結果として、いろはとマギウスは大事な友人と妹を救えた。
だが、ひとまず救えただけでしか無い。
いろは達が妹との再会を楽しんでる間に私は動く。
「梨里奈、成功したのよね?」
「はい、イヴの正体はういでした。
そして、救う事が出来た。でも、これからです」
「えぇ、ワルプルギスの夜を止めないとね。
それと梨里奈…怪我、大丈夫?」
「大丈夫ですよ、この通り動けます」
「そう、なら良かったわ」
「やちよさん、いろは達は任せます。
私達はワルプルギスの夜を迎撃しに行きます」
「無理しないで」
「無理はしてませんよ、これ位なら私の魔法で」
「…ん」
私が自分の傷を治そうとしたとき、弥栄が私に触れた。
すると結構な速度で私の傷が癒える。
「弥栄…お前、回復の魔法だったのか?」
「正確には蘇生だけど、傷も治せる」
「それはまた便利だな。蘇生というのは凄まじい」
「ふん、一応協力はするから…」
「私も頑張る! 梨里奈姉ちゃん!」
「スルーしてたけど、梨里奈ちゃんの事
お姉ちゃんって言うようになったんだね、久実。
ふふ、良かったね-」
久実がちょっと恥ずかしそうにしながら笑う。
「よし、じゃあ急ごう! これ以上近付く前に!」
「あぁ、急いで迎撃に行こう。まどか達は大丈夫か?」
「はい、全然平気です!」
「えぇ、まだ動けるわ」
「よし、急ごう!」
「梨里奈、話を聞いても良い?」
私達がワルプルギスの夜を追いかけようとすると、アリナが来た。
「なんだ? 時間が無いんだ…」
「あなた1人だけで良い」
「…そうか、じゃあ皆はワルプルギスの夜へ。
何を聞きたいか知らないけど、一応聞いておきたい」
「うん、分かったよ」
「すぐ行くからな」
他の皆に先に言って欲しいと伝え、アリナの話を聞くことにした。
「梨里奈、アリナはこの世界をバーニングさせて暖めたいと思う。
アリナはそれこそ、人類が望むパーフェクトなアートだと思うワケ」
「…人は滅びを望むと言いたいのか? アリナ」
「オフコース、あなたはどう思う? 梨里奈」
「……そうだな、人は結局は滅びを望んでるとは思うぞ?
戦争は終わらないし、滅びを望んでいるとは思う」
「なら、あなたもアリナと一緒に世界をバーニングさせてみない?」
「恐い事を言うな、アリナ。だが、残念だがそれは嫌だな。
今までの人類の歴史から考えても分かるだろう?
人は結局、無い物を欲してるだけだ。お前が言うバーニングか?
それが当たり前になれば、人はそれを望まない。
完璧が当たり前になれば、人は不完全を求めるだろう。
幸福が当たり前になれば、人は何処かで不幸を望む。
人類が理想とする完璧なんて、歴史や時代で変わる。
いつまでも完璧なんてアートなんて存在しないんだよ」
歴史を紐解いても分かる事だ。人は無い物を欲する。
人は何処までも強欲な存在なのだろう。
いつまでも満足することが無い、貪欲すぎる生き物。
いや、生物はみなそうなのかも知れない。
私には分からないがな、私達以外の存在が強欲なのかどうか。
どう足掻いても、それは押しつけでしか無い。
獣と意思疎通することが出来るのであれば、話は別だがな。
「だから、簡単なのは感動を与えることだと思う。
感動なんて物は、簡単には得る事が出来ない感情だ。
幸せな感情だ。少しでも多くの心を動かし、
喜びを得たいのならな、感動を与え続ければ良い。
破壊された世界では、誰も感動何て覚えないのだから。
アートを楽しめるのは、余裕がある人間だけだ」
「…全てをデストロイした後の世界は誰も興味を無いと?」
「誰でも興味はあるだろう。だが、辿り着くべきでは無い」
「私が与えるべきなのはなんだと思う?」
「感動だ、アーティストが届けるべきは感動だと私は思う。
余裕ある人間に届け、その心を大きく動かすような
そんな感動を与える事が出来る作品だ。
とてもとても難しい事だろう。平和しか知らない人に
不幸を知らせるなんて途方も無い難易度だろう。
どんな言葉を選ぼうと、それは戯れ言と言う人も多いだろう。
自分の意図を知らない人間が、下らないなどと言うだろう。
だが、それでもそんな人の心を大きく動かす。
そんな最高の作品を届けるべきだと私は思う。
とは言え、所詮私の意見でしか無い」
「……アリナの質問に堂々と答えたのは
あなたが初めてだよ、梨里奈」
「お前に近寄る奴はきっとお前に憧れてるからな。
質問に対して、1歩引いて答えるのは当然だろうな。
お前の意見を面と向ってハッキリと否定するのも難しいかもな」
当然、有名人に対して何かを言うのであれば1歩引くよな。
憧れた人に対してであれば、当然だろう。
本気で喧嘩をする仲間は居ないのかも知れない。
彼女の意見に完全に相反する人は否定するだけだろうしな。
私もそうだった…少なくとも、あの時までは。
「少なくとも私は、この世界を滅ぼそうとは思わないぞ。
それは無意味だと知ってる」
「あなたは恵まれた環境じゃ無いと思うケド?」
「私は恵まれてるよ、友人も居て家族も居る。
生きていくことは出来るし、まだ自分を捨てたわけでも無い。
金は全くと言って良い位無いが、生きてるんだ、それだけで良い」
「あなたの事を知らないと思う? 知ってるよ?
