ケイン「ばーちゃんが言ってたぜ?女を泣かせる奴は最低だっ、てな!」(旧Ver) 作:Fry-Hopper
カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】
作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】
警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】
対象年齢 【R-15】(戦争物の為)
「提督、新しい任務が届きました」執務をこなしながら、モニターを見上げると、彼女の眼鏡がキラリと光った。
「ふふっ」思わず声が出てしまう。
「何ですか」こちらを睨みつけながら「真面目に聞いてください」姿勢を正した。彼女は怒らせると怖いからな。背筋に汗が一つ流れるのを感じた。
「それで?」茶褐色で大きく重いデスクの上のコーヒーに手を伸ばす。
「先日の隕石の件ですが」またキラリと。今度はブラックコーヒーを飲んで耐えた。今日は良く光るなと内心微笑む。
「南方諸島に墜落した物体を回収せよ、とのことです」いたって真面目に言った。
「墜落、ねぇ」誤字ではないのかとの意味を込めて―
彼女は周囲を警戒すると「お昼にしましょうか」彼女は首で外へと合図した。「いいだろう、今日は何を食べようかな」笑顔で答えると、執務室から出る。
「おいおい」宿舎の陰で、パタパタと体を探られる。「そこまでか」
「ええ」真面目な顔つきで全身を調べる「一級機密です」執拗に上下をはたく。
「大丈夫そうね」そういうと、離れにある食堂へと足を向けた。まさかとは思うが、執務室が盗聴されている事を警戒しての行動だ。
食堂を本施設内に組み込まなかった理由として匂いで腹がすいては士気が下がるからだと、当人は笑いながら説明をしていたが、こういう時の為に理由づくりの一つとしてあえて遠くに存在させていた。こういった事には小賢しくも頭のキレる男である。
「それで、内容は?」いつもよりゆっくりと歩きながら、言った。
「宇宙船だそうです」真面目に。
「大国が財政難の時の目くらましかな?」そう、いつもの景気が悪い時のUFO騒ぎだろうと。「つまり、大本営は金鉱でも見つけたのか」なるほどと、一人納得する。では、編成は、力が強く運搬力のある長門を―
「他国に先駆け、直ちに船体のサンプルを回収ないし、破壊せよと」最新型の暗号電文で。キラリっとこちらを睨む。戦争相手が人外なため、常に資金難の当鎮守府では今だに印刷しか行えない九七式印字機Ⅱ型を使用していたが、どうも衛星利用と特務艦経由で信号が来たらしい。同盟国に解読が出来ないという事だ。
「まさか」足を止め。波止場で見つめあう二人。
気が付けばお年頃の女の子達に囲まれていたが、別れ話でも切り出されたのかという緊迫感に押されて、誰も声を出せなかった。人生のうちで絶対に怒らせたくない人物ベスト3(某記者調べ)に君臨する彼女が迫真のオーラを出している。
動けない、動けば殺られる。
「不幸だわ」入渠を終えて食堂に行こうとしたら、謎の人だかり。私、お腹がすいているのだけれど。「何だ提督か」渦の中心に提督と、キラリ眼鏡。
「不幸だ」モーゼの如く輪が開く。「わ?」中心の二人がゆらゆらと近づいてくる。気付かれた。嫌な予感がするの、足が動かない。後退、否、死。姉さま・・・
「ちっ、進む!進むんだからー!!!!」両腕を広げダブルラリアット!速度を乗せた、打点の高いラリアットだ!「青葉見ちゃいました!!」すかさずフラッシュが走る!
「ワーン」「ツー」「スリー」ダウンする二人を見て、周囲の艦娘たちがカウントを取り煽りたてる!!
決まった!スリーカウント!
提督轟沈!眼鏡大破!!
