大量の使い魔とマギウスの3人。
まだ懸念は拭えないし、いやな可能性は…
絶対にあり得ないと、否定も出来ない。
だが、動かないわけには行かない。
いろはにもこの可能性は伝えた。
それでも彼女は倒そうとしてるんだ…
私より辛い筈の彼女が動いてるんだ。
私も何もしないわけには行かない。
「数は多いが…道さえ作ればそれで良い」
「おぉ、あの人、1人で大暴れだね。異常に強くない?」
「あなた、仙波さんと出会って無いの?」
「あはは、マミさん助ける為に合流したときだけですからね。
あの時はあの人、すぐに離脱しちゃったから」
そう言えば、あの青髪の少女、名前を聞いてなかったな。
後はあの赤髪の子も名前を聞いてなかった。
「実を言うと、あたしもあいつの事は知らねーんだよな」
「梨里奈さんだよ、凄く強いの」
「うん、頼りになるよ」
「彼女が強いのは見てれば分かると思うわ。
自己紹介も重要だけど、今は目の前の問題を片付けましょう。
まずはあのイブを止めないと」
「あいつ1人で、全部片付けちまいそうだが
指を咥えて待つってのも性に合わないし、援護するか」
しかしだ…数が多いな、妙に多い。心なしかいろはを狙ってる気がする。
使い魔達の目的はいろは…そんな気さえする。
何故いろはを狙う? ……狙う必要は…無い筈だ。
「本当、数が多いな…レナ達は大丈夫か?」
「何とかね、連戦は勘弁して欲しいけど」
「ふゆぅ、が、頑張るよ…」
「…この後が控えてると思うと…気が重いわね」
「なら、全員休んでてくれ。一気に終わらせる」
「でも梨里奈! あなた1人に負担を掛けるわけには!」
「こんな事態になったのも、私が原因です。
いろは! 伏せててくれ」
「は、はい」
「そこ!」
いろはが伏せたタイミングで武器を伸ばし、一気になぎ払った。
伸縮自在の刃というのは、こう言った場面では強烈だな。
私が一振りするだけで、周囲の使い魔達は真っ二つだ。
「うぉ! あの武器、あんなに伸びるのかよ!」
「殲滅特化ね」
「いろは!」
「はい! 今のうちに!」
「アリナ達がそれを許すとでも?」
「残念だけど、あなた達に邪魔はさせないよ!」
「く! 引寄せられる!」
アリナ達がいろはを攻撃しようとした瞬間
彼女達は私達の方に引寄せられた。
「うぅ! 千花七美、邪魔しないでよ!」
「邪魔するよ、今の私はあなたの仲間じゃないんだから」
「不味いね…僕達とあの子は相性悪いよ…」
「そうだろうね、糸を斬る武器が無いと、私の糸は斬れない。
力尽くで引き千切っても良いけど、そんな怪力がある?」
「もう! 全員邪魔ばかりして!」
七美の糸を切る手段がないマギウスの3人は
私達の元に引寄せられ、動けない状態になった。
「動けないなら、あっさり倒せちゃいそうだね」
「抵抗はしないでください…」
「でも…環いろは1人で大丈夫なのかにゃー?」
「あぁ、あたしもなんでいろはちゃん1人に任せてるのか…」
「……所詮は可能性だけど、梨里奈がいやな可能性に気付いたの」
「どう言う事だ?」
「あの魔女が…」
私が気付いた可能性をやちよさんが伝えようとしたとき
いろはの悲鳴が聞えた。
「いろは!」
いろはがイヴに拘束されてる…だが、捕まってるだけ。
イヴは何もしてない…ただ、いろはを見ているだけだった。
何故…すぐに攻撃しないんだろうか…? あぁ、分かってる。
分かってる筈だ…だって、その可能性に気付いたのは私だ。
使い魔が発していた、謎の鳴き声も…きっと正しいんだろう。
私が聞えてしまった発言で…
「うわ、何!?」
いろはが拘束され、助けようと動いたとき。
いろはから激しい光りが放たれ、いろはが逃げ出した。
何が起ったんだ? 分からないが。
「……やっぱり、そんな事って…」
イヴから解放されたいろはがゆっくりと下がる。
手元には桜の木の枝が握られていた。
既に咲いていたのか分からないが…その桜の枝は
不自然な程に綺麗に全ての花が咲いていた。
「いろは…?」
「……」
いろはが涙を流してる…そうだ…当然だった。
あのイヴの正体が…まさか、そんな…
私にはまだ確信があるわけじゃ無い…だが、いろはには
いろはには、確信してしまった…そう言う事だろう。
「……」
どうする…どうする? どうするべきだ…このまま見るだけか?
