足止めしたら…」
「鶴乃相手じゃ無理だ、それに…私も限界で、いぐ!」
「姉ちゃん!?」
「だ、大丈夫だ…」
や、やっはり鶴乃と戦うってなってたら回復の余裕は無かったな…
鶴乃は動きも速いし、今の私じゃ足止めなんて出来なかっただろう。
「い、急いで回復して欲しい…い、今の私じゃ…あまり稼げないぞ…」
「わ、分かった! でも、誰が使う!?」
「梨里奈さんが使うのが1番だけど…」
「私は足止めだ…回復の余裕は無いぞ…」
「そうね…」
「じゃあ、やちよさんと…後は」
「いろはだな…やちよといろはの連携はスゲーからな!」
「…わ、分かった、じゃあ私が使うね!」
グリーフシードの回復に使う時間はそんなに掛らないが
さて…今の私にあれを相手に1分も持つか?
正直、30秒でも怪しいというのがある。
「来たか、止める!」
いろは達が回復をしようとするとうわさが動いた。
飛んで来た攻撃はまるで泡のようにゴンドラから分離されてきた。
攻撃は私を泡のように追尾する。
「この!」
私は飛んで来た泡を全て召喚した短刀で撃ち抜いた。
私はあまり派手には動けない…魔法の行使は出来るが
今の魔力だとちょっと肉体の限界突破は無理だろう。
「う、動かなくても……って、うぁ!」
危ない! 1つの泡が空中で弾け、私が居た場所に
黒いモヤをぶちまけてきた。
即座にその場から離れたが。
「いぐぅぅ!」
着地と同時に前進に鋭い痛みが…ま、不味いな…
い、痛みで意識が吹き飛びそうだ…だが、まだ粘るぞ…
「クソ、な、うぐぁ!」
ま、不味い…痛みで怯んでる間に使い魔の体当たりが…
「は、はぁ、はぁ…くぅ…クソ…まだ…」
もう殆ど動けなかった…あぁ、大した時間を稼げなかったな。
「姉ちゃんが無茶してどうすんだよ! 俺も戦うぞ!」
「フェリシア!?」
フェリシアだって、もう殆ど動けないはずなのに…
「もう、梨里奈ちゃんだって無茶ばっかじゃん。
分かってる風に言ってたけど、自分の方は分かってないんだね!」
「鶴乃も…い、今は動くべきじゃ!」
「動きべきじゃ無いのは梨里奈さんの方です。
もう、辛いんですよね? だったら、私たちに頼ってください!」
「あ、あんな風に大見得を切った手前、そう易々とは…」
「無茶しないで? 梨里奈ちゃん。私たち仲間じゃん!」
「……仲間…か」
あぁ、そうか…そんな風に思ってくれてたんだな…
ちゃんと皆も…私は何処か1歩引いてたのかも知れない。
あくまで協力してるだけって感じでな。
…でも、そうだよな。私たちは仲間だった…私も含めて。
今回は1人で戦ってばかりだったから忘れてたな。
……本当に情け無い、鶴乃にあんな事を言う資格何て無かったな。
「…本当に申し訳無い…全く私って奴は…」
「えへへ! よし! 一緒に頑張ろう!」
私たちが4人で足止めをしているが、やはり限界は限界だった。
全員、既に限界なんだ、肉体的にも魔力的にも。
「くぅ…これ以上は」
「不味い! 鶴乃!」
「うわぁ! こ、こっちに!」
鶴乃の方へ使い魔が1匹突撃してきている。
すぐに動こうとしたが、体が…動かない…ここで…
「待たせたわね」
「うわ! し、師匠!?」
だが、鶴乃に近付いてきた使い魔は鶴乃に攻撃をする前に
辛うじて魔力を回復出来たやちよさんが撃退した。
「こっちも…って、わ!」
「皆さん! 引いてください! 後は私とやちよさんで!」
「間に合ったか…はぁ」
「な、何とか……」
「い、一旦下がろう!」
「そうだな…」
私たちは体を引きずるようにゆっくりと動き
やちよさんといろはの背後に移動した。
私たちが下がり、2人はうわさと相対する。
だが、魔力も回復している2人を前に
鶴乃という一部を持って行かれているうわさは手も足も出ず
あっさりと2人により撃破され、うわさの空間は消滅した。
「よし!」
「やった! 出て来たぞ!」
「そんな…うわさが…」
最も重要視していたうわさも無効化されて
…そして、マギウスの殆どと幹部さえ倒れている場面だ。
「はぁ、はぁ…クソ、久実…もう粘らないで」
「お、お姉ちゃん…い、行かせないよ…」
「もう、もう止めてって言ってるんだ!
