魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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数多の疑問

しばらくの間、ひたすらに階段を降りていく。

そしてようやく辿り着いたマギウスの聖堂。

何とも気持ちの悪い、穢れが溢れかえってる。

 

「何だか植物園みたいです…」

「棺と花みたいで、いやな感じだわ」

「皆、あれ見てよ!」

 

鶴乃が言う場所を見た…そこに居たのは

とてつもないほどに巨大な蛾の様な存在だった。

 

「あの奥にいるのが…イヴ?」

「魔女だよ…あれは魔女だよ」

「アハッ、ようやく来たみたいなんですケド」

「アリナさん」

「思ったよりも、遅れての登場だったみたいだね」

「でも、梨里奈が来てしまったのは予想外だね-」

「そうだね、彼女は外に向うと思ったんだけど」

 

マギウス…こんな気持ちの悪い空間で、よくくつろげるな。

 

「まぁ、アリナ的にはありなんだケドね?

 この手で直接、あんたを始末出来るだなんて」

「やっぱり私の事は嫌ってるんだな。まぁ分かるが」

「皆で一緒にイヴを眺めながら、お茶でもいかがかにゃー?」

「信じられない…こんな魔女を前にしてのんびりお茶を飲めるなんて」

「それにこの穢れ…こいつらなんともないのかよ」

 

予想通り、全員相当弱っていると言えるな。

この穢れだ、当然と言えば当然だろう。気持ちが悪い。

やはり私が来て正解だったと言えるな、動けないぞ。

 

「アハッ! アリナ達が作ったベストアートワークはどう?

 エンブリオ・イブを見るだけで、ゾックゾクしちゃうヨネ?」

「私にはそんな風には思えない…

 この魔女を作品を見るような目で眺めること何て出来ないよ…」

「僕達だって、これが魔女だとすればこうして平然と眺めてないよ」

「どう見てもこれは魔女だ…

 表に放てば、空気に触れるだけで普通の人ならどうなるか」

「はい、それだけの禍々しさを感じます…

 そんな魔女を、育て続けてきたなんて…」

「魔女だって言うのは否定したよ? 聞えなかったのかな?」

「じゃあ、何なんだ?」

「これは半端物。魔法少女でも魔女でもない

 狭間の中で揺らぐ半魔女だよ」

「ザッツイット、だからアリナ達は協力して

 イブを育ててきたんだヨネ

 早くリミットオーバーして、魔女という完成品にしたいカラ」

「それが孵化…と言う事?」

「そーだよ! 半魔女から魔女=孵化!

 魔法少女が魔女となるときに発生させる相転移エネルギーをね

 私達はずっと欲しかったんだよ!

 それが手に入れば、神浜の奇跡が世界に広がるから!」

「そして、世界の魔法少女たちは自分の宿命から救われる…」

「うんうん! はなまるだねー!」

 

うーん、よく分からないが…どう言うシステムだ?

魔法少女が魔女になる瞬間に発生されるエネルギー?

 

「……半分魔女が完全に魔女になって

 魔法少女が魔女になるときと同じエネルギーが出来るのか?

 半分くらいじゃないのか? もしくは違うエネルギーじゃないのか?

 それに、魔女になった後、どうするんだ?

 

 制御出来るのか? 疑問符が多いし、今のシステムもよく分からない。

 ドッペルのシステムとは何だ? 何がコアになってる?

 穢れを集めているのであれば、ドッペルはイヴが原因じゃないのか?

 イヴが完全に魔女になった場合、ドッペルのシステムはどうなる?

 

 ドッペルで放出するのではなく、ただ消えるのか?

 それともイヴが穢れを吸収してくれるのか?

 そうなった場合、イヴはドンドン強くなり、制御が困難になるだろう?

 時間が経てば経つほどに手が付けられなくなり、制御が壊されるのでは?

 

 制御が出来なくなれば、莫大な力を蓄えたイヴはどうなるんだ?

 世界を滅ぼすんじゃないのか? そうなれば、未来も全て消え去る。

 多少は分かってたが、意外と穴だらけだな。もっと未来を考慮しろ。

 小さいのにここまで辿り着いたなら、探せばいくらでもあるだろう。

 

 もしや半魔女とやらを作れるのか? それとも偶然の産物か?

 作れるなら暴走する前に別の半魔女を作って穢れをいくらか継承し

 更に別のイヴを作り、過去のイヴを消せば暴走のリスクは下がるが

 だが、解放とやらはお前達3人が居ないと駄目なのだとすれば

 このシステムはお前達が死んだ後、どうやって維持する?」

 

うん、疑問が多すぎるな…ちょっと短絡的過ぎる。

一時的のその場しのぎにしかなりそうに無いな。

と言うか、不確定要素が多い…欠陥だらけだ。

 

「質問が多いね」

「それだけ穴だらけだと言う事だよ。

 焦りすぎてる。新たな可能性を作り出すなら

 色々な可能性を考慮し、それに対する対策を用意せねばならない。

 さてでは1つ、これだけは聞きたいんだが…このイヴはどうやって?

