千花七美を蘇らせてくれ。
私が突如現われたキュウべぇに頼んだ奇跡。
奴は私の願いを聞き、千花七美を蘇生した。
「梨里奈ちゃん……私」
「七美……」
だが、七美を蘇生したことで生じた問題。
それは、彼女から私以外の居場所が消失したことだった。
彼女が死んだと言うことを知ってる姉妹達と両親は
彼女を幽霊として見て、決して彼女を受入れなかった。
だが、姉妹達だけは七美の事を受入れる。
しかし、それだけではあまりにも居場所が少なすぎた。
結果、彼女まで願いを叶え、魔法少女となった。
彼女の願いは自分が死んだという記憶を
私以外から奪って欲しいという願いだった。
その結果、彼女が死んで蘇ったという事実を知ってるのは
私だけであり、彼女はいつも通りの生活を送る。
「七美、大丈夫か?」
「うん、ごめんね……いつも助けて貰って」
「気にするな、私は強いからな」
私達は2人で魔女を狩り、お互いにグリーフシードを別ける。
私の魔法は治癒の魔法ではあるが、魔力の扱いに秀でてるため
ただの魔女程度では相手にはならない。
だが。七美の魔法は記憶操作であり
そこまで魔力の扱いに秀でているわけでは無い為
あまり上手くは戦えていないが、協力して戦ってる。
「でも、魔法少女になって良かったかもね」
「そうかな……?」
「だって、お陰で私、梨里奈ちゃんの役に立てるし!」
「……かもね」
七美の魔法で私が完璧な人間であると言う記憶を消して貰った。
お陰で、私は何処でも完璧を演じないと行けない道化師では無く
誰とでも十分に会話が出来る、普通の少女になった。
「ねぇねぇ、梨里奈ちゃん、今度ラーメン食べに行こうよ!」
「そうだね、一緒に行こう」
「じゃあ、七美もだね!」
「うん!」
堅い口調で話をする必要も無く、満点を取り続ける必要も無い。
私は完璧じゃ無いんだから、失敗したって大丈夫。
そう思えるようになって、何だか重荷が何処かへ行った気がする。
でも、ちょっと勉強ばかりしてた影響でやっぱり点数は高いけどね。
「96点かぁ、惜しいなぁ」
「あ、あはは、さ、流石は梨里奈ちゃん……
わ、私は40点……あ、赤点ギリギリ回避!」
「今度教えてあげようか?」
「お! じゃあお願い!」
「ならなら、私達にも教えてよ-!」
「うん、分かったよ、皆に教えてあげる」
普通に接することが出来るって言うのは、とても嬉しかった。
高い点数を取れば、父さん母さんも褒めてくれる。
私が完璧じゃ無いと駄目だったときにはこんな事は無かった。
だけど、私達が魔法少女である以上……平和は続かない。
「弥栄! 久実!」
「く……魔女の結界に!」
「い、急いで探そう!」
「うん!」
急げ! 2人が魔女の結界に飲み込まれた! 急いで見つけ出さないと!
このままだと、あの2人が死んじゃう! それは駄目だ!
絶対に助け出す! 私達は二手に分かれて血眼になって探す。
この迷宮のように入り組んでる結界の中で
魔女の本体を見つけ出すだなんて、とても困難だ。
だけど、探さないと不味い! 2人を見つけ出さないと!
「何処に!?」
「い、いやぁあぁあ!」
「この声、七美!? 何処に!?」
七美の悲鳴を聞いて、私は周囲の使い魔を倒しながら
その叫び声が聞えた場所へ走った。
そこに居たのは、血まみれで倒れている2人の姿。
「そ、そんな……そんな、そんな……」
「弥栄、久実……」
助けられなかった、一か八かで治癒の魔法を使っても
2人が蘇ることは無く、息1つしてない。
そんな事って……こんな事って……助けられなかった。
わ、私が弱かったから……も、もっと強ければ……
「う、うぅ、う、うぅうう!」
「七美!? どうしたの!?」
「こ、心が……はぁ、はぁ……い、いぐぅうぅ!」
「し、しっかりして!? ねぇ!」
「だ、駄目……あ、あぁああぁあ!」
「七美……え……七美……?」
唖然とした、七美のソウルジェムが穢れきったとき
ソウルジェムが砕けて、そこから魔女が……ど、どう言う…
「ぐがぁぁあああ!」
「うぅう!」
唐突に現われた魔女が大きな悲鳴を上げると同時に
強力な衝撃波と共に魔女の結界が砕け散りった。
「ど、どうして……」
「深い絶望でソウルジェムが濁りきったようだね」
「キュウべぇ……どう言う」
「驚くことは無いよ、これは仕方ない事なんだ。
君達はいつしか魔女に変化するんだ。
だから、君達の事を魔法少女と呼んでる。
いつか魔女になる君達の事は魔法少女と呼ぶべきだしね」
「それを……それを知ってて……何で何も!」
「聞かれなかったからね」
「この外道が!」
「さて、梨里奈。僕と話をしている余裕なんてあるのかな?
