「はぁ、はぁ、はぁ…」
「遅かったわね、もう日が落ちてしまったわよ?
それにしても、随分と息が荒いわね?」
「……マミ、七美は…何処だ…」
「見て分かるでしょ? あなただって想定はしてたはずよね?
勿論、この場には居ないわ」
「……あぁ、そうか」
はぁ、やっぱりそうか…だがまぁ、良いだろう。
七美が居ないというなら…この場に長く留まる必要は無い。
「でも、帰れるとは思わない事ね」
「あぁ、分かってる」
だがまぁ、退路にも羽根が居るし…撤退は出来ないか。
「マミ、羽根達に何をしたんだ? 全員とち狂ってるぞ?」
「解放に集中できるように、余計な感情を捨てさせたまでよ。
あなた達の存在は彼女達にも影響を与えてしまってると言える。
全く、迷惑極まりないわね、あなた達という存在は」
「それはこっちの台詞だ、マミ。これで何度目だ?
私の邪魔をするのは」
と言っても、私も数えたりはしてないがな。
何度マミに襲撃されたかよりも、どうすれば七美を救えるか。
この事ばかり考えてたしな。
「私はあなたの邪魔はしてないわよ? あなたの目的の妨害はね。
あなた達が私達を妨害するから止めてるだけ。邪魔では無いわ」
「どんな場合でも、行動には目的という物が存在するんだ。
私達は犠牲を出さないために行動し、お前はそれの妨害をした。
十分邪魔という類いに入ると思うが? 何てな。
こんなくだらない戯言は良いだろう?」
「えぇ、そうね。無駄話が過ぎたわ…じゃあ、早速始めましょうか。
厄介者であるあなた達に対し、私は罰を降す!」
さて…どうするか…ここはヘリポート。
私なら即座に離脱することが出来るだろう。
わざわざ背後を羽根で塞いだところで逃げ道は何処にでもある。
ここは屋外だ…ただ高いだけの屋外。
私の身体能力であれば、ここから飛び降りても無傷だろう。
だが、ここで撤退をするわけには行かないかな。
これだけの数が揃っているんだ…私が撤退すれば
周囲の人達が襲われかねない。ここで無力化するしか無い。
こいつらのヘイトが私に集まっていれば、私以外が狙われたりはしない。
「さぁ、やるぞ!」
それに…あいつからはうわさも気配も感じる。
鶴乃と同じく、うわさの気配が…もし同じ様な物であるなら
あいつに引っ付いてるうわさを剥がすことが出来るかも知れない。
心が通っていないといけないらしいが…出来るか?
あまり自信は無い。私は誰かに心を開くのが得意じゃないからな。
だが、うわさを剥がすことが出来れば…
巴マミも協力してくれるかも知れない。
彼女は戦力としてはかなり頼りになるだろう。
しかしな…下手に倒しきれば殺してしまう…
そうなれば、まどか達が…クソ、どうする?
「ティロ・フィナーレ!」
「相変わらず無茶を!」
私の後方には黒羽根が居る…この攻撃は避けられないか!
だが、ドッペルから放たれた一撃で無いなら!
「この!」
くぅ! 身体強化をまだ許容範囲で発動させて防いだが…
け、結構通常であれば、弾くのに手こずるな。
だが、これ位なら!
「ふふ、甘いわね。避ければ良いのに」
「後方に…お前らの仲間が居るんだぞ…?」
「そうよ、あなたの後ろには彼女達が居るのよ?」
「ッ! うぐぁ!」
こ、この状況で攻撃してくるのか…わ、私が倒れたら
こ、こいつらもまとめて吹き飛ぶぞ!? クソ!
「このぉ!」
よ、予定変更だ! 出来る限り素早くこの砲撃を弾く!
「あら、もう弾き飛ばしちゃったのね」
「クソ! お前達死んでも良いのか!?」
「ウァ…」
「……やっぱり、どうかしてるぞ!?」
理性が無い…そんな気がする。
ずっとそんな雰囲気は感じていたが、確信出来た。
あ、あんな分かりやすい状況で私を攻撃するだなんて
あまりにも不自然だ…私が倒れれば、自分達も吹き飛ぶ。
ま、前に彼女がしてきた戦術と同じではあるが
その時はやはり羽根達にはしっかりと知性があった。
いくら何でも自分達が死ぬという行動はしなかったはずだろ!?
「だから、言ったじゃ無い。全員、解放に集中出来るようにしたと」
「……じ、自分達の命よりも…解放を? …随分な聖人だな。
お前は自分達さえ良ければ良いという雰囲気だったのに
その部下は自分達よりも他者を選ぶのか?」
「そうよ、立派でしょ? 素晴らしいでしょ?」
「……全くとち狂ってるな…ブラック企業という奴か?
