ケイン「ばーちゃんが言ってたぜ?女を泣かせる奴は最低だっ、てな!」(旧Ver) 作:Fry-Hopper
カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】
作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】
警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】
対象年齢 【R-15】(戦争物の為)
※今回は回想回。本編でもよくやるため、どうしても1回は外せない。ネタバレ注意。
「ばーちゃん・・・」もぞもぞと、医務室の無機質な白いベッドを動く。マントは取り外されベット脇に掛けられているようだ。
オルゴールが、聞こえてくる。遠く遠い日。思い出す。
――少年の日。
「ばーちゃん!街が、街が燃えてるよ!」
ローブを羽織った祖母が彼の肩を抱くように後ろに立つ。
月のない星に暗い夜。中世を思わせる色とりどりの家屋は崩れ、多くの場所から火の手が上がる。離れた高台から二人、黒い煙を吐き続ける街を見下ろした。風の冷たい夜。祖母は優しくケインを抱き寄せる。彼女の手に力が込められる。
――夢の中で。
ソードブレイカーの第二管制室。そこで祖母は逝った。
ロストシップ、前世界の負の遺産。
410M級重砲撃艦ゴルン・ノヴァ。
全体は黒く、サイブラスターの直撃にも耐える装甲。
外見は羽を広げた大きく黒光りするカラスのようである。
ソードブレイカー、ヴォルフィードは祖母をマスターとしゴルンノヴァと対峙した。そのマスター、闇を撒くものと。
「全銀河に悪夢を―
―宇宙には静寂こそ相応しい」
虚空から声がする。闇を撒く者の。
サイシステムを経由し意識が流れ込んでくる。
宇宙空間に輝く交差。白と黒。
近づき、離れ、また近づく。
擦り合い、近距離を通過するたびに
踊るように光の矢が絡み合う。
より多くの光の矢が白い船に
重く深く突き刺さる。
ソードブレイカーはゴルンノヴァの火力の前に、一方的に攻撃を受けた。ゴルンノヴァから来る光の矢が、次々とソードブレイカーを襲う。
「アリシア、もう十分だ。ここは退こう!」ソードブレイカーを護衛するように小型海賊船が、一隻随伴する。こちらは足も遅く小型なためレーザーでの牽制を行いながら、両者から、より大きく距離を空けている。
「いいえ、ジル。あなたは逃げて。あの子を、ケインをお願い」
そう言うと祖母は、エンジンを最大稼働させ、ゴルンノヴァへと急接近する。ソードブレイカーは双胴部の先端から発射されるサイブラスターで果敢に応戦するも、ゴルンノヴァの重火力がサイバリアを突き抜け何度も船内に大きな爆発を起こさせた。
「いいわ、やって頂戴」
幾度目かの直撃をうけ、船も祖母も満身創痍だった。船内を伝うように進み、コアの近くである非常用の第二管制室に座る。肺をやられたか、口から血も多く出ている。
――サイシステム・コード・ファイナルが発令されました。
「マスター、FCS-キャナルは、非、論理的揺らぎにより」
緑のロングヘアーでメイド服を着た背の高い女性が、操縦席の傍に佇む。祖母は、ヴォルフィードの持つ、対ロストシップ用の最後の切り札を準備する。
――物理障壁破壊ステージに入ります。
「ホロ映像に投影します」凛と佇みながら泣いていた。
「いいのよ、キャナル」祖母は言った。静かに優しく。操縦席に深く腰掛け、静かに。慈悲を込めて。
「マスター。FCS-キャナルは、悲しいと、感じています」涙が止まらない。感情がオーバーロードされる。回路が軋む。記録が苦しい。「いいのよ。これでいいの」
――警告。カウント開始後の、中止はできません。
キャナルとは別の、独立した合成音声が淡々とその時を告げる。ゆっくりと目を閉じ、その時を待った。
――10 ――9 ――8 ――7 ――6
「あの子を、ケインをお願い――」
――0
その日、祖母は光に変わった。
1ピコ秒で超新星に匹敵するエネルギーへと変換された。
その時ゴルンノヴァは異変に気付く。
――まさか、ファイナル?
