魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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2つの居場所

群がってくる羽根達を全て払いのけ

迷うこと無く、私は真っすぐにみたまさんの所へ急いだ。

このままだと危険すぎる…全員が七美に洗脳されたら…不味い!

 

「みたまさん!」

 

扉を蹴破る程の勢いで、調整屋の中に飛び込んだ。

 

「梨里奈!」

「あぁ、やっぱり来てくれたんだね、梨里奈ちゃん」

 

そこには既にドッペルを発動しようとしている七美が居た。

魔法少女達は既に拘束されている状態だ…

だが、ドッペルを発動してない。

何故間に合った…? いつでも発動出来る状態なのに。

それに…七美の反応は…まるで、私が来るのを分かってたかの様で

 

「待ってたよ、ちょっとだけね」

「…七美、ど、どう言う事だ?」

「この状況を見れば、察しは付くんじゃ無いのかな?」

 

そうだな…既に全員拘束されて、抵抗できる状態じゃ無い。

ソウルジェムもほぼ全員分を回収している。

完全に襲撃を仕掛け、即座に全員の意識を奪い拘束した。

だが、ソウルジェムを奪っただけで。

 

それだけの時間があるのなら、ドッペルを発動させ

全員を既に洗脳していれば良い…筈なのに。

七美のドッペルは壁も貫通するのだから

 

不意打ちで仕掛ければ、容易に全員を洗脳できた。だが、してない。

その状況から予想が出来るのは…ただ1つ。

彼女の目的はここに居る魔法少女を洗脳することではない。

 

「私を…」

「そう、あなたを捕まえに来たんだよ、梨里奈ちゃん」

「……七美、そこまでして私を捕らえたいのか?

 捕らえてどうなる…? 魔法少女の解放に利用するか?」

「そんなのどうでも良いよ、魔法少女の解放だとかもう興味無い。

 私はただ…居場所が欲しいだけなの。私が私で居られる。

 そんな場所が欲しいだけ…魔女になろうが関係ないよ、そんなの」

「……七美、ならマギウスの翼にこだわる必要は無いはずだ!」

「そう、こだわる必要は無い。だけど、ここは私の居場所なの。

 私を私として見てくれて…作られた仮の居場所じゃ無いの」

「分かってるだろ…そんなの、お前の居場所じゃ無い。

 マギウスはお前の力を利用してるだけだ…それだけだ。

 お前の居場所なんかじゃ無い!」

「分かってる。だから、私はあなたを取り戻したい」

「どうしたんだよ…七美…お前はそんな奴じゃ…」

「私はこんな奴なんだよ、梨里奈ちゃん」

 

七美が仮面のような笑顔を私に向けた。

口だけが笑っていて…引っ付いたような笑顔。

本当の笑顔じゃ無い…ただ絵に描かれただけの笑顔。

今の七美の瞳には光りが無い……

 

「マギウスの翼を止めれば良いじゃ無いか。

 私はお前を受入れる…」

「私はあなたをマギウスの翼に引き入れて…

 一緒に、一緒に、一緒に!」

「七美…? 七美、ど、どうしたんだ?」

「解放よりも、一緒に! 一緒に! あ、あぅ、い、一緒…に!」

 

苦しんでる…のか? 何でだ? 何が!

そう言えば…七美に渡した髪留めに少しだけ違和感が…

 

「七美! その髪留めを!」

「…駄目だよ、渡せない、梨里奈ちゃんが私にくれた髪留め。

 絶対に梨里奈ちゃんを取り戻す為に…この髪留めが…」

「……やはり、その髪留めなんだな…」

「マギウスが私に力をくれた…」

「マミと同じか」

「そう、うわさと一体化した…これでもう迷わない」

「……七美、なんでそこまでして…」

「連れて行くの…一緒に居るの…一緒に、一緒に!

 一緒に…あぅ、い、一緒に…一緒に…」

「七美! もう止めてくれ…それ以上自分を壊さないでくれ!」

「……はぁ、はぁ…お、落ち着いた…うぅ」

 

どんなうわさか分からないが…だが、うわさを剥がす方法は分かってる。

七美と心を通わせていれば、うわさだけを剥がせる!

大丈夫だ…私なら出来る。七美を救うためにはそれが!

 

「下手な事をしようとしないで、梨里奈…殺すよ?」

「弥栄…」

 

弥栄がナイフをみたまさんの首筋に当てた。

……抵抗できない…即座に動けば止められるか?

だが、全力で飛ばしたせいで、そんな速度で動ける自信が無い…

 

「…梨里奈ちゃん、大人しく私達と一緒に来て」

「……」

「否定すれば、私のドッペルがここに居る全員を洗脳する」

「……わ、分かった」

「それで良いの…さぁ、ソウルジェムを私に渡して」

「……あぁ」

 

変身を解除し、ソウルジェムを七美に手渡した。

 

「それで…どうするんだ? 私のソウルジェムを壊すか?」

「そんな事はしないよ、ただ…規則だから。弥栄」

「うん、本当なら殺してやりたいけど

 お姉ちゃんの指示だから…意識だけを奪う!」

「いぐ!」

 

うぅ…こ、後頭部が…も、もう少し優しくしてくれても…

 

「……倒れたね、じゃあ連れて行こう」

「うん」

 

……い、一応、本当に意識を失ったか確認すれば良いのに。

だが、好都合かも知れない…本拠地が分かれば大きいぞ。

 

「これで後は久実だけだね」

「久実ももう一度引き入れるの? 今から行く?」

「久実は他の魔法少女と一緒に居るから、今は不味いと思う」

「梨里奈を人質にすれば良いんじゃ無い?

