…やっぱり完全に囚われてる状況だな。
「起きたみたいだネ、梨里奈」
「あぁ、最悪な目覚めだがな」
目を覚ませば周囲は鉄格子だなんてな。
更にはアリナがお出迎えだなんて、より酷い。
「…なぁ、アリナ。お前は魔法少女が仮の解放をされた後。
その後の世界の事を…その後の魔法少女のことを
考えたことはあるか?」
「いきなり何を言い出すと思ったら」
「平和だと思うか? 幸せだと思うか?
ドッペルという時限爆弾を背負った状態で
平和に過せると思うか? 魔女が居ない状態で
どうやってグリーフシードを調達する?」
「そんなの、ドッペルを使えば全部解放される」
「ドッペルを使わないと解放されないんだよな?
自分の穢れだとか、そう言うのを理解するのは困難だろう?
社会に出た後、必ずストレスを抱えることはある。
上司や先輩に怒られる事は必ずあるだろう。
そんな時…ドッペルが発動したら…どうなる?」
「……」
「私も考えて無かったよ…そんな可能性までは」
あぁ、気付かなかった…そんな可能性まで目を向けてなかった。
ただマギウスのやり口が気に入らなかったから止めようとした。
それだけで、マギウスの野望が成就した後の世界は考えてなかった。
止めることしか考えてなかった…成就した後の世界は見て無かった。
私はやはり穴だらけだった…やっぱり、私1人で出来る事はそんな物だ。
人によって考え方は多種多様。だから1人はたかが知れてる。
色々な奴の話を聞いて、ようやく色々な可能性を見れる。
自分を天才だとか、そういう風に盲信すれば何も出来ないのだろう。
ある意味では狂信的な信者に等しいのかも知れない。
盲目になる…自分に自惚れれば盲目になる。
天才は殆どがそうだろう…きっと歴史を変えた天才もそうだ。
違うのはその思想が正しかったから。
あるいは、そんな盲目を直してくれるような
身近な親しい友人なのかも知れない。
それが例え天才だろうと、凡才だろうと。
ただ一緒に居て、自分としっかり話をしてくれる友人。
「私は色々と出来るが、ただ出来ただけだ。
天才だとかそんな風に持ち上げられてたが…
実際はこんな物だ。
なぁ、アリナ……お前は自分が天才だと思うか?」
「何なの? そんな下らない質問。何だかイラッとするネ」
「天才は基本的に何でも出来ると勘違いしてる。
だから、出来ない場合の未来を思い描けないのかもな。
私だって、お前達の解放を阻止できなかった場合の未来は
全くと言って良い程に思い描いてなかったんだ。
更には目的以外見えなくなったりするのかもな。
ただやり遂げたい…そう言う目的意識だけを目指すのかもな。
そう言う、盲目的な努力が結果に繋がるんだろうが」
実際…灯火やねむからは達成した後の未来。
この問題に対する疑問や懸念は聞かなかった。
魔法少女が特別だと…そんな事を言ってた様だしな。
この懸念さえ抱いてない…そんな可能性もある。
……まぁ、見た目からまだ幼いからな。
達観した思想や可能性への考慮なんて物は
幾多の失敗による経験が無いのであれば辿り着けない。
だから、そう言う目標達成後の欠如に目が向かないのかも知れない。
ただ目的を達成する…その事だけに目を向けている。
今までの私と同じ様に。
私は期待に答えたかっただけで、期待に答えた後
その人がどう感じるのかとか、そんの先の自分がどうなるのか。
そんな事は考えてなかった。期待されたから答えようと思った。
私に合ったのは、きっとそれだけだったんだろうな。
「失敗して…後悔したことが無い…だから、気付けない。
アリナ、お前もそうか? 失敗して後悔したことがあるか?
取り返しの付かない、そんなどうしようも無いミスを犯したか?」
「そんな事、アリナがするわけ無い」
「だろうな…芸術家だからな、お前は…だが、考えた事はあるか?
自分が凄い作品を作る意味を…作りたいだけなのか?
それとも、その先に何かあるのか?」
「アリナは生命の最後に美しさを感じてるの。
そんなアリナの美こそ、アリナが外に発したいテーマ。
そして、アリナの作品を何処かの他人が勝手に評価してくれれば良いの」
「そうか…空っぽなのか? お前はその作品に価値を見出さないのか?
周りの評価が全てで、自分の評価はどうでも良いのか?
ふ、一昔の私みたいだな。私の場合は自分自身だが」
彼女はきっと天才という部類なのだろう。
きっと感覚で作品を書くような、そんな天才。
その作品は彼女が感覚で作った作品であり
彼女自身はその作品に願いを込めてない。
自己顕示欲に近いのかもな。
ただ作りたいと思ったから作っただけ…かもな。
「本当にむかつくネ」
「あぁ、私も多分こんな事を言われたらイラッとする。
自分の事を知らないくせに偉そうに言いやがってと思う。
だから、私がお前にそんな事を言っても意味は無い。
お前の考えを変えることは出来ないだろう。
私はお前の親しい人間では無いからな。
きっと…自分を大事にしてる誰かに言われないと
考え方が変わるとはとても思えない。
だけど…自分の事をちゃんと見てくれる人に言われれば…
きっとその内、考えが変わるだろう…私はそうだった。
少なくとも…私はそれで、少しだけ…変われた気がする」
「誰に何を言われようとも、アリナが変わるわけ無いと思うけどネ」
「なら、試してみれば良いんじゃ無いか?
お前を大事にしてくれる、そんな大事な誰かを見付けて」
「もうおしゃべりは終了で良い?」
「あぁ…そうだな」
アリナが私の前から消えた。
……どうだろうな…あいつには大事な誰かが居るんだろうか?
いや、きっと居るだろう…ただ気付かないだけだ。
もしくは…気付いても気付かない振りをしてるだけか。
まぁ、どちらにせよ…あいつがただの凶人じゃ無いなら
きっと誰かが支えてくれるだろう。