魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

9 / 114
諦めきれない願い

それからすぐに、私達は水名区に再び集合と言う事になった。

電話番号を交換したからな、すぐに電話がかかってきた。

昨日の今日で速攻とは驚いたよ。

 

「それでは! 口寄せ神社は何処だ! よし探そう作戦を始めます!」

「はい!」

 

そんな元気よく…彼女のテンションはかなり高いな。

 

「それでどうしましょうか? 色んな神社を回りますか?」

「それは安心して! 私がどんどん調べてみる!

 だから、いろはちゃん達はこれを調べてみないかな」

「これ?」

「うん、水名区に古い話があってね、それを調べてみたらどうかなって」

 

確かに神社と昔話というのは縁が深いからな。

昔話から取って神社を作ったという可能性も無くは無いだろう。

 

「昔話と神社…何かありそうですね!」

「でしょでしょ!?」

「それってどんな話なんですか?」

「えっと、簡単に話すと、昔ね、身分の違う男女が恋をしてね

 男の人の方が、殺されちゃったんだって。

 それでね、ある日、悲しんでた女の人が男の人の字が書かれた紙を見付けてね。

 そこに書いてあった場所に行ってみたの。そしたら、なな、なんと!

 男の人に再会できたんだって!!」

「すごくザックリしてましたけど、ちょっと良い話みたいですね」

 

良い話? 良い話なのだろうか…男の人、死んだんじゃ無いのか?

死んだのに再会したと言う事は、幽霊か何かでは無いのか?

その後、女の人はどうなったんだ? 男の幽霊に攫われたのか?

 

「うん、男の人は幽霊だけどね」

「恐い話だった!」

 

いやまぁ、当然そうなるよな。

 

「でも、会いたい人に会えてる…」

「でしょ!? でねでね、その2人が辿った道をなぞっていくとね

 すっごい強いパワーを持った縁結びスポットに行けるんだよ!」

「あ、それで…」

「うん、調べて欲しいなって」

「でも幽霊…鶴乃ちゃんは行かないんですか?」

「私、細かい事を考えるの得意じゃないから!

 どんどん色んな神社を回る方があってると思うんだー!」

「そっか…で、でも、2人ですし大丈夫ですよね!」

「そうだな…しかし、幽霊ってそんなに恐いか?

 魔女とか、そこら辺と同じ様な物じゃ無いのか?」

「ええ!? 恐いじゃ無いですか幽霊!」

「そ、そうか?」

 

幽霊か…そんなに恐いというイメージは無いんだよな。

七美も怖がってたような気がする。普通は恐いのだろうか…

 

「まぁ任せてくれ、何かあったら守るから」

「あ、ありがとうございます!」

「えっとね、確かスタートは男の人の家らしいよ!」

「分かりました!」

 

スタート地点か、そこから…と言うか、どういう風に行くのか考えないとな。

まず男の人の家って何処だろうか。そこから探さないと駄目だな。

 

「えっと…ここがスタート地点…」

「スタンプラリーまであるな…これって」

 

うわさというか、ただの町おこしとかなんじゃ無いのか?

 

「あ、説明も書いてありますよ。黄泉まで繋がる強い絆

 水名区気ってのパワースポットを探そう。

 悲恋の男女の足跡を辿ってスタンプを集めると

 たどり着くのは何と2人を結んだ縁結びスポット。

 永遠を誓い合いたい方々や仲間との絆を確かめたい方々は

 1度探してみてはいかがでしょうか。

 主催:水名区町おこし委員会」

 

やっぱりただの町おこしじゃ無いか……

 

「これ、ただの町おこしですよね…」

「そ、そうだな…だがまぁ、やってみても良いんじゃ無いか?

 今はうわさが現実になるわけだしな。こう言うのもうわさに繋がるかも知れないし」

「そ、そうですね、やってみましょうか」

 

逢瀬を重ねた路地裏…あぁ、スタンプがあった。

 

追い詰められた南門、ここにもあるんだ。

 

切り捨てられた旧邸宅…と言うかここ、水名女学園の所じゃ無いか。

そしてここにもスタンプ…前に来たときは気付かなかったな。

 

最後、男の手紙があった水名大橋。で、このスタンプで全部か。

 

「はぁ、やっと揃いましたね」

「そうだな」

 

もう夕暮れ時じゃ無いか…これで何も無かったら…時間を無駄にし形になるな。

 

「そして、場所は…」

 

AとB、2人の紙を線に合わせて重ねましょう。

太陽に透かしてみると、重なったスタンプが地図になって2人を導いてくれるでしょう。

 

「……ふ、2人で回る物だったんだ…よ、良かったぁ梨里奈さんが居てくれて」

「そうだな…で、私の方は…Aだな」

「あ、私の方もAで……」

「……えぇ!?」

 

ま、不味い…ここに来てこんなミスをする何て!

