さて、幸せな時間を謳歌するのはひとまずはこれまで。
七美達はやちよさんの力試しのためにいろはの妹と共に
課題を達成している最中だが、私はそれには参加しない。
理由は単純で、やるべき事が私にはあるからだな。
ひとまず、いろはに教えて貰った場所へ移動する。
「ここだな、マギウスの」
「ん? 梨里奈さん、どったの?」
「魔法少女の細かい秘密を聞こうと思ってな、
魔法少女の呪縛を解くためにも情報は必須だ」
「なる程、協力してくれるんだね」
「勿論だ、やると決めた以上はやり遂げるさ」
3人が作り出した自動浄化システムの話は軽く聞いた。
回収の力、具現化の力、そして変換の力。
現状、分かっている流れとしては
ういが回収の力で魔法少女達の穢れを集め、
灯火が魔法少女が扱える魔力に変換し
最後にそのエネルギーをねむが具現の力で
実体化させ宇宙に送り出すというもらしいな。
事実、彼女達のこの行動で神浜は魔女化が無い。
だが、規模が少々狭すぎるというのも事実だろう。
全ての魔法少女を救うには神浜だけで無く
地球規模でこのシステムを構築しないと駄目だ。
だが、既にこの試みが失敗してるのも分かってる。
この行動の直後、ういが穢れを過剰に溜め込みすぎて
2人の変換速度が追いつかなかったと聞いた。
その際にアリナに協力を仰ぎ、アリナが被膜を作りだし
ねむはストーリーの具現化という形でういの魂を世界から切り離し
機能を奪われたキュゥべえの中にその魂を封印したそうだ。
正直、便利な能力ではあるな、汎用性の塊と言える。
元より、彼女達3人の魔法は魔法少女を解放するために
キュゥベえに願い、得た力なのだから当然なのかも知れない。
問題は回収の手段だな……ドッペルを放つ必要がある。
この点が魔法少女を解放するために対策しないと駄目な部分だ。
七美の言葉にあった通り、行きすぎた力は戦争に利用されるだろう。
うーむ、そう考えると何ともハードルの高い問題だろう。
「一応、私達の目指したシステムの話はしたよね?」
「あぁ、聞いてる。そのシステムはかなり出来上がってると思う。
しかしだ、聞けば聴くほどに感情というのは凄いと分かるな」
「そうだね、キュゥべぇが狙うくらいだし」
エントロピー、宇宙の崩壊。
2人からはかなり重要な話を聞かされた。
キュゥべぇの狙い。宇宙の存続だとかあまりにも規模がな。
だが、分かる事とすれば感情という物は
宇宙の延命が出来る程に巨大なエネルギーだと言う事
奇跡さえ起せるほどに、強大なエネルギー。
そして、因果律、重要そうな話が多すぎるな。
まずエントロピー、解説としてはこうか。
外部からエネルギーが流入しない状態では、
エントロピーは高くなる一方で、どれだけ待っても勝手に低くなることは無い。
これを熱的死と言いう。
例えば氷だな、氷。
室温に置いた氷水は、時間経過とともに熱が水から氷に移動して氷が融ける。
これはエントロピーが高くなった状態であると言えると考えられる。
この融けきった状態から、水の一部の熱が勝手に逃げて氷ができることはない。
これを熱的死と言う。
再び氷を作るには冷凍庫に入れる必要がある。
つまりは外部からエネルギーを得る事が必要になる。
そして、その冷凍庫は電気という外部エネルギーを利用してる。
つまり、エントロピーを低くするには
必ず外部からのエネルギー流入がなければならないと言う訳だ。
外部からのエネルギーが無ければ確実に熱的死へと辿り着く。
この事から、ある1つの可能性が浮かぶ。
それが外的エネルギーを得る事が出来ない
要は、それ以上の果ての無いと考えられてる空間、宇宙。
宇宙には果ても無く、外的エネルギーも無い。
だから、外的エネルギーを得られずに熱的死へ辿る。
だが、とある理論も存在してる。それはブレーンワールド理論だ。
ブレーンワールド理論では、宇宙はこう考えられてる。
宇宙は高次元時空に浮かぶ膜であり、我々の宇宙の他にも、
いくつも同じような膜宇宙が存在していると考える。
ほとんどの素粒子は膜宇宙の膜に固定されているため、
この宇宙から飛び出すことはできないのだが、
このうち重力子のみは高次元時空や他の膜宇宙と行き来できるとされる。
これがブレーンワールド理論。突拍子も無い話だが
この理論が正しいのだとすれば、私達が過ごす宇宙は
1つの膜であり、他の宇宙達も存在してる為重力が生じる。
その為、外的エネルギーを得る事が出来るため
エントロピーを低くすることが出来る為、熱的死はしない。
だが、そうなるとその膜達が存在している空間の果ては?