「ヴォルフィード貴様!マスターをぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ソードブレイカーから全周囲へ。
輝きの一撃が爆発的に広がり、ゴルンノヴァを包み込んだ。
「ばーちゃんは、一緒じゃなかったのかよ!」ケインは帰ってきたジルを叩く。
身長差があり、抱きかかえようと屈む、ジルの太ももを。叩く。叩き続ける。
「こんな時にまで、負けやがって!負けやがって!!」
――何度も何度も。
彼はちょっとは名の知れた、サイブレード使いだった。ジルは海賊時代に祖母に挑み負けた。何度も挑むがついに勝てなかった。気が付けば腐れ縁、負けて以来、ずっと傍にいた。ケインにはいつも、負けおじちゃんとからかわれていた。
「負けやがって・・・!!」声にならない声で。叩き続ける。
ソードブレイカーが帰還するまで、格納庫に乾いた声が木霊した。
オルゴール。聞こえる。その時。
ソードブレーカーが帰ってきた!
「ばーちゃん?」船から降りてきたタラップを黒いマントを風に泳がせながら駆け上り、大急ぎで船内へと入った。「ばーちゃん!」オルゴールがなっている。祖母が好きだった。あの、優しい音色。フルートを吹く人形が動く。あのオルゴールが。
「え?」操縦席につくと後ろを向く、メイド服の女性がいる。
あれ?小さくなった?気のせいかな?
少女が、後ろを向いて立っていた。
「君、だれ?」少女はこちらを向く。ゆっくりと。
「私は。エフシーエス。キャナル。ヴォルフィード」ゆっくりと。
声にも少し幼さが残る。
「マスター。ご命令を。どうぞ」
キャナルなりの気配りだろう。新しいメモリーに、少年に容姿を合わせて。アリシアの遺志を継いで。ケインと共にあるために。
「それじゃあ、この船俺にくれるっていうのかよ!」嬉しかった。興奮したんだ。ずっと欲しかった。乗りたかったんだ。
「はい。ソードブレイカーは、強い男の乗る船です」
――強い、男の。
いつかばーちゃんに譲ってほしかった。でも――
生命維持機構に致命的なエラーが発生しました。直ちに製造元に――
体の半分以上が機械に変わった老いたジル。
人が少なく草原が広がるだけの惑星。
ケインの成長を見守りながら
祖母の墓守として、その近郊に暮らしていた。
ベッドに横になり遠くを見つめる。
チカチカと胸のあたりに赤色ランプが光った。
拳を振り下ろし、叩いて止めた。
暗い室内に静寂が訪れる。
ゆっくり目を閉じる。
気配がする。
「キャナルか」彼の枕元に、転送されて投影される立体映像で、祖母の時と同じ背の高いメイド服姿の女性が立っている。
「ジル。私を許してくれますか?」二人とも前を、遠くを見つめながら。その日を思い出す。少し怯えるような声だろうか。彼女にしては珍しい。
「いいんだよ、キャナル」静かに、優しくつぶやく。子供を、ケインをあやしていたころのように「これでいいんだ」山男のようながっしりとした体形の大男は、微笑みながら眠りについた。
――深い眠りに。
「お疲れ様、ジル」彼女は静かに囁いた。
オルゴールが止まった。
でも、ばぁちゃん。
記憶? 誰の?
キャナルの? コード・ファイナルの時に?
「ばーちゃん?」長いローブを羽織った女性。
彼がマントを付けているのは、祖母をまねているから。
「ばーちゃん」「ばーちゃん」微笑むと遠くへ。離れていく。
「ばーちゃんまってよ」
「ばーちゃん」「ばーちゃん!」
「ばーーーちゃーーーん!!!」
・・・・・
・・・
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