今のこいつらは、完全にお前ら幹部の操り人形か」
「いいえ、心の底から解放を求めてるだけよ」
理性があるようにはとても思えないがな。
心の底からというよりかは、催眠術か何かで
心の全てを解放だけに塗り替えてるような雰囲気だ。
ゾンビ映画に出てくる、ゾンビ達の様にな。
ゾンビ共は食うという考えだけに支配されてるが
今の羽根達は解放という考えだけに支配されてる。
雰囲気だけで言えば、そんな感じがする。
「……このままだと不味いな」
「えぇ、不味いわね、さぁ今度はどうかしら?」
「銃撃を乱射するだけじゃ、私に効果は薄いぞ?」
「えぇ、あなた1人だけならね!」
当然の様に羽根達さえ巻き込むように攻撃をしてくる。
羽根達を庇いながら、あのマミの攻撃を捌くのは
ハッキリ言って、困難極まりないな。
…どうする? 黒羽根達を見捨てて…
いや、駄目だな。目的の為に犠牲を選ぶわけには行かない。
あんな風に言った手前、私がそれをやるわけには行くまい。
「つまり…速攻で倒すしか無いと言うわけだな」
周囲にばらまくように大量の短刀を投げ飛ばした。
そこら辺をうようよと飛んでる埃のように飛ばす。
「ん…」
マミの弾丸は私が展開した大量の短刀に弾かれていく。
そのまま私は自分の短刀をくぐり抜け、一気にマミに接近した。
「な!」
「このままだと不味いからな、一緒に地上へ降りて貰う!」
そのままマミに飛びつき、一緒にヘリポートから落下する。
「無茶を!」
彼女は即座にリボンを使い、落下を阻止しようとする。
私は落下の最中、壁を蹴り、彼女の頭上を取った。
「便利なリボンだな、利用させて貰う」
「うぐ!」
彼女が捕まってたリボンを掴み
彼女を頭上から蹴り、落下させる。
だが、即座に別の方向にリボンを展開か。
「逃がさないぞ!」
「諦めなさい!」
彼女がリボンで移動しながら、私へ弾丸を放つ。
即座に彼女の攻撃を弾くように短刀を展開し
彼女の弾丸を弾き飛ばし、短刀を伸ばし、足場にする。
「それはもう短い刃である必要は無いでしょ?」
「短い方が私のスタイルと合うんだ」
そのまま短刀から飛び出し、マミのリボンに飛びついた。
「いい加減にしなさい!」
「っと、ここなら邪魔は居ないからな!」
「うぐ!」
マミの弾丸を僅かに身を動かし避けた後
即座に彼女を再び蹴りつけた。
「ん?」
私の足にリボンが巻き付く。
「あなたがそのつもりなら、私も一緒に付き合ってあげるわ。
落ちながら戦うだなんて、普通は経験出来ないわよ?」
「それはそうだろう。落ちながら戦える魔法少女は珍しいだろうしな」
即座に足に巻き付いたリボンを切るが、すぐに巻き付く。
ほぅ、七美程ではないが、地味に厄介だな。
しかし、何故リボンで銃を作ろうと思ったんだろうか。
「そこ!」
「当るか!」
彼女の弾丸を弾き飛ばし、即座に短刀を再度伸ばした。
こう言うとき、短刀を自在に伸ばせるというのは便利だな。
リボンや糸程じゃ無いにせよ、滞空時間を延ばせるからな。
「その足場、私も利用させて貰うわ!」
「あぁ、出来る物なら!」
一瞬だけ勢いを減衰させることが出来れば良い私は
即座に伸ばした短刀を元に戻し、その場から消す。
マミはさっき短刀を足場にしようとしたことで
少しだけ落下速度も落ち、私に近付いたな。
「しま!」
「そら!」
「くぅ!」
上空でマミを斜めに蹴り落とす。
勿論、即座にリボンで復帰できるように蹴り落とした。
「本当に…無茶を!」
「案外、無茶でも無いだろ!」
「この!」
私の短刀をマミは撃ち落とした。
流石の動体視力。だが、少し盲目だな。
私は地面に向けて短刀を伸ばす。
「え!?」
「さぁ、この高さなら死にはしないだろ?」
伸ばした短刀を足場にして、彼女に近寄り
即座に彼女を蹴り落とす。
「うぁ!」
既に大分地面に近かったからな、十分だろう。
そのまま壁に飛びつき、私は勢いを殺した後
すぐに地面に着地する。
「ふぅ、中々スリリングだったな。
これが俗に言う紐無しバンジーという奴だな。
どうだ? そっちは楽しめたか?」
「……本当に、あなたは…」
やはりまだ動けるか。相当な勢いだと思ったが。
「全く…異常なくらいにタフだな」
「あなたが言えるのかしら? でも、時間は稼げたかしら」
「時間?」
「状況としては、依然私達が有利だと言う事よ」
…何だ? 周囲の電気が…
「ふふ、順調ね…ここまでは計画通り。
これでワルプルギスの夜はこの神浜に来るわ」
「ワルプルギスの夜?」
「最強最悪の魔女よ…彼女が通った後には廃墟だけが残るの」
「そんな魔女を! そ、それがどう言う事か分かってるのか!?」
「えぇ、だけど、まだ計画通りで無い部分が1つあるわ」
「計画通りで無い部分…だと?」
「えぇ、あなたの存在よ。あなたなら最悪の場合
ワルプルギスの夜を倒してしまうかも知れないからね。
それ程にまで、あなたは厄介な存在だと認知されてる。
だから、例えどんな手段を使おうとも」
羽根…まだ居たのか…地上にまで用意するとはな。
「あなただけは倒さないとならないわ。
そう、どんな手段を用いたとしてもね」
「ふん…同じ戦術を使うつもりか?」
「えぇ、あなたを孤立させるわ」
「……どう言う事だ? 既に私は」
「ふふ、どう言う事だと思う? 仙波さん?」
「……」
まさ…か…まさか、まさか!
