ケイン「ばーちゃんが言ってたぜ?女を泣かせる奴は最低だっ、てな!」(旧Ver)   作:Fry-Hopper

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SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)


11 サイ・システム

サイシステムは想いの力。願うほど強くなる。

人の輝きを増幅するもの。想うほど応えてくれる。

 

「この大淀、逃げも隠れもしません!」

 

 

そう、彼は太陽を背に駆け込んでくるつもり。

航空隊が良くやる手だ。

こちらも空中戦をすることは容易いが。

それでは“浅く”試合が決してしまう。

 

何故か自分の中で、それを不服に思う感情が芽生える。彼とは戦いたいのだ。闘いきりたいと。理由の得られない感情が彼女を包み込む。

 

 

 

「撃たれるか、斬られるか」彼は言った。

 

 

 

奇しくも、両者の思惑は一致している。

沈み込むと、彼が弾けるように駆けた。

地面から上がる土ぼこりが小さく渦を巻く。

 

進行方向を狙い

4丁の火線がケインを狙う。

 

距離は目算で60メートル程度。

数分と持たない弾数でも

この距離からであれば十分すぎる。

 

 

――いいえ、撃たれても、斬られてもよ、ナイト様。

 

 

水兵服のスカートが風になびく。

中腰で大股を開き、しっかりと照準を合わせた。

堅牢な固定砲台。土ぼこりがあがる。

 

大淀の瞳が青く光る。

ケインは駆けた。未来を見据えた瞳で。

 

 

 

「うーむ。薄いグレーか」観客席で白いひげをたくわえ、サングラスをかけた用務員の年寄りが呟く。片手を顎ヒゲを下にのばすように動かしている。眉間にシワを寄せ何やら熟慮しているようだ。

 

「なんだいじいさん。そいつはどんな作戦だ?」眼帯を付けた艦娘が興味を持ち隣に座る。

 

「いや、大淀のパンチーがじゃな」「あいた!」それを聞き彼女はすかさず脳天に鉄拳を落とした。「ちゃんと見ろ!」

 

「こりゃ。もっと年寄りをいたわらんかい!」

 

 

 

「終わりだな、これで」眼鏡を拭きながら恰幅のいい男が言う。手には大淀のチケットがある。彼はここの常連であり、鬼神と呼ばれた大淀を良く知っている。“アレ”と、接近戦などとは正気の沙汰ではない。それ以前に、見てわかるほど銃撃が当たっている。一方的だ。

 

「え?」手にはケインのチケットを握る悪戯好きの駆逐艦娘。その光景に抗議するかのようにぷっぷくぷ~と頬を膨らましている。

 

彼が持つ艤装を考えると、艦娘なら艦種は駆逐艦級。速度を考えれば練度を99を最大としていいとこ50-60ぐらいの能力だろう。何となくだが、動きや親近感でわかる。それでも人として考えれば十分に異常な戦闘力ではあるが。宇宙人・・・ではないにしろ、なにがしかの特殊訓練を受けている人物である事は容易に想像できる。

 

「勝ったんだよ。大淀がな」

 

長期戦で夜戦に持ち込めれば、闇夜に乗じ必殺のサイブレードで十分勝機はあるだろう。あるいは、長距離からの銃撃戦でもまだよかった。

 

だが彼は、走った。

あの大淀相手に接近戦を挑んでしまった。

艦種としても劣る彼が、だ。

 

 

 

仲良く3人の艦娘が並んで観戦している。

 

「クソ宇宙人ガンバレ!超ガンバレ!」手にはケインのチケット。

 

「ケインさんの本気を見るのです!」握る両拳に力を込める。

 

「うんうん、い~じゃないですか~」こちらは立ち上がって感動している。

 

多くの駆逐艦娘達が、まるで自分を重ねるかのように応援を始める。気配を感じる。狙っているのだ。一撃必殺を。あるいは、彼女を止めようとしているのか。誰にも出来なかった。その悲痛な願いを。

 

 

多くの思惑が彼を見つめる。

多くの者が彼に期待を寄せる。

彼女たちの艤装が

想いを乗せる。

 

 

ケインは駆けた。

残り30M。

 

サイドステップや体を柔軟に曲げ

正面にクロスする皮のベルトやコンバーター、

マントの死角部分に、当てさせている。

 

顏の正面にはブレードを構え、突進。

最小限の動きで人体の急所を狙う攻撃を

斬り伏せる。

 

演習場は熱気に包まれていくが

頬や頭から血を垂らす彼は

極めて冷静に彼女を見つめる。

彼女だけを見つめている。

 

 

止まらない。

 

20M。

 

止まらない。

 

 

腕の骨は折れているのではないかしら。コンバーターを狙う?それともあの配線を?大淀は迷っていた。これ以上の接近は、自分のリスク以上に彼に致命傷を与えることに。大淀の良心だろうか。それとも恐怖から来る感情だろうか。

 

 

――私は艦娘だから。

 

 

両肩の2門で自由射撃を行いながら。

ワキ抱えの2門で精度射撃。

逃げないと言った。

 

“私は”

たとえ頭を打ち抜かれてもやり遂げる。

彼女の眼鏡から光がこぼれる。

 

 

 

――なぜ?

 

 

 

「ケイン。これで決めさせてもらいます!」

 

左足を後ろへ下げ、体を斜めに構える。左足、膝に体重を乗せ首を下げる。視線の先にはマントの隙間。僅かに見える。彼の弱点が。細く揺れるコードが。見える。思考の過負荷が体を震わせる。小さく、ゆっくりと一つ息を吐き。

 

 

――狙う。

 

 

15M 。

 

睨みつける。

艦娘として。

 

撃つ。

艤装に祈りを乗せて!

 

当たる、必ず!

