メドゥーサでもあった堕ちた女は思い出す。
互いのことを『私』と呼ぶ姉たちを。
思えば、メドゥーサの姉であったステンノとエウリュアレは互いのことを『私』と言っていた。
メドゥーサだけは、駄メドゥーサと呼ばれていたのだが。
今では理解出来る。
メドゥーサ自身も、『私』だったのだと。
ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサ。
ケートー、ポルキュスから生まれた美しき美の女神達。
ゴルゴーン三姉妹はその美しさ故に、運命に弄ばれて破滅へと沈んだ。
彼女たちは美しき三姉妹で、強者に蹂躙されて消えた被害者――――はたして、本当にそうだろうか?
グライアイという三女神がいる。
エヌオ、パンプレド、デェイノ。
彼女たちは、三人で一つしか無い眼を共有する姉妹の女神。
数ある神話における運命と関連付けられた三女神の中において、尤も不遇にある者。
その姿は極めて醜い老婆であるとも、生まれ持ってただ白過ぎたとも言われている。
そして、その両親は
果たして、これらの事象は全く無関係であったのだろうか?
家族である醜い三姉妹を無かったことにして、美しい姉妹達だけを己達血族としたゴルゴーンへのグライアイからの呪いでは無いのだろうか?
本来、彼女たちが完成された同一の姉妹だというのなら、お互いがお互いの側面であるというのなら、グライアイはゴルゴーンそのものでは無いのだろうか?
己の醜い側面を切り捨てて、美しくあり続けようとした。
その歪みが呪いとなったのでは無いか?
だとすれば、グライアイの生まれ持っての老婆の姿は、永遠に幼くあれかしとされたゴルゴーンが切り離したものでは無いのだろうか?
眼が無い姉妹は、力ある瞳を持つ姉妹達が搾り取ったものでは無いのか?
なればこそ、その破滅は必然。
己から搾り取る事がこれ以上出来なくなったとき、己から押し付けることがそれ以上出来なくなったとき、その破滅は己を呑み込んだ。
ただ、年を取る普通の女性である事を受け入れていれば良かった。
しかし、美しくなりたい、老いたくは無い。
その為に、
それが永遠を暗示する蛇にちなんだ呪いであったのも、必然であったのだろう。
アテナの呪いは後押しに過ぎなかった。
ペルセウスに討ちとられたのは、己を写し出す鏡を向けられて
なればこそ、反転したゴルゴーンが
元は、ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサも、エヌオ、パンプレド、デェイノも全てたった一人であるべきだったのだから。
「漸く気が付いた。
ああ、私が本当に復讐したかったのは――――――――――――」
実は三姉妹では無くて、倍数の六姉妹でした。
それを考察すると、姉妹なんていませんでした。
そんな、お話でした。
ステンノとエウリュアレの『私』
メドゥーサの『封印』
からの連想です。