魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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唐突な襲撃

魔法少女の解放。

あの騒動の後はそればかりを考えてる。

 

そのせいか、時間がすぐに過ぎてしまい

今はテスト期間に入り、そして終わった。

他にも神浜マギアユニオンが正式に結成されたしな。

時間が経つのがなんと速いことか。

 

「はい、梨里奈さん満点です」

「ありがとうございます」

 

いつも通り、少し緊張しながらテストを受け取とる。

正直、満点を取れて安心してるよ。

私は結構色々と背負い込みすぎてて

テストで良い点を取れなかったらどうしようとか

そんな事を思ってたわけだからな。

 

「いやぁ、やっぱり安定して満点を取るね」

「勉強もしっかりやらないと駄目だからな」

「でも、なんでそんなに色々出来るか素直に疑問だよ。

 今、あの3人と一緒に頭を悩ませてるんだろ?

 それなのに、どうしてそこまで出来るんだ?」

「何度か言った気がするが、勉強は流れさえ理解すれば

 それだけで大体は解決出来るんだ」

「あ、あはは、梨里奈ちゃんは本質を理解してるからね…

 べ、勉強の本質……」

「……七美、そっちはどうだったんだ?」

「……う、うぃ」

 

七美が見せてくれたテストの点数は40点。

……まぁ、赤点は避けたと言ったところだな。

 

「赤点回避か、十分だな」

「十分じゃ無ーい! 梨里奈ちゃんに教えて貰ってるのに

 どうしてここまで点数伸びないのかな……」

「今回のテストは難易度高かったしね……

 あたしも45点だよ、普段より低い気がする。

 平均でも50点だしね……」

「私より上じゃん……むー……

 だって、私の平均点44点……」

「何か、知らない問題が出てた気もするしなぁ」

「梨里奈ちゃんはさも当たり前の様に

 全教科満点だったけどね……」

 

そう言えば、特に気にしないで問題を答えてたが

確かに大学でならうような問題が多かったな。

 

「それって、ん?」

 

そんな会話をしていると、周囲の雰囲気が変わる。

この……禍々しい雰囲気。

何度も経験した、そんな不自然な空間。

 

「……こ、これって!」

「……馬鹿な」

「う、うわさ!?」

 

そんな馬鹿な事が……ねむ達はうわさを扱ってないはず!

この場面でうわさを扱って何かをするメリットは無い!

あり得ない、ほぼ確実にあり得る事じゃ無い!

今の3人は思い出も全て取り戻して

平和的な解決を望んでるはず……それなのにうわさを!?

 

いや、違う。違う筈だ、あの3人じゃ無い筈だ。

この状況で強行策を取ればどうなるか。

あの3人はそれ位理解してるはずだ。

 

今のマギウス3人だけではあまりにも戦力不足。

それにだ、今は感情のエネルギーを集める必要は無い。

少なくとも今はまだそのエネルギーの活用方法は不明。

どうすれば利用できるかも確定してないはず。

 

それに、私は殆ど3人と一緒に行動してた。

変な気を起そうとすれば、私が気付くはずだ。

 

「もしかして、あの3人が!?」

「いや、違う。私がずっと一緒に居たんだ。

 もし、あの3人が下手な行動をしようとすれば

 当然、私が止めるてる。

 

 それに、今はうわさを用いて感情エネルギーを集める。

 その必要は無いんだ……少なくとも、今の段階では

 そのエネルギーの活用方法は確立してないからな」

 

だから、あの3人は違うと言える。

私に黙っておく理由だって無い筈だ。

3人はきっと、私の事を信頼してくれてる。

信頼してない相手に相談なんて持ちかけないだろう。

 

「とにかく急いで対処するよ!」

「あぁ!」

 

私達は急いでうわさに対処することにした。

このうわさは何だ? 

 

「うぅ! もう最悪! 何で学校でこんな!」

「七美!」

「うわぁ! あ、ありがとう梨里奈ちゃん!」

 

数が多いな、結構なうわさの使い魔の量だ。

今まで相対してきたうわさの中でも相当な数。

こんな馬鹿な事が……

 

「うぇ!? 魔女!?」

「クソ! 何だって言うんだ!」

 

うわさに紛れて魔女まで姿を見せた。

魔女の数も多く、使い魔の数も相当だ。

うわさに魔女……結界を展開してない魔女。

七美がドッペルで友人にした魔女は結界の外で動くが

こいつらも結界の外で活動してる魔女!?