…いろはに押付けるだけか? 自分で決めず、誰かに。
……わ、私なら…私ならイヴを…きっと、倒せるはずだ。
少なくとも、今、拘束されてる状態なら…倒せるはずだ。
「い、いろは…ま、任せてくれ…私が…」
「梨里奈さん…」
いろはの目からは迷いが見えた、とても激しい迷いだ。
…葛藤してるんだろう。相手は自分の妹。
「梨里奈さんの…懸念通りでした…」
「梨里奈の? どう言う事? いろは」
「この桜の木…万年桜の枝なんです…
私の記憶では私、灯火ちゃん、ねむちゃん、そしてうい。
この4人が揃ったときに咲く…そんなうわさなんです」
「……あり得ない、環いろはを守るだけじゃなくて満開になるなんて」
「万年桜は運命の時を待って満開にはなれずにいる。
それが万年桜のうわさに関する僕が創造した内容だよ
4人にまつわる話は微塵も記載した覚えは無い」
「……なら、きっと私の懸念通り…なんじゃないか?
いろはの記憶が正しくて…イヴはお前らの知り合い。
その条件が揃わないと、こんな都合の良い話は出来ない。
物語で言えば、あまりにもご都合展開過ぎるだろう?
魔法少女を助ける可能性がある存在と
その存在を制御出来る可能性がある3人の魔法少女が
偶然に出会い、制御し、魔法少女を救おうと動くだなんてな」
それよりも現実的なのは…この4人が知り合いだと言う事だ。
「クソ、勘が鋭いのも考え物だ……」
私が気付かなかったら…いろはが葛藤することも無かったかも知れない。
妹とは出会えなくなるが、それでも辛い思いはしなかったかも知れない。
妹の思い出が全部勘違いで、その記憶が誤りで…無駄足を踏んだけど
ここで過ごした毎日は、本当に楽しかった…そんな終りだったかも知れない。
だが、私が気付いてしまった…そのせいで、この終りは消え去った。
自分の記憶は正しくて…目の前の怪物がその妹で
最終的にその妹を倒さないと駄目だなんて…
あぁ、私が気付かずにあの場で…イヴを倒せていれば…それで…
「私が悪いんだ…」
「……」
「何故、環いろはの事をそこまで信用するんだい?」
「仲間だからだ…では私も問う。
何故、お前達は自分の記憶を信用するんだ?
違和感や不自然な点が多々ある矛盾した記憶を…信用する?」
「自分の記憶を疑えと言う方が無理があるよ」
「あぁ、だろうな。だが、今、目の前で出来た状況は?