 それに、他の魔法少女もお姉ちゃんのドッペルで洗脳できるし」

「激しい戦闘になったら梨里奈ちゃんが目覚めるかも知れない。

 多分、あの魔法少女達は私のドッペルのことを知ってる筈だからね」

「そんなの関係ないって、多分起きないよ。

 それに、変身してない梨里奈なんて余裕だよ」

「勝てるわけ無いよ、例え変身してないとしてもね。

 安全第一だよ、あ、それと弥栄。ソウルジェムはあなたが持ってて」

「どうして?」

「梨里奈ちゃんが起きたとき、私が持ってたら簡単に奪われる」

「ん…分かった」

「壊さないでね? 壊したら」

「わ、分かってるよ…お姉ちゃん…梨里奈は殺したいけど…

 で、でも…お姉ちゃんに嫌われたくないし…」

「梨里奈ちゃんと、また仲良くしてよ…弥栄」

「……何で梨里奈の事をそんなに? こいつはお姉ちゃんを裏切って!」

「裏切ったのは私の方だよ…梨里奈ちゃんは…私の事を大事にしてる。

 なのに私は…マギウスの翼に入ってる…解放に興味無いのにね

 理由は自分勝手な物だよ、梨里奈ちゃんとマギウスの翼…

 どっちも失いたく無いってだけなんて…」

 

1人、居場所が無いと言うのはとても辛い…私もそれは知ってる。

だが、私が知ってる事は…当たり前としか思ってない辛さだけだ。

その辛さが当たり前だった私と、当たり前じゃ無かった七美…

同じ辛さでは無い筈だ…そうだよな…両方失いたくなかったのか。

 

そうだ…あぁ、分かってる筈だ、私も。

折角得た居場所が無くなる辛さを…

……だけど、そのままで良いわけが無いんだ。

 

「お姉ちゃん……ごめんなさい」

「何の事? 私はあなた達に感謝してるよ?」

「……うん」

「……あぁ、どうすれば…あんな当たり前に戻れるのかな…

 もう無理なのかな…私と梨里奈ちゃんは…あの時には…」

「ドッペルで奪えれば戻れるのに」

「……そんな事をしてもさ…私の願い事と…同じだよ…

 分かってる筈なのにね…分かってるのに…出来ない…

 もうそれしか…思い付かないよ…」

「お姉ちゃん、だ、大丈夫…大丈夫だって。

 き、きっと色々と話せば、梨里奈も…多分だけど…」

「……無理だよ、梨里奈ちゃんは

 私と一緒に居るときはピエロじゃ無い。

 自分が正しいと思ったことをきっと貫く。

 

 マギウスがやってる事が正しい事じゃ無いのは間違いない。

 犠牲を出す選択は正しくないし、

 魔法少女の方が価値があると言ってる…考え方なんだろうけどね。

 

 むしろ、魔法少女が解放されたら魔法少女の価値は無いんじゃ無いのかな?

 魔女が居ないから存在意義も無い…いつも暴走する危険性がある危険な存在。

 ドッペルをいつ出すか分からないし、管理も一苦労。

 

 魔法を使って特別な事が出来るかも知れないけど

 魔法は千差万別…不要な魔法は何も出来ない。

 魔法少女の中でも差別が生まれちゃうかも知れない。

 

 だから…邪魔になるんじゃ無いかな…魔女が居なくなれば

 私達という存在は邪魔になる……解放は合理的じゃ無いかもね。

 最悪の場合、国の偉い人に捕まっちゃったりしてね、あはは」

 

そんな可能性も確かに存在してるかも知れないな。

ドッペルという危険な能力がある以上、放置は出来ないだろうしな。

寝てる間も穢れがたまれば発動する…うーん、確かに時限爆弾みたいだ。

 

「そして、戦争をする人達に利用されたりして…

 結局、沢山の命が失われたりするかも知れない。

 最悪の場合、私達の手で誰かを殺しかねない。

 

 魔法少女の存在が露呈すればQBの存在も把握されて

 強制的に非人道的な願いを叶えさせられて酷い事になるかも。

 そうならないにしても…やっぱり戦争に利用されちゃうかも…

 

 私達が平和で生きるには…

 私達が魔法少女じゃ無くならないと駄目なんだと思う。

 解放と言っても、魔法少女のままだったら意味が無い…」

「でも、お姉ちゃんはマギウスの翼に…?」

「うん、もう私はここに居場所を作っちゃった。

 もう失いたくない…失う怖さを知ったから…」

「……お姉ちゃん」

 

それ以降、2人は会話をしなくなった。

最後に聞えたのはアリナの声と

フェントホープという言葉だった。

それ以降は会話の内容から、アリナの結界に囚われたみたいだな。

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