 

いや、正確にはうわさの結界の……いや、だが何だ?

うわさの結界なのか? 果たして、この結界が。

 

「急いで一般性との避難をさせないと!」

「や、止め!」

「させるか!」

 

使い魔に襲われそうになっていた生徒を救う。

こんな事になるとは……不味いぞ、これは不味い!

今まで相対してきた相手とは別格!

 

「護衛対象が多すぎる!」

「これ、大元を叩かないと不味いね!」

「だけど、この結界は相当……きっと学校全体だよ!?」

「この高等部だけじゃ無く、中等部も初等部もか……」

「中等部の方はきっとレナ達が対処してると思う!」

「あ、あなた達……そ、その姿は……」

「……出来れば、黙ってて欲しい」

 

この襲撃はあまりにも大規模すぎる。

私達の正体がハッキリとバレてしまったと言える。

だが、対処しないわけにも行かない。

 

私達がやらなければ、一体何百人の人が死ぬ?

この規模だ……それに、どちらにせよ時間の問題だった。

それが速まってしまったと言うだけだ。

 

「何なの!? 何なのこれ!?」

「止めて! 来ないで!」

「いや、いや!」

 

阿鼻叫喚、至る所から悲鳴が聞えてくる!

時間を掛けてる暇は無い!

 

「不味い、不味いよ! 対処が追いつかない!」

「この!」

 

自信の限界突破を利用し、全ての部屋を回る。

無理矢理に強引に方々を駆けずり回り

至る所に現われてる使い魔や魔女を排除する。

そのまま自身の突破をフル活用する。

 

「そこ!」

「え!? あ、あなた……」

「急いで逃げてください!」

「あ、う、うん! あ、う、後ろ!」

「させないよ!」

 

私の背後に現われた使い魔を屠る炎の軌跡。

一瞬見えたその炎が消え失せ、

その先に鶴乃の姿があった。

 

「鶴乃!」

「梨里奈ちゃん! これ、どう言う状況なの!?」

「わ、分からないが、状況が最悪なのは間違いない!」

「それは見れば分かるけど……

 でも、これってうわさでしょ!?」

「ほぼ間違いないとは思うが……」

「こっちは何とか!」

「このみちゃん! 良かった!

 じゃあ、次は3年生だ!」

「1年生は?」

「そっちは大丈夫! ももこちゃんも七美ちゃんも居るし

 それに梨里奈ちゃんがここに居るって事は

 1年生の方は殆ど終わってるって事でしょ?」

「あぁ、1年生の方は殆ど終わってる」

「なら、3年生だよ! 急ごう!」

「う、うん!」

「私は職員室の方へ行ってくる!」

「分かった! そっちはお願い!」

 

そのまま宣言通り、私は職員室の方へ駆ける。

とは言え、殆どが結界内だ。

多少の地形はそのままだが、殆どが変化してる。

だが、多少一致しているのであれば十分だった。

 

「先生!」

「うぅ……」

「あれがうわさの大元か!?」

 

一体だけ、他とは違う雰囲気の物体が居た。

魔女とは違う、タイプライターの様な姿。

恐らく、あれがこのうわさの大元。

 

あれを倒せば、この結界が消失するか?

分からないが、やらなければならない。

魔女も居るし、不安要素は大きいが

あれを倒せば敵の数も大きく減るだろう。

 

「時間があまりない、最高速で終わらせる!」

 

うわさが何かを発する前に、

私は即座にそのうわさを破壊した。

自分でも驚いている……私は今までよりも強かった。

 

「……」

 

方々を駆け回ってるときにも感じた事だが

私はワルプルギスの夜と相対してからと言う物

妙に実力が底上げされてるようにも感じた。

 

……それは、何度も経験したことではあった。

神浜に来た最初と今では私は強さが違いすぎる。

元よりそれなりに強くはあったが

今はその頃よりも遙かに強いと感じた。

 

