あれから数日、どうもあの後からあの2人を会わせるのは難しいと判断したそうだ。
と言う訳で、ももこが2人の鉢合わせ計画とやらを実行したそうだ。
しかし、あの日以降のももこの行動をみていると、成功する未来があまり見えなかった。
ももこはあの日以降、毎日の様にレナとかえでを追いかけ回していた。
あれじゃあ、確実に警戒されている。このままでは不味いだろう。
そして鉢合わせ計画だが、いろはにレナを引っ張らせるつもりらしい。
で、私は遊撃を自分で買って出てみた。
ももこはどうやら計画性がある方ではないみたいだしな。
私が状況に対処出来るように行動する事にした。
「うーん」
さて、レナは性格上強引にその場に誘導するのは無理だろうな。
ももこは好きな事で誘導するのが良いと言っていたがどうだろう。
それ、普通に考えて騙されたと分かったら怒るだろうに。
そもそも、推しのアイドル情報をファンが調べないとも思えない。
それが嘘だとバレてしまうのではと言う不安もある。
と言う訳で、ひとまず彼女を誘導するために追いかける経路を想定した。
基本はいろはの誘導だが、もしもが起こった場合はこの経路で彼女を追うとしよう。
しかし、強引を通り越している気がするな…ここは素直に説得した方が良いのでは?
うーん、私も意外と計画性が無いのかも知れない。
「……しかし遅いな」
正直、そろそろ行動があっても良い頃だと思うんだが…
委員会とやらは、そんなに時間が掛るんだろうか?
「ん?」
私の携帯電話に電話が掛ってきた。
「はい、もしもし」
「あ、梨里奈!?」
「そうだ、どうかしたのか?」
「そ、それが…今日、委員会無かったみたい!」
「え? そ、そうなのか?」
「うん、いろはちゃんに伝えて、少しして梨里奈にも伝えなきゃって思ってさ!
ごめん、た、多分ゲーセンに居るから!」
「げ、ゲーセン…ど、何処にあるんだ?」
「あ、地図を送るから」
「あぁ、分かった」
「ごめん! じゃあ、よろしく!」
「あぁ」
まさか時間を間違えていたとは…本当に行き当たりばったりだな。
これじゃあ、計画を練る意味が無いレベルじゃないか。
とは言え、彼女は彼女なりに頑張っているんだ、それを酷評する訳にはいくまい。
誰だって得手不得手はある。彼女は計画を練るというのが苦手だったと言うだけだろう。
私で言えば、自分を見せるのが大の苦手だったりするような物だ。
それに私の場合、彼女のように仲間の為に必死に行動したりは出来ないだろうしな。
協力はするが、自分で積極的に行動は出来ないからな。
「っと、確かここら辺だな」
ひとまず地図に従い、そのゲームセンターへ向った。
こんな所に1人で来たのはこれが初めてだ。
七美と一緒に来たことはあるんだがな。
「っと、レナ…」
彼女の姿を探してみるが、何処にも姿が見えなかった。
おかしいな…もうすでにいろはが先に来て誘導したのかも知れない。
「……ん?」
何だ? 変な気配を感じる…何処か異質な気配。
いや、この気配は前に感じた事があった。
最初にこの神浜に来た日の夜…あの夜に同じ様な気配を感じた。
何だ? もしかして…噂とやらか? それに、他にも気配が
これは魔法少女の気配か? あ、もう一つの妙な気配が移動してる。
「クソ、どうなってる?」
私は急いで魔法少女達の気配があった方へ向う。
だが、そこには誰も居なかった。
どうやら、もうすでに移動をしてしまったらしい。
気配を探ってみるが…妙な違和感の気配。
「く、何処へ行った?」
気配を感じなくなった…何処へ行ったんだ? 何があった?
状況を理解できてはいないが、私は方々を探して見る事にした。
しかし、何処にも姿は見えないし気配も感じない。
何処へ行った? 微量な魔力は感じるのだがどうもこの街は
魔法少女の気配を複数感じるせいで、正確な物は判別できない。
数が多いというのは、こう言う場面では若干デメリットになるな。
「……何処にも見えない、それに時間も」
そろそろ良い時間だ…このまま探し回っても恐らくらちがあかない。
ここはももこと合流する方を優先した方が良さそうだな。
確か建築放棄地で待機していると言っていたな。
そっちに合流するとしよう。全く何がどうなってる。
「な、何だこの空間」
建設放棄地に着いたら、妙な結界がそこにあった。
明らかに異常だ、私はすぐに変身し、その結界に入る。
「さぁ、まとめてかかってらっしゃい」
「っと、ふん!」
「うぅ!」
「何?」
結界の中に入ると同時に妙な事になっているな。
やちよさんがかえでとレナを襲っている様に見えたが
その状態をももこといろはが放置はおかしいと思い
2人の方を狙ったが…正解だったか?