 お前達が作り出したのか、はたまた偶然得たのか…答えろ」

「…後者だよ」

「そうか…しかしなんだ、結構出来すぎというか…

 どうして、お前達3人が揃い、イヴも揃った?」

「何が言いたいワケ?」

「まるで…決まってた…そんな風に感じたんだ。

 この半魔女、エンブリオ・イブとやらがあったから

 お前達はマギウスを作った…どうして、お前達が揃った?

 ちょっと都合が良すぎてる気がしてな」

 

事実怪しい…何だろうか、引っ掛かる。

彼女達3人とイヴが揃ってないと…出来ないシステム…?

何故、半魔女が排除される前に…マギウスに確保された?

 

これだけおどろおどろしい存在が居るなら…別の魔法少女が排除する。

だが、この場に保護される。何故かこの3人に…

そして、その3人とイヴが居たから…

魔法少女の解放が…目指せた…出来すぎだ。

 

「全員が偶然…エンブリオ・イブとやらに出くわしたのか?

 しかし、いろはの記憶では、お前達2人は病院だろう?

 病院で偶然、このエンブリオ・イブが生まれたのか?

 

 全員が入院している場面で? 本当に違和感ばかりだ。

 誰かが捕獲して、この話を持ち込んだのか?

 病院に居た、灯火とねむの2人にアリナが目を付けた?

 それとも、お前達3人の共通の知人でも居たのか?」

「……うーん」

 

本人達もハッキリとは覚えてないのか? 怪しいな。

 

「実際色々な欠陥もあるし、偶然すぎる展開が多いわね」

「そうですね。だから、この計画は止めた方が良いんじゃないか?

 違和感が多い、もう少し位様子を見れば良いだろう?

 欠陥も多いんだ…まずはそこら辺を考慮して」

「あなたが言ってることも、一理はある。

 だけどね、ここまで来て止める訳無いじゃないか」

「そうだよー、あと1歩まで来て止める訳にはいかないってー

 少しでも早く解放まで辿り着ければ、

 少しでも多くの魔法少女が救われるんだよー?

 私達の目的も、少し速く成し遂げることだって出来るしねー」

「急ぐ理由は分かるが、結果が伴わなければ意味は無いぞ?

 取り返しが付かなくなる前に、止めるべきだ」

「そんなの関係ないんですケド?」

「……はぁ、ひとつ気掛かりな部分もあるが…イヴを倒すしかないか」

「そうですね、そうすればマギウスは計画を諦めるしかない!」

 

今は動けないように拘束されてる…やるなら今だ。

マギウスをどうにかして避け、あのイヴを倒す。

 

「やっぱりそうなるんだねー」

「えぇ、余裕ぶってられるのも今のうちよ」

「そうだな! こっちは7人も居るんだからな!」

「それに、最強の魔法少女である私も居るんだもん!

 だけど…何にかあるような」

「くふふ、何があるのかにゃー? でも! 流石最強さん!

 いくらそっちが頑張っても、勝ち目なんて全然ないよ?

 魔力的にも体力的にもそして環境的にもねー」

「そうだね、ただ見てるだけなのも癪に障るから相手はしてあげよう

 灯火1人でも十分守り切れると思うけど、ここは僕も出るよ」

 

向こうは考えを改めてくれるという雰囲気はないな。

…しかし、あの余裕…あからさますぎて違和感ばかりだ。

何故、この場面でここまで余裕そうに振る舞えるのか。

穢れか? 確かにこの場所は穢れの塊…毒ガスに近いだろう。

 

「よし、一気にイブを倒しましょう!」

「穢れだか何だか知んねーけど! 俺のハンマーで散らしてやるよ!」

 

全員が一斉に走り出すが…随分と体調が悪そうだな。

かく言う、私もちょっと走るだけで息が切れそうになる。

やはり、この穢れは魔法少女にも毒か。

 

「あれ…ちょ、ちょっと動いただけで、息が…」

 

全員、満足に動けないままマギウスの3人に押されてる。

勝負になってないという奴か…だが。

 

「お、おかしいよ十七夜…ち、力が全く入らないよ…」

「……」

 

全員、一方的に押されている。私以外は。

 

「チィ! 何で動けるの-!?」

「それはだな、マギウスの諸君。私に限界がないからだ。

 私の魔法は限界突破。既に全員相当な疲労があるし

 ましてや、こんな環境だ。動けなくなるのも頷ける。

 

 毒のような物だろう? 猛毒のガス。

 しかしだ、私の場合は例外。私に限界はない。

 自身に関わることしか出来ないが、それだけなら出来るんだよ。

 この穢れに対する免疫、こいつの限界突破も出来ると思わないか?

 

 第六感、身体能力、治癒能力。私は自分関わるあらゆる事を強化した。

 環境適応能力さえ、限界を越えられる。そうは、思わないか?」

「クソ! やっぱりあんたは厄介だヨネ!」

「ふん!」

 

飛んで来る攻撃を全て弾いた。

今の状態、本来であれば1人でイヴを叩きに行くべきだが。

ここを明ければ、いろは達が危ういし、まだ引っ掛かる。

 

「くぅ!」

「く…ど、何処まで規格外なの!?」

「全く驚いた…ここまで動けるとは想定外だよ」

「私が本気を出せば、例え猛毒の霧の中を突き進もうと

 一切息切れをする事無く動ける。私は私に関する事なら

 殆ど何でも出来る。それが、私の限界突破の魔法だ」

「やっぱりあんただけは始末した方が良かったヨネ!