戦えば戦うほどに、少しずつだが感じてた変化。

……その変化を今日は今まで以上にハッキリと感じた。

ワルプルギスの夜と戦った後の魔女撃破もあったが

さほど強力な相手は居なかった。

 

だから、感じ無かったが……今回はハッキリと理解出来た。

私は強くなってる……あの時よりも遙かに強くなってる。

これが……もしかしたら、私の祈りの効果なのかも知れない。

 

「自分自身の限界を越え続けたい。

 その願いが……この力を与えたのか」

 

私が限界突破で自分自身を強化する度に

私の肉体は、その限界突破に影響され強くなる。

現に今回の襲撃、今までであれば肉体がボロボロになるほどに

自分自身の限界を越えて動いたが、今は何処も痛くない。

 

恐らく、ワルプルギスの夜を倒す際に用いた

限界を遙かに凌ぐ圧倒的な限界突破。

その影響で、私の肉体は更に強くなったのだろう。

 

「これでうわさの方は落ち着くか……次は魔女……なん」

 

そんな事を思ってると、職員室の外に大きな物体が映る。

両手も両足も頭さえもない巨大なマネキンの様な物体。

蛇のようなうねうねとした触手が背から生え

ヘソには何故かルビーが埋め込まれていた。

 

「へー、うん」

「……何に相づちをしたんだ?

 まぁ、お前もウワサの類いだろう。

 随分と巨大だが……始末するまで!」

 

このままじゃ被害が甚大になるだろう。

その前にこの化け物を何とか対処する!

 

「行くぞ! デカいの!」

 

私は急いで窓から飛び出し、そのマネキンへ飛びかかった。

 

「ん!?」

 

マネキンに飛びかかると同時に周囲の雰囲気が変わる。

魔女の結界……私だけ隔離されたのか?

好都合だ……被害が出ないのならそれに越したことはない。

 

「はい~!」

「ッ!」

 

巨大な尾を私へ向けて振り下ろしてきた。

反射的にその攻撃を避け、私は即座に武器を構える。

 

「デカい相手とはちょっと前に戦ったさ!」

 

今度はヘソのルビーが光り輝き

レーザーの様な物が私へ向って飛んで来る。

 

「ッ!」

 

広範囲をなぎ払うレーザーか……厄介な。

だが、私だけを隔離してくれたのはありがたかったな。

この攻撃を学校へ向けて放たれていれば

甚大すぎる被害となっていただろう。

 

私だけならその攻撃を避けることは造作ない事だ。

不意に飛んで来るレーザーだろうとも避ける。

 

私の堪も何だかかなり優れているように感じた。

まだ、今回は第六感の限界突破は使用してないが

やはり戦えば戦うほどに私は強くなるのだろう。

それが、私の願いの影響……便利な願いだな。

 

「元より、私の限界突破は汎用性に富んでは居たが

 まさか、自らの祈りによる影響さえここまで出るとは」

 

後方へ飛び退くと同時に飛んで来る触手の追撃。

随分と太い触手だが、私の刃は伸縮自在。

即座に刃を変化させ、伸びてきた触手を両断すると同時に

あのマネキンへ向って振り下ろす事にした。

 

「はいー」

 

マネキンは私の攻撃を無数の触手で防いだ。

あの触手、数が増えるとは意外だな。

だが、私の魔法は限界突破だ!

 

「そのまま両断されろ! 返事のような鳴き声を出し

 肯定しておけ、私もあまり時間は掛けたくないんだ。

 状況が状況だからな!」

 

かなり強く踏ん張り、私は圧倒的な怪力を用いて

あのマネキンが扱う無数の触手を一本、また一本と

少しずつ、少しずつ切断していった。

 

マネキンは対応する為にすぐに触手を生やし

私の攻撃を防ごうと必死に努力をするも

少しずつ、少しずつ私が両断していく触手は

あのマネキンが再生さる触手の量を上回る。

 

あちらが2本の触手を生やせば、3本の触手を断つ。

あちらが3本の触手を生やせば、6本の触手を断つ。

このままの勢いで維持すれば、私の刃は奴を裂く!

