魔法少女の道化師   作:幻想郷のオリオン座

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状況確認

「現在の神浜マギアユニオンの勢力は

 結構拡大してきてる感じだね。

 ちょっと厄介な敵対組織も出て来てるけど

 そこは、まだ私達の方が上だからさ」

「敵対勢力?」

 

そんな話は殆ど聞いてなかったな。

やはり心配させないために黙ってたのか。

 

「そうそう、ネオマギウスって言うのがね」

「ね、ネオマギウス……お前らの部下だった奴らか」

「そうだね、魔法少女至上主義の子達。

 梨里奈の影響か、大分数は少ないけどね」

 

マギウスの元々にあったしそう

魔法少女至上主義と言う奴だな。

とは言え、今の3人にその思想は全く無い。

 

理由は単純明快であり

魔法少女至上主義の危険性を知ったからだ。

私達の目的は魔法少女の魔女化防止ではあるが

最終的な目標は魔法少女から人に戻ること。

魔法少女至上主義なら、そんな思想にはならない。

 

「そして、プロミストブラッドだね。

 神浜とは違う町の魔法少女集団」

「そんな奴らまで来てたのか。

 もしや、妙な気配はそいつらか」

「恐らくね、あまり行動はしてない様だけど

 何を考えてるのか僕らにも分かりかねるよ」

「プロミストブラッドは

 キュウべぇから話を聞いたそうよ」

「……そうか」

 

何となくだが、想定は出来た事だな。

キュウべぇは効率のみを求めている獣だ。

現状、私達に派手に敵対されないように

効率的にエントロピーを獲る方法は

この神浜で起こってるドッペルシステムだ。

 

もし、このドッペルのシステムが比較的安全なら

そのシステムを奴らは解読し、完璧に近付けた後

このシステムを元にエネルギーを得ようとしてる。

だから、まずは実験をする必要がある。

 

実験会場はこの神浜であり

周囲の魔法少女を焚きつけて戦わせ

ドッペルをより多く発動させようとしてるのだろう。

 

「あまり驚かないんだね、予想通りだったかにゃ~?」

「そうだな、あいつらはそう言う獣だ。

 しかし気になることがある」

「気になること?」

「外の組織なんだろう? どうやって来てるんだ?

 組織だというなら、それなりの人数だろう?」

「ミラーズの館って知ってる?」

「話は聞くな、自分の偽物を生み出す場所」

 

とは言え、私はその場所に行った記憶が無い。

何故危険だと分かってる場所にわざわざ行く必要があるのか。

あまり危険な魔女でも無い様だしな。

とは言え、放置したのが仇となったと言える。

 

「しかし、魔女が生み出した空間……なんだろう? 確か」

「そうだね、鏡の魔女が生み出した空間みたいだけど」

「その空間を利用して移動できると」

「その様だね」

「……」

 

長距離移動が可能な魔女の結界。

話だけを聞けばかなり便利そうではあるが。

しかし、逆に恐い話にも聞えてくる。

最悪の場合、いくらでも偽物が生まれるんだろう?

 

それに魔女の結界だし、危険なのに変わりは無い。

しかしだ、不思議なことも数多くある。

何故、これだけ長い間この場所に?

 

「魔女の結界が同じ場所に止まる理由は?

 そもそも、他の町から神浜に来ることが出来る理由。

 ミラーズとやらに繋がってる空間でもあるのか?

 それぞれの町に? ……う、うーん」

「みたまの推測では、株分けの魔女だったかしら。

 そう言う魔女が居るかも知れないと言う話でね」

「そ、そもそも魔女の結界なのに、

 どうして性質とかが? 普通の魔女の結界は

 侵入者を逃がさないようにしてるはずじゃ」

「このミラーズは出入り口が

 すぐに分かるようになってるんだ」

「……そ、そんな魔女が」

 

……自分達の偽物が発生する空間。

そして、無限に広がってるという結界。

出入り口が常に開いている特殊な結界。

 

「……一般人の被害とかは?」

「みたまから聞いたことは無いわね」

「……異質だな、魔法少女の被害は?」

「それも聞いたことが無いわ」

 

……魔法少女の被害も一般人の被害もゼロ。

 

「では、魔法少女は何故その場所へ?」

「いろはの話だと、招待状が届くらしいわ」

「……魔女からの招待状。狙いは魔法少女。

 でも、魔法少女の被害は全く無いし

 一般人の被害も無い。魔女が人を狙う理由を

 私はよく知らないが……イブが成長するのに

 

 人の穢れ、つまり負の感情の力が必要だとして

 魔女が体を維持するには、その負の感情が必要。

 だから、人を襲ってると想定することも出来る。

 

 なら、その力を魔力として行使出来る魔法少女は

 確かに魔女にとっては良い餌だろう。

 だが、魔法少女の被害が無いというのであれば…

 それに、偽物も出来る訳だし……魔力が……」

「何をブツブツ言ってるのさ。

 君にとって、そんなにミラーズは興味深いのかい?」

「それは勿論興味深いさ」

 

だが、偽物に襲われても被害が無い。

襲われると言う事は魔力を扱えてる?

それとも、魔女の力で別の力とかか?