本来記載してないはずのあり得ない状況。
それが起ってる…記憶に自信が無いなら…
今、現実で起った事象を信じるしか無いだろう…
記憶が正しいとすれば…この矛盾は消える…そうだろ」
いろはの記憶が正しければ、この状況は当然なんだから。
いろは、ねむ、灯火…そして、うい…その4人が揃ってる。
本来記載されてすら無い満開の条件。
だが、いろはの記憶には満開になる条件が存在して
…そして今、目の前で起った事象はこの条件が整ってる。
あのイヴが…いろはの妹であるとすれば…だが。
「だがまぁ、もしこの記憶が正しいのだとすれば…
お前達は酷な現実を目の当たりにすると言うことだ。
いろはも…お前達マギウスも…」
何故なら、あのイヴという化け物がいろはの妹であるなら
イヴはいろはの為に…あんな姿になったと言う事になるんだ。
所詮、これも可能性だが…1番近い可能性と言える。
いろはの記憶が正しいのであれば、マギウスの2人といろはの仲は良い。
彼女達は勘も良いし、色々な情報を知ってる様だ。
そこから、魔法少女の秘密に行き着き、仲の良いいろはが
そんな悲惨な運命に縛られていると気付き…何とかしようとした。
その結果、いろはの為に3人は魔法少女となり
何かの拍子で妹である、ういが豹変してしまう。
深い絶望を味わったのか…? いや、どうだろうな。
あるとすれば、そんな方法をしたけど救えなかったという結果だった。
だが、失敗したからと言ってあっさり折れるだろうか?
あのいろはの妹だ…いろは並に根性が据わってる可能性もある。
1度失敗しただけで諦めるとは思えない…
なら、魔法少女を救うための条件? もしイヴの穢れを吸う行動が
半魔女としての特性では無く、魔法少女の特性だったとすれば?
いや、可能性でしか無いか。半魔女の特性かも知れないし
魔法少女の魔法による特性かも知れない…断定は出来ない。
だが、可能性があるが…後者の可能性が正しいのであれば…
うーむ、いや違うか? 穢れを吸うだけで良いなら
何も3人が同時に魔法少女になる必要は無いだろう…
「……質問したいことも多いし、聞きたいことも多い。
だが…あまり長い話をする余裕が無い。
マギウス、イヴを止めろ。イヴを制御するつもりなら
何かしらの仕掛けくらい用意してるんだろう?
今までの話しや可能性を聞けば、
この行為が危険な事くらい分かるだろう?
お前達は最悪の場合、善意から生じた行動が転じ
悪意のみに染まりかけている。
そもそも、お前らが最初から今の様な黒であれば
いろはやその妹が親しいはずが無いんだよ…実際は違うんだろう?
重要な事を忘れている。お前らを救ってくれた親友だ。
天才は愚かな存在だ。1人で何でも出来ると自惚れてる奴らばかりだ。
だが、そんな天才を救うのはきっと、親しい凡才だろう。
お前らはそんな親友を失った結果、破壊の道を歩んだ。
これ以上進めば引き返せなくなる。イヴを止めろ。
私達がイヴを倒そうと、今のお前達が親友を取り戻せない限り
この戦いは終わらない…今、分かった」
「そんなくだらない言葉に耳を貸すと思うのかな?」
ここまで伝えても、やはり考え直さないんだな。
自分が正しいと思い込めば、こうなるだろう。
最も、私も似たような状況なんだろうがな。
私もこの可能性を信じてなければ…既に全ては終わってる。
こんな下らない押し問答を繰り返すことも無い筈だ。
だが、私は自分の意見を譲ろうとしない。似たような物だろう。
「……なら」
あのイヴを…どうにかして元に戻す方法を探すしか無い。
いろはの妹を元に戻す方法を探すしか無い。
いくら何でも、目の前に証拠となる少女が現われれば…
あの分からず屋な2人だって理解できるはずだ。
問題は、どうやってあの化け物を元に戻すか…
だが、それよりも今、私が尊重すべき事は…
「……いろは」
「は、はい…」
「お前は、可能性に賭ける覚悟は…あるか?」
「え?」
「あの3人が実は優しいという可能性に
自分の記憶が正しいという可能性に。
あの化け物のなり損ないがお前の妹であると言う可能性に。
そして、化け物になりかけてる妹を…救えるという可能性に」
「……助ける事が…出来るんですか?」
「いや、保証は無い。どうすれば良いかも分からない。
手段も分からないし、何処を叩けば良いのかも分からない。
弱らせれば良いのか、何処かを壊せば良いのか
何か別の要素を注ぎ込めば良いのか。
完全な魔女にすれば良いのかさえ、分からない。
そうだな、確率で言えば限り無く0に近い…
1時間後と余命宣告を受けた人が助かるくらいかもな」
「……」
「そんな途方も無い可能性に…賭けるか?」
「……私は」
いろはがどうするか…彼女が賭けると言うのなら私も賭けよう。
その途方も無い可能性に…諦めないのなら一緒に挑もう。
そんな荒唐無稽な挑戦に…最も、魔法少女なんて存在自体
何処までも荒唐無稽な存在と言えるんだがな。
「回りくどい! もう変な事言わないでよあなた!」
「動揺してるな…何を焦ってる? むしろ好都合だろう?