勝ち目なんて無いって分かるだろ!?」
「ひぐ! ま、まだ…弥栄お姉ちゃんは…わ、私が…」
「もう、止めろぉお!」
大量の手が…ドッペル…
「止めるもんか…絶対にお姉ちゃん達を救うんだ!」
久実までドッペルを発動し、激しく衝突した。
最終的に勝利したのは
「あぅ…」
弥栄のドッペルだった…ボロボロの久実には弥栄の攻撃は止められない。
「はぁ、はぁ、はぁ…もうこれで分かったでしょ…無駄なんだよ!」
「まだ…わ、私は…私は!」
「凄い根性ね、久実ちゃん」
「な!」
久実を拘束していた手が、一瞬のうちに全て切断された。
「まさか…やちよ! じゃあ、うわさが!」
「そうよ…この総力戦、どうやら勝ったのは私達みたいね」
「……いや、まだだ…まだ終わってない。
うわさが倒されても、梨里奈を殺せれば私達の勝ちだ!」
「く! この子、移動速度が!」
やちよさんもかいくぐってくるとは思わなかった。
どうやら、弥栄の移動速度は相当速いらしい。
「不味い、梨里奈さん!」
「死ね! 梨里奈!」
「やらせ、ない!」
「なぅ!」
私に弥栄の凶刃が突き刺さる寸前に
弥栄の四肢を無数の鎖が拘束した。
「久実! 邪魔するなぁ!」
「全く…折角の記念日になると思ったから来たのに
予想以上に悲惨な状況だね」
「な…」
観覧車の上から…新しい声が…
「誰…え? あの姿って…ねむちゃん…」
「やぁ、僕の事を知ってるんだね、初めまして、環いろは」
「まさか…最後のマギウスって…」
「あぁ、僕だよ」
まだ…マギウスの奴が居たのか。
「この…いぐぅ…」
「梨里奈さん!」
「ふふ、そちらも相当な消耗らしいね。
さて、どうしようか。僕達の方も非常に消耗が激しいんだよね。
他のマギウス達は全員やられちゃったみたいだからね。
本当、君は規格外だよ、仙波 梨里奈」
「……」
「僕達としては、この場で君だけは倒したいんだ。
恐らくだけど、今の君を倒すことが出来るだけの戦力はある。
羽根の数もまだ結構あるし、総攻撃もありかも知れないね」
「そうなれば、私達はあなたを即座に倒さないと不味いわよね」
「そうなるね、でも僕もマギウスだ。相当強いと思うよ?
お互い、ただでは済まないだろうね。消耗してる君達と違って
僕は今、全くと言って良い程に消耗をしていないのだから」
「試す? 生憎だけど私といろはの2人はまだ十分動けるわ」
「そうだろうね、でも他の仲間はどうかな? 由比鶴乃も仙波梨里奈も
相当消耗しているでしょ? この場面で僕が攻撃し倒すとすれば
その2人になるよ。と言うよりかは、恐らく仙波 梨里奈を攻撃するよ?
今、少し動いただけで辛そうにしてたくらいだ、満足に動け無いでしょ?」
「……私は無理をするのは得意だ…やる気なら、無理をしてでも応えるぞ」
既に全身がバラバラになりそうなくらいに痛い…
だが、必要とあれば…例え体に鞭を打とうとも…
「いやいや、ここはお互い賢くなろうよ。
ここで再度激突しても、お互いに大きな損害は避けられない。
勿論、その先に大きな利益があるのは間違いないけどね。
でも、お互いに危険は選びたくないだろう?
