魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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梨里奈の絵

ひとまずアリナに言われたとおりに絵を描く。

絵を描いてる間だ、アリナは静かだった。

黙々と自らの絵を描こうとしている。

だが、あまり筆が進んでない。

少しだけ作品の性質がぶれてるのかもな。

私の絵を見たいと思ったのも

少しスランプ気味の自分に

ちょっとでも影響があるかもと思ったから。

そんな可能性だって存在するだろう。

 

逆に私は流れるように絵を描くことが出来た。

私は書きたいことが既に頭にあったからだろう。

私が描いた絵は進化の様な絵。

芸術作品と言うよりは漫画のような作品だ。

左から右へ進むほどに成長する絵だ。

 

今回、私が書いたのは人では無く動物。

犬を中心として描かせて貰った。

犬の成長を描くような作品だ。

 

「あまり芸術という雰囲気は無いな」

 

自分の絵を見て、軽く笑みがこぼれた。

やはり私には芸術作品を描く。

そう言うのは、まだ難しいのだろう。

だが、中々上手く出来た様な気がした。

 

「もう出来たワケ?」

「あぁ、あまり芸術とは言えないけどな」

 

アリナに私の絵を見せる。

漫画のような絵ではあるがアリナはマジマジと見てる。

 

「そんなに細かく見るんだな、お前の書いてる作品と

 私が書いたこの作品は大分雰囲気が違うだろうに」

「それ位は分かってるんだヨネ。

 あんたとアリナは全然違うワケだからネ。

 でも、アリナが興味を持ったあんたの絵だし

 しっかり見れば、メッセージに気付けるだろうしネ」

 

アリナがかなりマジマジと見てる、少し恥ずかしい。

ある意味では、この作品も生と死だ。

アリナが言う生と死とは違うだろうが

私の描いた絵は、簡単に言えば生まれ、死ぬまでの絵。

 

だが、私の絵で重要な部分は最初と最後では無い。

むしろ、その中間である未来へ歩みの部分だろう。

そして、死の後も意識して書いたつもりだった。

今回の作品は足跡を軽く描きながら生から死の

軽い道筋の様な物を描かせて貰ってる。

 

だが、その足跡は死んでしまった後にも続いてる。

正確には足跡が小さいが少しずつ大きくなり

終盤付近に足跡を増やして、最後は足跡の1つが消え

周囲に残ってる足跡が大きくなりながら分岐してる。

 

小さなキャンバスに描くにはあまり良くない手法だ。

そう言う絵を描いてないことが仇になったと言えるな。

とは言え、私が描きたいことは描けてる。

 

「かなり上手ね、本物みたい」

「ま、まぁ、あまり芸術とは言えないでしょうけどね。

 もうちょっとキャンバスを生かすように書けば良かった」

「実際、1つの作品とは言えないかもね」

「あ、あはは、そ、そうですね」

「確かにあまり1つの作品というワケでは無いヨネ。

 でも、あんたが書きたいことは何となく分かるかもネ」

「そうか? それは良かった」

 

かなり容赦なく貶されると思ってたが

思った以上にアリナは私の絵を評価してくれた。

 

「あんたは前、アリナに言ったヨネ?

 アリナの作品は空っぽって」

「ん? そうだな、そんな事も言ったな」

「アリナはその言葉を既に受けてたんだヨネ」

「そうなのか?」

「金賞を取ったときに審査員とかそんな奴にネ」

 

既に言われてた言葉だったのか。

だから、そこまで過剰に反応しなかったのか。

 

「実際、最初に受けたときは心底腹がたったんだよネ。

 でも、色々あって魔女に美しさを見出して

 生命の生と死にとんでもない興味を抱いた」

「そして、イブを芸術作品とか言ってたのか」

「でも、あんたに正面から否定されたんだヨネ。

 そして、色々な考えが出て来た。

 かりんが書いてる漫画も思い出したんだヨネ」

「漫画?」

「しつこいくらいに持ってくるんだヨネ、漫画。

 まぁ、最近は100円くらいの価値はあるんだけどネ。

 絵は下手だけど、何だかその漫画が思い浮かんだ。

 あまり見られた物でも無いんだけどネ」

 

貶しながらも褒めてるところから考えても

あまり嫌ってる様子では無い。

 

「あの子か」

「知ってるワケ?」

「あぁ、お前の情報を探ってるときにあった」

「ふーん」

 