「あなたは」
「梨里奈!」
「どう言う状況? 私にはさっぱり分からないんだが」
「絶交階段ルールのうわさが具現化してね。2人が洗脳されてしまってるの。
2人を元に戻すには、うわさ本体を叩くしか無い。
で、私はこの2人の足止めを担当しているのよ」
「…なら、私は絶交ルールへの攻撃をサポートする方が正しそうですね」
「えぇ」
彼女なら、あの2人を止めることは造作ないだろう。
例え2人同時でも、あれほどの実力があれば問題は無い。
「なら、こっちは私が多少足止めしよう」
限界突破を行ない、あの絶交ルールとやらの大きな鐘を思いっきり蹴る。
絶交ルールのうわさとやらはこの一撃を受け、大きな鐘の音を鳴らす。
何とも不協和音な鐘の音だろうか。
着地と同時に、何体かの使い魔が姿を見せる。
「これも魔女と似たような感じなんだな、しかし象では無いのか。
うわさも種類によって色々とあると言う事なんだろうか」
とまぁ、それでもまぁ象の方が驚異的と感じられた。
私はその使い魔を全て叩き付けることにする。
「やっぱり強いね、梨里奈」
「あの使い魔が…まるで相手にならないなんて」
「いや、あの本体には大したダメージが無い様に見える」
「あたし達の攻撃よりは通ってそうだけど」
「そうね、問題はどうやって致命傷を与えるか」
あのちょっとした時間の間に、あの2人を鎮圧したか。
流石としか言えないほどに強いな。
「げ、もう2人を…」
「えぇ、2人は倒したわ。これで心置きなく戦えるでしょ?」
「あぁ、これで遠慮無くあいつを叩ける」
「でも、私達の攻撃はあまり通ってるようには思えません」
「どうすれば致命傷を与えらるんだ?」
私の攻撃は多少通っていた。だから、私の限界突破をフルに使えば倒せそうではある。
しかし、流石にあれ以上となると、消耗が少し痛いが。
「じゃあ、連携して攻撃って言うのはどうでしょうか」
「…なる程ね、絶交の性質とは逆でやってみようという事ね」
「はい! そうです! それです!」
「繋がり、信頼、友情、絆…なんて言うか、そんな感じかしら」
「ただ、繋がりはあっても、あたしとやちよさんの絆って」
「私はももこのこと、普通よ」
「それなら、あたしだってやちよさんのことは…普通だよ」
「ん? もっとあるんじゃ無いのか? 会話とか色々と聞いた感じ
ももこはやちよさんの事を損益してるようだし、やちよさんもももこのことを
そんなに嫌ってるようには見えなかったけど」
「そんな事は!」
「あぁ、あの時ね」
私がやちよさんと力試しと言う事で戦ってたときに
ももこは大分必死になってやちよさんを助けようとしてたからな。
いやそうな素振りは見せていなかったし。
「素直になれない関係という奴か? レナとかえでと若干違って」
「…色々と事情があるんだ」
「そういう事情は後で良いわ、今は時間が惜しいのだから」
そうだったな、レナとかえでは結構不味い状態だからな。
こんな所でのんきに話をしている暇は無いのか。
「じゃあ、2人を助けたいという気持ちは一緒ですもんね。
それって、今の私達には1番の繋がりですよね」
「そうね、私達を結びつける、1番強い繋がりかも知れないわね」
「うん、確かに。それじゃあ、かえでとレナを助けたい気持ちを
1発、いや、4発ほど乗せていきますか!」
「はい、そうしましょう!」
「オーバーキルになりそうだな。まぁ良いだろう。償いには丁度良いか」
「ラ↑ン↓ラ↑ンラ!!」
「丁度相手もお怒りだし、良いタイミングでしょう」
「叩き込むぞ!」
思いを1つにした連係攻撃。こういうことをする事になるとは思わなかった。
だが、こう言うのも悪くないかも知れない。
「あなたのせいで、どれだけの子が消えたのかしら。
償いとは言わない…ただ、消えなさい!」
「何度、本音を出しても繋がっていられる。
そう言う友達って、凄く尊くて大切だと思う。
だから私は、その絆を切ろうとしたことを許せない!」
「くだらなくて、つまらない事で何度も喧嘩が出来る。
ありのままの姿でぶつかり合える相手というのは大切だ。
その相手を奪う事…そんな事、絶対に許せない!」
「最後こそ、ちゃんと守りきらないとな…
だからさ魔女さん…あんたは地獄で贖罪し続けろ!