 

「妹の事を調べている割に、随分とのんきね。

 と言っても、私もスタンプラリーをしてるんだけど」

「そ、そうなんですか? 実は口寄せ神社について調べてまして。

 それで、ヒントになるかなって2人でスタンプを集めてたんです」

「ふーん…」

「な、何ですか…?」

「思ったよりちゃんのうわさを調べてるのね。

 ただ調べてるのが口寄せ神社だなんてね。

 そして…あなたまで一緒に調べてるとは驚いたわ」

「私も一応、うわさには興味がありまして」

 

興味と言っても、少し不吉な雰囲気は感じているんだけどな。

人為的に作られたかも知れない謎のシステム…そんな風に感じている。

 

「ただまぁ、半端な気持ちでうわさに首を突っ込むべきでは無いわ」

「でも…」

「……私が何を言っても、あなたはうわさを調べるんでしょうね」

「はい、ういを見付けるチャンスかも知れませんし」

「……で、あなたは?」

「私ですか?」

「えぇ、いろはの方は妹の事になると頑固なのは分かってる。

 でも、あなたはどうなの? そんなにまで必死にうわさを探す理由はないでしょ?

 あなたはうわさを探す必要が無いのに探している。何故?」

「……理由はありません。ただ偶然協力をして居るだけ」

「なら、今すぐうわさに首を突っ込むのは止めなさい。

 あなたの実力は認めているわ。でも、目的意識が無いのにうわさを探すべきでは無い。

 うわさは危険な存在なのよ。その危険に首を突っ込まない方が良い」

 

やちよさんの言うとおり、私はうわさを探す必要が無い。

いろはの様に妹を探しているという目的も無い。

でも、私はうわさを探している。

 

「…そうですね、ではこれはどうでしょうか? 

 知り合いが危険な事に首を突っ込んでいる。

 だから、守る為にうわさを探している」

「……それはあなたが動く理由になるの?」

「なります」

「……あなたも、頑固そうな雰囲気ね」

「いろはとやちよさん程では無いと思いますがね」

「……そ」

 

私がうわさを調べるのは…知り合いに良い人だと思って欲しいから。

きっとそれだけが理由だ…分かりきってる事だ。

どう頑張っても自分の為に行動することしか出来ない…それが私なんだ。

 

「えっと、やちよさんも口寄せ神社のうわさを調べてるんですよね?」

「まぁ、そうね…」

「あの、それなら私、Aなんです! 実は梨里奈さんもAでして…」

「何を急に…って、そう言う事? 私は…何の因果かBよ」

「それじゃあ!」

「はぁ…仕方ないわね…重ねてみましょうか」

 

2人は指示に書いてあったとおり行動した。

 

「なる程、なんて事無いスポットだわ」

「分かるんですか?」

「えぇ、付いてきて。仕方ないし案内してあげる」

「はい!」

 

ん? 移動を始めたいろはが何かを落としたぞ。

 

「…いろは、何か落としたぞ?」

「え…?」

「このノート、お前のだろ?」

「あひゃっ!? あの、これは!」

「何を慌ててるんだ…?」

「慌ててまひぇん! ただの宿題ですから…!」

「そ、そうか」

 

絶対嘘だ…宿題を持ち歩く意味ないだろ…だが深くは追及するまい。

とりあえずこのノートをいろはに返し、やちよさんの案内に従った。

 

「ここがゴール…凄く大きい神社ですね…」

「内苑と外苑に別れてるくらい立派な神社よ」

「あの、やちよさん…もしかしてこの神社が口寄せ神社だったり」

「そうだと良かったわね」

「過去形と言う事は違うんですね」

「私が調べた限りは違うわね、何も起きなかったもの。

 それに、元々は縁結びとは関係が無い神社だから」

 

ふーん、なる程…とは言え、町おこしで嘘情報は流すまい。

 

「とにかく行ってみましょうか」

「そうね」

 

ひとまず私達3人はそのまま神社の方へ進んだ。

 

「ようこそ、お参りくださいました」

「スタンプラリーのゴールってこちらでしょうか?」

「あ、スタンプラリーに参加してくださった方ですね」

「はい、このスタンプ用紙…こちらで回収していただけますか?」

「はい、大丈夫ですよ。確かに、頂戴いたしました」

「私のスタンプラリーも回収してくれるんですね」

「えぇ、勿論です、では、最後に…」

「最後に?」

「な、なんですか?」

「こちらの神社の中でお互いの思いを伝えてください。

 今回の景品として縁結びのお守りを差し上げます」

「えぇ…?」

「なんて恥ずかしい…」

 

