魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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ワルプルギスの夜

イヴは飛び散った…だが、まだワルプルギスの夜が居る。

結果として別れて、結構なタイムロスになった。

このまま私達だけ待機というわけには行かないだろう。

 

もきゅのお陰で私の肉体には大きなダメージは無い。

普通に動ける…ワルプルギスの夜を叩けるだけの体力はある。

とにかく私達は急いで、ワルプルギスの夜を止めないと行けない。

これ以上、神浜に近付く前に!

 

「私は急いでワルプルギスの夜の方へ向う。

 皆は後から来てくれ!」

「わ、分かりました!」

 

私の動きは速い。周囲の市街地を駆け抜ける。

ここで無理矢理魔力を使うわけにも行かないし

このタイミングでは魔力を消耗しては居ない。

 

身体強化魔法を使って移動してるわけじゃ無いから

全力で移動してるときよりも大分足は遅い。

だが、他の魔法少女よりは十分足は速いだろう。

これでも私はアスリートも目指してたからな、足は速い。

 

「アッハッハッハ!」

「聞えてきたな…」

 

ワルプルギスの夜に何発の攻撃が飛んでいるのが見えた。

善戦してるように見えるが…決定打を与えてるようには見えない。

 

「不味いかも…追い込まれちゃってる」

 

周囲の瓦礫が浮いてる。どうなってるか分からないが好都合だった。

周囲に飛び回ってる黒い魔法少女の様な影…十分だ。

 

「折角温存できたんだ…やらせて貰う!」

「え!? 梨里奈ちゃん!」

 

周囲の瓦礫や使い魔達を足場にして、私はワルプルギスの夜に向う。

ワルプルギスの夜は私に気が付き、攻撃を仕掛けてくる。

と言うか、ビルを投げ飛ばすだなんて冗談じゃ無いぞ!

 

「ちぃ!」

 

急いでビルに短刀を突き刺し、突き刺した短刀を利用して

何とか体勢を立て直し、飛んで来るビルの上へ乗ったは良いが

 

「石片!?」

 

クソ! あまりにも攻撃が苛烈!

あのデカいビルだけじゃ無く、他にも細かい石が飛んでくる!

 

「く!」

 

いくつもの攻撃を前に、流石にこれ以上は近付けない。

このままでは不味い! 浮遊してる相手というのは実に厄介だ!

 

「流石に正面からでは近付けないか…」

 

流石にこのままだと不味いと判断した以上

このまま真っ直ぐ走ることは不可能だろう。

一時的に地上に降りて、対策を考えないと不味い!

 

「いや、だが…」

 

僅かにだが、このビルの動きが落ちてきてるのに気付いた。

本当に最初と比べればでしか無く、気付けないほどだ。

だが、僅かに……僅かに動いてるのに気が付いた。

 

「まさか……」

 

誰がやってるのか分からないながらも可能性に気が付く。

これだけの事が出来る魔法少女……いや、魔法少女の魔法は多種多様。

だが、最も可能性が高いと感じたのは……七美と久実の魔法だった。

 

「あ、足場を……足場を維持させるんだ……そうすれば!」

「うぅうう! も、戻ってぇ!」

 

私の予想通りだった、久実と七美の表情が明らかに変化してる。

あの2人だ、あの2人の魔法でこのビルの動きを僅かに遅れさせてる。

あの2人が同時に魔法を最大限に扱う事で僅かに動きを緩められる。

恐らく、七美はいくつもの糸をビルに繋げ

更に久実の魔法でより一層、戻す力を強化してるんだ。

 

だから、七美の糸でも辛うじて動きを緩められてる。

なら、この千載一遇のチャンス、私が無下には出来ない。

限界突破だ、私が確実に大きな一撃を叩きだしてみせる!

 

「うおぉおお!」

 

身体能力と動体視力を同時に限界突破の魔法で強化する。

第六感も同時に強化し、周囲の動きを手に取るように把握するんだ!

 

「ここで退けない!」

 

いくつも飛んで来る石片を、召喚した2本の短刀で弾く。

七美達の時間稼ぎで、このビルの落下速度はかなり低下してる。

 

「時間を稼ぐなら手伝う!」

 

色々な魔法少女達がビルの動きを緩めてくれている。

何故彼女達は私達に手を貸してくれようとしてるのだろうか。

 

「ありがとう、でも、どうして?」

「もう、あの人に賭けるしか無いから。

 うわさには聞いてる……滅茶苦茶強い魔法少女。

 ここを守る為にも、協力するしか無いから!」

 

飛びかかってくる数多の使い魔達。

1度だけで無く、同時に何体も何体も厄介な。

だが、今の私なら避ける事が出来る、避けきることも出来る!

