ケイン「ばーちゃんが言ってたぜ?女を泣かせる奴は最低だっ、てな!」(旧Ver) 作:Fry-Hopper
カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】
作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】
警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】
対象年齢 【R-15】(戦争物の為)
「ケインさん3倍付けですよ~」
「クソ眼鏡は1.3倍か」
わいわいと、わいわいと。
岩礁地帯に作られた演習場は、400M走が出来る程度には大きい施設である。それでも艦娘の身体能力を前提とするならば、決して大きいとは言えないのだが。演習場には今日の催し物を聞きつけて艦娘が集まってきていた。
弱小鎮守府であるため、職員含めて40名ほどが観戦している。某記者と某駆逐艦の活躍により、朝までには、ケインさん宇宙人説が蔓延した。朝刊の号外が飛ぶように売れていく。
号外には匿名で数人から複数の説が掲載されていた。
みちゃいました。どうみても宇宙人です。本当にありがとうございました。
というのは建前で(実は大本営の工作員?)なのです!
ビッグセブンを信じろ。同盟国の新兵器実験の最中に遭難した者を保護した、だ。
ご存じですの?あのお方わ切り裂きジャックですわ。あのマントに仕込みナイフをみましたの。
はい!某国のスパイです!
いや、彼は陸軍であります。
艦娘っぽい。
あいつは夜戦忍者スレイヤーだ。
姉さまにまだ会えない。不幸だわ。
そういえばこの鎮守府には工作艦の明石がいつまでも来ないのは、おかしいぞ。
海外艦?ケインさんが初ですが何か?
オデノシゲンハボドボドダ。大型艦建造設備なんて、家にはなかった。いいね?
偽の作戦と噂を複数作る事によって、ゴシップ好きな彼女たちは最も現実的な嘘に引っかかってくれてた。発刊前に提督の検閲が入ったのだ。これにより真実を知る者は限られている。後半はお決まりの提督の魂の叫びでお茶を濁している。
「まぁ、本命は某国のスパイだろ」倍率1.1倍
噂は公営ギャンブルのように区分けされ、某記者のお手製コメントと想定オッズが記載されている。いつの時代も欺瞞工作は大事である。
演習場での対戦方法は主に3つ。
ブロウバトル、リアルバトル、デスマッチ。
ブロウバトル、艤装なしの戦い。
リアルバトル、艤装が破壊されるか。敗北を宣言されるまで戦える。
デスマッチ、どちらかが、バケツを投げつけられるまで“戦える”。
通称バトリング。
【【何故か血の気の多い艦娘が集まるこの鎮守府で必然的に発生した競技。提督も5年ほど前から正式に許可をだした。一種のガス抜き装置として、戦場から離れられない者達が集まり何処までも戦い続ける。今では娯楽の乏しい当鎮守府定番の遊戯となっている。
また、マッチメイカー主導での賭博行為も認められている。鎮守府の収入源の一つでもあるが、中毒性を抑えるために、掛け金、払戻金共にゲームセンターに毛の生えた程度の量である。収益の主な用途は兵装の整備と、当演習所の維持費に使われるため、負け越した者もお布施や寄付と称し、全ての利用者との健全な関係を築けている。】】
サイレンが鳴る。掲示板上に艦娘が立ち、対戦形式の垂れ幕を垂らしていく。
「大淀」名前が表示されえる。
「ケイン・ブルーリバー」ケインの名前が。
「リアルバトル」対戦方法が決まる。
「ヒュー、宇宙人相手(笑い)とはいえリアルバトルだってよ」歓声が上がる。「ああ、これは大勝負になるな」場内が騒めいた。轟音と共に鋼鉄の壁が、演習所の中心を大きく円形に空けて、それ以外の個所に迷路のようにせりあがってくる。銃撃戦の際の遮蔽物としてだ。
「ケインさん、高練度の、あの大淀相手にリアルバトルはまずい」
提督が闘技場に走りこんでくる。
しかし時すでに遅かった。
二人は中央の空間で対峙している。
「長門か!来ないと思ったら、こんな事を」
手筈ではブロウバトルにての近接打撃戦。歓迎会を込めての、お気楽な遊戯になるはずだったのだが。大方、ケインさんの能力を手早く見たいからだろうが、危険すぎる。