これは私も入ってるんだろうか? 2人用のスタンプラリーで3人目なんだが…

 

「行きましょう、環さん…」

「…うぅ、やちよさんと梨里奈さんって何考えてるか分からないです…」

「え、言うの?」

「へ?」

「ふっ、ふふ、あなた素直すぎるわよ」

「まぁ、純粋なのは良いと思うがな」

「あ、ご、ごめんなさい!」

「…はぁ、もういいわ…何でも言いたいことを言って」

「私の方も構わない。好きに言ってくれ」

「な、なんでもって言われると…えぇっと…よく分からないけど

 やちよさんも梨里奈さんも、凄く良い人だなって思います…

 私の事を心配してくれたり、私の問題なのに手を貸してくれたり…

 凄くいい人達だって、思ってます」

「そう、因みに私はあなたの事こう思ってるわ。

 恐くなるくらい真っ直ぐだって」

「え…あ、あの、それってどう言う意味…」

「さて、どう言う意味かしらね。さて梨里奈。

 私もいろはも言ったんだし、後はあなただけよ?」

「い、言うんですか?」

「そうよ。あ、でも私があなたをどう思ってるかは言ってないわね。

 そうね、強いけど何処か脆い…とまぁ、こんな感じかしら」

 

…的を射ている。私とそんなに長いこと一緒に居ないのに見抜かれていたか。

 

「…そうですか。じゃあ、私はやちよさんの事は恐いくらいに凄い人って思ってますよ。

 いろはの事は、何処までも真っ直ぐで加減を知らない危ない子って感じてます」

「そ、そんな風に思ってたんですか…?」

「あぁ、お前は素直だからな。目的の為に何処までも真っ直ぐで本気。

 加減を知らないから、何処か危うく感じるのさ。そして優しい。

 いつかその優しさを利用されないように、気を付けることだな」

「……あ、はい」

 

ま、そんな彼女に付いていこうとする奴は多いだろうがな。

危なっかしいから守ってやりたいと感じる。

素直さは時に短所だが、長所にもなるからな。

それから多少参拝して、夜暗くなってきた時間。

 

「はぁ…何だか疲れたわ…さ、2人も早く帰った方が良いわよ?」

「あ、あのちょっと待ってください!」

「さっきから何を書いてるの?」

「ん? それってさっき落とした宿題って言ってたノートか?」

「ひゃわっ! あぁ、あの、見ないでください!」

「自分の顔を隠してどうするのよ? 丸見えよ…」

「はわっ!?」

「かみはま…ふしぎ、のーと? って、あなたまさか…」

「えっとぉ…はい…真似しちゃいました…」

「さっき落としたのも宿題じゃ無かったのね」

「ごめんなさい…」

「ふっ、いいわ。別に真似したって気にしないわよ

 程々に頑張って」

「あ、ありがとうございます」

「それじゃあ、私は失礼するわ」

「あ、はい、今日はありがとうございました」

「こちらも助かったわ。景品で縁結びのお守りも貰えたんだから

 …あえると良いわね…妹さん…」

「え?」

「いえ、何でもないわ」

 

そう言い残し、やちよさんは姿を消した。

 

「…やちよさん、よく分かりませんよね…」

「ん?」

「私を追い出そうとしたり…この子を狙ったり…

 私達に敵対的な感じはするけど…

 絶交ルールの時は一緒に助けてくれたり…」

「……もう分かってるだろう? 無愛想で不器用だけどさ」

「…はい、それがやちよさんの優しさ…なんですよね。

 だから、前に魔女を倒して大丈夫だって認めて貰えたみたいに。

 私もうわさ探しも大丈夫だって認めて貰いたいです」

「そうだな」

 

きっと大丈夫だろう。彼女は何処までも真剣なんだから。

そのまま今回は解散と言う事になった。

鶴乃ちゃんの方も結果はよろしくなかったようだ。

そして後日、今度は3人で神社を調べるという話しになった。

 

「……綺麗ですね」

「そうだな…」

 

帰りの電車の中。私達2人は一緒に帰っていた。

 

「あれ?」

「どうした?」

「いや、ビルの上に神社があって…」

「……本当だ、あんな所にもあったんだな」

「じゃあ、明日あそこを探してみますね」

「そうだな、3人だし別れて探すのもありだろう」

「はい」

 

そのまま部屋に戻り、宿題を終わらせ晩ご飯を食べた後に就寝した。

明日も探すとしよう…口寄せ神社のうわさを。

もし本当に会いたい人に会えるというなら……七美。

はは、全く馬鹿げてるな…死人に会える筈なんて…ないのに。

それなのに、僅かに希望を抱いてしまう……まだ、未練があるのか…私は。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。