コノヤロオオオオオオ!!」
ももこの叫び声に合わせ、私達は同時に全力の攻撃を叩き込んだ。
4人の全力を尽くした攻撃を受けた絶交ルールは綺麗な鐘の音をならし崩壊。
階段が消滅し、最後に鐘が落下した後、鐘も消滅した。
それと同時に、結界が消えていく。
「よし、結界は解けた! 急いでレナとかえでを!」
「きっと近くに居るはずよ、探しましょう」
「2人とも無事で居て…」
何処だ? 何処に居る…あんまり良い状況じゃ無い、早く見付けないと!
「なんでレナだけ目が覚めるのよ…かえで、あんただって大丈夫でしょ?
目、開けなさいよ…」
辛そうな呟き声が聞えた。私達はその声に気が付き、急いで近付く。
「レナ!」
移動した先には気絶しているかえでと、そのかえでを必死に起そうとしているレナの姿があった。
レナの目元には普段の強気な彼女からは想像出来ない涙が浮かんでいた。
あんな風に言っていても、やはりかえでの事が心配だったんだろう。
「ねぇ、ももこ助けて! かえでが起きない!
レナとかえでの事守るって言ったでしょ!?」
「っ…!」
「お願い、ゲーセンとか奢れなんて言わないから! 何とかしてよ!」
「やっぱり、長く操られてたほうが消耗が激しいみたいね…!」
「私の治癒能力で…後、ももこさん、さっきの魔女のグリーフシードは」
「あの魔女、グリーフシードを落とさなかった…」
やはり落としていないのか…前に遭遇した孤独ルームのうわさも
撃破した後にグリーフシードなどは落としては居なかった。
うわさという存在はグリーフシードを落とさないのか。
「急いで魔女を探してくるよ!」
「それは無用よ、私のストックがあるから」
「…ごめん…やちよさん…」
私もストックはかなりあるが、ここで言うのはあまりよくないかも知れない。
「またこんなにももこの世話を焼くなんて
今日の今日まで思ってもみなかったわ」
そう言い、やちよはかえでにグリーフシードを与えた。
たまっていた穢れがすぐに綺麗になっていく。
「かえで…かえで…目を覚まして! 仲直りの印しにって
かえでが好きなもの買ってあるから!
ずっと謝りたくても謝れなくて、渡したくても渡せなくて…!
ずっと鞄の中に入れてあるの!
いつでも渡せるから、渡したいから、だから起きて! お願い…」
「レナちゃん…」
レナの声と思いが届いたのか、かえでが目を覚ました。
……我ながら、こんな風に思うなんて恥ずかしい。
「かえで?」
「うん…」
「―っ!! 良かった、良かったぁ!」
「はぅぅっ、揺らさないでよぉ…」
「…私、ちゃんと聞えてたよレナちゃんが謝ってるの…謝ってくれてありがとう…」
「うん、うん…ぐすっ…」
「家庭菜園から野菜取ってたのレナちゃんだったんだね…」
「うん…」
ひ、人の家に入って野菜を取ってたのか…そんな事をしてて…それは不味いだろ。
「私のペットのこと、そんなに気持ち悪いって思ってたんだね」
「うん…」
ペット? どんなペットだ? と言うか気持ち悪いと思ってたのか?
いくら何でも人が可愛がってるペットを気持ち悪いって…
「後で、ちゃんと謝ってね…」
「やだ、2度は謝らない…ぐすっ」
「ふふっ、分かった」
…だが、2人が再び繋がれたというのなら、私は何も言うまい。
それでお互いが良いと思ってるなら、それ以上の介入は無しだな。
「はぁ…ほんと…良かった…」
「……」
何とか一件落着と言った所かな。
ん? やちよさん、何処へ行くんだ?