 

「そう言えば、ミラーズの主は?」

「まだ発見できてないそうだよ」

「……そうか」

 

色々な空間から繋がる特殊な空間。

無限に続く程の非常に広い空間の結界。

退路は何処にでもあり、被害は無い。

どうやら、かなり臆病な魔女らしいな。

 

姿を維持するのに魔力が必要なのだと仮定して

どうやって魔力を得ているのかを予想すれば

立ち寄った魔法少女から魔力を吸収してる。

それも、本当に気付かれないほどの魔力を。

 

偽物を生み出せるくらいだし

相当力がある魔女なんじゃ無いか?

もしくは、意外と魔法少女に近い魔女なのかも知れない。

 

結界がデカいのも臆病故かも知れない。

つまり、深追いすればするほどに広くなる空間。

何処でも繋がる可能性があるのだとすれば

案外、他の魔女達の結界を目指してる可能性もある。

 

臆病だからこそ、強い魔女の結界に繋げる。

その繋げた空間で追いかけてくる魔法少女を排除する。

その特性があり、もしかしたら

遠くの魔女が居る場所にまで結界が繋がってるのかもな。

 

「はぁ、考えるとキリが無いな」

「君はいきなり考え込むことが多いよね」

「あぁ、私の悪い癖だ。予想しか出来ないのに全く」

「でも、君の予想は結構当ることが多いよね」

「私の予想は大体いやな予想だからな。

 可能なら当らない方が良いんだが」

 

もし今回の予想が当ってたとすれば

鏡の魔女を追いかければ別の魔女が出てくる。

そう言うサイクルが発生する可能性が高い。

ましてやここは神浜、魔女の数は多いからな。

 

更にだ、色々な魔女の空間と繋がってるとすれば

何か大きな事があったら伝染するだろう。

もし、あり得ない事だが魔女を強化するような

そんな霧が存在したとすれば

鏡の魔女の結界を通して、世界中の魔女が強くなる。

 

可能ならさっさと排除したい存在だが

臆病だと想定すれば追えば追うほど逃げられる。

何とも厄介な魔女と言えるだろう。

 

「本当に、意外と厄介な魔女かもな」

「そうかな? 敵対してるわけでも無いし

 私達魔法少女にはなんの被害も無いよ?

 むしろ、鍛えられそうな気がするし」

「移動にも便利であるなら、より活用方法も増える。

 ミラーズを解析も僕はやりたいと思うけどね」

「……確かにな」

 

いやな予想が多くなってしまったが良い要因もある。

今の状況で居れば、良いか悪いかは微妙だが

そのミラーズを利用して神浜で起こってる

このドッペルのシステムを

世界に広げる事が出来る可能性もあるからな。

 

他にも色々な場所の魔法少女を一同に集めやすい。

今の状況ではメリットでありデメリットだがな。

 

「とは言え、今の状況だと危険だけどね。

 簡単に外部組織が来るって訳だし。

 まぁ、塞ぐのは簡単だけどねー」

「ウワサとかは使わないでくれよ?」

「当然だよ、使えれば簡単なんだけどにゃ~

 でもでも、ねむに負担を掛ける訳にもいかないしね」

「今の僕なら、ウワサを増やすことは出来るよ?」

「止めなさい、体の負担が大きいんでしょ?

 いろはが怒るわよ」

「お姉様は怒るよね~」

「うん、お姉さんは僕らのことを大事にしてるしね」

「私でも怒るからな、全く無理をするな」

「……」

 

私の一言で、何故か全員が沈黙する。

 

「あなたが言うの?」

「うん、梨里奈が言えることじゃないよね」

「君はすぐに無理をするからね」

「即座に反応される程とは思わなかった。

 と、とにかくだ、危ない事はさせないぞ」

 

だが、面倒な事になってきてるのは間違いない。

敵対組織か……その2つだけで済むなら

まだマシなんだがな……はぁ。

 

「彼女達を抑える案は後に考えるとして

 ひとまず、僕達が今後取るべき行動だけど

 梨里奈、ブレスレットあるよね」

「あぁ、これだな。変わらず取れないぞ」

「そのブレスレット、

 キモチって言う事にしたんだけど。

 そのキモチの宝石を集める事にしたんだ。

 そうすれば、イブに近付けるからね」

「で、他の敵対組織もその宝石を狙ってる。

 揃えばドッペルシステムを奪えるって言う

 キュウべぇの予想が原因でね。

 その結果、恐らく宝石の奪い合いが始まる。

 だから、梨里奈も警戒しておいてね。

 未だに外す方法が分からないんだし」

「そうか」

 

この宝石が原因で面倒事に巻き込まれると。

まぁ、ユニオンに所属してる以上は仕方ないだろう。

 

「で、今宝石は全て私達が持ってる。

 梨里奈の宝石といろはが手に入れた宝石。

 だから、私達がリードしてるって事ね」

「そうか」

 

ユニオンの勢力は相当だからな。

やはり、私達が圧倒的なリードか。

だが、この宝石を巡る争奪戦……

かなり荒れそうだな。

油断しないで行こう、失敗したら

最悪の場合腕を失うだろう。

 

「じゃあ、今後も警戒して行こうと思う」

「うん、危ないからね、何かあったら言って」

「はい、分かりました」

 

襲われたりしたら情報を共有していこう。

危ない目には遭いたくないしな。


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