 

「だが、これではあまり面白く無いだろ?」

 

力を入れる間に、更に私は短刀をいくつか召喚。

サイズは小さいが、数は中々に多いぞ。

そのまま呼び出した短刀を操り

私はあのマネキンを串刺しにする。

 

「ん?」

 

だが、あのマネキンの腹部が変形した。

嫌に勘が鋭くなってきている私だ。

流石にそんな動作を見て何も感じ無いわけが無い。

嫌な予感がする。あれは恐らく最後の抵抗だ。

 

「大人しくやられてやるつもりは無いと言う事か」

「あー、うん」

「ふ、面白い返事だ、もう少し気合いを入れた返事をしろ。

 肯定するなら、もう少し強く肯定してほしいものだな」

 

このままだと不味いと判断した私は攻撃を止めた。

同時にあのマネキンから今までの中で

最も巨大なレーザーが放たれる。

 

「あ、危ないな……」

 

咄嗟に飛び上がり、私はそのレーザーを避ける。

あんなのを食らえば、流石にひとたまりも無いぞ。

死にはしないだろうが、かなり痛い思いをする。

 

だがまぁ、あのレーザーが通った後の光景を見る限り

あれに直撃していれば、即死していたかも知れないな。

だが、溜めるのに時間が掛るのが難点だ。

僅かにでも時間があれば、その攻撃を避けるのは造作ない。

 

上空で体勢を立て直し、私は短刀を伸ばし大地に突き刺す。

同時にその短刀を足場とし、一気にマネキンに近付いた。

 

「今度こそお終いだ! 被害が出る前に消えろ!」

 

自分の肉体を軽視した、極限の限界突破。

短刀を足場にしたわけだが、その短刀は砕た。

あまりにも一瞬過ぎる一太刀だった。

 

十分過ぎる一撃だったのだろう。

私の一撃はあのマネキンを苦もなく両断出来た。

同時に周囲の光景が元に戻り、

私は学校のグラウンドに立っていた。

 

「周囲の雰囲気も元に戻ったな…・・はぁ、良かった」

 

と、とは言え、さ、流石に両足と両腕が痛むな。

や、やっぱり多少頑丈になったとは言え

あの限界突破は、あ、あまりにも体に負荷が大きい。

 

ワルプルギスの夜さえ叩き落とす程の限界突破だしな。

今回の突破は下手すればあの時以上かも知れないし

私の体中が痛むのも、ある意味当然だったかも知れない。

 

「…後は、被害が出てないことを祈るしか無いか」

 

 

その祈りが通じたのかも知れない。

奇跡的にこの襲撃での死傷者はゼロだった。

更に運の良いことに、殆どの学生は

今回の事件のことを忘れていた。

 

七美の話だと、あのうわさは記憶ミュージアムのうわさであり

記憶を奪ううわさだったというのが分かった。

結果、そのうわさが殆どの学生から今回の記憶を奪い

魔法少女の存在は奇跡的に明るみにならないで済んだ。

 

死傷者がゼロだったという話を聞いたときも一安心だったが

魔法少女の存在が露見しなかったというのも奇跡の様な報告だった。

 

「だがまぁ……」

 

何故か私の腕に付いていたルビーのブレスレット。

何だ? これは……禍々し雰囲気を感じるが

莫大なエネルギーのような物も感じた。

……私はこんな高貴な宝石を身につけることが出来る程

金があるような人間じゃ無いんだが……

しかし、このブレスレット……外せないんだよな。

 

「……壊すか」

「梨里奈ちゃん、しれっと恐い事言わないでよ……

 こ、壊すって、明らかに重要そうじゃ無い?

 そのブレスレット、調べた方が良いよ」

「確かに重要そうではあるが……邪魔なんだよな。

 風呂に入るときに不便でしょうが無い。

 眠るときも煩わしいし、壊したいんだが……」

「てか、壊せるの?」

「鉄の様だし、壊せるだろう」

「で、でもこのブレスレット……」

「うん」

 

まぁ、ただのアクセサリーで無いのは確定なんだがな。

明らかにアクセサリーとしては見栄えが悪い。

このブレスレットは明らかにこのルビーの他にも

宝石が入りそうな場所がある。

ルビーと合わせると8箇所……か。

今度、3人と合流して話を聞いてみるとしよう。

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