 

 

――守りたいから。

 

――傷つけてはいけない。

 

だから。

 

「今!」肩の2門の銃は、すでにカタカタと音を鳴らしている。400発のペイント弾をすべていなしたのだ。彼のマントには防弾性があるのか、穴は多く見えるものの全体的にカラフルな彩色が施されている。

 

艤装が過熱する。彼女の想いに応えるように。

彼の軌道がゆっくりと見える。数秒。あるいはたった一秒かもしれない。

瞬間。彼女は彼を知り尽くし、無限大の可能性を手繰り寄せた。

 

「だぁぁぁぁぁぁぁ!」彼が飛ぶ瞬間を打ち抜く!

 

残る2門はまだ残弾がある。

消えている。

 

あの恐ろしくも青白い光が。

彼は言っていた。

 

打ち抜いたのはコード。

増幅バンダナ、コンバーター、サイブレード。

彼はこの3点をコードでつなげていた。

 

「常人には土台無理な代物だ」

 

でも、飛んでいる。高く。高く。前へ。

両足と両手で前をガードしながら。

一切の降伏の色が伺えない。

闘志が、闘気が増していく。

 

 

この大淀をたかが鈍器で仕留められるとでも?

――冗談じゃない。

 

 

彼は一つミスを犯した。

彼は、常人ではないのだ。

たとえ“宇宙人の枠”の中でも。

 

彼女は気付いた。

彼女も気付いた。

 

 

「ワタシはソレホドばかジャナい」

 

 

――宇宙には静寂こそ相応しい。

 

 

 

「ハナから近接戦狙いだったのか、胸が熱いな!」

 

執務室から一部始終を見ていた。

腕を組みながら見ている。

なぜかな「大淀が勝てる気がしない」

 

「あの瞳が、勝利を確信しているからかな?」

 

「それとも気付いているのかな。あのシステムとやらを通して」

 

「彼なら終わらせてくれるのかな?」

 

――なぁケインよ。あいつを救ってくれないか?

 

 

この諸島まで、わざわざ演習に来る艦隊は少ない。

興行としてバトリングを行うことが多いため。

通常は、提督が安全度を見極め執務室から操作している。

終了のサイレンはまだ、鳴らない。

長門は見ていた。その先を。

 

 

 

 

――ねぇ長門さん。これじゃあデスマッチよ?

 

 

イマ撃テバ死ぬヨ。

恐ロしいアイつを倒ソウ。

 

嫌な気持ちが。

全身を駆け巡る。

あの日からの。

 

見上げる。光の中、動く影が見える。

――ダメ。

 

「全砲門構え!てーぇーつ!」体が動いた。

――撃たないで、私。

 

自然と動いてしまった。

黒い塊にヒット。

 

日の光が、彼を見失わせる。

至近距離に物が落ちたような

鈍い音が響く。

 

 

 

 

 

 

「ケイン・ブルーリバー見参!」

 

着地時の屈んだ姿勢から、宣言と共に勢いよく立ち上がる。腰に付けた“不要”なコンバータが地面に置き去りにされる。柄を構えると再び彼はより早く弾けた。

 

 

 

 

打ち抜いたのは投げ捨てたマントだけ、か・・・

彼は健在だ。敵はまだ生きている。殺さねば。殺される。また、沈んでしまう。あの、冷たく深い水底へ。でも――

 

 

5M

 

 

・・・体が、敵を探す。

 

――敵?

 

 

「なんだあのジャンプ力!すげぇな!」

 

「宇宙人ガンバレー!」

 

光のない筒を握ったまま。踏み込んでくる。

わかる。アレははころシニくるる。

わからない。知らない記憶が。

知らない心が暴れ始める。

たくさんの。

 

 

「残念ね」

 

 

4丁ともカラカラと音を鳴らすだけだった。

――ヤヤラナケレバヤラレマススホウライチョウウ。

 

 

「悪夢を」ちいさく、つぶやいた。

 

 

目を見開く。

光が漏れる。

青い哀しみが。

肩から伸びる銀の筒。

銃を一丁剥ぎ取り、素早く構えた。

 

彼女の持つ。彼女だけが持つ。

脚部にフィンスタビライザーが展開される。

開かれた船の翼が、風を掴む。体を制御する。

世界を抑え込む。

 

 

「どぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお」叫びながら銃身を高速で突き出していく。

――キサマママヒトリデセンソウヲヲヲヲオッパジメルルルツモリカカカカカカカカカ!

 

 

至近距離で最大稼働する

彼のサイシステムに触発されてか

 

湧き上がるたくさんの声が動きを鈍らせる。

彼女を止まらせる。

たくさんの想いが、彼女を支える。

彼の瞳に、人の想いを思い出さされる。

 

 

――何が彼をここまで強くさせたのだろう。

 

――ゆっくりと、時間が流れる。

 

 

どれほどの事が、彼に起きたのだろう。

なぜあなたは、戦わなければいけないの?

 

 

発生した青白い刃は

突き出された銃身を溶かし

斜め上に

彼女の首を正確に捕らえている。

 

 

目まぐるしく記憶を辿る。

私は、誰?

 

沈む直前。

 

 

演習場の熱狂が二人を包みこむ。

二人の中に

彼女の中に

 

 

世界が割れる。白く広がる瞬間。

訪れる崩壊。ガラスのように今が崩れる

過去が再構築される。

 

サイ・システムの導きか。

あるいは人の持つ可能性。

 

 

彼女は正しい解にたどり着いた。

――思い出した。

 

 

あの時とは違い、彼の温かさを感じている。

さあ、あたたかい場所へ帰ろう。

そうだ。

 

ああ

 

還ろう。

ここではない

あの懐かしい。

 

 

 

――未来へ。

 

 

 

「ありがとう」サイシステムはその想いも伝えるのか。

 

 

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