魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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終わらない限界突破

彼女の歯車からピシッと言う僅かな音が響く。

同時に歯車の中央が僅かにひび割れた。

だが、完全に木っ端微塵になると言うことは無い。

火力不足……私だけの力では、やはり火力が足りない!

 

「だが!」

 

ワルプルギスの夜を叩き付けた巨大な短刀を踏み台にし

私は後方へ1度回転しながら後方に跳び下がる事にした。

だが、この下がる瞬間に私は上空へ比較的巨大な短刀を放り投げた。

 

無論、短刀であると言う必要は無いのだがな。

私の魔力で作った、巨大な得物だ。

本数は3本。流石にこれ以上は同時には出せなかった。

 

勿論だが、ただ投げただけで火力不足が解消することは無い。

落下のエネルギーだけではあまりにも貧弱。

だが、もはやこの舞台は私1人の舞台では無い。

 

あまりにも異常な光景を前にしてるはずだが

既に行動している魔法少女が居た。

私が投げた短刀の軌道が不自然に動き出し

一斉にワルプルギスの夜へ向って進んでいく。

 

刃を先端とし、3本同時に1点へ飛んでいく。

彼女を叩き落とした最初の一撃。

私が叩き込んだあの場所へ一斉へ進んでいた。

 

「これで砕けば!」

 

既に七美は私が投げた短刀に糸を繋いでいた。

それも1本では無い、自分が扱える糸を同時に繋いでる。

投げた短刀の先端に3本の糸を繋ぎ、一斉に大地へと繋ぐ。

 

糸は繋げようと思った対象に繋げるのか

はたまた、七美の位置からであれば

ワルプルギスの夜で隠れているはずの大地に

あの糸を繋げられたのか。

 

「そうだ! 唖然としてる場合じゃ無い! 叩き込むのよ!」

「もうなんか、規格外過ぎるわね。でも、チャンスは今よ!」

「うん、一斉に仕掛けよう!」

 

大地へ叩き付けられ、全ての魔法少女達の射程内になった。

いろは達が一斉にワルプルギスの夜へ攻撃を仕掛ける。

 

「ふふ、まだ終わらないぞ……全力で叩かせて貰う!」

 

今度はワルプルギスの夜が投げ飛ばしていたビルを足場にする。

使い魔を足場にしてたときよりもしっかりとしてるからな。

さっきよりも容赦ない踏み込みで斬り裂く!

 

「ふん!」

 

他の魔法少女達の攻撃もあるが、隙間を狙えば叩ける。

何度も何度も何度も何度も! 終わらない限界突破!

もはや足は悲鳴を上げてるが、ここで手は抜けない!

 

「うおぉおお!」

 

何度も何度も加速して、私の刃はワルプルギスを斬り裂き続ける。

浮上しようとしても無駄だ、ひっくり返ろうとしても無駄だ

動こうとしても無駄だ、動く前に叩き潰す!

 

「これで! うっぐぅらぁぁああ!」

 

足の骨が砕けたのが分かった……やはり無茶だが……

ここで、退くわけには行かない! これが千載一遇のチャンス!

ここで倒しきらなくては、ここで仕留めきらなくては!

奴のテリトリーに逃げられたら、もはや勝算はないだろう。

ここで仕留めきる事が最善であり、最大の手立て!

 

「梨里奈ちゃん今だよ!」

 

七美の言葉と同時にワルプルギスの歯車が更に大きく割れた。

だが、同時に私が展開していた短刀が砕ける。

しかし、そのタイミングはまさしく完璧と言える。

あの中心を狙える! 確実に砕き引き裂ける!

 

「梨里奈さん!」

「届け……届け! 私の……私達の牙!」

 

最後の一撃になる、私の本能がそう告げた。

既に私の左足は砕けてるが、まだ右足は残ってる。

この一撃で……終止符を! 自分でも不思議に思ってる。

 

今までの中で最も力が溢れ出しているのだから。

色々な思いや祈りを感じる。応えなくてはならない!

最後の一撃、私が蹴った大地には巨大なクレーターが出来ていた。

同時に自分自身の足が砕けたのを理解できた。

 

だが、私の体は動いてる。この一撃を届けてみせる!