ここはお互い、痛み分けという形で幕を下ろそう。
正確には僕達が痛い目に遭っただけで、君達には損害は無いけどね。
だから僕達が賢くなって、君達に譲歩すると言ってるんだよ。
そちらの目的は果たせただろう? ここはお互いに退こうよ」
「…つまり、自分達は大人しく撤退するから
私達に撤退の邪魔をして欲しくないと言うこと?」
「そう言う事だよ。ここで戦っても良いけど
何も失ってない君達が大事な仲間を失うかも知れない。
最有力候補はそこで痛みに顔を歪めている梨里奈だ。
今回の戦いにおけるMVPと言えるね。
僕達としても彼女だけはどうにかしたかった。
今の状態で戦う事を君達が選択した場合
僕達は必ず梨里奈を道連れにするだろう。
それでも戦う? この話は悪い話じゃ無いと思うよ?」
「……いろは、どうする?」
「……本当はどうにかして灯火ちゃんもねむちゃんも連れ戻したい。
みふゆさんも取り戻したい…七美さんも取り戻したい。
だけど…誰も失いたくは無いから……
だから、今回はこれ以上の戦闘は止めよう」
「賢明な判断だよ、環いろは。
これ以上はお互いに無意味な戦いに近いからね。
と言う訳だから、弥栄、撤退だよ」
「何を! ねむ! わ、私はまだ!」
「…大人しく従って? あなたが好きな本もう貸さないよ?」
「……そんな事で私が従うと思うのか! やっと梨里奈を!」
「その状態じゃどのみち無理だよ、幹部としての命令だ、撤退だ」
「……クソ、あと少しだったのに…久実…絶対に許さないからな…」
弥栄は悔しそうにしながらも、ねむの言葉に従った。
弥栄の手は震えていて、悔しと言う感情が伝わってくる。
「…みふゆ、マギウスの翼全体に撤退命令だ。
マギウスと倒れた幹部を全員連れて撤退する様指示を出して」
「はい、分かりました」
「……これで僕達も後が無くなった、もう手段は選ばないよ」
最後にそう言い残し、ねむはマギウスの翼達と
倒れた七美達を連れて、私達の前から消えた。
「はぁ…あ、焦った…あのまま戦闘になったらちょっとあたしは辛かったな」
「は、はぁ? こ、この程度で根を上げるの? まだまだ余裕よ!
あのまま戦ったって、レナは大活躍間違いなかったし!」
「レナちゃん、嘘吐かないでよ。凄い息荒かったし」
「はぁ!? そ、そんな訳!」
「ふ…まぁ、あのまま戦ってたら、わ、私が不味かったな」
「梨里奈!?」
駄目だ…さ、流石にそろそろ立つのも限界だな…
周りは驚いただろうな、唐突に崩れ落ちたんだから。
「だ、大丈夫!? あんた!」
「……だ、大丈夫じゃ…無いな…もう歩けない…」
「本当無茶ばかりして! いろはの判断は正しかったわね…」
「よ、良くそんなに辛いのに、あんな啖呵を切れたな」
「私が限界だとバレたら…ちょっと分が悪いだろ?」
「姉ちゃん、本当にもう無茶しないでくれよ! ゾッとしたぞ!」
「そうだよ梨里奈ちゃん! そんな風に強がっちゃぁあ…」
「うぉ! 鶴乃までどうしたんだ!?」
「あ、あはは…じ、実は私ももう限界なんだよね…力入らないや…」
「私達4人で手ひどくやっちゃったから…本当にごめんなさい、鶴乃」
「いやいや、結局私は大丈夫だったし、全然平気だよ…」
「はぁ、辛いのを隠しても意味ないわよ、素直になりなさいよ。
とにかく急いで戻りましょう…グリーフシード余ってる?」
「それが…もう殆ど無いんだよな、消耗が激しくて」
「なら、急いでみかづき荘に戻りましょう!
梨里奈さんから貰ったグリーフシードが余ってます!」
「よし、じゃあ急ぐか!」
意識を保つことが出来て良かった……
だがまぁ、流石に電車で揺られている間は…眠たい…