あなたは親に全部押付けられてるんだヨネ?
そう言うのをデリートしたいとは思わないワケ?」
「私は何でも出来てしまうから、色々な憧れを背負わされた。
両親の夢だって背負わされ、同級生の憧れを背負った。
そして、一時は道化となり、親友に救われたが
その親友さえ、私は同級生に奪われた。
だが、今は無事に生きている。恵まれてるよ」
私は恵まれている。平和に過せている。
魔女と戦い、死ぬかも知れないと言う危険性を背負っては居るが
それだけだ、私には抗う手段がある。それだけで十分だ。
「…世界をデストロイするつもりは無いと」
「そうだ、それを芸術とも思わないし、そんな芸術は無意味だと思う
勿論、そんな破壊を求める人も居るだろう。
だが、必ずその先に再生を求める。そんな物だ」
「ふーん、あっそ」
アリナが少しだけガッカリしたような表情を見せた。
「アリナ、皮膜を消して欲しいの、このままだとイヴが」
「……」
「アリナ?」
「……」
アリナが何かを考えてる。何かを決めようとしている。
後ろ髪を引かれてるような、そんな雰囲気を感じる。
「……分かった、さようなら、アリナのベストアート」
アリナが手を掲げると、イヴの姿が少しずつ崩れ始めた。
そのままイヴは形を崩壊していく…が、まだ
「あ、アリナ…皮膜、消したんだよね?」
「け、消した筈だケド」
「まだ動きそうだな……クソ、ワルプルギスの夜も控えてるんだぞ?
いい加減に消えてくれ!」
「う、ういを見てる…取り返そうとしてるの?
駄目だよ、絶対に…折角4人に戻れたんだから!」
「来るぞ…このままだと神浜が不味い」
「崩壊する前待っても、神浜が」
「…方法は1つある」
「え?」
「私があれをバラバラに引き裂く」
「そんな事出来るんですか!?」
「あぁ、やって見せる」
「でも…」
「梨里奈、止めた方が良いわ。
あなたの魔法は体の負担が酷すぎる。
そんな事をすれば、あなたは五体満足では居られないわ!」
「……大丈夫だ、死ぬわけでは無いさ」
動けなくなっても…私は私なんだから。
「駄目だって梨里奈! 死ぬよ!? 分かってるの!?
今までだって、散々無茶してきたじゃん! その度に酷かった!
イヴを倒すくらいに強化しちゃったら、最悪死ぬよ!
体の負荷が大きすぎて、最悪心臓が破裂するかも知れないよ!?」
「恐いな、それは…心臓が吹き飛ばない様に強化しないと不味そうだ。
だが、心臓の限界も突破すればそれで大丈夫そうだがな」
「止めろよ姉ちゃん!」
「ほ、他に方法があるかも知れません!」
他に方法か…そんなのがあるのか?
「もきゅ!」
「え? 任せってて…もう出来る事なんて」
「モキュモキュウ!」
「あなたがういの代わりにイブになって助ける? どう言うこと?」
「そうか! イブはキュウべぇの機能を奪ったういから生まれた存在
小さなキュウべぇはういを入れて活動してた存在。
この2つの存在は同じ性質を合わせ持ってるんだよ!
ういとキュウべぇのね」
「そんな事が出来るのか?」
「うん! それにキュウべぇは感情を持たない個体だから
魔法少女にもならないし魔女にもならない」
「…それって灯火ちゃん、出来るって事だよね!?
私達が最初に考えてたことが!」
「うん、出来るかも知れない」
そんな事が出来るのか? 私達の為に身を捨てようとしている
この子に感情がないと言うのは…本当なのか?
「でも、もきゅはどうなっちゃうの?」
「モキュ!」
「私達を…見守り続ける…そんな」
「モキュ!」
「もう空気とは呼ばせないって…」
「モキュモキュ! モッキュ!」
「なんだ? 私に近付いて」
「…投げてって、言ってます」
「……お前、後悔はしないか? もきゅだったか」
「モッキュ!」
「大丈夫…って、言ってます」
「……そうか、なら…頼むぞ!」
「モキュ!」
最後、もきゅが何を言ったのか、私には分からなかった。
だが、悪い言葉を言った訳では無いだろう。
全力で私はもきゅをイブに向けて投げる。
もきゅがイブに当ると同時に、イブの穢れが散らばった。
……今まで、全く姿を見て無かったが…
本当にキュウべぇとは思えない。
お前ともう少し位、思い出を作りたかったよ。