私が手に握っている刃は、もはや私だけの武器では無い。

自分でも信じられない位に暖かく、力強い刃。

 

「届けてみせる! この一撃を!」

 

私の刃が光り輝き、自らの背に強い温もりを感じた。

まるで翼でも生えてるかのように暖かく

私の体は限界突破の魔法よりも圧倒的に自分の限界を越える。

本来であれば、私はこの速度には付いていけなだろう。

 

意識を保つどころか、体が持つはずも無かった。

だが、この瞬間、私は砕けたはずの手足さえ治ってると感じた。

 

だからこそ、最後の一閃は、自分でも認知できないほどに速く

一瞬の間にワルプルギスの夜をズタズタに引き裂いていた。

同時に既に倒壊していた高層ビルさえもズタズタになる。

無意識だったのだろう、その一瞬、私は認知さえしてない瞬間に

私の体は何度も何度もワルプルギスの夜を引き裂いていたんだ。

 

「……あぁ、届いた……か」

 

ズタズタに引き裂かれた高層ビルを貫き

私は何度も何度も地面に体を叩き付けながら

着地とは言えない、何とも無様な格好で天を仰いだ。

 

周囲を覆っていた暗く厚い暗雲が引き裂かれた様に散らばり

四散……暖かい日の光を覆っていた暗雲は完全に消え去り

私達を包むように、暖かい日の光が伸びてきた。

 

歓喜のあまり……天に手を伸ばそうとしてみるが

残念だ、腕が動かない……と言うか、私の腕は付いてるのか?

……あぁ、付いて……無い。

 

あまりにも無理をしすぎたのだろう……

本来、腕があるべき場所には何も無くなってた。

私の右腕が何処かに吹き飛ぶとは……絶望的な光景だ。

自らの両足だって、もう動かせないほどの損傷だ。

 

ふふ、本来なら……私はきっと生きてないだろうな。

だが、生きている……誰かの希望に守られたのだろう。

あの瞬間、私を包み込んだ数多の希望に。

 

「……は、はは」

 

足も動かず、腕も動かない。四肢が動かせないとは不便だな。

無理矢理に体を動かしすぎた……

 

「梨里奈お姉ちゃん!」

「……久実」

 

最初に私を見付けてくれたのは久実だった。

 

「ひ、酷い怪我! 大丈夫!?」

「……だ、大丈夫じゃ無いかな…」

「む、無茶するから……い、急いで手当てするよ!」

「あはは、で、出来るか?」

「う、うん、任せて! わ、私の魔法は再構成だから!」

 

そう言って、彼女は私の体に触れる。

既に何処かに行ったはずの腕が何故か再構成されていく。

 

「う、うぅ……うぅ!」

 

だが、久実もかなり無茶をしてるようだった。

彼女の表情がドンドン変わってる、やはり消耗が激しいのか。

 

「う、うぅ、な、何とか形は……で、でも」

 

確かに形は戻ったが、動かすことが出来ない。

再構成だけでは流石に完全に直せないのかもな。

 

「……私もやる」

「や、弥栄お姉ちゃん!」

「弥栄……」

「大丈夫、もう殺そうとはしないよ。

 今回、殆ど何も出来なかったし……

 少しくらいは訳に立ちたいから」

 

そう言って、弥栄が私の体に触れる。

 

「うっぐぅ、す、凄い消費する……き、怪我が酷すぎる!」

「す、済まないな、怪我というか反動というか…」

「ど、どうして意識保てるの…? わ、分かる。

 こ、この消耗は……し、死人を蘇生させるような…消耗……

 こ、こんなの、ふ、普通は意識なんて保てない……」

「あ、あはは、無理しすぎてな……痛みは無いんだ」

「本当……どうしようも無く馬鹿だね…」

 

彼女は疲労に顔を歪めながら、私の回復を続けてくれた。

結果、私は奇跡的に手足を失わずに済んだ。

正確には1度失ったが、取り戻せたというのが正しいだろう。

 

「ありがとう……お陰で助かったよ」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

2人とも疲労に顔を歪めていた。

 

「梨里奈ちゃんよ、良かった……」

「七美……ふふ、やったな」

「……うん!」

 

数多の希望が数多の絶望に勝利した瞬間だ……

あぁ、七美……私はようやくお前の期待に応えられた。

だが……その言葉はまだ伝えられない……

もう、私は意識を保てない……

目を覚ました後、伝えさせてくれ……

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