私達がイヴへ攻撃してない、今この状況は」
「この!」
マギウス達の攻撃をやちよさん達が防いでくれた。
「いろは! 私達はあなたの選択に従う事にするわ!」
「私も一緒に…どんな選択でも付いていきます」
「だね、私も色々と引っ掛かるけど、いろはちゃんに任せるよ!」
「なんか難しい事話してたけど、俺は何処にでも付いてくぞ!」
「はい、いろはさんと一緒なら、私達はどんな無茶にだって挑みます!」
「どうする? 環君」
みかづき荘の全員は私の話を聞いて、
いろはに委ねると決めたみたいだった。
「本当無茶苦茶な話であたしはいまいちついて行けてないけど
ここまで来たんだ、どんな選択でも一緒に行くよ! いろはちゃん!」
「全く、本当にどうしてこんな面倒な事をするのか疑問だけど
まぁ、ももこがやるって言うなら、レナもやってやるわ」
「レナちゃん、素直にいろはちゃんの為って言えば良いのに」
「うっさい!」
「私達も手伝うよ、いろはちゃん! 大丈夫だよ! 絶対に助けられる!
うわさに操られてたって言うマミさんだって助ける事が出来たんだもん
皆で一緒に戦えば、きっと助ける事だって出来るよ!」
「まどかの言う通りだよ! 一緒に挑めば大丈夫!
可能性だとか、そう言うのはちょっとよく分からないけど
頑張れば必ず道は開けるとあたしは思ってるしね!」
「正直、なんだって面倒な事をするのか分かんないけどさー
まぁ、ここまで来たんだ、折角だし付き合ってやるよ」
「はい、必ずいろはさんの妹さんを助け出して
ワルプルギスの夜を倒しましょうね!」
「大丈夫よ、あなたは独りぼっちじゃ無いわ!」
いろはがまだ何も行ってない状況でも、既に選択が決まってそうだな。
いろはがどっちを選んでも、結果は変わりそうに無い。
「わ、私は…私は例え途方も無い可能性だったとしても
私は…私はういを、ういを助けたいです!」
「よし!」
当然、いろはが選んだのは、妹を助け出すという僅かな可能性。
本当に荒唐無稽で、確実な道筋がある訳では無い危険な選択。
だが、彼女はそっちを選んだ。ふぅ、失敗したらどうするか…
私が原因だからな…必ず、方法を見つけ出す。
「これは、私も一緒に頑張らないと駄目そうだね。
私、病弱なんだけどなぁ-、休みたいんだけどなぁ-」
「…七美、すまないな、付き合わせて。一緒に戦ってくれ」
「にひ! そうそう! その言葉が聞きたかった!
私、頑張るよ…ようやく、一緒に戦える。
……今までごめんね、梨里奈ちゃん…
そして、ありがとう…こんな私を助けてくれて」
「そう言う話は後で聞こう。今は目の前だからな。
何とかしていろはの妹を助け出す。
弥栄、久実…お前達はどうする?」
「お姉ちゃんがやるなら、私もやるよ」
「うん、頑張る」
戦力は十分だな…これだけ居れば大丈夫だ!