今、君の目の前には君の親友だった物がいるんだよ?
君の手で終わらせてあげた方が良いんじゃ無いかな?」
「ゲスめ……後悔させてやる。でも、でも今は……今は!
七美……そ、そんな醜い姿で生きたくは無いよね……
私だったら、絶対に……嫌だ、だから、にげ……ない。
逃げない……逃げてたまるか……逃げない!」
私は強かった、とてもとても強かった。
例え魔女になってしまった七美と戦ったとしても
私はボロボロになりながらでも彼女を追い込めた。
「うぅ!」
あと1歩で届く、確実に魔女になった七美を……
こ、殺す……この一撃で、殺してしまう。
だ、駄目だ、躊躇うな……躊躇うな!」
「いぐぁ!」
駄目だ、届かない……七美の魔女から無数に生える触手。
数が多すぎる。周囲の物全てを拘束しようと動く。
「近付きすぎると弾き飛ばして距離を取ると掴もうとする。
……躊躇ったら駄目だ……躊躇えない!」
躊躇ってしまえばあの触手で弾き飛ばされてしまう。
何度も何度も経験した……だけど、どうしても躊躇う。
あと少しなのに……治癒の魔法で傷を癒やしてもう一度。
今度こそ……今度こそ、その醜い姿から解放してあげる…
「う、うぅ……ごめん、七美」
激しい攻撃を変え潜り、ようやく七美の魔女へ辿り着く。
私の一撃は今度こそ七美の魔女を貫く。
同時に七美の魔女は叫び声を上げ、消滅した。
「……ごめん、ごめんね……七美」
七美を倒したことで、私は力無くその場に座り込んだ。
同時に七美の魔女が居た場所に動かなくなった七美の姿が。
「あ、あぅ、う、うぅうう!」
い、いけ、ない……ち、力が抜けて……
い、急いでグリーフシードを……七美の……
だ、駄目だ……体が、動かせない…
「君も限界みたいだね、仙波梨里奈」
「キュウ……べぇ…」
「君が放出するエネルギーはしっかりと利用させて貰うよ。
これも宇宙が存続するためには仕方ない犠牲なのさ」
「キュウ……べぇこ、の、外道……」
「さぁ、時間だね。きっと君は素晴らしい魔女になるよ。
もはや誰でも倒すことが叶わない、最強の魔女に。
ワルプルギスの夜さえ凌駕する、強力な魔女へ」
「う、うぐぅうぅうううぁああ!」
解き放たれた私の魔女、何だか元気そうなピエロだった。
周りが私に期待する、強い魔女だと期待する。
だから私は強くなる。誰かが私に期待する。
誰も倒せない魔女だと、だから私は応えましょう。
誰にも勝てない最強の魔女となって。
誰かが私に期待する、世界を滅ぼす魔女なのだと。
だから私は滅ぼそう、この小さな世界を。
誰かが私に期待した、宇宙を滅ぼす魔女なのだと。
だから私は応えましょう、この宇宙を滅ぼして。
「……う、うぅうう! はぁ、はぁ!」
ゆ、夢か!? お、驚いた……随分と恐ろしい夢だ。
妙にリアリティーがある……そんな夢。
あれはもしかしたら、私の願いが違ったら…?
いや、そんな訳無いか、考えすぎだ。
「うー、梨里奈ちゃん? どったの?」
「な、七美……い、いや、ちょっと恐い夢を見てな」
「そうなんだ、奇遇だね、私も何だよね」
「どんな夢だった?」
「私が魔女になっちゃう夢……
その後、梨里奈ちゃんに倒されちゃった。
あはは……ねぇ、梨里奈ちゃん」
「何だ?」
「もし、私が魔女になったら殺してね?」
「……」
「そして、梨里奈ちゃんは魔女にはならないでね?
だって、梨里奈ちゃんが魔女になったら
きっと誰も止められないし」
「言い過ぎだろう……だが、かも知れないな。
……でも、そうならないために頑張ろう」
「……そうだね、頑張ろう」
「あぁ、七美。一緒に頑張ろう」
恐ろしい夢だったが、決意も出来たと言える。
やはりやり遂げないといけないことだ。
この魔女化を食い止めないとな。
魔法少女達が皆持ってる宿命。
必ずこの宿命を終わらせないとな。