どちらも同じくらいの高練度であり、元が戦艦と巡洋艦ではやや大淀の分が悪かった。勝者山城!!駆逐娘に、拍手喝采されながら食堂へと向かった。
「ゴルァ!!!おのれやましろぉ!!ゆ”る”さ”ん”!!!」心地よい潮風が鎮守府を抜ける。
大淀については、この辺境に珍しく訪れてくれた演習相手に、演習終了後に某記者がインタビューしたことがある。その内容はこうだ。
VTR
「あれが巡洋艦?巡洋戦艦の間違いだろ?ふふふ、怖い」
相手の弾薬が確実に尽き、動きを、奴は動きを止めたんだ。追い詰めたと思ったら、突然奴に攻撃が当たらなくなり、気が付いたら毟りとられていた自分の艤装で負けていたと。
「――慢心やら超スピードやらそんなチャチなものでは断じて・・・」
――提督の検閲により削除――
「今日は厄日かな?」泥の付いた服をはたきながらよろよろと起き上がり、帽子を正した。
「てーとくよっわーい」そう言いながらも一緒に服をはらってくれる。
「年なんだよ」壮年であるが、体はがっしりとしているほうだ。「さっ食堂へ行こうか」そう微笑むと、皆で食堂を目指した。
「まぁ山城だな」本来なら金剛型などの高速戦艦を出すところだろう。「高練度とラリアットか」
「ラリアット航空戦艦とは胸が熱いな」地図にコンパスを引きながら至って仏頂面で彼女は言った。彼女なりの冗談なのだろうが、その場にいた誰もがかける言葉を失う。
「急くように言われているんだろう?」その静まり返る雰囲気は彼女にはいつもの事で気にせず続けた。こういう時、頼りになる。後、口が堅いほうだ。色々と。
「そうだなぁ、隕石から未知の資源を回収しろと言われてもなぁ」コーヒーを手に。大きく椅子に背もたれる。
「確かに眉唾な話だな」彼女は複数の落下予測点に線を入れる。「それに」
「未知の汚染の心配もある」手をひらひらと「これ以上敵勢力が増えてはかなわん」しかしその瞳は楽しそうに待ち構えているようにも見える。頼もしいことこの上ない。
――しかし
確かに、なぜ奴らが生まれたのか?
大本営はどのように艦娘を?
妖精さんの謎技術とは。
分からない。
そういえば、昔。ゴシップ話に、UFOのようなものが2隻。
月の影に。
レンズの汚れだの、宇宙人の攻撃だのと、一時期話題になった事がある。結局のところ政府の公式見解として、初期の衛星だったため宇宙空間でのトラブルが原因とされた。他の偵察していた場所とデータが混同してしまった、とも発表された。
――今回の件も何か?
「不幸だわ」声が聞こえてきた。謹慎カッコカリにより、執務室のソファーで出撃待機中。しっかりと食事は行い、心なしか輝いて見える。どこか表情も朗らかだ。
「提督、作戦概要をご説明します」日の光を受けキラリと。
旗艦山城、最上、山雲、満潮、朝雲、時雨にて目標ポイントへ急行。
その後、僚艦は同ポイントにて待機。
山城は単独突入。
水偵にて落下予定ポイントを偵察。
発見後サンプルの回収。
実地不可能の場合は砲撃により対象の破壊ないし埋没。
こちらの勢力圏内ですが、敵遊撃部隊が確認されている為
この間、僚艦は山城脱出ポイントの維持。
以上です。
「単艦突入なんて」顔を伏せながら「当てつけかしら・・・」
「山城」提督はソファーの前にしゃがみ込み「お前にしかできない」手を握りそっと伝える。「頼めない」
「でも・・・」そっと手を握り「訳がある、隕石を無事見つけたら、開けてほしい」指令書入りの筒を持たせる。「大丈夫、お前は一番運がいい」
「扶桑型戦艦山城!武運長久を!」
年甲斐もなく。出撃ドックで帽子を振りながら今日一番の格好をつけ声を張り上げた。何度も何度も帽子を振る。出撃する、彼女たちが見えなくなるまで。
――バカね。あんなに苦しそうに言われたら、断れないじゃない。いつまでもシャバッ気たっぷりの不甲斐ない提督ではあるが。何処か憎めない。
「不幸だわ」嬉しそうに、ぽつりと呟いた。