 拘束したとき、ソウルジェムをブレイクすれば良かった!」

「見誤ったな、私を。実際お前達の選択とすれば

 それが最も正しかったんだ、私を始末する。

 それが最も正しい選択。だが、しなかった。

 悪意しかないと思ったが、意外と甘い部分もあるな」

 

この環境で満足に動けるのは私だけ。

初速の速さには自信がある。即座にイヴを倒せるはずだ。

だが、出来ない…違和感がずっと纏わり付く。

 

あのエンブリオ・イブは……理由は分からないが…

ハッキリとは言えないし、違和感だけだから何とも言えないが…

あの化け物の正体は……何故か存在しない存在。

 

「……本来、存在しなくてはならない存在…」

「何を口走ってるの!?」

「梨里奈…さん…す、みません…イブ…を…」

「……こんな事を言うのは違和感があるし、言うべきではないかも知れない」

「え? 何を…」

「不謹慎かも知れないし、衝撃的すぎるかも知れない。

 だが、状況的に一番自然なのは…都合良くマギウスが揃った理由として

 最も自然で、最も有力…邪魔なのは1つ、記憶だけだが…

 エンブリオ・イブ…その正体は…言うべきか分からないが

 攻撃しない言い訳のために…言わせて貰うと…」

 

あり得るのか? 可能性があると言うだけで言うべきか?

言わない方が良いんじゃないか? あまりに都合が良すぎる展開。

その展開をもし、起すことが出来たとすれば、これ位だと思うし

これが一番有力だと私は思う。だが、どうだろうか…?

 

言わない方が良いんじゃないか? いろはの為には言わない方が。

だ、だが…このままだと…この可能性に到達する前に…

言うしかないか? 言った方が良いだろう…言うぞ…

あの3人の話を聞いて、私が思った可能性を。

 

「……あの化け物の…正体は…」

「梨里奈…さん? もしかして、梨里奈、さんも体調が…」

「環うい……何じゃないか?」

「え!?」

「はぁ!? 何言い出すの?」

「最初の質問の時、言った違和感だが…可能な手段が1つあるんだ。

 それは、お前達3人と…そして、あの化け物が知り合いだった場合。

 お前達が魔法少女の真実を知って…救いたいと思った…

 そして、救う為に…魔法少女を救うためのシステムを作ろうとした。

 

 既に、親友の妹達が同じ様な事をしたんだ。

 こっちは蘇生だがな…姉を蘇らせるために

 姉の死体を戻して欲しいと願った後、姉を蘇らせて欲しいと。

 なまじ頭の良いお前達は…魔法少女を救う方法を思い付いた。

 そして、3人でその方法を模索した…いろはの記憶が正しいなら

 

 環ういとお前達は仲が良かったんだろう?

 そして、姉であるいろはとも。

 そして、いろはは魔法少女。

 ……もし、妹思いのいろはが…奇跡が叶うと知ったなら。

 病気である妹を…助けて欲しいと…願いそうだしな」

「……い、イブが…うい? そ、そんな事って…」

「勿論、可能性だ…可能性でしかない…ほ、他にも

 ただ偶然、あの3人がイヴを見付けたという可能性もある…

 だけど、一番合理的なのはこれじゃないかと思ってな…

 何故、イヴの元にこれだけの穢れが…あるんだ?

 

 私の予想だとイヴが吸い取ってるからだ…

 なら、その力は…どうやって? 半魔女の特性か?

 それとも、別の部分か? 半魔女は魔女と魔法少女の中間。

 なら、魔法少女としての力…で、ある可能性も…ある」

 

戯れ言かも知れないし、所詮は可能性の話でしかない。

いろはの記憶は聞いたが、その記憶が正しいのだとすれば

この可能性があると、私は思う…問題はいくつかある。

 

何故、その事をいろはだけが知って居て

あの2人は忘れてしまってるのかという部分と

アリナという存在…何故、アリナは3人に出会えた?

 

「まぁ、戯れ言だね。そんな下らない事で攻撃を渋ってたの-?」

「色々な可能性を考慮すれば、こうなるんだ…失敗したくないからな。

 私は何度も失敗した…だから、色々な可能性を考えてしまう。

 と言っても、これも親友の影響だよ。七美の言葉を聞いたからだ。

 …聞いてなかったなら…躊躇わず攻撃してたかもしれない…」

 

考えなかったかも知れない…こんな事を。

躊躇うことなく、あの化け物を攻撃してたのかも知れない。

だが…出来なかった…出来る筈なのに出来なかった。

 

「何だ? 周囲が…」

「ん? も、もううわさが? 予想よりかなり早いね」

「もうみふゆが消したのかな-?」

 

うわさが…消える? 周囲が…

 

「これ、結界が壊れる!」

「皆! 離れないように捕まって!」

「はい!」

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