 

私が出来る、最大最高の能力!

無茶苦茶な限界突破だが、やるしかない!

出し惜しみは出来ないからな……チャンスを作らないと駄目だ。

私1人では、恐らく火力が足りないが……

私の全力を一撃でも叩き込めれば……きっと戦況は動く!

 

「退け!」

 

飛び込んでくる使い魔達を斬り裂き、同時に蹴り飛ばす。

複数同時に仕掛けてくるなら、こっちも複数同時に攻撃すれば良い。

私にはそれが出来る! 石片と使い魔達を同時に捌き、対処出来る!

 

「なん! うわ!」

 

ワルプルギスの夜が手をこちらに向けると同時に

ドス黒いエネルギーの様な物がこちらに飛んで来た。

不意に飛んで来た攻撃。念力によってビルを飛ばしたり

石片を飛ばすだけだと思ったが、やはり直接攻撃もあるか。

だが、あの攻撃は……まるで呪いの塊のように感じた。

 

それは、呪いによって生じた魔女の攻撃であれば当然だろう。

だが、この呪いは今まで戦ったどんな魔女よりも強く濃く感じた。

あのイヴが身に纏ってた数多の穢れ。

その穢れを1点集束させた攻撃のように感じた。

 

あの魔女、名が知れ渡ってると言うだけありまさしく圧倒的!

自分自身の身に宿る穢れさえ……自在に操れる魔女か!

 

「だが、怯む暇は無い!」

 

集束された呪いを避ける。強力な攻撃ではあるが

1点集束させたのが理由なのか、回避は容易だった。

1番助かったのは、操ってるビルが巨大だったと言う事だな。

このビルが小さければ、避けきれなかっただろう。

擦らせるように避ける今年か出来ないだろうが

 

距離を取って避けたこの瞬間でさえ感じた禍々しい気配。

あれを微かに避けるだけで避けていれば、

今の私では一気に動きが鈍くなっただろう。

 

「ち、良い連携だが遅い!」

 

避けて体勢が若干崩れた瞬間に使い魔達が3体同時に飛んで来る。

だが、使い魔達は私が即座に展開した短刀により串刺しになる。

あまりにも直進的だからな、対処は出来る。

 

「はぁ!」

 

再び体勢を立て直し、ビルの上を走りだした。

ワルプルギスの夜は未だに笑っている。

だが、あと少しだ! あと少しで私の距離!

ビルが確実に動いてきてる! ワルプルギスの夜へ向って!

 

「いっけー! 梨里奈ちゃーん!」

「ここで!」

 

一気に飛びかかり、斬りかかろうと足に力を入れた瞬間だった。

虫の知らせという奴か、私は一気に震えるような恐怖を感じる。

嫌な予感というのは、ほぼ確実に当ると言う事を私は知って居る。

この感覚は、間違いなく!

 

「チィ!」

 

自分自身の感覚を私は信じる事にした。

ワルプルギスの夜へ飛びかかるのは駄目だ。

私が飛んだのは側面、ビルから飛び降りるように飛んだ。

同時に私がさっきまで立っていた場所が火の海になっていた。

あの巨大なビルが溶ける……コンクリートや鉄筋で出来てる

普通の魔女であれば破壊なんてする事は不可能なほどの建造物が

一瞬で……溶けた……

 

「そんな……そんな!」

 

この光景は地上で私の動きを見ていた魔法少女達に

激しい恐怖を与えるには十分だったのだろう。

私だって恐怖してしまう、こんな光景を目の当たりにすれば。

 

「不味い!」

 

だが、私は驚いている暇なんて一切ないと言える。

既に、私の状況はかなり不味いのだから。

ワルプルギスの夜の攻撃を避けたは良いが

既に使い魔達に完全に包囲されている。

 

これが地上であれば何ら問題は無いだろう。

だが、今は上空、地に足は着いていない今の状況で

自由に浮遊できる相手に完全包囲されているのだから。

 

立体的に完全に包囲されて居るだなんて冗談じゃ無い。

正攻法で避ける事が……いや、諦めるな!

これは千載一遇のチャンス! もはや次はないだろう!

この場であの化け物に一撃を喰らわさなければ状況が動かない!

 

今、私はその一撃を与えられる距離に居る!

この状況で私が諦めるわけにはいかない!

私は諦めない! 私は諦めが悪いからな!

 

何、まだ攻撃されるかも知れないと言う場面でしか無い。

攻撃が当ったわけでも無く、攻撃が来ると確定してる程度だ。

ならば、避ければ良い! 対処すれば良い!

