ケイン「ばーちゃんが言ってたぜ?女を泣かせる奴は最低だっ、てな!」(旧Ver) 作:Fry-Hopper
カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】
作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】
警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】
対象年齢 【R-15】(戦争物の為)
赤色灯がグルグルと喚き散らす。額から血を流しながら、彼は体を起こした。
手は痺れるが動くらしい。あいにく足もついている。幸いにも、黒いマントが鋭利な落下物等からの被害を軽減したようだ。
もちろん彼にはそれを意図してマントを着用している意識は皆無である。これは100%純粋に彼個人の趣味である。彼の私室にあるクローゼットには常に複数の黒いマントが大切に“陳列”されている。
また、その姿を侮辱するものは、西洋の騎士のように大らかな対応ではなく直ちに彼の怒りを買う。酒場のゴロツキ相手等には特に容赦がなく突然椅子を投げ飛ばされ、それを機にしばしば大乱闘が発生することもある。祖母の教えを受け毎日トレーニングを欠かさない彼は、それなりに体術にも自信はあるからだ。
「キャナル、状況を」返事がない。「仮想復元フィールド・・・」
疑似的に、空間に回路の投影によるシステムの再構築を図るも、反応はない。
ひとまず、踊るレッドランプを強制停止させる。
――無理もないか。
奴との決戦の時、爆発に巻き込まれてハイパースペースまで弾き飛ばされたのだから。サイ・コード・ファイナルを小規模とはいえ発動させ、なおも生存している事は幸甚の極みである。
「ミリィを待たせているからな」ぐぐっと痺れる体を、動かしながら。全身に力を込める。
――ケイン。聞こえる?
「ケイン、ケイン」か細い音声が。
「キャナル、か」姿は見えない。立体映像装置にも深刻なダメージがあるのだろう。
「コアをやられたのか?」本人がいるなら修理もしやすい。助かった。
「ええ。ケイン」少しノイズが入る「残念ながら、自己修復装置も全滅です」
「この惑星では、素材の調達も難しいようです」船体から全天観測レーダーで状況を分析するがやはり処理能力が低下しているのか。反応が遅い。
「ケイン。無事ですか?」船内センサーも故障して。
――もはや、目が見えない様子だ。
「ああ。俺は大丈夫だ」壁に手をつきながら、煤けた船内を歩く。
体温の分布や、呼吸音を頼りに判断。多少強がってはいるものの、身切れなどもなく大事には至ってないようだ。
よかった。
「さすが私のマスター様」少し安心したように。「プラズマ・ブラスト、サイブラスター、リープレールガンの使用は行えません」冷静に状況を伝える。
「サイバリア、ブーストチップ、メインエンジンに深刻なダメージ、FCS-CANALにも」
そうか。予想はしていた。この星の現在時刻を考えればそれでも船内が暗いという事は重大な亀裂がないという事でありいいものだ。恐らくはかなりの胴体着陸になったのだろうが、さすがはロストシップである。
「ですが」いつもなら、指を一つ、得意げに立てて説明しているところだろうか。「仮想復元フィールド形成による、サイシステム直結でのファランクスレーザーは」
いや、彼女はまだ寝ているか・・・
「連射をしなければ使用可能です。ただし、収束率と命中精度は低いですが」
それでも星間移動も出来ないトアルの戦力から考えれば、十分な力か。
「おまけはないのか?」軽口を叩いて見せる。壁を手で叩き伝いながら進む。「ありま」外部センサーに反応。サイシステム反応。
「ケイン!」全機能をFCS(Fire-Control-System火器管制装置)に集中させる「何か飛んできます!サイシステムよ!」痛んだチップに過負荷がかかり、回路に光が数回発生する。
「何だと!?」まさか、ロストシップの攻撃機。この星にもいたのか。
このままでは今度こそやられる。血流量が上がっていくのを感じる。壁を手で押しながら、足早に第二管制室を目指した。各所から傷口が開き血が流れ出るが、気にしてはいられない。はやる気持ちが、逆に足をもつれさせる。マントが床埃を拾い上げた。
「小さな・・・航空機?」サイシステム反応は確かにそこから来ている。FCS-Canalが健在ならば、トアルの中央局からデータをハッキング出来たのだが・・・
「移動速度の遅さから、センサーの故障の可能性もあります」
ロストシップ搭載の攻撃機であれば、音速などゆうに超えている。この小型機のような物は光速を武器にする彼女にしてみればどうぞ落としてくださいと言わんばかりの時速200km程度の大気速度でしかない。無論。罠の可能性も捨てがたいが。
あえて、ケインには伝えていないが。念のためファランクスの照準だけは合わせてある。エンジンを暴走させれば、数発くらいは、彼女の独力でも撃てるだろう。後の事は分からないが、それ以上に、これ以上マスターを失わせる気も起きない。
「遠ざかります」酷くノイズがかった声で。警戒レベルを最小にまで下げる。
「ダメね」酷く残念そうに小さく。やはり長時間は稼働できないようだ。「FCSを停止させライフシステムを最優先します」
「ああ、おやすみキャナル」その言葉を最後に。船内から人気が無くなった。
少し痛みにも慣れ歩けるようになると、長い通路を抜けそこへたどり着いた。しかし第二管制室のハッチは固い。潜水艦のようなハッチの扉のハンドルはいくら回しても動かない。まるで入室を拒まれているようだ。
「ばーちゃん・・・」サイブレードに手をかけた。切り進むことはたやすいが。思い留まって、ひとまず船の外側から様子を見ることにした。
外へ出ると、密林に落ちたのがわかった。日が傾いてきているが強い光で、しばらく目を細めた。墜落速度から考えるには、予想よりかなり小さなクレーターだろうか。キャナルが墜落ギリギリまで制御していた事が分かる。
船に登ると景色が一通り見えた。この島で生活している様子は見当たらない。無人島のようだ。その上、地質も柔らかい。ただ少し蒸し暑い、か。強い潮風がバサバサと彼のマントを騒がせる。残念なことに、彼の思考回路にはマントを外すという選択肢は存在しないようだ。
全長210M 白い船体の双胴船ソードブレイカー。
慣性制御装置と強力なショックアブソバーのおかげもあり、全壊は免れたのか。しかし、土から覗かせる部分は、やはり、痛々しい。彼女の“黒い素肌”も見え隠れしている。恐らく、双胴部分の前部は完全に喪失しているだろう。
ソードブレイカーの腹部には大気圏の往復が可能な小型のシャトルがドッキングされているが、この衝撃では潰されてしまい、原形をとどめていないだろう。ソードブレイカー単独で悠々と大気圏を往復できるにも拘わらず、わざわざ能力の劣るシャトルを保持するには理由がある。
ソードブレイカーの高性能さを秘匿しているのだ。超高級機能である大気圏往復能力は個人が持つには手に余る代物で、毎回この船は只者ではありませんよと宇宙中に喧伝するようなものだ。多方面から目を付けられてしまう。ゆえに非常時や、未開の惑星以外では主にシャトルを利用していた。
さて、どこから手をつけよう――
何かに見られているような。
狙撃されるような感覚を一瞬感じる。
体を素早くターンさせ、彼方を眺める。
マントが大きく広がった。
海の上、水平線の手前か。
何か動いているようだ。
腰からさっと双眼鏡を取り出した。
――航空機、あれか。やはり、かなり距離がある、
サイブレードのある腰に手をかけ思う。ミリィなら撃ち落とせたかな。