「待ってください、やちよさん」
やちよさんが何処かに行こうとしているのに気付いたいろはが
彼女を真剣な表情で呼び止めていた。
「何? もう終わったでしょ?」
「はい、そうなんですけど…1つ教えて欲しくって…」
「何かしら?」
「さっき倒したのって、本当に魔女なんですか?」
それは確かに私も疑問に思っていたことだった。
魔女にしては、異様な部分が多かったからな。
「それは私も気になってたことです、私も知りたい」
「梨里奈さん」
「…あなたも? 何で魔女なのか疑問に思ったのかしら?」
「やちよさん、ずっと魔女って言ってなかったじゃ無いですか」
そうなのか? 私は他の所で疑問を抱いていた。
だが、いろはの方は違ったようだ…よく人の話を聞いている。
そんな所に気を配れているとは…かなり鋭いな。
「……鋭いわね」
いろはの周りの様子をうかがえるスキル…何だか七美に似ている気がした。
あいつも周りの様子をいつも伺ってた。私の隠し事も全て見抜いてしまうほどに。
「そうね…私は違うと思ってるわ」
「じゃあ、今のは一体…」
「私はウワサと呼んでいるわ」
「ウワサ?」
「そう、魔女でも使い魔でも無い。ウワサはうわさの為に現われる
うわさを現実にする存在として、うわさを守る存在として…」
「……そんな事をして、誰がどんな得……いや、いくらでも得にはなるか」
「そうね、あなたの思ってるとおり。誰の得にでもなる」
「あの、ごめんなさい…上手く呑み込めなくて…どう言うことですか?」
「それはどっちに対する疑問? ウワサがうわさの為に存在すると予想した私の方?」
「あ、両方です…」
「……じゃあ、まずは私がどうしてそんな風に思ったのかを答えましょう」
順序的に、そっちの方が分かりやすいとは思うからな。
私の方はやちよさんの意見は容易に理解できたが。
「いろは、あなたも絶交ルールで経験したわよね。
うわさ通りにする為にかえで達をサライに来て
うわさの内容から外れようとする私達を、排除しようとした。
あれは本当にただ、うわさの為に存在してるの。
魔女や使い魔とは決定的に違う存在でしょ?」
「魔女は自分自身の為に存在し、使い魔は魔女のために存在するからな」
魔女は結局の所、自分の為に存在するがウワサはうわさの為に存在する。
自分自身では無く、何故かうわさの為に存在している。魔女では無いだろう。
「…ウワサ…本当にそんなのが…」
「信じたくなければ信じなくても良いわ、ただ、気を付けなさい。
この神浜に通う以上は避けられない存在でしょうから」
「じゃあ、誰の得にもなるって言うのは?」
「そのままの意味だ…うわさの為にウワサが存在する。
うわさを自在に現実にする事が出来るんだ。
誰かが自分にとって都合の良いようなうわさを流せば
ウワサにより、そのうわさは現実になる」
「……じゃあ」
「ウワサの存在が何か…誰が作ってるのか。
私が思うに、これは人為的か…あるいは魔女の仕業か」
「……」
「いや、人為的と言う可能性が高いか。魔女はうわさを流行らすことは出来ない。
だが人なら、複数の人間に協力を仰げばうわさを広げる事は可能だ」
「私もそれは予想してるわ。人為的…この可能性が高い」
「そんな…じゃあ何の為に、絶交ルールなんて皆が不幸になるようなうわさを…」
「あぁ、私もそこが引っ掛かるんだ」
自分にとって都合の良いうわさ…そのうわさが周りに不幸を振りまくとは思えない。
人為的という可能性が高いが…その目的が分からない。
「私はそれも調べてる。うわさを調べながらね」
「……」
「聞きたい事がそれだけなら、私はもう帰るわね。やることはやったし」
「あ、はい…」
「じゃあ、私も帰るとしよう。折角再び繋がった友情の邪魔はしたくないしな。
それに、時間も良い頃だ。そろそろ帰らないとな」
「はい、それじゃあまた」
私はそのまま自分の部屋に戻る事にした。
……さて、この神浜にはかなり色々な事情が込み入ってるようだな。
面倒事に巻き込まれなければ良いが…