諦めずに食らい付け! それが、私に出来る最大の抵抗!

 

「こい!」

 

ワルプルギスの使い魔達が同時に動きを変え

一斉に私に向って突撃を仕掛けてくる。

先ほどまでと同じ様に、姿を変えての単純な突撃。

単純故に本来であれば避けられない攻撃だ。

 

全方位からの一斉攻撃、避けきることは出来ないだろう。

だが、避ける事以外ならどうにでも出来る!

 

「はぁ!」

 

飛んで来る使い魔達の射線上に短刀を展開して迎撃する。

だが、頭上と正面から突撃してくる使い魔には何もしない。

頭上からの攻撃は受けるのでは無く、避ける事を選択した。

 

この方法を取るために、私は正面の使い魔を放置した。

正面の使い魔は避けにくくするためか、

周りよりも速く突撃してきていた。

それを利用させて貰う。

策士策に溺れる、使い魔達に知能があるかは知らないが

仮にあるのであれば、その知能、利用させて貰う!

 

「そこ!」

 

僅かに速く突撃してきた使い魔を蹴り上げる様に攻撃した。

この時、使い魔を蹴った勢いを利用して体を回転させる。

蹴り上げたのは、この時の勢いを調整するためだ。

 

そして、この蹴り上げ体勢を変えたことで

頭上から飛んで来た使い魔の攻撃が逸れ

体当たりを再び仕掛ける為か使い魔が姿を戻す。

 

「これで私の刃が届く!」

 

姿を元に戻した使い魔を足場にして

私は即座にワルプルギスの夜へ向かい飛び込む。

一瞬だけ、自身の身体能力を更に突破!

 

「一撃は確実に食らわせる! その為にここまで駆けた!」

 

私の巨大化させた刃が、ワルプルギスの夜を斬り裂いた。

だが、手応えが軽い! 本体と思われた物体への攻撃だが

空洞……まさか、本体じゃ無いのか!? なら、本体は何処だ!?

あの人型が本体じゃ無いなら……残るのはあの歯車のみ。

 

やれるか? いや、やるしかない!

幸いというか何と言うか、ワルプルギスの夜の周りには

あの使い魔達が飛び回っているのだから。

まるで主役を飾り付けるかのように使い魔達は

ワルプルギスの夜と共にある。

 

あたかも演劇だ……だが、今宵の主役は魔女では無く

私が務めさせていただこう。私もピエロ

演技は大の得意だからな。さぁ、やるぞ!

 

「見せてやる、ここで……終わらない限界突破を!」

 

周囲に浮かぶ、何千体もの使い魔達。

彼女達は踊るかのようにワルプルギスの夜の周囲を飛び交う。

主演たる彼女を邪魔しようとする不純物を排除する為か

彼女達は私への攻撃を狙っているが、それが命取り。

 

「二撃目!」

 

最初の一撃よりも加速した一閃がワルプルギスの夜を再び裂く。

 

「三撃目!」

 

更に加速した一撃が再度ワルプルギスの夜を引き裂いた。

その傷跡は二撃目よりも深く広い。

 

「四撃目!」

 

私が足場にした使い魔が粉微塵に消し飛んだ。

同時に更に深い傷跡がワルプルギスの夜に付く。

 

「五撃目!」

 

素早い連続攻撃、止めどない加速。

一撃を受ければ受けるほど、彼女が受ける傷は深くなる。

最初は首辺りから、少しずつ少しずつその深い傷は上体へ。

いや、彼女の場合は下半身になるのか? 逆さまだからな。

だが、もしあの歯車が本体であるというのであれば

上がってきている、と言うのが正しいのだろうが。

 

「六! 七! 八! 九撃目!」

 

私の攻撃は加速する、もはや魔法少女だろうとも

肉眼では追えまい。動体視力を限界突破してようやく見える速度。

そして、既に会場は熱気に満ちあふれているだろう。

だがまぁ、あまりにも速すぎて何も見えてないかもしれないがな。

 

「そして、最後!」

 

ワルプルギスの夜よりも上空へ私は辿り着くことが出来た。

そしてフィナーレ、最後を締めくくる一撃だ。

舞台の最後にしては、大分派手だが、それも一興だろう。

 

「これで堕ちろ! 極限突破だ!」

 

最後、私は私に出来るあらゆる手段を用いての一撃。

巨大な刃を歯車に叩き込み、その柄を全力で蹴り落とす。

金属が強くぶつかる、あまりにも激しく巨大な高音が響き

彼女を力強く大地へ叩き付けた。

 

彼女だけが立っていたはずの上空という舞台。

彼女はその舞台より叩き落とされた。

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