――それとも他の理由か。
「ほう」ケインはサイブレードを抜いた。熱い死線がケインに突き刺さる。「あんた名前は?」先ほどとは別人のようだ、離れてはいるがすでに彼女のキルゾーンに入ってるらしい。
「大淀」キラリと眼鏡が光る。7.7mm×4丁の構え。軽量な分、当てやすい。「安心してください、あたれば“死ぬかもしれない”ペイント弾ですから」
水平に広げた口元が楽しそうにわずかに開く。ペイント弾ではあるが、使い方によっては殺傷能力もある。さらに、大淀は意図して火薬量を調整していない。初速は実弾と同じだ。
「開始前に一つ聞きたい」ケインは不敵に笑う。
「いいでしょう、何か?」こちらも余裕の表情。
「あんた、どこを切られると死ぬ?」当然の疑問だ。彼女たちは限りなく不死に近い「首より上と、心臓ですわ、ナイト様」この人は斬る。
手も足も。首も。胸も。だから教える。
潮風にあおられ、マントがざわめく。
――全銀河に悪夢を。
「礼を言う代わりに、俺からも一つ教えておこう」
サイブレードを彼女へと、まっすぐに向けた。彼女は少し目を細める。そして、口が綻んだ。「あら」髪の少し右側を、光が通過したような気がした。真後ろの鉄板に、焦げ目がついた事を音で感じた。
「避けられないわね」笑っていた。
見えた時にはもう当たっている。
「光学兵器」ゾクゾクと体が震える。
回避方法は、柄の方向を見ての予測のみ。
「でも」
「弾幕には弱いでしょう?」
近距離、銃撃の有効射程内においては、対象への衝撃も伴う分、実弾のほうが有利な場合が多い。装備品がコンバーターとセットでは30キロ近くになるのもハンデになる。
「そうだな」ケインはマントを翻すと、微笑んだ。
人間にはスタミナの限界もある。戦いは急戦になるだろう。
――開始のサイレンが鳴った
「さあ死合ましょう?」怪しく眼鏡が光る。
彼女は後方へ飛び上がると、周囲の鉄板を蹴りながらの水平ジャンプを立て続けに行う。ケインは中央からまだ動かない。水兵服の女性が鉄板でタップダンスを奏でる。
「撃てばいいのに?」先ほど見た、レーザー射出を警戒しての高速移動。彼女が躍るように壁を蹴る音と、風を切る音が。演習場を支配している。ハイペースでの動きではあるがこのままでも彼女であれば数時間以上も稼働し続ける。これが彼女の巡航速度なのだ。
――残弾が少ないのかしら?それとも、様子見?
遮蔽物の陰を高速で伝い、彼の後ろを取る。
「なら、こちらから行くわ」7.7mmがケインを捕らえる。
1丁200発程度しか積まれていないが。
人間相手なら数発のヒットでも十分。
「ごめんなさいね」1門の銃を構え跳躍しながら狙う。
ケインは目を瞑っている。
サイブレードを構えたまま。
競技場の空間に土ぼこりが上がる。
「そこだ!」髪を逆立てて、サイブレードは彼女を捕らえた。
足に狙いをつける。
「なんだ起きてたの?」咄嗟に体を捻らせ射軸から逃れる。
ああ、愉快だ。
私が理解されている。
サイシステムの共鳴か。
恋人のように両者の意識は深く絡み合っていく。
より早く、より深く。
狙ってはよけ、避けられては狙う。
彼も彼女も、まだ一発も弾を消費していない。
焦っているのは、ケインか、大淀か。
舞飛ぶ彼女に対して、固定砲台のように隙を伺うケイン。
「カス眼鏡だけ動いてるじゃねーか」誰かがヤジる。
「いけーたたかえー」「ころしあえ~」
一度離れて距離を置き、地面に足を付けて、大淀が歩く。
2門の機銃を向ける。
開始10分。
「早くも勝負は決まったか?」観客が騒ぎ出した。
「あれとやれんのは、山城と長門くらいじゃねーか?」
肌が風を感じる。気温が上がっていく。
ここへ来てケインは動いた。ゆっくりと横に。
大淀と平行の距離を保ち進む。
「今更鉄壁に戻っても、遅いですよ」
機先を打ち抜く。銃撃がケインの寸前を舐めた。
いくつかが鉄板をすり抜ける。
火線が観客席をかすめた。
客の座っていない椅子に色が付き僅かに煙が上がる。
「はわわわわ。びっくりしたのです」
「これがリアルバトルの醍醐味っぽい!」
雲が薄まり、日差しが演習場に刺さる。
「待たせたな。勝負と行こうぜ」ケインは構える。
――なぁ、闇を撒くもの。