イチゴミルクに手を伸ばして少しだけ飲んだ。

視線は変わらず、私の絵の方を見ていた。

 

「だから、少しだけ色々考えたくなったんだヨネ。

 外へのテーマを持たない君の作品は、

 人を狂わせるかもしれない劇薬

 15歳を過ぎて尚自覚がないなら

 キミの輝きはそこで尽きるだろう

 世界を変える気がなければ作るのを止めろ」

「ん?」

「アリナが言われた内容、正確には書かれただけどネ」

 

イチゴミルクを元の場所に戻したな。

 

「この話を聞いて、アリナは不機嫌になったんだヨネ。

 何で不機嫌になったのか、あまり分からないんだけどネ。

 前はアリナが否定されたのが嫌だったって思ったんだヨネ」

「違うのか?」

「……あんたにあんな風に言われて

 もしかしたら違うかもって思ったんだヨネ」

「どう違うんだ?」

「アリナが不機嫌になったのは

 輝きは尽きると言われた事だと思うんだヨネ。

 そして、図星を突かれたから」

「図星?」

「その時のアリナには外へのメッセージが無かった。

 今思えば、完全に図星だったんだヨネ。

 そのままだと輝きが失われる。

 これも嫌だと感じたのは、結局アリナは

 芸術を描くことを喜びと感じてたのに

 その芸術が嫌いになるかも知れないって思ったから」

「手応えが無い物を描き続ければ

 確かに嫌いになるかも知れないな。

 結果が残せない、誰にも評価されない。

 気力が削がれても仕方ないかも知れないな」

「だから、アリナはあんたの絵を見ることが出来れば

 もしかしたら、テーマの重要性が分かるかもって 

 そう重ったんだヨネ」

 

そこまで言うと、アリナは視線を動かし

私の方を向いた。

 

「本当、絵のクオリティーはかなり高いし

 メッセージ性もしっかりと用意してるネ。

 これが、あんたが伝えたいメッセージ?」

「そうだな、今回のテーマは成長だ」

「それは見れば分かるんだけどネ」

「何かアドバイスとか無いか?

 自信はあるが、もっと上手くかけるかもと

 私自身、そう思ってる」

「じゃあ、いくつかの絵を描けば良いヨ

 1枚の絵に全てを込めるんじゃ無くてネ。

 いくつかに分けて、1つの段階を丁寧に描く。

 その絵の全ての成長の指標になる何かを描く。

 今回で言えば、この足跡だヨネ」

「なる程な、全ての絵を連続で見たときに

 確かなストーリーになってると把握して貰うのか」

「オフコース、そうすればメッセージも届くと思うワケ」

「なる程、それを試してみよう」

 

1つの絵にそれぞれのメッセージ性を残しながら

何枚かの作品を描き、ストーリーを用意する。

ムンクの絶望、不安、叫びとかと似た感じか。

 

「まぁ、私的には可愛いと思うけどね~

 でも、なんでワンちゃんにしたの?」

「人物絵はちょっと難しいと思ってな。

 後、少しだけ恥ずかしいから犬の絵にしたんだ」

「人物絵が恥ずかしいって、どうして?」

「少しだけ、人物絵だと自己投影してしまうだろう。

 だから、ちょっとだけ恥ずかしいと思ったから

 あまり自己投影しないで恥ずかしがらずに描けそうな

 犬をメインにして書いて見たんだ」

「恥ずかしいとかあるんだね」

「小説でもあるんじゃ無いか?

 自分に近しいような雰囲気の人物を描いたりすると

 ちょっとだけ恥ずかしがるような感情」

「そうでもないよ、僕はそこまで自己投影しないからね」

「そ、そうか」

 

私は自己投影してしまうんだよな。

もし、私が小説を描くとなると

主人公の性別は男性になるだろう。

それなら、まだ感情移入しすぎないだろうし

そこまで自己投影もしないだろうからな。

 

「まぁ、人それぞれだしね、それで?

 そろそろ情報共有しないの?」

「そうだね、アリナはまだ絵を描いてるし

 僕達だけで軽く伝えておこうかな」

「分かった、色々聞くよ」

 

今のユニオンがどう言う状態なのか興味もある。

皆、私が下手に介入しないようにするためか

あまりユニオンの詳しいところは話してないからな。

だから、ようやく聞けるかという感じだ。

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