同じ様に構成されてるのであれば、その果ては? と
考えれば考えるほどに沼にはまっていく理論ではある。
それは、人の叡智が遠く及ばない宇宙という
あまりに別次元で広範囲の世界である為だ。
まぁ、そう考えていけば行く程に最終的に辿り着くのは
やはり神という存在なのだろうが、これも辿れば
神というのはどうやって生まれてるのか? と言う疑問に至る。
要は、答えの無い問題と言う事だろうな。
「全く、規模がデカい話が多いなぁ」
「因みに、解説とか必要かな? ピエロちゃん」
「必要無い、大体理解してる。エントロピーの理論も
ブレーンワールド理論も把握はしてる」
「頭良いね、やっぱり」
「お前が言うか?」
「あはは、まーねー」
だが、キュゥべぇが私達の感情を集めようとしてると言う事は
奴らはこのブレーンワールド理論を否定してると言えるのか。
外的エネルギーが得られないから自分達でエネルギーを作り出し
外的エネルギーとして宇宙の熱的死を避けようとしてると分かるしな。
「少なくとも、現状私達が知ってる情報で大いに重要なのは
感情という部分だな、気持ちと言った方がメルヘンチックか」
「そうだね、私達が得ている情報で最も重要なのはそこだね」
「それともうひとつ、あの時キュゥべぇが言ってた因果。
恐らく、それも魔法少女の才能に大いに関係してる」
「ほかの人物に与える影響とかか?」
「そうだね、そう言う解釈だと思うよ」
そう考えてみると、マギウスのメンバーにアリナが居たのは
ある意味、必然だったと言えるのかも知れないな。
多数の人達の気持ち、心に多大な影響を与える事が出来る芸術家。
そして、同じく数多の人々の心を動かせる
小説家の金の卵。
天才的な知識を持つ天文学者か。
全員歴史を動かせる程の天才揃い…
む? 成る程、そうか…だから強かったのか。
因果が魔法少女の力に多大な影響を与えるなら
歴史を動かせる程の天才達は強い。
だが、ういにそれほどまでの才能がないため
マギウスの計画が失敗した…その可能性がある。
ならば、私が異様に強いのもそれが理由か?
だとすれば、努力をしなくてはな。
「魔法少女の実力も、これに影響してると思うよ。
勿論、君もその可能性に辿り着いてると思うけどね」
「あぁ、お前達マギウスが強い理由も分かった」
「で、あんたが強い理由もそれに当るってワケ。
相当の才能だしネ」
「私達よりも強いって事は、案外将来凄い事になるのかもね~」
「今現在でも、相当な影響力があると思うけどね」
実際、私は色々な人物から憧れの感情を抱かれていた。
それが因果とやらに介入するのであれば
私が異様に強かったのも納得出来るだろう。
「で、これらの情報からピエロちゃんはどうやって解決する?」
「まだ決断は早いとしか言えないな」
「でも、神浜は良いとしても、他の地域は早急な決断を求めるよ?」
「だよな」
今、神浜は消えたイブが自動浄化装置として機能しているため
未だに魔女化が起こらない状態ではある。
だが、他の地域ではそうとは言えないだろう。
それだけで無く、既に魔女化してしまった魔法少女も居る。
彼女達の対処もしないと行けないと考えられる。
後はエントロピーとやらを取得する手段だな。
2人の話から、キュウべぇの狙いがエントロピーの確保。
宇宙が熱的死に至るのを防ぐ為に感情のエネルギーを利用し
外部からエネルギーを与え、最悪を防ぐ為に動いて居る。
あまりに非人道的ではあるが、恐らくそれが最も効果的だったのだろう。
もしかしたら、奴らには感情が無いのかも知れないな。
感情は邪魔になるケースも多い。効率を求め続ければ
感情など不要だと感じる可能性もあるだろう。
「だが、情報を収集するしか無いのも事実だろう。
キュゥべぇを見付けて、色々と問い詰めないとな」
「あいつが僕達の疑問に答えてくれるとは思えないけどね」
「でも、聞くしか無いだろう。何、奴らが効率のみを求めるのであれば
奴らが魅力的だと思う提案さえ出来れば良いんだ。
あいつがどれだけ私達の能力に期待してるかによるがな」
「要するに、協力関係を築こうって事?」
「そう言う事だ、私達の知識に利用価値があると奴らが感じれば
あいつらも私達に協力してくれるだろう。
効率の亡者だとすれば、私達の知識を利用できるのは魅力的だろう」
ひとまず、今できることは、あいつを探す事だろうな。
とは言え、きっと居るだろう。恐らく1匹だけでは無いしな。
複数個体が居るはず。なら、あいつらと言った方が正しいか。
効率を求める生物だというのであれば、人員を割くのは当然だろう。
奴らにとって、私達という存在がどれだけ利用価値があるのか
そこまでは分からないが、相当重要視してるのはきっと事実だ。
そうじゃ無ければ、わざわざ足を使って走り回ったりはしないだろう。
探していると言う事は、価値があるからだからな。