「どうして、あなたを倒すために…あなたの親友が
この場に居なかったのかしら? あなたの親友は
あなたに対する最大の切り札。
あなたをどうしても倒したいのなら
何故、彼女を利用しなかったんだと思う?」
「……ま、さか…」
「魔法少女が襲撃されてるとなれば…どう行動する?」
「クソ! やられた…クソ!」
「逃がさないわよ?」
「くぅ! 邪魔するな!」
不味い! 不味いぞ! 何故気付かなかった!?
そうだ…1箇所に魔法少女を集めるのは愚手だった!
奴らには…七美が居るんだから!
「梨里奈! 遅れてしまったわね」
「や、やちよさん!?」
やちよさん達が来てくれたのか? そう言えば、別れるときに。
だが、いろはとさなの姿が無い…2人はまだ魔法少女を探してるのか?
「…あら、来てしまったわね。これは少し想定外よ」
「ま、マミさん!」
「何だよあの格好、面白ぇ格好してるな」
「杏子、今のマミさんは普段よりも容赦ないわよ」
「で、でも、この数なら…いくら巴さんでも」
「まどか達も」
まどか達も来たのか。大きいが…しかし、状況は不味い。
「さぁ、梨里奈ちゃん! 私達全員で挑めば!」
「悪いが、時間が無い…来て貰ってそうそうで悪いんだけど
…私の代わりに、マミの相手をお願い出来るか!?」
「ど、どうしたの? そんなに焦って…」
「1箇所に魔法少女を集めるのはあまりにも愚手だった!」
「どう言う…」
「まぁ良いわ、あなたを完全に孤立させることが出来なかったけど
あなた達の戦力を削り落とすことは出来るのだから」
「七美が居るんだ…このままだと、ももこ達が敵になる!」
「な!? そうか…あの子が! 確かに不味いわね」
「確かに彼女は驚異的すぎるな…失念してた」
「だから」
「行かせるとでも?」
「くぅ!」
そう簡単にはいかせてはくれないか…
だが、行かないと不味い…このままだと全滅だ!
「巴さんは私達が受け持つわ! 梨里奈は急いで調整屋に!」
「すみません!」
「逃がす訳無いでしょ?」
マミが私に向けて攻撃を仕掛けようとしたとき。
「梨里奈さん、今のうちに! 急ぐんですよね?」
「ほむら…じゃあ、時間を止めたのか?」
「はい、このまま私に捕まって!」
「あぁ、恩に着る」
周囲の時間を止めて、ほむらが私をマミの前から離してくれた。
「本当なら、このまま時間を止めて一緒に向いたいんですけど
そんな長時間は止めてられません。
それに、私もマミさんを助けたくて」
「あぁ…大事な先輩だもんな。大丈夫だ、私はすぐに下がれる。
お前は大事な仲間達と一緒に、大事な人を救ってくれ」
「はい!」
時間が動き出した。
「な!」
「いつの間に…そうか、曉美さんの」
「はい!」
「やっぱり凄いね! ほむらちゃん!
私も頑張って皆の助けになるよ!」
「何か話が良く分からないんだけど…
まぁ良いか、とりあえずあたしらは
マミを止めりゃ良いんでしょ?」
「そうね、何か大変みたいだけど
そこはこの梨里奈って人が何とかしてくれるみたいだし!
私達はマミさんを足止めしたり、目を覚ませれば良いって!」
「邪魔を…本当に私の邪魔をしないでくれる!? あなた達!」
「邪魔はさせて貰うわ…梨里奈、お願い」
「はい、任せてください」
「梨里奈お姉ちゃん…な、七美お姉ちゃんを…」
「…あぁ、絶対に止める」
あまり時間は無い、もう最初から全力で飛ばさないと不味い!
「待ちなさい!」
「梨里奈の所へは行かせない!」
「この!」
間に合ってくれ!